とある基地のほのぼの生活   作:日本国民

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今更ながら新年、あけましておめでとうございます。本年も本作品をよろしくお願いいたします。

ではどうぞ!


ハロウィン

2023年10月31日午前10時19分

 

「………よいしょっと……」

 

僕は自室から大量のお菓子が入った箱を司令室のデスクの下に置く。

 

「なんですか?これ。」

 

苅田君が箱を見て聞いてくる。

 

「何って、お菓子だよ。」

 

「なぜこんなに?」

 

「いやだって今日ってハロウィンじゃん?」

 

「そうですね……なるほど。」

 

苅田君は合点がいったようだった。

 

「駆逐艦とか、軽巡の子が仮装して来るからね。そのためだよ。」

 

「てかこれ……自腹ですか?」

 

「え?うん。」

 

「マジですか……一体何万したんですか?」

 

僕は自室に向かうとレシートを取って苅田君に見せる。

 

「えっと……2万4000円……高すぎませんか?」

 

苅田君は見たことを後悔したような感じだった。こんな金額でこの反応だったらクリスマスでは気絶かな?

 

「こんな金額で高いとかいってたらダメだよ。二ヶ月後にはもっと金をかけなきゃいけないんだから。」

 

「クリスマスプレゼントですか?」

 

「そうそう。151人分のプレゼントだからね……かなりするよ。」

 

「そうですか……僕の方からも金出しますね……」

 

「そうしてくれると助かるな。」

 

僕たちはそんな話をしながらいたずらっ子が来るのを待つ。

 

「というか、今日は仕事しなくていいんですか?」

 

苅田君が思い出したように聞く。

 

「ハロウィンは基本仕事しないかなぁ…大抵次の日に済ませてるからね。」

 

「そうでしたか。」

 

デジタル時計を見ると10時半を過ぎていた。そろそろ誰か来る頃合いだろう。

 

コンコン

 

ドアをノックする音が聞こえる。予想通りだ。

 

「苅田君。開けてくれない?」

 

「あ、はい。」

 

そうして苅田君がドアを開ける。

 

「がるる〜、トリックオアトリート!お菓子くれなきゃいたずらするっぽい!」

 

声と口調から一番手は夕立らしい。

 

「……ちょっといたずらされたら困ってしまいますね……ここはお菓子でどうか………」

 

苅田君はそう言うと僕の方に目を向ける。その目は助けを求める目だった。

 

「はい、夕立。お菓子だよ。」

 

「わーい!やったっぽい!」

 

お菓子をもらった夕立は廊下を走って奥の方に消えていった。

 

「こう言うの初めてなので要領が分かりません……」

 

「あはは、これからドアを開けるのは僕がやるね。」

 

「さて、次は誰が来るかなぁ……」

 

僕は次誰がどんな仮装をして来るかを想像する。

 

「今日のところはこれの繰り返しですか?」

 

「そうだね。仮装をした娘が来て、お菓子を配る。そんな感じかな。」

 

「なるほど。」

 

コンコン

 

またノックの音が聞こえた。誰かがいたずらに来たようだ。

 

「はーい。」

 

僕は返事をしてドアの前に向かう。さて、今度は誰かな……

 

「司令、お菓子をいただけると聞いたので「せめて仮装して!あと余りなら後であげるから!」

 

僕は仮装してない赤城が見えると直ちにドアを閉める。このままだとお菓子が食い尽くされてしまう……

 

「恐ろしく早い決断ですね……」

 

「毎年のように来るからね……もう慣れっこだよ。」

 

「なんか……大変ですね。」

 

「あはは、そうでもないよ?」

 

僕はそう言うと窓の方に向かい、大江地区の方を見る。今日は雲が少ないおかげでよく見える。

 

「………今年は大江からも来てくれると嬉しいな……」

 

「世界連合海軍の基地があるんでしたよね。」

 

「そうそう、船使わないといけないからあまり来ないんだよね……」

 

「今日は晴れですから来てくれるかもしれませんね。」

 

「そうだね……」

 

コンコン

 

ドアをノックする音が聞こえる。今度こそは仮装してるかな?

