汚いコード進行。
路上、声を張るミュージシャンが1人。ギター1本。彼女はオリジナル曲を歌っていた。
曲名は「ドラゴンサイズ水筒」。
「あ〜水水水♪ 飲み干してみせて〜♪
ここが砂漠とて、ここが砂漠とて♪
もうタプンタプンなのよ〜♪
無茶言わないで〜♪ ぶちのめすぞ〜♪」
誰も見向きもしない。いつものこと。
歌い終わりに思わずため息を吐く。
「畜生共......クソったれめぇ」
彼女の名は
このとおり売れないミュージシャン。
今日の昼食も抜いている、節約をしなくちゃだからだ。
「やば、もうバイト行かなきゃ」
急いで片付けを済ませ、バ先へ向かう。ファミレスのバイト。
「よーしよしよし、いいニコねぇ...!完成近いニコよぉっ...!」
レジの台上でドローンを組み立てる男。
彼の名は
この精肉店「ミート茎野」の店主。
この時間は暇なのでドローンを作っている。
因みにドローン免許は持っていない。
「あれ、なんか、パーツ1個足りないニコ...?」
その時、店の外からドシンっ、ドシンっと音がした。
巨大な何かが跳ねながら移動するような。
「...まさか、また出たニコか」
「...ですのでねお客様、あまり騒ぐと他のお客様のご迷惑になりますので」
「うるせぇなぁぁあー、声ぐらい出すでしょ、誰でもさぁぁっ」
面倒にあう喰子。ため息は堪える。
「あ、てか お前あれじゃん!さっき道でさぁ歌ってたヤツだろ!クソ下手な歌!ゲロみてぇなん聞かせやがってよぉぉ!弁償しろよ個人的にぃ!!」
「は、はぁ?!!どこがゲロだよ舐めやがって!お前なぁ!!」
「ひ、弾語さんっ!!ことを大きくしないでっっ!!!」
「店長......!でも...っっ〜〜〜!!」
「バイトの教育なってねぇなぁ?!!この店はよぉっ!!客に感謝も、できねぇ店はさぁ、潰れちまえってんだよぉぉっ!!!」
ガッッシャーーーーーァン。!!。
店はぶっ壊れた。主に入り口付近から。
化け物がご入店されたので。
形容するなら巨大なバッタ。脚部は人間のそれのように筋骨隆々。奇怪。
天井がパラパラ崩れだす。客も店員も悲鳴にパニック、我先にと逃げる。喰子も状況を理解し、冷や汗が。
バッタ跳躍。衝撃で色々吹き飛ぶ、喰子も。
ズシンっと着地。店はもっとボロボロになった。
腰が抜けて立ち上がれない喰子と、またも跳躍するバッタ。今度は空中でバク転、何か楽しそう。
喰子はその着地点に、出勤前事務所に置いておいた自分のギターがあることに気づいた。
届かない手を伸ばす。それだけは駄目と。
「ッおい!!やめろっっ!!クソバッタァ!!!」
着地の寸前で、バッタは爆発四散した。疾風の如くやってきた何者かがその腹部を蹴り抜いたからだ。
黒のアームドスーツ。
黒のジェットウィング。
マスクには鋭い眼光。
そう、さながらカラスのような出立ち。
「.........へ...?」
喰子が困惑していると、隠れていた町の人々がわあっと顔をだす。
「来てくれたぞ!無敗のヒーロー!」
「そしてまたやってくれた!我らの最強無敵ヒーロー!」
「仮面ライダーガァング!」
電車に揺られる彼女は、微笑む。
「学得くん、どんな人になってるかな。」
彼女の名は
中学以来の故郷の町へ、大学を出た今、遠くから帰ってきたのだ。
まずは、少し前から連絡を取り合っていた旧友に会いに行く。
教えてもらった住所に行くと、大きな家の前だった。
「本当にマイホーム建てたんだ......同い年なのに、凄いなぁ」
チャイムを鳴らす、すると玄関が開いた。
「お待ちしておりました、姫葉様。」
執事だ。格好から見て明らかに。
「えっっ、えぇ、あ、えーと、こちら学得さんのお宅であってますか??」
「えぇはい勿論、あっ失礼、申し遅れました。私、学得様に仕えております、執事のクボスといいます。」
本当に執事だった。聞かされていなかった姫葉は「あ、あ〜」しか言えなくなる。
「さっ、どうぞお上がりください。学得様がお待ちです。」
「あっハイ!失礼しまーす......」
まさか同級生が執事まで雇う大物になっていたとは。姫葉は半分放心状態でクボスの後から廊下を歩く。
突き当たりのドアをノック。
「クボスです、姫葉様がおいでになりました。」
「どうぞ。」
ドアの向こうから聞こえた声は、確かに懐かしいその声だ。
緊張と高揚で心臓が高鳴る。
ドアが開くと、椅子に腰掛ける女性が1人。
姫葉は思考が止まった。旧友は男の筈だっだから。
「いらっしゃい、お久しぶりですね。姫葉さん。」