あと話の構成を一話完結に変えました。
ではどうぞ!
2023年8月13日午前10時48分
「暑い………」
僕は暑さの猛威にバテそうになっていた。
「本当に暑いのです…冷房もあまり効いてないし…」
電がそう言いながら温度計を見る。温度は27度……一応これでも冷房は壊れてないらしい。
「なんでこうもジメジメするんでしょうね……」
名古屋の暑さは体にまとわりついてくる。視察等から帰ってきた時も一番初めに感じたのは非常に不快な暑さだ。まぁ全てはこの地形が悪いのだが…
「夏は死ぬほど暑いのに冬は極寒だからね……本当に嫌だよ。」
「本当そうですよね……あ、また汗が書類に落ちやがった…」
そう呟く苅田君が持っていた書類には既に5粒ほどの汗が落ちた形跡があった。
『今日の名古屋の最高気温は37度、今夏最高レベルの暑さとなる見込みです。』
テレビからはニュースが流れており、またもや『今夏最高気温』とか夏お決まりの台詞を言っている。
「もうこの台詞親の声より聞いたよ…」
「それはもっと親の声を聞くべきなのです。」
僕がこれまたお決まりの台詞を吐くと電のツッコミが入る。ちなみにこのやりとりももう今年10回目だ。
「はぁ…こんな暑さなら水にでも入りたいですね……」
「じゃあ入る?」
「……え?」
苅田君はなぜか困惑している。目の前に水があるのに何をびっくりしているんだか……
「司令官さん何を言っているのです?」
電まで同じ反応だ……
「いやだって…目の前にあるじゃないか、伊勢湾が。」
「は?」
苅田君にガチトーンで「は?」と言われた……いやなんでさ、目の前に海という広大なプールのようなものがあるのだから飛び込めばいいのに。
「司令官さん壊れました?」
「いや……暑さにやられたのか?幾ら何でも伊勢湾に飛び込めは……」
「あんな工業廃水まみれの汚い海に入るなんて狂気の沙汰じゃないのです。」
「いやいつもその汚い海の上に浮かんでるでしょ。あとそんなこと言うな怒られる。」
苅田君と電は小声で何かを話している。
「とりあえず、もう少し冷房の効いてる部屋に移るべきなのです。」
「そうだな、あれじゃあ流石に……」
話し終えたのか2人が僕の方を向く。
「司令官さん。涼しい部屋に移動しませんか?」
「え?別にここでも……「はいはい、行きましょうね。」……あっ、ちょっ…」
僕は苅田君に押されて司令室よりも冷房の効いてる応接室に移動する。普通は上官と接するための部屋だが、今は避暑地と化しており、多数の艦娘や幹部がいた。
「うわ…やっぱり満員か…」
「すごい人数なのです…」
「結構涼しいね。流石応接室…」
中に入ると近くのパイプ椅子に座る。
「あれ?司令。こんなところでどうかしたの?」
涼んでいた陽炎が物珍しそうに寄ってくる。そんなここに来るの稀だったか?
「2人に強制れ「司令官が暑さで頭がおかしくなったので連れてきたのです。」
僕が答えようとするがそれに被さるようにして電が答える。
「え?だけど司令普通そうだけど?」
「それが……俺が『プールにでも入りたいな』って言ったら『目の前に伊勢湾あるんだから入ってくればいいのに』って結構マジな目で言ってきたんですよね…」
「伊勢湾にって……そりゃないわ。」
苅田君が答えると陽炎が半分引いた目でこちらを見てくる。そんな目で見ないでくれ……死んでしまう。
「いやだって……その時暑くておかしかなってたし…ここにプールないし…」
「あれ?だけどプールはあったような…」
「「「え?」」」
陽炎の衝撃発言に僕たち3人は驚く。まさか自衛隊基地にプールがあるわけ……
「あ、私それ知ってるかもです!」
近くにいた高波が話に入る。
「え?本当にあるの?」
「確か堀川の河口近くにあったかもです。」
「そんなところにプールなんてあったのですか?」
電はこっちを向いて聞いてくる。だから僕は知らないって……
「それ、七不思議的なやつじゃないんですか?基地司令官である松島さんでさえ知らないですから…」
「だけど、私たちの間じゃあ結構有名な話よ?見たって娘までいるくらいだし。」
「一回探してみるのもいいかもです!」
「……探してみますか?」
「うん、ちょっと探してみようか。」
正直こんな暑い中外に出るなんて真っ平ごめんだが、見つかれば娯楽にもなるし、何より涼めるようになる。
そうして僕たちは外に出たが……
「う……暑…」
「アスファルトからの照り返しが特にきついのです……」
外に出た途端とてつもない熱気に包まれる。20分持つか持たないかレベルだ。
「これでも潮風あるからまだマシか……」
「それでも30分持たないよ……さっさと見つけよう…」
