とある基地のほのぼの生活   作:日本国民

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どうも、もう秋真っ盛りなのに7月の話です。
ではどうぞ!


暇人

2023年7月9日午前11時1分

 

司令室

 

「さて、やることが本当になくなっちゃったよ……」

 

「明日分の仕事とかは?」

 

「うーん…明日分の仕事は明日配られるんだよね。伊勢、三河湾の防衛計画についての書類も終わらせたし……」

 

僕は書類をトントンと机に叩いてまとめる。

 

「なら久しぶりに広間に行きませんか?」

 

「お、いいね。じゃあそうしようか。」

 

僕たちは司令室を後にして広間に向かう。

 

「やっぱり今日は賑やかだな…」

 

「外が雨ですからね。」

 

今日は天気が悪いせいか、広間は多くの娘で溢れかえっていた。

 

『今月5日、深海棲艦出現により禁止されていた遠洋漁業が再開されました。』

 

備え付けのテレビからはニュースが流されている。

 

「使ってない机ありますかね?」

 

「一脚ぐらいはあると思うけど……あ、あそこ空いてない?」

 

僕は周囲を見渡して机を探す。何とか一脚空いていたようだ。僕たちはその机に向かい合わせとなって座る。

 

「ていうかすごい今更なこと言いますけど……主要基地の一司令官がこんなところで休んでて良いんでしょうか?」

 

「いや…まぁ大丈夫なんじゃない?規則も軍隊とは思えないぐらいに緩いし。」

 

「監査入っても知りませんよ?」

 

「その時は道連れだよ?」

 

「道連れって……」

 

確かに苅田君の言うとおりではある。実際戦争中に一佐がこんな所で油を売ってる暇などないだろう。

 

「そういえば最近アニメとか観てないね。」

 

「あー、電さんに止められましたから。」

 

「だけどそれって二ヶ月前だよね?流石に時効でしょ。それに夜だけだったはずだし。」

 

「それも…そうですか。」

 

「司令室に取りに行ってくるね。」

 

僕はタブレットを取りに行くために立ち上がって広間から出る。

 

「すみません、お願いします。」

 

数分して司令室に着いた。

 

「誰かいる?」

 

ドアをコンコンと叩いて中に人がいないかを確認する。返事はないのでいないようだ。

 

「えっとタブレットは……」

 

僕は机の引き出しを出して探す。

 

「あ、あった。」

 

タブレットを見つけると司令室を出た。

 

「ただいま。」

 

「あ、ありがとうございます。」

 

戻るとタブレットを苅田君に渡す。」

 

「何を見るの?」

 

「うーん……」

 

「特に決めてないのならこれを見てもいい?」

 

僕が指を指したのは推しのアイドルの子供に転生した医者が復讐をしていくというアニメである。(かなり端折った)大ヒットしていたこともあり一度は見たいと思っていた一作だ。

 

「これですか。かなりのヒットでしたよね。」

 

「そうそう、うちの基地でもみんな見てたよ。」

 

「じゃあ松島さん内容全部知ってるんじゃ……?」

 

「いや?あまり知らないよ。」

 

一時期はみんな広間に集まって見てたが僕はその様子を遠目に何度か見ただけであり、内容は全然知らない。

 

「そうなのですね。」

 

「よし、じゃあ見ようか。」

 

「とりあえず昼まで見ましょう。」

 

見ること約2時間。いつの間にか正午を回っていた。

 

「もう昼時ですね。」

 

「あ、本当だ。」

 

「食べに行きましょうか。」

 

僕たちは立ち上がり食堂へ向かう。

 

「それにしても、まさか一話目であんな急展開があるなんて…」

 

「ですね。僕も初見の時はびっくりしましたよ。」

 

食堂内に入るとすぐに定食を頼んで席に座る。苅田君も隣に座った。

 

「……疲れた…」

 

「苅田君がそんなこと言うなんて珍しい。」

 

「あ、聞こえてましたか。電気が半分しかついていないところを通ってきたんですから…」

 

「下りの時暁並みに騒いでたよね……もしかして暗所か閉所恐怖症?」

 

僕がそう言うと苅田君は少し考えてから首を縦に振る。

 

「多分……ですけど非常に軽い暗所恐怖症です。」

 

