「変魔の頻発な出現、それが始まったのは比較的最近の話ですが、僕はそれより以前からこの状況を予測していました。」
ここは学得宅。の地下。の開発ラボ兼保管庫。
「だから秘密裏にガァングの変身システムとこのガァングドライバー、そして武器となる彼等の開発を始めたのです。」
学得の指差す方には、何十という数の多種多様なバイクがズラリと並ぶ。
「...という訳で、僕が正真正銘仮面ライダーガァングです。信じていただけましたか?」
「う、うん。...えっと、、うん。」
なんとか理解を追いつかせる姫葉。
「でも...そっか、学得くんがガァング......うん、そっかぁ......」
「...?」
若干顔を伏せる反応をした姫葉を、学得は不思議がる。
「姫葉様、お茶をお持ちしました。」
「あっ ありがとう、クボスさん。」
「因みにクボスも僕が開発したAIロボットです。」
止まらない学得の衝撃告白に、姫葉はお茶を吹き出しかけた。
「ホントですか、クボスさん?」
「マジのホントです。私はご主人の業務サポートのため作られました。腕とか触ります?」
めっちゃ金属の感触だったので、マジだった。
「学得くん、本当に大物になったね...いろいろと。」
「ありがとうございます。それより姫葉さん、改めて確認しますがケガなどありませんか?」
「うん、学得くんがすぐ助けてくれたから......感謝してもしきれないよ、何よりお店を守ってくれて本当にありがとう。今度ちゃんとお礼させて、なんでもお願い聞くよ!」
「当然のことをしたまでです。それにヒーローは見返りを求めないものなので。」
「駄目!ちゃんと感謝を伝えたいの。じゃないと私、気が済まない。」
「......そうですか。では」
「今週末、僕とデートして下さい。」
とある飲食店。
「以前ファミレスで働いてました。スキルも経験もあります。」
「うーん、すみません。今回は不採用で。」
とあるコンビニ。
「売り場も広く無いんで、10秒で品出ししてみせます。」
「ふ、不採用で...」
とある携帯ショップ。
「歌えます。」
「不採用。」
「あ"あ"ぁぁぁッ、どいつもこいつもっ!!クソっ!!!」
弾語のバイト探し、難航。履歴書をビリビリとする。
「考えてみたら、さあぁ、あの時ガァングがもっと早くバッタを倒してりゃさぁ!わざわざこんな面倒なことする必要なかったんじゃないかぁ?!ちょっと感謝とかしちゃってたけど、やっぱアイツもクソかもなあッ!!」
逆恨みさえする。またグゥと腹が鳴り、フラフラと、次の仕事を探すのだった。
「アハハっ、このコーヒーカップが回るやつ、楽しいね!」
「ええ、縦回転するタイプは初めてですが。」
学得と姫葉がデートの場所に選んだのは遊園地。
ここはワクドキふぁんたすてぃっくランド。
幅広い世代に愛される、夢とハッピーが詰まった大人気のアトラクション施設。誰もがワクワク、皆んなおいでよ。
ここはワクドキふぁんたすてぃっくランド。
そして園内をトテトテと歩く着ぐるみ。
「あっ、あそこ見てよ学得くん。この遊園地のマスコットキャラ、シマハイエナのファンエナくんが歩いてる!」
「ハイエナがマスコットなことあります?というかあんなキャラクター前からいましたっけ?」
「もー、何言ってるの学得くん。凄い人気のキャラだよ?ほら、あっちにはファンエナくんグッズのお店もあるんだから!」
「へぇ、そんなに沢山グッズが?」
「うん、ファンエナくんぬいぐるみとかファンエナくんクッキーとか。それからファンエナくんキーホルダー、ファンエナくんカレーでしょ?あとファンエナくん肉まん、スープ、キャンディ...」
「食品方面が厚いんですね。」
「他にも炒飯、菓子パン、八宝菜、花椒、小籠包、、とにかく今人気爆発中なんだ。」
「中華に偏ってますね、商品展開。」
「あれ、ファンエナくんもしかして、こっちに向かって来ない?」
姫葉の言うとおり、ファンエナくんはトテトテと2人の元にやって来た。
「やあ!ふぁんたすてぃっくランドを楽しんでるかい?」