僕たちはプールがあると言われている堀川の河口付近に向かう。
「さてもうすぐそこは堀川だけど……」
「プールらしきものは……見えませんね。」
辺りを見渡すがそれらしきものは見えない。
「やっぱり見間違えなのです?」
「見てるって娘は多いらしいけどやっぱり都市伝説なのかな…」
「一回戻ろうか。」
「苅田く「2人ともー!」
苅田君を呼んで戻ろうとしたとき、苅田君がこっちを呼んでくる。
「なんなのです?」
「あれ、プールっぽくないですか?」
苅田君は設備に囲まれた通路の奥を指す。
「あっちって倉庫だったと思うけど…」
「じゃなくて……あの扉です。」
苅田君が指した白い扉の前に行ってみる。見た感じかなり薄そうだ。
「この扉……鍵かかってるんじゃないのですか?」
「だよね……だけど一応…」
僕は白い扉のドアノブをひねる。
「って開いたんだけど……」
「基地としてどうなんですかそれ……」
苅田君にツッコミを入れられながら中に入る。
「さて中は……って」
「どうしたんです?ってこれって……」
「もしかして……」
「「「プール!?」」」
白い扉の奥は探していたプールであった。
「まさか本当にあったとは……」
「うん、本当びっくりだけど……」
「ちょっと……汚いのです……」
しかし何年も放置されてたせいかプールサイドの地面は少し剥がれ、雑草が生えており、プール内には茶色の濁った水が溜まっていた。
「まずは補修から……だね。」
「これ、明石さんに頼むのです?」
「いや流石にきついんじゃ…」
「妖精さんがいるからなんとかなると思うけどね……とりあえずこの現状を見てもらうしかないな。」
「なら呼んでくるのです。」
「ごめんお願い。」
10分後、電が明石を連れてきた。
「いや、本当にあるんですね……プール。」
「うん…それで、このプールの改修をお願いしてもいいかな?」
僕の依頼を聞くと難しい顔をする。
「できるにはできると思いますが……妖精さんがいるとしても結構かかりますね……」
「なら、全員でやってみますか?」
「全員か……」
「みんなでやったら面白いと思うのです。」
電も苅田君の提案に賛同する。僕も賛成だ。だけど……
「プール見つけたってどうやって伝えよう……」
プールを見つけたってどうやって全員に伝えれば……
「別に普通に放送か全員集めて言えば解決ですよね?」
「いや……5年間見つかっていなかったプールだよ?いきなり伝えると混乱を招くかな…って。」
「別に当分の話題がプールになること以外は大丈夫だと思うのです。」
「混乱なんて招きませんよ。早く伝えましょう。」
「……そうだね、じゃあちょっと伝えに行ってくるよ。」
僕は一度プールを出て本棟の放送室に向かった。
「……やっぱり心配だな…」
ここまで心配するのは僕の考えすぎだろうか?
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「ここに入るのは久しぶりだな……てか暑い…」
僕は本棟内の放送室に入る。中はずっと密室だったせいか蒸し風呂状態だ。
『司令官から全艦娘宛、昼食後、13時にガーデン埠頭第三堤防前に集合してください。なお、集合の際はジャージの着用をお願いします。』
放送を終えるとすぐにプール前に戻る。一刻も早くこの部屋から出たい……
「あ、松島さんお疲れ様です。」
「おかえりなさいなのです…大丈夫ですか?」
「え?別になんともないけど。」
「松島さんすごい汗かいてますよ?」
僕は耳の上を指で触ってみる。指には大量の水分がついた。
「うわ本当だ…」
「これタオルなのです。」
「あ、ありがとう。」
僕は貰ったタオルで汗を拭う。
「放送室から急いで来たんですか?」
「いや、放送室が蒸し風呂でさ……」
「あそこってエアコンないのです?」
「あるけど……切ってるとやっぱりね…」
「放送室のエアコン、出力の増強してみます?」
明石が僕の後ろから声をかけてくる。いきなり出てくるから少し驚いた。
「びっくりしたなぁ……んで、増強って?」
「簡単な話です。放送室の回路を少しいじってエアコンに電流が流れやすくするんです。」
「だけどそれ、エアコンに負荷がかかって壊れませんか?」
苅田君が明石に質問する。
「もちろんエアコンも耐えれるように改造はしますよ。壊れて使えなくなれば元も子もありませんからね。」
「じゃあ、申し訳ないけど頼んでいいかな。あそこは作戦の指示を出す部屋でもあるから。」
「分かりました。」
僕は明石に依頼する。最近明石に色々なことを頼みすぎてる気もする。今月の給料上げとくか。