 

「はーい。」

 

ドアを開けて目の前にいたのは……

 

「ガオォォォ……」

 

こっちを食おうとしている熊だった。

 

「う、うわぁぁぁぁぁぁ!?」

 

「ちょっ、松島さん!?どうした……ってくまぁぁぁぁぁぁ!?」

 

「ふっふっふ……成功だクマ。」

 

「その声って……」

 

そして熊は被り物と見られる物を取る。中から出てきたのは球磨だった。

 

「はぁ……なんだ球磨か……」

 

「え?球磨さん!?え!?」

 

僕は安堵のため息をつく。苅田君は未だ混乱している。大丈夫かな…腰抜かしてないといいけど。

 

「ちょっとリアルすぎないかな……」

 

「今年は力を入れたクマ。」

 

「力を入れすぎだよ。すごいリアルだったし……それで…はい、お菓子だよ。」

 

「ありがとうクマ。」

 

僕はデスクの下からお菓子を取り出し、球磨に渡す。

 

「あと……補佐官はいつまで床に転がってるクマ?」

 

「苅田君?おーい?」

 

苅田君は混乱のしすぎか、安心したのか硬直していた。

 

「苅田君ー?生きてるー?」

 

「………はっ!?」

 

球磨が司令室を出て少しすると苅田君は意識を取り戻した。

 

「大丈夫?」

 

「え、ええ……いきなりの熊に驚いてしまって……」

 

「とりあえず、生きてるようで良かったよ。」

 

「もしかして、ああいうの多いですか?」

 

「うん?まあね。だけどあそこまでは中々ないかな。」

 

僕がそう答えると苅田君は緊張が解けたのかため息をつく。

 

「よし、これ以上怖がらないぞ……」

 

「あ、それフラグ?」

 

「違います!」

 

苅田君は僕のからかいに少し大きな声で返した。

 

「そういえば電さんは?朝から見かけませんが……」

 

「電なら今頃仮装の準備でもしているんじゃないかな?ハロウィンの日は基本ここに来ないよ。」

 

「そうでしたか。電さんはどんな仮装をして来るのでしょうね?」

 

「楽しみだね。」

 

コンコン

 

誰か来たようだ。今度は可愛い方か怖い方か……

 

「ふぅ……」

 

僕はドアの前で深呼吸をするとドアを開ける。何が来ても受けて立つ!

 

「しっ、司令官!トリックオアトリート!」

 

来たのは魔女姿の朝潮だった。良かった、怖い方じゃなかった……

 

「おお……可愛い………」

 

球磨とのギャップで思わず呟いてしまった。

 

「あ、あの……司令官……」

 

「ん?ああ……お菓子だね、ちょっと待ってて。」

 

僕はお菓子を取ると朝潮にあげる。朝潮は少し緊張しているように見えた。

 

「むちゃくちゃ硬直してましたけど何かありました?」

 

「いや……うん、すごく怖かった球磨の後のせいか……普段の千倍ぐらい可愛く見えた……」

 

「な、なるほど……」

 

コンコン

 

また誰かイタズラに来たようだ……今回は来るの早いな……

 

「え、えっと……がるる〜。」

 

今度は猫の姿をした宗谷が来た。猫のはずなのになぜか狼の鳴き声をして…

 

「えっと……それ狼じゃないかな……?」

 

「え?じゃあ、こうでしょうか……にゃーん。」

 

「うん、そっちの方が仮装に合ってるかな。」

 

ていうか、元々なんの仮装のつもりだったんだろう……

 

「もしかして誰かに仮装を作って貰った?」

 

「いえ、これは私が自分で作りました…」

 

宗谷は恥ずかしさからか少し頬を赤らめている。

 

「そうなんだね。よくできてるよ。」

 

「あ、お菓子のこと忘れてた……今持ってくるよ。」

 

そして僕がお菓子を持ってきて渡すと宗谷は帰って行った。

 

------

 

ここからは個人的に心に残った仮装を話していく。

 

