風紀委員の肉壁くん   作:阿良良木歴

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ちょっと間隔空いてしまってすみません!
ちょっと仕事が忙し過ぎて余裕があまり無かったので……。
サブタイトルは作者の心の叫び。


週6日の仕事の疲れが1日でとれる訳ないだろ!

「イチゴ、君少し疲れてない?」

 

「あ"ぁ?」

 

「いや絶対疲れてるでしょう」

 

シャーレの食堂にて朝食をテーブルにならべていると、先生がそんな事を言ってきた。確かに最近は忙しく帰ってくるのも遅かったが、毎日1時間くらいは寝れてるし頭も冴えてる気がするくらい好調だ。時折記憶がトんだり話が頭に入ってこなかったりするがそれ以外はいつも通りだ。

 

「いやいや。かなり疲れてるじゃないか。2、3日休んだ方が良いよ」

 

「そうは言っても今日からヒナと出張なんだ。休めないよ」

 

「あの怠け者だったイチゴがこうも社畜になるとは……。別の人に頼めないのかい?」

 

「頼めるかもしれねぇけど、こんな直前じゃ迷惑かかるだろ。多少の無理は押し通せる体なんだし大丈夫だよ」

 

「うーん、もう多少の域を越えてると思うのだけど」

 

「心配性だな先生は。オレが今まで風邪も引いたこと無いの知ってるだろ?」

 

オレの体は実は内側も頑丈だ。生まれてこの方、病気はおろか風邪さえ引いたことが無い。なんなら虫歯になった事も頭が痛くなったなんてことも無い。いやまあ、知恵熱というかバカ過ぎて頭がパンクしたりはあるけど。

 

「それじゃあ、今回の出張が終わったら必ず休むこと。いいね?」

 

「はいよ。そんなに言わなくても大丈夫だっての」

 

そう言って朝飯を掻き込む。話をしていて集合に遅れては目も当てられないからな。

 

 

 

***

 

 

 

3日後の夕方、出張を無事に終えたオレとヒナはいつものように風紀委員の部屋にいた。ヒナはデスクで出張の書類をまとめ、オレはソファに座り溜まった書類整理。無言の室内にペンが走る音だけが響く。時を忘れて没頭していると、カタンとペンを置く音が聞こえた。どうやらヒナが先に終わったらしい。音だけでそう判断し、顔を上げないまま仕事を続ける。

 

「こっちは終わった。イチゴは?」

 

「オレはまだ掛かるから先に上がってくれ」

 

「……?でも、まだ時間はある。手伝えるけど」

 

「今日この後先生との会合だろ?家に帰ってシャワー浴びてサッパリした方が良いだろ。今帰れば仮眠も取れるだろうし」

 

オレは明日から休み取らされるから気にすんな、と付け加える。納得していない様子のヒナだったが、先生と会うことも考えてか渋々荷物をまとめて帰り支度を始めた。

 

「じゃあ、先に帰る」

 

「おう、おつかれさん」

 

終始書類と睨めっこのオレは声と扉の閉まる音だけでヒナが帰った事を確認する。遠のいていく足音が聞こえなくなったところで、オレはペンを投げ出しソファに倒れ込む。それと同時に、今まで気を張って抑えていた荒い呼吸が口から漏れ出す。

 

「ハァ……ハァッ!グゥッ!?ゴホッゴホッ!?……あ゙ぁ〜くそ、駄目か……」

 

うつ伏せから仰向けに体勢を変え、天井を仰ぐ。射し込む西日を遮るように目に腕を乗せながら自分の体調を考える。

関節痛に悪寒、咳と頭痛に発熱……どう見ても風邪だろう。人生で初めてだが、聞き及んだ知識と友達がなった時の看病を思い出し確信する。今まで体調不良と縁が無かったオレだが、持続的なこの症状はオレとの相性最悪だ。単純な怪我ぐらいなら余裕で耐えれたが、初めての風邪はメンタルにかなりクる。それに、オレの予想が正しいと……。

その時、机の上に放り投げたペンが転がり落ちオレの手に当たる。先端が手の甲をなぞる様に下に落ちたあと、オレは手の甲を見る。すると、手の甲にまるでナイフで切られた様な傷跡が残りそこから血が滲んでいた。

 

「やっぱり……。体調不良でオレは弱体化するのか」

 

普通の人でも風邪を引いた時には体が弱るらしいが、オレはその比じゃないんだろう。ペン先だけでこれだ、銃弾なんて浴びた日には目も当てられない結末を迎えそうだ。ポケットからヒナにバレない様に買った風邪薬を取り出し、服用する。初めて薬なんて飲むが、オレにちゃんと効果が出るのか心配だ。朦朧とする意識をそのまま手放し、オレは泥に沈むような感覚のまま眠りについた。