「とりあえず、集合は1時だから一回戻ろう。」
「分かったのです。」
「分かりました。明石さんは?」
「私はプールの状態を詳しく調べるので。」
「了解。じゃあ戻ろうか。」
僕たちはプールを後にして本棟に戻った。
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午後1時00分
「全員集合したのです。」
点呼をし終えたジャージ姿の電が僕を呼んでくる。
「点呼ありがとう。」
僕は電に礼を言うとみんなの前に立つ。
「こんにちは、突然の集合ごめん。」
僕は突然の集合に断りを入れると本題に入る。
「さて、集合のわけだけど、プールが見つかった。」
僕の一言で一気に騒めく。僕はそれを無視して続ける。
「場所は僕の後ろ、この壁の奥ぐらいだね。で、今日の午後はプールの改修、掃除を行う。」
「何年も放置されてたからか、プールサイドは剥がれてて、緑の水が溜まってる状態なんだ。それで、数人では荷が重い。だから、今ここにいる全員で協力して行う。」
「ただ人員過剰かもしれないから、交代でお願い。」
「とりあえず、今から2時間は……右から三列目までお願い。そこからは四から六、七から九というふうに交代するから、自分の列を覚えておくこと。」
「要件は以上。集合ありがとうね。それでは解散。」
僕がそういうと右の三列を除いてみんなが本棟に戻っていく。
「では指示を出すのです。まず一列目…高雄さんから……」
電が紙を見ながら指示を出し、指示を受けた娘から移動していく。2分後には全員に指示を出し終えていた。
「じゃあ俺たちもやりますか。」
「そうだね。」
僕たちも中に入る。中では各々が指示されたエリアで改修を始めている。僕たちはプールサイドの改修の手伝いを始めた。
「プールサイドはまだ数年しか経ってないので雑草を抜くのと、防水のシートを敷くのをお願いします。」
「結構生えてますねこれ…」
「うん……しかもかなり手強い…」
雑草を引っこ抜こうとするが、根がかなり張っていて抜きづらい。
「ちょっと司令官貸して。」
「あ、ありがとう。」
「多分ここやるよりもプールの掃除を手伝ってきた方がいいよ?」
そして戦力外通告を受ける。まぁ非力な人間は居ても足手纏いだよね……これでも自衛官だから鍛えてんだけど…
プールの方を見ると、バルブを開けて茶色の水を抜け終え、デッキブラシを使って槽の掃除を行っていた。
僕はプールサイドにあった掃除道具入れからデッキブラシを二つ取る。
「苅田君、これ。」
「ありがとうございます。」
苅田君にデッキブラシを渡すとプール端の梯子から下に降りる。水がないせいかすごく深く見える。
降りると少し移動して水垢などを薬品を使って取っていく。
「全然取れないな……」
数年間放置されてたせいで中々取れない。それに対して他のみんなや苅田君はどんどん取っていく。僕が非力なだけか?
「あ、やりましょうか?」
「ごめん、お願い。」
僕がお願いすると苅田君はすぐに取る。本当になぜ……
「…松島さんのデッキブラシ、壊れてませんか?」
「えっ?本当に?」
「ほら、ブラシの部分が曲がってます。」
見るとブラシの部分がハの字に曲がっていた。
「とりあえず交換します。新しいのを持ってくるので俺のを使ってください。」
「ありがとう。」
僕は苅田君が使ってたもので取り始める。さっきと違ってどんどん取れていく。
1分ぐらいすると苅田君が戻ってくる。
「松島さんそれ使ってください。」
「え?いいの?」
「交換するの面倒ですしね。」
そんなこんなで2時間近くかけて槽の掃除を終える。それと同時に交代の時間がやってくる。僕たちも別の幹部に引き継ぐと休憩に入る。
「ふぅ、プールの掃除って結構疲れますね。」
「そうだね。」
「お疲れ様なのです。」
「水?ありがとう。」
苅田君と話していると電が水を持ってきた。僕はそれを受け取る。かなり冷たくてありがたい。
「この暑い中で冷たい水は犯罪的だね。」
「ですね〜、すごく美味しい。」
「俺らはこれで掃除終了ですか?」
「うん、これで終わりだよ。あとは他の人に任せるだけ。」
「そうなんですね。プールが楽しみです。」
僕たちは冷たい水を飲みながらそんなことを話す。
4日後、プールの掃除が完了してプール開きとなった。みんな楽しんでいるようで良かったが……苅田君や一部の幹部が顔を赤らめていた。
ということでこれで終わりです。12月に入ったってマジですか……次はハロウィンのを上げたいという願望はありますが実現できるかは分かりません。もう少し投稿頻度を上げていく……はずなのでどうかお許しを……
ではまた次回!