午後3時6分

 

昼飯を食べ終わり、さらに十人ほどの仮装を見た後だった。

 

「いや、みなさんすごいですね……」

 

「だよね。」

 

僕と苅田君はこれまでの仮装の感想を話している。

 

コンコン

 

「あ、誰か来た。」

 

僕はドアを開ける。一番最後の怖かったやつが6時間前の球磨の仮装だったせいか、この時の僕は慢心していた。

 

「今度は誰かな……」

 

開けた時、そこに見えたのは……

 

「ああぁぁ……」

 

眼鏡をかけ、白目を剥き、頭から血を流したゾンビだった。

 

僕は即座にドアを閉め、鍵をかける。そして苅田君の方を向いた。

 

「何も見てない。僕たちは何も見なかった。いいね?」

 

「はっ……はい!」

 

苅田君はとても大きな声を出して返事をした。

 

「……ていうか、さっきのゾンビって霧島さんでは?」

 

「え?さっきのゾンビ霧島だったの!?」

 

「いや顔で気づくでしょ……」

 

苅田君は呆れた顔でこちらを見る。

 

「だって…慌ててたから……」

 

「と、とりあえずドアを開けるね…」

 

僕はドアを解錠する。そうすると霧島が入ってきた。やはりゾンビでないと分かっていても少し怖い。

 

「司令酷いです!見るなり鍵をかけるって……」

 

「ご、ごめん……ちょっと本能で……」

 

霧島は僕の前に来ると怒ってきた。決してわざとじゃないから許して欲しいな……

 

「松島さんって怖いの苦手だったりします?」

 

「結構苦手かも。ホラーとか無理だし…」

 

苅田君の問いに僕はそう答える。実際前にホラー映画をみんなで見た時は寝れなくて徹夜で仕事してたし…

 

「毎年ハロウィンはこの調子ですものね。」

 

「自衛官としてどうなんですかそれ…」

 

「……それを言うなら苅田君だって球磨の仮装驚いてたじゃん!」

 

苅田君は霧島の言葉を聞いて自分のことを棚に上げてそう言った。

 

「いやあれ球磨さんの面影がなかったですから……」

 

「まぁそれはそうだけどさ……霧島だって仮装上手で艦娘の面影ゼロだよ?」

 

「いやいや、仮装上手ですけど、霧島さんだってすぐに分かるじゃないですか。」

 

「うーん………」

 

僕は霧島をまじまじと見る。やっぱり霧島には見えないような……

 

「やっぱり見えないよ?」

 

「………」

 

「司令官……私が言うのもなんですが重症だと思いますよ。」

 

霧島にも苅田君と似たようなことを言われる。これは僕がおかしいのだろうか……?

 

------

 

午後7時24分

 

日が落ち、辺りはすっかり真っ暗だ。

 

「来てくれましたね。大江の方の人たち。」

 

「うん、やっぱり本場なだけあってすごい仮装上手だったよね。」

 

「次は誰が来ますかね?」

 

「どうだろうね?まあそれが楽しみでもあるんだけど……」

 

その時、司令室の電気が消える。

 

「あれ?電気が切れましたね……」

 

「ブレーカー落ちちゃったかな?」

 

僕は手探りで引き出しを開けると懐中電灯を取り出して点ける。

 

「あれ?何か物音が………」

 

「苅田君?どうしたの?」

 

「なんか……何かが落ちたような音が聞こえて……」

 

僕は苅田君がいた辺りに懐中電灯を向けた照らす。すると……

 

「……っ!苅田君!右!右!」

 

僕は苅田君に急いで右を向くよう伝える。

 

「右?何を大声だし……て?」

 

苅田君は右横を向く。そこには典型的な姿のお化けがいた。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

苅田君は驚いて腰を抜かす。

 

「あははははは!」

 

苅田君が腰を抜かしたところで少女の笑い声が聞こえる。

 

「その笑い声……川内?」

 

僕はその笑い声を根拠に記憶の中から誰の声かを探り当てる。

 

「当たり!いや〜司令は毎回面白い反応をしてくれるから飽きないよ。」

 

「それに今年は怖がりな補佐官さんも増えたしね!」

 

お化けの姿の川内は苅田君の方を向く。

 

「言われてるよ?」

 

「松島さんだけには言われたくないですね。」

 

「だけってなんだよだけって……」

 

苅田君今日なんか棘ないかな?

