風紀委員の肉壁くん   作:阿良良木歴

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ちょっと難産。


閑話:ゲームとスカジャンとメイド服

「依頼?」

 

「そう。ミレニアムの方から貸してくれって」

 

朝食を食べている最中先生に唐突に告げられる。今日ゲヘナの方はお休みだよね?と先生に確認される。今日は一応休みの予定だ。今回はヒナとも休みが被って無いし、適当に遊びに出掛けようと思っていたんだが……。

 

「急すぎないか?」

 

「昨日連絡が来てね、急だから断ろうかと思ったんだけどミレニアムの生徒会長直々の依頼だから無下にも出来ないから」

 

断ってもいいんだよ?と言われるが、オレ自身キヴォトスに来てからゲヘナの方に付きっきりでシャーレでの仕事をほとんどしていない。こんな事でチャラに出来るとは思わないが、たまには先生のメンツを立てておくとしよう。

 

「いや、行くよ。特に予定を立ててた訳じゃないし」

 

「そう言って貰えると助かるよ。10時過ぎに来て欲しいって」

 

「ん、了解」

 

時刻は7時前、時間に余裕はあるししっかり準備して向かうとしよう。

 

 

 

***

 

 

 

「あ、依頼内容聞くの忘れた」

 

やってきたミレニアムサイエンススクール。その敷地内に入った時に1番大事なところに気がついた。まあ、その場で聞けばなんとかなるか。にしても広い学校だ、上を向くとモノレールまで走ってやがる。約束の時間まではまだ2時間近くもある、適当にフラフラ歩いて目的地を探すとしよう。あまりにも広いせいか、人と全くすれ違わない。これでは生徒会長の居場所も分からないので、校舎に入って情報を集めるのが効率的だろう。そう思って、校舎に入った。

 

校舎内も驚くほど静かで、自分の足音だけが聞こえてくる。早いとこ第1村人を見つけないと、無駄に時間を消費してしまいそうだ。そんな事を思いながらさ迷っていると、ピコピコとした電子音が聞こえてくる。音に導かれ歩みを進めると、ゲーム開発部と書いてある部屋に辿り着いた。中からはさっきの電子音が聞こえてくる。

 

「ここの人に聞いてみるか」

 

コンコンとノックしてからガラガラと部屋の扉を開ける。

 

「お邪魔します」

 

「ええ!?だ、誰!?」

 

中にはあぐらをかいてテレビに向かっている女の子がいた。金色の髪に猫耳型のヘッドフォンを付けている。ミレニアムのに来るのも初めてだから、あまり知られてもいないのだろう、唐突に現れた男に困惑してる様に見える。

 

「突然悪いな、シャーレから来た山楯イチゴっていう者なんだ。生徒会長に呼ばれてるんだけど、どこに行けば会えるか知ってるか?」

 

「ああ、先生と一緒に来たっていう……。私も生徒会長の居場所は知らないよ〜。知ってる人の方が少ないんじゃないかな〜」

 

「マジかよ、レアキャラじゃんか……。ってそのゲーム、ストレイファイトじゃん。家庭機用出てたんだ」

 

「え!これ知ってるの!?」

 

「勿論、ゲーセン行ってやり込んでたぜ」

 

見覚えのあるキャラでオレが昔ハマってたゲームだと気付く。格ゲーなんだが必殺技のコマンドが死ぬほど難しかった記憶がある。

 

「じゃあ対戦しよ!ミドリがアイス買いに行ってる間の対戦相手欲しかったんだよねー!」

 

「受けて立つ!」

 

コントローラーを受け取り隣に座ってテレビ画面を見る。使い慣れたキャラを選択し、いざバトルへ。

 

「そういえばここに来るまで誰とも会わなかったんだけど、ここって何処かに人集中してるの?」

 

「え?今日は学校お休みの日だからじゃない?」

 

「は?……ああ、今日って休みの日か。曜日感覚バグってるから気が付かなかった」

 

