「HEY,WO-WOW!あれはおっさん♪
釣り好きのおっさん♪いつもあそこにいる♪
缶ビールも開けちゃってさ♪ゴビゴビ飲んじゃうさ♪
SAY, WO-WOW!釣り好きのおっさん♪
フィッシングおっさん、フィッシング♪
フィッシング詐欺には♪
気をつけなはれYA!〜♪」
ジャカジャン♪
「新曲、"POPING!釣り漢"でした。」
カウンター席の回転椅子から降りた弾語が、2人の観客に頭を下げる。
「歌詞の意味はあんまり分からなかったけど、なんだかアツいノリの曲だったねぇ」
姫葉が胸の前で小さく拍手。
「...ヒドいですね。」
学得は眉間をヒクつかせた。
「はあ?何がだよ。お前には私のアツいハートが感じられなかったのか?」
「言わせて貰いますが弾語さん、今の歌詞の何処から貴女のハートを汲み取れるんですか。あとビールを飲む擬音の特殊さに引っかかります。」
「細かいとこばっかいいんだよ!私はただ、心から湧き出た衝動みたいのをそのまんま言葉にしただけ!その中身を汲めないのはお前のセンスが雑魚だから。」
「仮にも客にストレート罵倒はやめて下さい。...そもそも、なんで僕まで貴女の演奏会に付き合わされてるんですか。」
弾語がもう一度、ドスンと回転椅子に座る。
「おかしいんだよ。いくらなんでも売れてなさ過ぎる、私が。何が原因なんだ?私の歌のどこが悪い?聞かせてくれよ、率直な意見をさあぁ。」
「今さっき全部言いましたよ。それで少しも聞き入れなかったでしょう。」
呆れる学得。横で姫葉が苦笑う。
「もういいですか?この後大事な予定があるので、失礼します。姫葉さん、お代ここに置いていきますね。」
「うん。また遊びに来てね〜。」
「おい待て巣在不!新曲はまだあと2つあるんだぞ!?」
弾語の制止を流し、足早に退店をした。
駅前で1人佇み、快晴の空をぼーっと眺める茎野。
その姿を見つけた学得が近づく。
「お待たせしました、茎野さん。」
「あ、学得くん!大丈夫、俺も今来たとこニコだから。」
「そうでしたか。それで、今日はどちらへ案内して頂けるのでしょう?貴方のどハマりな趣味というのも、そろそろお教え下さいませんか?」
「あーっと、ごめん学得くん。もうちょっと待って貰っていいニコかな?実はもう1人呼んでて、、、おっ!来たニコ!」
茎野の目線の先からドタドタと走り来る男。
「いやーーーーーーッ!遅れてしまいスミマセヌ、茎野氏ィーーー!!」
ダラダラと流れる汗を拭きながら息を整える。
男はチェックのシャツをズボンの内にいれ、且つメガネのガリでいる。
「久しぶりニコ、三間くん!...大丈夫ニコ?」
「いやはや、ご心配には、及びませぬよ茎野氏。拙者とした事が約束の時間ギリギリになってしまい、まったく不甲斐ない、で御座候、フニーーンッンッンwwwwww」
個性的な笑い声をあげた後、学得の方へ向き直った。
「貴殿が学得氏にございますなッ、茎野氏よりお話し伺ってるでござるよ!拙者、三間と云いますーッ。何卒ッwお見知り置きをッw」
「茎野さんのお友達ですね。よろしくお願いします。」
「このあたりのお店のことは、俺より三間くんの方が詳しいニコからね。今日は案内役も兼ねて来て貰ったニコよ!」
「あの、結局お二人は何のコミュニティ仲間なのでしょう?」
茎野と三間がニマッと笑う。
「ズバリニコっ!」
「仮面ライダーガァングファンクラブですっ!」
学得はちっっちゃくコケた。
──ここは国内でも有数の大手フィギュアショップ。店内見渡す限り、よりどりみどりなグッズが並ぶ。
「はいっ!wという訳で早速やってきましたが、やはりグッズ巡りにこちらのお店は欠かせないですぞおーーっ!」
三間の案内でドンドン奥へと進むが、その道中にも沢山のショーケースと、そこに飾られたフィギュア達がいた。
「おっ!このコーナーのフィギュアは拙者、大体持ってますねぇー!保管用と鑑賞用にそれぞれ3つずつ買ってるんで。鑑賞用が2つなんですよね!こ、こう、飾るときに違う角度で2パターンを見られるようにするんでござるよっ!ンンw」
そうこう歩くうちに、目当てのガァンググッズコーナーに辿り着く。
「さて、着きましたぞ!良い眺めですなぁ」
「おぉ!凄いラインナップニコ!最近発売されたばっかのハイクオリティガァングアクションフィギュアまであるニコよ!」
「...知りませんでした。ガァングはここまで人気になっていたんですね。」
新鮮な反応で商品に魅入る学得。
「確かこういうファングッズの製作に、ガァング自身が直接的には関わってないんだニコよね。出始めの頃に公な許可を出しただけで、後はメーカーが各々製造してるらしいニコ。」
バレない程度に学得はうんうん頷いた。
「お、流石ですな茎野氏。もうそんな情報まで知ってらっしゃるぅ!まさにガァング好きの鑑で......ややぁッ??!」
突然三間が大きな声を出す。目線は更に奥側の、ずっと向こうのコーナー。
「あ、あアレはぁッ!!拙者が延々探し求めていたプレミアムなフィギュアァー!まさかここにッ!あるなんてッッ!ィイーーーーーーッ!!」
ダッシュぐらい速度のある小走りであっという間に行ってしまった。
取り残された2人。ただ茎野はずっとショーケースの前に釘付けでいる。
「そんなにお好きなんですね。仮面ライダーガァングが。」
「......最強無敵のスーパーヒーロー、誰だって憧れるニコよ。そういう戦士を俺は子供の頃から羨ましいなと思ってたニコ。ひたすら全力で戦って、誰より強く高みにいる。それはきっと凄く開放的で、いつでも爽快なキブンに違いないニコ。」
「......貴方が思うよりヒーローは窮屈な役回りかもしれませんよ。正義という大義名分がありますし、孤高に見えても実際は余裕が無かったり。」
「そんなもんニコかなぁ?」
「そんなもんですよ。僕にも分かりませんが、ね。」
学得の携帯が鳴る。
「失礼......もしもし、クボス?...分かりました、向かいましょう。」
「茎野さん、申し訳無いですが少々席を外しますね。」
「あ、うん。オッケーニコ。」
店外へ出た学得は、装着せずベルトのバックルを叩いた。
『デバン、ガング!』
出現したマッハカラスに飛び乗り、早急に"裂け目"の場所へ向かう。
学得が離れてから暫くの事、店内をウロウロしていた茎野は音を聞いた。少し遠くの方でズシンと何かが地に落ちた様な音だ。
気になって外に出る。そうしていると、今まで逸れていた三間が歩いてくるのが見えた。
「三間くん。そこにいたんだニコね。」
「よーうやく1人になってくれましたなあ、茎野氏。」
「変身。」
三間がこめかみからカシャリと飛び出たボタンを押し、全身を光が包む。
「仮面ライダーマボット、変身完了。」
見覚えのあるその姿に、茎野は目を見開いた。