風紀委員の肉壁くん   作:阿良良木歴

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メインストーリー3章までクリアしました。
めっちゃ良かった……


躾と散歩は犬の嗜み

最近、ヒナの様子がおかしい。

目に見えておかしい訳じゃないし、なんなら仕事はいつも通り以上にこなしている。ただ、

 

「イチゴ、仕事に行く。一緒に来て」

 

「おう、了解」

 

「出張だから2、3日は戻れない」

 

「またか……了解。先生にも連絡入れとく。にしても最近多いな」

 

ヒナの仕事、その随伴が多くなった。前まではもっぱら訓練ばっかりだったが、最近は実戦でヒナの護衛をすることの方が多い。その他にも今回見たいな出張の付き添いや学区内移動時の運転手、果ては前みたいな買い出しの荷物持ち等など。今まで以上に一緒にいる時間が増えた気がする。それが嫌という訳じゃ無いが、なんというか違和感がある。オレが休みの前には休みの予定も聞かれるし、何かがおかしい。

 

「ヒナ委員長、やはり付き添いには私が」

 

「アコまでいなくなったら、風紀委員が機能しなくなる」

 

「ですが!……いえ、わかりました。お気を付けて」

 

「ん。後のことはお願い」

 

「はい……っ!」

 

いやいやアコちゃん、そんなにオレを睨んでもオレにはどうしようもないんですが……。

ヒナがオレばっかり連れ回すもんだから、アコちゃんのヘイトが日に日に溜まっていってる気がする。しかし、オレにも原因がわかんないのだから解決しようも無い。そんな訳でわからないことはほっといて、ロッカーから着替えセットの入ったリュックを取り出し部屋を後にした。

 

 

ーー

 

 

「おーい、イチゴ……ってあれ?いないのか」

 

「ええ、ヒナ委員長の付き添いで今日から出張です」

 

「えーまた!?最近多くないか?」

 

「そうですね……、この手紙が届いてから。ヒナ委員長は……」

 

「手紙……?」

 

ヒナとイチゴが去った部屋でイオリにアコが手紙を渡す。差出人はミレニアムのC&C、内容は。

 

『やっほ〜最近部長の元気が無いからそっちのワンちゃん貸して欲しいな〜。2、3日あれば部長も元気になると思うんだ!

 

コールサインゼロワン』

 

「ええ……」

 

「ちなみに、そういった内容の手紙が色んな所から来てます」

 

「あ、あんなに!?」

 

額を押さえたアコが指差す先には、風紀委員の書類の山には及ばないが、折り重なった紙の山が確かにあった。

 

「ウチからだと給食部に万魔殿……は無視で良いな。ミレニアムからはゲーム開発部にエンジニア部……はぁ!?トリニティからも来てるぞ!?」

 

「ほんとあの駄犬は……!誰にでも尻尾を振るなんて!!」

 

遠くで何かを感じたイチゴが肩を震わせるが、この場の2人は知る由もない。手紙を握り潰したアコは、椅子に座り直す。

 

「というか、イチゴはシャーレの所属だろ?ウチになんで手紙が来るんだ?」

 

「大方、シャーレにいる時間よりここにいる時間の方が長いという事からでしょうね。先生も多忙ですし、ウチに直接連絡した方が早いと踏んだのでしょう」

 

実際には、先生が『イチゴに関する事はゲヘナ風紀委員へ』と吹聴しているからなのだが。それを知るのはもう少し先の事である。

 

「じゃあヒナ委員長が最近イチゴをずっと付き添わせてるのは……」

 

「……対外的に風紀委員の者だと知らしめているから、ですね」

 

「……争いの火種にならないか?」

 

「そうですね。……なのにあの男はのうのうとっ!!」

 

あずかり知らぬ所でアコからの恨みを着々と集めていくイチゴ。余談ではあるが、先日の失敗以来シャーレの仕事を積極的に行うようになったイチゴの思わぬ弊害である事は誰も知らない。

人たらしの先生、そのすぐ側で十数年生きてきたイチゴもまた、無自覚の人たらしなのだ。

 

 

 

***

 

 

 

「ようやく帰って来れた……」

 

「お疲れ様」

 

出張を終え、ようやくゲヘナの学校が見える場所まで帰ってきた。出張自体はなんの問題も無くスムーズに終わった……が、帰りの移動中に車が襲われた。そんな奇襲に屈するほどヤワじゃないが、襲撃された際に車が爆発四散。帰り道が途中から徒歩になってしまっていた。幸いにも朝早く出ていたおかげでそう遠くは無かったが、車で移動するはずの距離を歩くのは流石に疲れた。時刻は午後4時を回った辺り。ここから帰って書類仕事等のことを考えると今日も帰るのは遅くなりそうだ。

 

「あ、注文してた備品のお店が近いから寄っていく」

 

「了解」

 

そう言われ、学園への道から少しズレた道に進んでいく。数分で到着し、ヒナが店内に入って行く。軽量なのと次の注文の話もすると言うことでオレは外で待つことにした。店の外観的にも狭そうだし。

ボケっと待つのも趣味じゃないから近場をフラフラと歩く。すると、ゲームセンターのクレーンゲームで半泣きになりながらお金を注ぎ込んでる女の子がいた。

 

「うぇぇん、取れない……」

 

「……」

 

筐体の中には、なんとも言えない風貌のぬいぐるみ。女の子はああいう感じのが好きなのか?