そんな話をしながらゲームをする。このゲーム、必殺技がやりづらいからこうやってコンボ繋げるのが1番ダメージ出せるんだよな〜。

 

「えぇ!?何そのコンボ!うわぁ!負けたぁ!」

 

「あいあむうぃなー」

 

「うぅ〜、もう1回勝負!」

 

「いいぜ、勝ち逃げはかっこ悪いからな」

 

そうしてゲームに没頭していく。この少女の反応が面白くて時間を忘れてゲームを楽しんでしまう。オレが負けそうなダメージを負うと凄いテンション上がっているし、そこかから逆転すると変顔になるし、見ていて飽きない。そうしてオレが7連勝を飾ったタイミングで、

 

「お姉ちゃんアイス買ってきたよ〜、って誰?」

 

「お邪魔してます」

 

「悔しい〜!もう1回!」

 

隣の金髪猫耳ガールと似た顔立ちの少女が入ってきた。こちらも猫耳型ヘッドフォンを付けているけど、隣のよりも表情は少し硬い印象だ。

 

「山楯イチゴ、シャーレから来ました。よろしく」

 

「えっと、才羽ミドリです。そこの姉の妹です」

 

「そういや、名前聞いてなかった」

 

「そーだった!才羽モモイ!よろしく〜ってああっ!またハメた〜!!」

 

「はっは〜!コンボハメ気持ちいいぜ〜」

 

「……はあ、お姉ちゃん次変わって」

 

1人増えたテレビの前でゲームを堪能した。……ミドリの方がゲーム強いのか、5連敗した。

 

 

 

***

 

 

 

「やべ、結局遅れそうだ」

 

ゲームに熱中しすぎたオレは気がつけば約束の時間の10分前まで対戦を楽しんでしまっていた。一応生徒会室の位置は聞いたし、なんとかなると思ってた矢先。

 

ーーとすっ。

 

「……ん?」

 

曲がり角を曲がった所で腹部に違和感、目を向けるとオレンジ色の頭が腹部に埋まっているのが見えた。

 

「うわぁ!?すまん!」

 

「いや、別にいいよ」

 

慌てて離れると、その人の全体が明らかになる。鋭い眼光に刺繍入りのスカジャン、その下に着ているメイド服……何故メイド服?何はともあれぶつかったのは悪いが、時間も押してる為簡易的な謝罪で立ち去る事にしよう。

 

「本当にすまん!(急いでて)見えなかった!」

 

「……あぁ?」

 

「じゃあ先急ぐから、これで」

 

「おい、ちょっと待てよ」

 

そのまま立ち去ろうとした所で呼び止められる。振り向くと、さっきよりも目つきが鋭くなっている気がする。

 

「ぶつかっておいて今の物言いは無いんじゃねぇか?」

 

「……?あ、すまんすまん。確かにそうだな」

 

一方的にぶつかって謝罪一言は確かに誠意が無い。オレはポケットを漁って、お目当ての物を目の前の女の子に渡す。

 

「(謝罪の品にしては適当だけど)これ、美味しくてオススメだよ」

 

「……」

 

「んじゃ、オレはこれで……!?」

 

今度こそ立ち去ろうとすると後ろからのプレッシャーで思わず振り返る。顔を真っ赤にした女の子がオレが手渡したーーおやつ用カルシウムバーを握りつぶす。

 

「今日は気分が良かったから見逃してやろうと思ったんだけどよぉ……」

 

「えっと……」

 

「こんなあからさまにケンカ売られちゃ、買うしかねぇよなぁ!!」

 

「いや!たぶん、色々誤解!?」

 

「うるせぇ!ぶっ殺すぞ!」

 

「理不尽すぎる!?」

 

取り出された2丁のサブマシンガンの銃口がオレに向けられる。咄嗟に廊下の窓から外に飛び出す。発砲音と窓が割れる音を聴きながら逃走を試みる。初めての土地と勝利条件が逃げ切りというのもあって、かなり難易度高いけどやり遂げるしかない。

 

