仮面ライダーガァング   作:脱臼 させ太郎

5 / 8
喰えない奴

 

「姫葉さん、皿洗い終わりました!」

「ありがとう〜。じゃあ次は床清掃お願いしよっかな。」

 

喫茶Atari、バイト研修初日。姫葉に気に入られたい一心で、弾語は珍しく気合いが入っていた。

水の入ったバケツとモップを手にホールへ出る。

 

「お客さんに見える所は特に念入りにね。気持ちのいい店内にすることが第一だから。」

「分かりました、ピッカピカにしてやりますよ!」

 

せかせか床を磨く。細かい汚れも見逃さず、あちらこちらをひたすらゴシゴシと。鏡面のようになるまで。

 

ドアの開く音がした。

「いらっしゃせー。」

 

入店したのは学得。

「こんにちわ。」

 

「あっ、いらっしゃーい。来たね、学得くん!待ってたよ。」

「お待たせしました。なかなか素敵な店内ですね。......そこの凄い勢いで床清掃してる方がバイトの?」

 

「うん!特に熱意が凄いんだよ〜彼女は。喰子さん、こちらがさっき話した私の友達、学得 巣在くんね。」

「あー、こんちゃっす、弾語 喰子です。」

 

学得の喉周りを注視する。

「...男ですか?」

「ええ、ややこしい格好してますが。姫葉さん、カウンター席に失礼しても?」

「いいよ。座って座って。」

 

「メニュー表は...これですかね。」

 

「ん、ここも汚れてる。しつこいヤツだなぁ」

ゴシゴシゴシゴシゴシゴシ

 

「どれも美味しそうだ、迷います。」

 

「まだちょっと汚いか、これでどうだっ」

ゴシゴシゴシゴシゴシゴシ

 

「決めました。姫葉さん、パンケーキとホットコーヒーをお願いします。」

「はーい、かしこまり。ちょっと待ってね。」

 

「アハッ、超綺麗じゃん。もっとピカピカになれっ」

ゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシ

 

「それにしても本当に素敵なお店......」

 

「よし!最高ッ!」

掃除が完了し、弾語がモップを振り上げた。

 

それがガンッとバケツに当たり、ツルツルの床をカーリングのストーンのように豪速で滑る。

 

椅子の端に衝突し、勢いそのままポップアップ。

 

バッシャァァンと中の水を学得にぶち撒けた。頭から。

 

「ブァ"ッ、、()ッっっっっっっっっ」

「あヤバ」

 

「ちょっ、学得くん大丈夫?!喰子さんタオル!」

 

 

「う"ぁ......急にプールに突き落とされたかと......」

「さーせんした。これタオルです。」

「................」

 

弾語の明らかに誠意のこもっていない態度にイラつく学得。

ヘラヘラしたその顔を近くで見て気づく。

 

「貴女どこか見覚えがあると思ったら、いつもこの辺りで低質な自作曲を歌ってる人ですか。」

「はぁっ?!低質だぁぁ?!」

 

「学得くんビショビショになっちゃって、、ドライヤーとか持ってこようか?」

「いえ、お気遣いなく。こんなこともあろうかと...」

学得が内ポッケから取り出した小型の機械。ボタンを押すと展開され、大きなドライヤーになる。

 

「持ち歩いてて正解でしたね。僕の発明品、『一瞬で服カワカース』を。」

「一瞬で服カワカース?!凄い便利そう!!」

 

「おいッ!さっき誰の歌が低質っつったんだ!!」

「...貴女の歌ですよ。僕はお世辞が得意でないのでハッキリ言いますが、いつもヒドいものだと思ってます。」

「なんだとッ、この......」

 

「なんなら不快です。適当にお遊びでやってるなら止めていただきたい。」

「馬鹿にしやがってぇ、私はなぁっ!!」

 

学得の携帯が鳴る。

 

「失礼。......もしもし、クボスですね。」

 

『ご主人、"裂け目"が出ました。位置情報を送ります。』

 

