風紀委員の肉壁くん   作:阿良良木歴

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ちょっと書き方のお試し。
本当はもっと某情熱な奴とかプロフェッショナルな感じにしたかったけど無理だった


肉壁くんの1日

山楯イチゴの朝は早い。

目覚まし時計をかけなくても、毎朝4時半から5時の間には目を覚ましている。目覚めると体を軽く解すようにストレッチ。そのままジャージに着替え、まだ静かな街へ走り出す。元々運動は好きな方だったらしいが、キヴォトスに来てからは毎朝10kmのランニングを日課にしている。本人曰く、そうしないといざと言う時動けなくなる、との事。時間がある日は夜にも同じように走っているようで、意識の高さが伺える。

 

大体40分〜50分程で戻って来て、そこからシャワーで汗を流し、今度はゲヘナ学園の制服に着替える。制服といっても男子生徒はイチゴしかいないので、完全な特注品となっている。軍服をベースに制服らしさを感じさせるデザインで、戦闘にも耐えれるよう丈夫な素材を使っている。なお、この制服制作はゲヘナ学園風紀委員長空崎ヒナが1人で行っており、初めてこの姿でゲヘナへ行った際は大層驚かれたらしい。余談だが、イチゴが初めて袖を通した時には自室でニヤニヤしながら色んなポーズを取っていた事をここに記す。

 

着替えが終わると、食堂へ赴き朝食を食べる。といっても朝食の準備はイチゴの数少ないシャーレでの仕事の1つで、大体が前日に仕込んだ物を朝に温めて食べるといった具合だ。昨日の帰宅時間が遅かったのもあり、仕込みは不十分。冷蔵庫を覗き込み、少し考えた後、よしと声に出したイチゴは早速調理を開始する。取り出した食材は鮭に卵、それと各種野菜。どうやら一般的な朝ごはんをつくることにしたようだ。

慣れた手つきで食材を捌いていく。自他ともに認める多趣味の中に、料理の項目も当然入っていて、作れないものはないと豪語するほどだ。調理が進む程に良い匂いが漂い、眠たい頭を覚醒させてくれるようだった。

あ、イチゴ。私は卵焼きは甘いのがーー、

 

「……さっきからなにやってんの、先生」

 

 

 

***

 

 

 

じゅわぁと良い音を鳴らす卵を横目で見ながら、オレにカメラを向けている先生を見る。朝、食堂に来た時からずっと着いてきていて、ぶっちゃけ料理の邪魔だ。

 

「いやなに、君の事が各学校に知れてきていてね。どういう人物なのか、うちに貸してほしい!とか色んな意見が来ているから、人物紹介動画を作っているんだよ」

 

「料理姿はいるのか?」

 

「需要は様々だからね。無駄なもの等ひとつも無いさ」

 

「そういうもんなのか」

 

「……その他、君の日常を知りたいという意見の多さもあるんだけど」

 

「ん?なんか言った?」

 

「いやなにも」

 

卵焼きの仕上げに入った為に、少し聞き逃したが大した話でもなかったのだろう。オレも気にすることなく、朝食を作り上げテーブルに並べながら思う。確かに先生以外の外部者に興味が湧くのはわかるが、ここまでされるとは意外だ。先生も暇じゃないのに、こういった事に関しては乗り気で参加するからタチが悪い。

 

「今日もゲヘナかい?」

 

「まあな」

 

「それじゃあ続きはチナツに頼むとしよう」

 

「うげ、まだ続くのかよ……」

 

「すまないが、今日1日は覚悟しておいてくれ」

 

「はいよ」

 

そんな訳で今日1日監視される事が確定した。カメラを向けられている感覚は慣れないが、いつも通りにやるしかないだろう。

……ところでそのカメラはどこの?へぇ、ミレニアム。いい仕事してるな〜。

 

 

 

***

 

 

 

と、言うわけで先生からバトンを渡された私、火宮チナツが引き続きイチゴ君の日常に迫って行きます。ドキュメンタリーのナレーション風で、との事なので慣れないことですが僭越ながらやらせて頂きます。んんッ!

 

朝食を済ませ身支度を整えたイチゴ君はゲヘナへと向かいます。時刻は午前7時過ぎ、距離があるとはいえ早くから向かうみたいです。

 

ーーいつもこんな朝早くから向かうんですか?

 

「マジでそのノリでやるのか……。まあそうだな、道中どんなトラブルに巻き込まれるかわかんないし」

 

ーーそれは始業時間に間に合うように?

 

「そうそう。いくらゲヘナの生徒が始業時間通りに来ないのが多いって言っても、部外者で制服まで貰っちまった身だしな。ちゃんと筋は通さないと」

 

トラブルにも巻き込まれやすいしな、と語ったイチゴ君。彼の道理を重んじる考え方が、短い期間で風紀委員長の信頼を得る事が出来た要因の1つなのは間違い無さそうです。

 

そうこうしてるうちに学園に到着。ゲヘナの本当の生徒ではないイチゴ君は授業の参加が認められていないので、教室へは向かいません。

 

ーー朝は何を?

 

「校舎と学園周りの清掃。それと訓練場の整備かな」

 

聞けば1人で毎日それを行っているという。ゲヘナ学園はマンモス校の為その敷地も広大、1人で行うにはあまりにも無謀過ぎます。

 

「エリア区切ってやってるからそうでもないよ。訓練の時間基準で変動もあるし」

 

そういうと颯爽と掃除用具を持って掃除へと向かっていきました。もはや風紀委員というより美化委員や用務員の様な雰囲気を放ちながら、校舎の一角へと消えて行きます。

私も授業があり休み時間でしか追うことができませんでしたが、細部までピカピカになっていた事を報告します。

 

 

 

***

 

 

 

放課後、風紀委員としての活動が始まります。イチゴ君は授業がない為、いつも1番で訓練場にいます。

 

ーー今日の活動内容は?