もう結構な金額が無くなったようで引くに引けない様子が見ていられず、

 

「ごめんな、ちょっと貸してくれる?」

 

「え?だ、誰ですか?」

 

「まあ、いいからいいから」

 

そう言って選手交代。クレーンゲームも昔やり込んでたから、このアームの強さとぬいぐるみの位置を計算してっと。

 

 

ーーガコンっ!

 

 

「ほら。この子で良かったか?」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

「どういたしまして」

 

運良く1発で取ることが出来て良かった。何回もやったらカッコつかないし。

愛おしそうにぬいぐるみを抱き締める女の子、よく見るとバッグや身につけているアクセサリーなんかも今取ったぬいぐるみのキャラの様だった。……シュールな見た目だが、もしかして結構人気なんだろうか?

 

「あの何かお礼を……」

 

「いいよ、気にしないで。勝手にやっただけだし、自分で取りたかったのをでしゃばっちゃって逆に申し訳ないし」

 

「いえそんなことは無いです!このペロロ様のぬいぐるみ、クレーンゲームの景品でしか手に入らない物だったので助かりました!」

 

「そう言って貰えると助かる。にしてもペロロって名前なのか……」

 

なんか卑猥な……いやいや、中学生じゃあるまいし考えすぎか。

そんなバカみたいな事を考えていると、女の子がやけに目を輝かせながら近寄ってくる。

 

「もしかして、ペロロ様に興味があるんですか!?」

 

「いや、まああるといえばあるけど……」

 

主になんでそんなシュールな顔なのかとかだけど。

 

「そうなんですね!説明すると、ペロロ様はモモフレンズっていう中のキャラクターなんですけど、他にも可愛い子がいっぱいいてですね!」

 

「お、おう……」

 

急な布教活動にびっくりするけど、なんか楽しそうに話す女の子を中断させるのも気が引けるので耳を傾ける。この子、本当に好きなんだな〜。

そんな事を思って聞いていると、不意に襟首が締まる感覚。

 

「ぐえぇ!?」

 

「何してるの?」

 

「……ヒナ。普通に声掛けてくれ」

 

「急にいなくなる方が悪い」

 

「それは確かに悪かったよ。ちょっと人助けしてただけ」

 

「……そう」

 

「要件は済んだのか?」

 

「うん。早く戻ろう、少し疲れた」

 

「了解。それじゃあな」

 

「あ、はい!本当にありがとうございました!」

 

女の子に手を振りそこで別れる。女の子の方も何度もお辞儀していて、ちょっと面白かった。学園への道すがら、名前を聞いていないことに気づいた。

そんな取り留めのないことを考えていると、袖を少し引っ張られていることに気付く。目を向けるとヒナがオレの袖を指で軽く摘んでいた。

 

「ヒナ?なんでオレ袖掴まれてるの?」

 

「またどこかに行かないようしてるだけ」

 

「そんな子供じゃないんだから」

 

「……」

 

「はい、さっきいなくなってすみません」

 

じとっとした目で見つめられ、正直に謝る。確かになんの言い訳も出来なかったわ。

 

「首輪でもつけた方がいいかしら」

 

「そういやアコちゃんが首輪持ってたけど……いや冗談だよな?」

 

「イチゴは私の犬らしいし、躾はしっかりしないと」

 

「冗談だよね!?」

 

慌てて確認するオレの姿がおかしかったのかヒナがクスリと笑う。それがなんだか悔しいので言い返す。

 

「首輪つけたら、三食昼寝付きを要求するからな」

 

「別にいい。働いてくれれば」

 

「……今とあんま変わんなくね?」

 

飯と昼寝が付くだけで、結局やることが変わってない気がする。楽になるかと聞かれると、そんな事もないと思う。他の人が働いてるのに昼寝なんて出来ないし。

 

「じゃあ、首輪は私の所有物って証にすればいい」

 

「……それも勘弁してくれ」

 

珍しく冗談を言うヒナに思わず顔を手で隠す。……ちょっといいかもと思ったのを悟られてはいけない。

 

「ほら、もう着くぞ」

 

「そうね。はぁ、めんどくさい」

 

「それな。まあ、さっさと片付けて帰ろうぜ」

 

ようやく辿り着いたゲヘナ学園。仕事を早く終わらせるのも良いが、もう少しこのまま2人で話していても良いな、とぼんやり考えながら足を踏み入れた。

 

……なお、部屋にはアコちゃんとイオリが居たので2人きりの時間は早々に打ち切りになった。




「そういやあの子、どこの子だったんだろ?」

「……たぶんトリニティだけど、そんなに興味あるの?」

「いや、制服であんま学校の見分けつかないからなんとなく」

「そう……。あの子可愛いかったものね」

「え?なんの話??」

「?会いたいから学校が気になったんじゃないの?」

「いや別に。単純に制服の基準が気になっただけだよ、みんな改造しててどこがどこだか全くわからんし」

「そう、なの?」

「そうそう。つか、あの子も確かに可愛いかったけどオレはヒナの方が可愛いと思うぞ?」

「なっ!?」

「ん?そんな驚くことか?客観的に見てもオレの主観でも、ヒナは可愛いよ。

……痛ッ!?アコちゃん何すん……え?なんで銃口オレに向けてんの?撃たないよね?ヒナたすけt……!?なんでヒナも構えてるの?オレ何かした!?」


ーー


この後めちゃくちゃ蜂の巣った。


メンテ長引いて執筆時間取れたのはいいけど、早くガチャ回したいジレンマ。
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