 

「それで、はい、トリックオアトリート。」

 

「OK、ちょっと待ってて。」

 

僕はデスク下のダンボールからお菓子を取り出す。

 

「はい、お菓子だよ。」

 

「ありがとう。」

 

「ところで……川内さん、一体どうやってここに?」

 

苅田君は疑問に思ったことを川内に問いかけた。

 

「ああ、そこの通気口だよ。」

 

「あそこですか……なら電気は?」

 

「この階のブレーカー落とした。」

 

なんか今回はみんな本気で驚かそうとしすぎじゃないかな……?

 

「被害大きくない?」

 

「そんなことないよ。みんなから了承は得てる。」

 

「そんな僕たちが驚くとこ見るの面白いかな……?」

 

「うん。」

 

川内は僕の疑問に即答した。3秒でも良いから悩んで欲しかったな……

 

「え、待ってください俺も面白いですか?」

 

「うん。楽しみが増えたよ。」

 

「………次回までに慣らすか……」

 

苅田君はぼそっとそんなことを呟いた。

 

「苅田君?君だけ逃げようとしないでね?」

 

「いやいや、もうこんなことされるのはごめんですからね。」

 

「逃げようとするなら給料減らすよ?」

 

「パワハラで告発したら勝てそうですね。ちょっと名崎二将に……」

 

「ごめんごめん許して。」

 

僕は必死に苅田君に許しを請いた。名崎二将に報告するのだけはやめて……

 

------

 

午後9時58分

 

「もうすぐ10時ですね。」

 

苅田君は壁掛け時計を見ながらそんなことを言った。

 

「そうだね。あと1人見たら終業ね。」

 

「電さんですか?」

 

「そうそう。」

 

僕は時計を見ながら電を待つ。正直な話、毎年のハロウィンで一番楽しみなのは電の仮装だったりする。

 

「もう6年でしたっけ?」

 

「そうだよ。試作艦だった時からだね。」

 

「艦娘の元祖、でしたよね?」

 

苅田君が思い出したように言った。

 

「うん。電がいなければ今の世界は無かったかもね。」

 

「人類の英雄ですね。」

 

「そうだねー。」

 

コンコン

 

電について話しているとドアがノックされる。

 

「はーい。」

 

僕はドアを開ける。

 

「トリックオアトリートなのです!」

 

電が悪魔の仮装をしてそう言った。今年は悪魔か。初めてだから新鮮だ。

 

「今年は悪魔なんだね。すごい似合ってるよ。」

 

「嬉しいのです。」

 

「それでお菓子だね。ちょっと待ってて。」

 

僕はお菓子を取ると電にあげる。

 

「はい。」

 

「ありがとうなのです。」

 

改めて見るとクオリティが高い。年々仮装が上手くなってきているように感じる。

 

「クオリティ高いなあ。来年も楽しみにしてるよ。」

 

「来年も仮装頑張るのです。」

 

「ちょっと俺にも見せてください。」

 

苅田君が電の仮装を見にくる。

 

「仮装上手いな。似合ってる。」

 

「ありがとうなのです。」

 

「そろそろ仕事終えようか。」

 

僕は壁掛け時計を見てそう言った。

 

「そうですね。」

 

「明日は書類仕事なのです。」

 

「言わないでよ思い出したじゃんか。」

 

電ってこういうところ鬼だよな……

 

「じゃあおやすみ。また明日。」

 

「おやすみなのです。」

 

「2人ともおやすみなさい。」

 

今日はすごい楽しかったな……僕はそんなことを考えながら自分の部屋に戻る。




ということでこれで終わりです。もう2月ですか……次回はもう少し早く出したい……ですね。

ではまた次回!
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