「非常に軽い?なんで?」

 

「怖い……というのはその通りなんですけど…動悸とか、病的な症状は出ないんですよね。どちらかといえば子供の怖がりに近いものかと。」

 

「そうなんだね。」

 

僕は苅田君の珍しい一面を知ったところで通知が鳴ったスマホに目を落とす。

 

「あ、電からメール。」

 

「メール?もしかして携帯を持たせているんですか?」

 

「うん、一応支給品としてね。勿論ゲームとかはできない仕様だよ。」

 

「それでもメールできるのならだいぶ緩いですけどね…」

 

僕は苅田君の話に少しだけ笑うと内容を読む。新しい書類が来たとのことだ。

 

「名崎二将かな……面倒な事じゃないといいけど…」

 

「仕事ですか?」

 

「うん。」

 

僕は不安に思いながら定食をとりに受取口に向かった。

 

食べ終わり返却口に返すと即座に司令室に行く。書類確認のためだ。

 

「書類っていうのは……」

 

僕は机に置かれた書類を確認する。どうやら新たに配備される援護艦の設計図の作成をうちの基地で行ってほしいとのことだ。とりあえずギリギリの書類ではなかったことに僕は安堵した。

 

「内訳が、いしかり型1隻、ろっこう型2隻、艦名まで決まってるのか。」

 

「横須賀や呉に言った方が絶対良いのに……なんで名古屋に…」

 

僕は少々愚痴をこぼしながら詳細を確認する。

 

「とにかくこれは明日あたりに工廠に持って行くとして、もう一個の書類は…」

 

僕は書類を机の端に置くともう一枚の方の確認を行う。こちらは次の名古屋港発の船の護衛についての書類だった。

 

「こちらは……12日か、あとで2人も交えて計画するしかないからとりあえず保留だな。」

 

僕はそれを机の真ん中に置いて司令室を出る。一応見回りだ。まぁ本当は建前でやることが無くなって基地内を散歩しているだけだが…

 

「あ。」

 

僕はとある部屋の前で足を止める。その部屋は資料室で、東海の作戦報告書や人員についてなどの資料がまとめて保管されている。

 

「失礼します。」

 

僕はノックをして入る。ここに入るのはいつ振りだろうか。

 

「あ、司令官。」

 

「加賀か、何か探しに来たの?」

 

「はい、先月の防空戦の報告書を探しに。」

 

「防空戦?志摩沖のか。」

 

先月29日、志摩半島沖に多数の敵機が出現、志摩や南勢を燃やそうとしたのだろうが、結果は鳥羽と名古屋の合同艦隊と伊勢艦警基地の対空砲により全機撃墜という結果だった。

 

「ちなみになぜか聞いてもいい?」

 

「ええ。下田の知り合いの娘から敵機が来たっていう話を聞いたので、確かこっちでもあったな、と思いまして。」

 

「関東沖でも防空戦があったんだね。」

 

仙台と南鳥島のレーダーは機能しているのかと考えながらも加賀の話を聞いた。

 

「そちらは?」

 

「ん?ああ、暇になっちゃったから散歩がてらここにね。」

 

「そうなのですね。」

 

加賀はそう言うと手に持っていた報告書を元の本棚にしまい、では私はこれでと言って資料室を出て行った。

 

「さて、何を見るか……」

 

僕は本棚を少しずつ見ていく。あまり気にしてはいなかったがかなりの量の報告書があることに気づき、暇を潰すのにもってこいだなと思った。

 

そしてとある書類に目を留める。

 

「これは……紀伊沖海戦の報告書か。」

 

2018年、戦争が最も激化した時の海戦だった。戦後日本の三大海戦の一つに数えられ、100を超える敵艦との大海戦であり、こちらにも死者が出るほどだった。

 

「東海で唯一死者の出た戦い……」

 

僕は報告書を読みながら1人呟いた。

 

「それにしても、ここなら退屈しないな。図書館にでもいるみたいだ。」

 

資料室を図書館扱いするのは後にも先にも僕だけだろう。そんなことを考えながらまた本棚にある報告書の数々を眺めていく。

 

1時間ほど資料を読むと司令室を出る。散歩を再開して少しすると本棟の端に着いた。

 

「上か下か……」

 