物陰に身を潜め息を整える。様子を確かめようと少しだけ出した顔の鼻先を銃弾が掠める。

 

「てめぇ、逃げてんじゃねぇ!」

 

「そっちこそ、武器も無いやつにぶっぱなすんじゃねぇ!」

 

言い争いながら逃走し、姿が見えなくなった所で身を隠す。が、それでも見つかってしまう。何度か繰り返すうちに、逃走は困難だと理解してだったらと真正面から向かい合う。

 

「はっ!ようやく諦めたか」

 

「違ぇよ。逃げられないんだったら真正面からぶっ倒すしか無いだろ」

 

「……へぇ、その選択は褒めてやるよ」

 

「だったら見逃してくれ」

 

「それは出来ねぇな!」

 

ダダダッ!と2丁のサブマシンガンが火を噴く。オレはそれを避けるでも無く、顔を腕でガードしながら突っ込んでいく。武器が無いオレには相手の懐に飛び込んでのステゴロしか選択肢が無い。それに近距離戦闘は得意分野だ、はっ倒してやる。

 

「てめぇからあたしの間合いに入って来るとは、いい度胸してんじゃねぇか!」

 

「うるせぇ!この距離だったらオレも得意分野なんだよ!」

 

銃弾の雨を全身で浴びながら拳を突き出す。サブマシンガンの一丁をぶん殴り、弾幕を薄くしてから肉薄する。驚いた顔のヤンキー少女の腕を掴み、絞め技を仕掛ける。数分でも意識を飛ばしてくれれば、その間に距離を作れる。そう思った。

 

「この間合いじゃあ、あたしは負けねぇ!」

 

「ぐうっぅ!?」

 

絞め落とす途中で横っ腹に銃弾が叩き込まれる。また少し空いたスペースを潰す様に突っ込んで行く。

 

「タフなやつだなぁおい!」

 

「タフネスだったら誰にも負けねぇよ!根負けする前に降参すんのが身のためだぜ!」

 

「はっ!抜かせ!」

 

そうして、銃弾と拳で殴り合うケンカは夕方まで続いた。

 

 

 

***

 

 

 

「……もう、流石に無理」

 

「しゃぁ!あたしの勝ちだ!」

 

茜色に染まった空を仰ぎみて、オレ地面に倒れる。全身ボロボロで、銃弾が当たって無いところが無いんじゃないかと思うほどだ。仰向けになったオレを上から覗き込んでくる。

 

「久々にいいケンカだったな。……ん?なんでケンカしてたんだっけ?」

 

「……なんでだ?」

 

「……まあいいや、そのセンスと度胸気に入った!あたしは美甘ネル」

 

「山楯イチゴ、よろしくネル先輩」

 

「よろしくなイチゴ!なあ、腹減ったしラーメンでも食い行くか?」

 

「いいっすね!美味しいとこ知ってるんすか?」

 

「おうよ!着いてきな!」

 

「はい!」

 

起き上がり、ややふらつきながらもネル先輩の後に続く。なんとなく元いた所でお世話になった先輩と一緒にいる時に似た雰囲気に懐かしくなった。

……んん?なんか忘れてる気がする……。

 

 

ーーシャーレに戻ると、先生からお叱りを受けた。すっぽかしたのだからしょうがないと思ったが、何故か向こうの生徒会長からのお咎めは無かったらしい。




ーーラーメン屋にて、

「じゃあイチゴがあの"風紀委員長の犬"なのか」

「そっすね。つか、その呼び名浸透してるんだ……」

「まあな、結構有名だぞお前」

「マジか……」

「そうか。あの風紀委員長の、ね」

「どうかしたんすか?」

「いいや、流石にあの風紀委員長とドンパチするのは骨が折れると思っただけだ」

「??」


ーー


イチゴは元々の口調鉄砲玉っぽい感じのやつです。なのでネル先輩と話す時はそれが元に戻ってます。ちなみにifルートだとC&Cに入ってました。ネル先輩との相性も良いので。
ちなみに、ユズ先輩はずっとロッカーに隠れてます。
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