「!、了解です。」

送られた情報を確認。

 

「すみません、姫葉さん。少し席を外します。コーヒーの冷めない内には戻るので。」

「う、うん。分かった。作って待ってるね。」

 

颯爽と店を出る。

 

「あっオイ!......クソっ」

弾語は拳を握った。

 

 


 

 

町の空、その空間が裂けたように亀裂が入っている。ピシピシ音をたてどんどん広がる。

 

「なんとか開ききる前には間に合いましたね。...やれやれ、ずっと向こうに居てくれればいいものを。」

裂け目の下まで駆けつけた学得がベルトを巻き臨戦態勢をとった。

 

瞬間一気に亀裂が大きくなり、空間が割れる。その中から出てズドンと地に落ちた巨体。その姿は、人の足が6本生えたカジキマグロだ。

ムクっと起き上がるなり雄叫びの様な声を響かせる。

 

 

学得がベルトのバックルを叩く。

「変身。」

 

 

『カッサライイ"イ"ィイ"ーッ!』

『ガァ、ガァ、ガァング!』

 

変身完了と同時にジェットパックが起動、カジキの変魔に飛びかかる。

 

全力のパンチを見舞うが左程怯まず、寧ろ一層元気に暴れ出した。明らかにハイテンションだ。

 

「来なさい、(ざん)ビーム。」

 

『デバン、ガング!』

 

前方に傘のような機構がついたバイクを召喚し、跨った。

 

今度は変魔がガァングに飛びかかる。が、バイクの傘が展開され更に高速回転。攻撃を防ぎ、同時にドリルの如くカウンター攻撃を喰らわせた。

 

一度引いて体制を整える変魔。屈みながら力を溜め、鋭い上顎の先を突き立て一気に突進。

ガァングは辛うじて避ける。

 

「これは斬ビームだけでは分が悪いそうだ。最善の札を切りましょう。出番です、磁雷塵(じらいじん)。」

 

『デバン、ガング!』

 

黄色のバイクを召喚。

変魔は再度力を溜めるが、そこをバイクから放たれた電撃が直撃。痺れで体制を崩す。

 

斬ビームの自動操縦モードが起動。磁雷塵の前にピッタリと並び、そのまま傘を高速回転させた。

磁雷塵が間に発生させた電磁力により、レールガンの要領で斬ビームを発射。この攻撃をまともに喰らった変魔が横転する。

 

「トドメを、VAN惨懐(ゔぁんさんかい)。」

 

『デバン、ガング!』

 

注射器のような機構がついたバイクを召喚。倒れた変魔に近づき、ブスリと針を刺す。その箇所から肉体が腐敗、分解され変魔は跡形も無く消えた。

 

 


 

 

「ただいま戻りました。」

 

「おかえり〜学得くん。パンケーキも出来てるよ。喰子さん、お願い。」

「......はい。」

 

席に着いた学得のもとへ、ツカツカと皿を持った弾語が歩いて来る。

 

「ど、ぉ、ぞ。パンケーキとホットコーヒーですぅ。」

「...どうも、ありがとう。」

 

互いへの苛立ちからメンチを切りあう2人。

双方ふんっと反対を向くが、学得が口を開く。

 

「......先程、貴女の言葉を途中で遮りました。」

「!」

「何と仰っるつもりだったんですか?」

 

「......私は、遊びで音楽やってない。夢があるんだ。...それだけ。」

 

「......そうでしたか。」

学得はハチミツをかける手を一度止める。

 

「まぁ、貴女の曲を低質と評したのは取り消しませんが、色々言い過ぎました。」

「...あっそ。」

 

「...さっ、学得くん。パンケーキ食べちゃって。感想聞かせてよ。」

「はい。いただきます。」

 

ナイフで切り分け口へ運んだ。

 

徐々に咀嚼がゆっくりになり、嚥下。カチャンとフォークを置く。

顔に一筋の汗。

 

「ま、学得くん?」

 

「姫葉さん、これ」

 

「うますぎです。」

 

うますぎだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。