「どちらにしようかな…」

 

僕は数え歌で上か下かを決めた。かなり子供っぽい決め方な気もするが気にしない。

 

「神様の言うと「なにをしているんです…?」…ひゃぁ!」

 

後ろから声をかけられたせいでかなり情けない声を出してしまった。

 

「しっ、不知火!?急に驚かさないでよ!」

 

更にその反動で自分自身でも驚くぐらいの大きい声が出た。この二つの奇行のせいで声をかけた本人である不知火は怪訝そうな顔でこちらを見る。

 

「驚かしたつもりはないのですが……それで、こんなとこで一体何を?数え歌で何かを決めていたようでしたけど…」

 

「あはは…どっち行くか迷ってね…数え歌で決めてたんだ。」

 

理由を答えるが不知火は未だに怪訝そうな顔をしている。なんなら引いているようにすら見える。

 

「は、はぁ……それなら仕事を手伝っていただけますか?」

 

「仕事?結構暇してたしいいよ。」

 

僕は不知火に案内されて三階の武器庫に着く。

 

「ここから模擬弾を一階に運びます。」

 

「OK。えっと台車はどこに……」

 

僕は辺りを見回して台車を見つけるとそれに模擬弾を載せる。

 

「よし、じゃあエレベーターに持ってくね。」

 

「はい、ありがとうございます。」

 

僕は三階中央にある運搬用エレベーターの中に台車を入れるとボタンを押して一階に運ぶ。

 

「よし、じゃあ一階に行くか。」

 

さっき使った階段を使って一階に降りると不知火がエレベーター前で待っていた。

 

「ごめん。それで模擬弾はどこに持っていけばいいの?」

 

僕が不知火に聞くと不知火は指を指す。

 

「あそこのあたりに置いてとのことです。」

 

「台車ごと置いておくか。」

 

僕は一階の廊下に模擬弾を台車ごと置いておく。いくら模擬弾とはいえこんなものをここに置いて良いのだろうか……

 

「よし、これで終わりだね。」

 

「はい、ありがとうございました。」

 

僕は不知火と別れると司令室に戻る。

 

「ふぅ……ただいま。」

 

「あ、おかえりなさい。」

 

「おかえりなさいなのです。」

 

司令室に戻ると2人が居た。僕は書類のことを思い出し、2人に言う。

 

「そういえば、12日発の船の護衛についての話が来てるんだけど…」

 

「今丁度揃ってるし編成等を立てておかない?」

 

「そうですね。今のうちに済ませましょう。」

 

僕たちは編成を考える。もうこの護衛の計画も慣れたものだ。

 

編成は30分足らずで組み終わる。だが組んで終了…ではなく書類の作成も必要だ。この書類は名古屋港管理組合や船の運航会社にも提出しなければならないためかなり重要だ。

 

「とりあえずはこれぐらいで良いか。」

 

書類を作成し終わると自身の体を背もたれに預ける。

 

「やることないなぁ…外は雨だし…もういっそ寝るか。」

 

「自室に…いや面倒だな。」

 

僕は自室に戻ろうとするが諦め、椅子に座ったまま眠ろうと目を瞑る。

 

------

 

「う……今…何時だ?」

 

僕は腕時計を見る。長針は7を短針は8を指している。

 

「結構寝てたな…」

 

どうやらあれから4時間ほど寝てたらしい。椅子で寝たせいか体が少し疲れているように感じる。

 

「やっぱり自室で仮眠を取れば良かったな……」

 

「あ、司令官さん起きたのですね。」

 

「うん、寝てる間に何かあったかな?」

 

「いえ、書類とかも来ていませんし、特にトラブルもなかったのです。」

 

僕はそれを聞くと「何もなかったようで安心したよ。」と言って別れる。苅田君が来てから電と話せてない気がする。今度一緒にご飯でも行こうかな……

 

「うーん……うわっ!」

 

少し考え事をしながら歩いていると角で人とぶつかった。僕はその反動で転ぶ。

 

「すまねぇ…って司令官か?」

 

「いてて…天龍か?ぶつかってごめん。怪我とかない?」

 

「いや、大丈夫だぜ。こっちこそすまなかったな。」

 

「そう?なら良いけど。」

 

その割には痛そうに腹を擦ってるが本当に大丈夫なのだろうか…

 