 

「いつも通りに戦闘訓練だな。ヒナから変更連絡も無いし」

 

風紀委員の主な活動は各地域でのパトロールやゲヘナの生徒が騒動を起こした時の鎮圧等であり、戦闘訓練はその日に任務の無い生徒によって行われています。イチゴ君が来てからは、ヒナ委員長から扱かれる場合が多くなっているので最近風紀委員の質が向上していると噂になるほどです。

そのため、イチゴ君はほぼ戦闘訓練の教官の様な立ち位置であまり現場には出向いていません。

 

「ーーよし、みんな集まったしヒナ委員長も来たから始めるぞ!」

 

『はい!!』

 

「……早めに片をつける」

 

「みんな、怪我しないようにな〜」

 

今日はイオリも訓練の様で開始の号令を掛けました。イチゴ君はこういう時、前に出たりせず後方から見守る位置で静かに声を掛けています

 

ーー自分から号令を掛けたりはしないんですか?

 

「突き詰めて言っちゃえば部外者だからな。でしゃばっちゃいけないと思ってるよ」

 

危ないから下がってて、と私に声を掛けて最前線まで駆けていきます。謙虚で義理堅く、他人を思いやれる心を大切にしているイチゴ君はとても善良で良い人の様に感じます。ただーー、

 

「どうだ、ヒナ!遂に気絶も吹っ飛ばされもしない耐久力に至ったぞ!もはや移動要塞となったオレに死角はない!やれ、イオリ!!」

 

「ヒナ委員長、覚悟!」

 

「……これはどう?」

 

「ちょ!?同じ場所に1点集中はーーッ!うびゃぁあぁぁ!」

 

「イチゴぉ〜!?」

 

「全員、覚悟して」

 

自分の体を本当に盾にしてイオリと一緒にヒナ委員長に突撃する姿は、とてもじゃないけど正気では無いので、よく狂人変人扱いを受けているのが残念で仕方ありません。

イチゴ君の背中にピッタリとくっついていたイオリがイチゴ君と共に宙を舞っています。……イチゴ君だけ射撃で撃墜されました。

あ、ここで早々に離脱した人達に話を伺いましょう。

 

ーー山楯イチゴ君の印象は?

 

「まあ、変人ですね。委員長に生身で突撃するなんて頭おかしいとしか言えないし」

 

「あれで怪我してないってありえないでしょ〜」

 

ーー一緒に戦って見てどうですか?

 

「守ってくれるのはとてもありがたいよね〜」

 

「どこからでも射線に割って入るの、なんで出来るか不思議だけどね」

 

「でも守って貰うと、ちょっとときめく……」

 

なんてコメントを頂きました。最後のコメントの際、戦闘音が迫力を増した気がしましたが、何かあったのでしょうか?

そうして戦闘訓練は終了となり、荒れた訓練場とボロ雑巾のイチゴ君が残りました。

 

「いてて、よし今日はあまり荒れてないな!」

 

その一言で黙々と修復作業に勤しむイチゴ君。これを毎日繰り返しているのは尊敬に値します。

 

 

 

***

 

 

 

荒れ果てた訓練場を僅か1時間程で修復したイチゴ君は、風紀委員の部屋へと向かいます。少し前から書類整理の仕事も手伝っているイチゴ君の体力はどうなっているんでしょうか?

 

ーー書類整理も自分から進んで初めた?

 

「いや書類仕事は全く出来なかったんだけど、毎日ヒナを残して帰るのは心苦しいから。それでまあ、オレができる範囲の仕事を回してもらってる」

 

あくまで人の為に動くイチゴ君のこの人柄が、風紀委員に溶け込むことが出来た一因のようです。

 

「今日はチナツもいるし早く終わるかもな」

 

ーーアコ行政官もいますよ

 

「げぇマジかよ。なんか目の敵にされてんだよな〜」

 

そう言いながら部屋に入ると、既に仕事をしているヒナ委員長とアコ行政官の姿がありました。机の上には書類の山、いつもの事ですが改めて見ると心が折れそうです。

 

「遅いですよ、山楯イチゴ」

 

「片付けあるんだから、しょうがないでしょ。それよりオレにも分けてください」

 

「もう分けてある。イチゴはその山をやって」

 

「了解」

 

「チナツはその山をお願い。……そのカメラは何?」

 

ーーシャーレからの依頼で、お気になさらずに。

 

「またあの先生は……」

 

「そう……わかった」

 

そんな訳で、作業が開始となった訳ですが、これを撮ってても面白いのでしょうか?

黙々とみんなで作業をすること約1時間半、終わりの目処も立ち少し休憩となりました。なお、イチゴ君の進捗が悪い様でヒナ委員長が付きっきりで面倒を見ています。

 

ーー何か飲み物用意してきますね。

 

「チナツ、ありがとう。アコも手伝ってあげて」

 

「ですが……、いえわかりました。すぐに戻ります」

 

チラッとイチゴ君のことを確認したアコ行政官と共に部屋を後にします。

 

「チナツ、急いで準備して戻りますよ」

 

ーー何もそこまで急がなくても……。

 

「いいえ、あの男が何をしでかすかわかりません。ヒナ委員長が危険です」

 

ーーそんな大袈裟な……。あ、カメラを部屋に置いてきてしまいました。

 

 

 

***

 

 

 

部屋に戻ると、何故か息を切らして顔を赤くした2人がいました。それと、カメラの回収を頑なに拒否するイチゴ君によってカメラが強奪された事を報告します。

 

 




何があったかはご想像にお任せします。
一応、風紀の乱れは無かったとだけ
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