「あっ全然喋るタイプの。」
「わー!ファンエナくんから話しかけてくれた!」
姫葉はテンションが上がり握手を求めた。ファンエナくんはそれに快く応えてくれる。
「前科百犯。向こうのフードエリアも行ってみたかな?アイス屋さんはリニューアルされて更に美味しくなってるから、是非訪れて買ってみてね!」
ファンエナくんは両手でバイバイをし、その場を去った。
「いやー、まさか生ファンエナくんと話せるとは思わなかったよ。」
「今 前科百犯って言ってませんでした?」
「そういえば言い忘れてたけど、学得くんの今日の髪留めリボンかわいいね!左右で違う色なの、オシャレだし。」
「えっ あっ。......あー」
「あ、わざと違う色にしてたんじゃないんだ。」
「こういうミスがまだ直りませんね。」
昔と変わらない学得のドジな部分を見て、姫葉は少し嬉しそうにした。
学得がポーチを開くと、中には様々な色のリボンが。
水色のものを取り出し、右方の髪を束ね直す。
「すごい用意いいね?」
「こんなこともあろうかと常に入れてるんです。おかげで嵩張るので、やはりドジっ子属性は直した方が良いですね。」
束ね直しが完了する。
「......さっきファンエナくんが話したアイス屋、行ってみますか?」
「ん、行こっか。私も気になってたし。」
「ここですね。確か僕、以前も来たことがあります。」
「そうなの?私ははじめてかも。何味にしよっかな。」
「...前回食べたのが美味しかったのでそれにします。このイエローソーダ味に。」
「新フレーバーも色々出てるっぽいけどいいの?私はこのNEW!って書いてるキャラメルプリンにするけど。」
「冒険、出来ないので。」
2人は席に着き、それぞれのアイスを食べる。
「うん、コレ美味しい。新フレーバー。」
「......姫葉さん、僕は自分がガァングであることを世間に一切公表していません。厄介ごとを招きたくないからです。」
「? うん。」
「何故貴女にだけ正体を明かしたのか、分かりますか?」
「えっ、......口外しない信用があるから、じゃない...の?」
「勿論、僕は貴女を1番に信頼しています。こんなに気兼ね無く話が出来るのも貴女だけです。」
「わざわざ秘密を明かした理由は、......僕自身を、開放する為です。」
「開放...?」
「以前も似たことを話しましたが、僕は失敗から多くを学び実力と実績を手にしてきました。ですがそれに反比例するように、何かを失った気がしています。」
「......最初はなんとなくで始めた ただのヒーロー気取りでしたが、段々町の皆から感謝されるようになって、凄くやりがいを感じて、同時に責任感も生まれて。」
「それが理由なのかは分かりませんが、今は何かにずっと縛られている様な、窮屈で、退屈で.........」
「なにもかもが、世界が淀んで感じます。短いスカートを履いても全然スースーしないんです。......僕はこの気持ちの悪い何かから開放されたい。」
「......そんなこと考えてたんだね。」
「だから、色々方法を模索してるんです。1番の親友と秘密を共有すれば気が晴れるかもとか、今日のデートを提案したのもその為です。正直な結果を言えば、僕の求める開放感は手に入りませんでしたが。」
「そっかぁ、なんか、力になれなくてゴメンね。」
「勘違いしないで下さい、貴女と居ること自体は凄く楽しいんです。今日は良い息抜きになりました。ありがとうございます。」
「ふふ、なら良かった。私も楽しいよ。誘ってくれたのも嬉しかった。」
「それは何よりです。」
「......ところで、お店の方は大丈夫そうですか?」
「それなんだけど、やっぱり最初から1人で回すのも大変でさぁ。従業員、取ることにしたんだ。」
ここは喫茶Atari。の店前。
今日は定休日で閉まっているが、その入り口にはアルバイト募集と書かれた張り紙がある。
フラッと立ち寄った場所にそれを見つけ、記載内容をじっくりと見る弾語の姿があった。