「やっと追いついた……」

 

天龍が立ち上がろうとすると天龍が来た方向から龍田が走ってきた。

 

「天龍ちゃん?いくら夕ご飯が楽しみだからって走ったら…「バ、バカ!それを言うな!」

 

龍田の説教を天龍が無理やり止める。どうやら向こうも走ってたらしい。

 

「って司令官?」

 

すると龍田がこちらに気づく。

 

「大丈夫ですか?天龍ちゃんが何かしら迷惑をかけてたりしてないですか〜?」

 

「迷惑とかはかけられてないよ?」

 

「そうですか〜。」

 

「じゃあそろそろ行くね。」

 

僕は食堂に向かう。食堂に入るといつも通りみんなが楽しくご飯を食べている。

 

僕は注文をするといつもの席に座る。

 

「そういえば少し書類が残ってたっけ…」

 

「どうかしたのですか?」

 

「ん?電。」

 

いつのまにか隣に電が座っていた。

 

「食べ終わったら残った書類でも処理しようかなってね。」

 

「それなら後で私もするのです。」

 

「ありがとう。それなら処理し終わったら一緒にお茶でもしようか。」

 

10分程度で食べ終わると2人で司令室に戻る。

 

「さて、残ってるのは……」

 

「これなのです。」

 

電が書類を渡してくれる。

 

「ありがとう。援護艦の活動報告書か…しまんとは僕がやるからろっこうは電がお願い。」

 

「分かったのです。」

 

僕たちは黙々と報告書を作る。僕も電もこの手の書類作成は二桁は行ってる。そのおかげかすぐに終わった。

 

「じゃあ私がお茶を取ってくるのです。」

 

「ごめんお願い。」

 

電は数分するとお茶を淹れて戻ってきた。

 

「なんか、司令官さんと2人でお茶を飲むの久しぶりなのです。」

 

「確かに。苅田君が来てからは3人で飲むのがほとんどだったからね。」

 

僕はお茶を一口飲む。電も同じく飲んだ。

 

「なんか、楽しくなったよね。」

 

「なのです。苅田さんが来てから騒がしくなったのです。」

 

「電って時々言葉がすっごい鋭くなるよね。」

 

僕がそう言うと電は頭に?が浮かぶ。まさか自覚なしか?

 

「あれもしかして自覚ない?」

 

「なのです……」

 

「側から見たら半分ぷらずまなような気も……ごめんなんでもない。」

 

電は普通は敵にすら情けをかけるほど優しく穏やかな人物だが、ごく稀に非常に毒舌な電が建造されることがあるらしい。この電は司令官の間では「ぷらずま」と呼ばれている。

 

「そんなに毒舌ですか?」

 

「うーん……毒舌とはまた違う気がするけど…まぁうん。」

 

「気をつけないとなのです……」

 

「そこまで気にしなくてもいいと思うけどね。」

 

まぁ半分ぷらずまと言いかけたもののうちの電は心優しい。少なくともぷらずまと言われるほどでもないだろう。

 

「明日は晴れるかな?」

 

「どうでしょう?ここ2日雨ですから明日も雨だと思うのです。」

 

「そっか……」

 

「やっぱり嫌いなのです?」

 

「うん、前にも言ったけどどうしても憂鬱な気持ちになっちゃうからね。」

 

僕は窓の外の暗闇を見ると少しため息をつく。

 

「ため息は良くないのです。」

 

「ん、そうだね。」

 

「あの…司令官さん。」

 

「…?どうしたの?」

 

電が少し恥ずかしそうに声をかける。

 

「また来週もこの時間に2人でお茶を飲みたいのです。」

 

「僕も今度またしたいと思ってたし、良いよ。なんなら毎週水曜はお茶会をしない?」

 

「それすごくいいと思うのです!」

 

ということでこの日から毎週水曜は僕と電のお茶会をすることになった。なぜかお茶会をしているときは苅田君が入ってこないがなぜだろう?

 

2023年7月9日午後20時29分




はい、終わりです。次回は寒くなってきたのに季節外れの真夏の話です。暖炉代わりに使ってみるのもいいかもしれません。司令室は冷房ガンガンですから意味ないかもしれないですけど……
ではまた次回!
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