 

 

 

***

 

 

 

「……んぁ」

 

鈍い頭痛で目が覚める。目を開けるのも億劫で目を閉じたまま自分の体調を分析する。

寝る前までの怠さは少し軽減されているものの、未だに痛む頭と関節。発熱は少し治まったようで回復傾向にあるようで安心する。ふと、頭が何か柔らかい物に乗っかっていることに気づく。枕だろうかと考えると同時に鼻をくすぐる甘い香り。嗅いだことのあるその匂いの正体に気づいた時に、見開くように目を開けた。

 

「……おはよう、体調はどう?」

 

「え?は……ヒナ?」

 

目を開けた先にはこちらを覗き込むヒナの顔があった。いつもより近い距離、目と鼻の先にあるヒナの体と後頭部に感じる柔らかさで膝枕をされている事を自覚する。

 

「な、なんで?つか今何時……?」

 

「起きないで、じっとして」

 

「へぶぅ」

 

現状を理解し起き上がろうとするオレをヒナが押さえつける。……力加減ミスってんのか地味にダメージが入った。押さえつけられた反動で頭から何かが落ちる。オレの胸に落ちたそれは濡れタオルだった。目線をテーブルに移すと氷の入った桶が置いてあった。

 

「今は10時よ。だいぶうなされてたみたいだけど大丈夫?」

 

「マジか……そんなに寝てたのか。とりあえず大丈夫だから起きて良いか?」

 

「だめ」

 

「……は?」

 

「先生から聞いたわ。イチゴ、凄く無理してるって」

 

「別に無理なんか……」

 

「風邪薬を飲んで、うなされてたのに?」

 

「ぐっ……」

 

目の前に突きつけられた風邪薬の箱を見せられたら、反論の余地が無い。空箱を机の上に放置したのは迂闊だったか。というか、

 

「ヒナこそなんでここに居るんだよ。先生との会合は?」

 

「今日は中止にした」

 

「はぁ!?な、なんで!?」

 

こう言っちゃなんだが、先生はオレの比じゃないくらいに忙しい。そりゃあキヴォトスの全学校との交流を行っているんだ、余裕がある筈もない。そんな中で先生との会合は重要だし日程を合わせるのも一苦労なわけだ。それを簡単に中止にするなんて訳がわからない。

 

「イチゴの様子がおかしいのは、見ててわかった」

 

「だからって……」

 

「無理をさせてた私にも責任がある」

 

「そんな訳ねぇだろ!……つっぅ!」

 

「ほら、大声出さない。ちゃんと安静にして」

 

大きい声を出したせいか、頭が痛む。それをヒナに咎められ、再び冷やした濡れタオルを額に乗せられ頭を押さえられる。不甲斐ない自分にどうしようもなくなり、なされるがままに体から力を抜く。

 

「……だとしても、オレが勝手にやったことだ。ヒナが責任感じる事ねぇよ」

 

「そんなことない。少しイチゴに頼り過ぎてた、反省しなきゃいけない」

 

「……」

 

それはこっちのセリフだ。ヒナの方こそ無理しているのに、オレが途中で倒れるなんて本当に不甲斐ない。このままじゃ何を言っても無駄になるので諦めて身を委ねる。

 

「……わかったよ、今日はゆっくり休む」

 

「うん、そうして」

 

「つか、なんでオレ膝枕されてる訳?」

 

「?看病する時は膝枕が良いって、先生が」

 

「あんのクソ教師……!」

 

気を遣ったのか単純に愉しんでるのか知らんが、体調が戻ったら1度本気でシバく事を心に誓う。そりゃあ膝枕なんて男のロマンだが、夜に2人きりでされると非常にいたたまれない。やけに甘くていい匂いがするし、柔らかい感触を嫌でも意識してしまう。それにヒナとの距離が近すぎて目のやり場に困る。まあ、ヒナの胸が大きくない事が唯一の救いかもしれないが……。

 

「……今、失礼な事考えた?」

 

「そんな事無い。……だから抓るのは勘弁して欲しいんですけど」

 

考えた事がバレてしまったのか、手の甲をいつもより優しく抓られる。こっちの体調を気にしてか、すぐに離してくれたけど。

 

「わかったよ、もう休むからさ。……悪いな」

 

「気にしなくていい。今はゆっくり休んで」

 

そう言ってヒナがオレの頭を優しく撫でる。子供扱いされている気がしないでも無いが、初めての感覚は思ってた以上に心地良いものでそのままオレの意識は微睡んでいった。瞼が閉じる刹那、ヒナの顔が少しだけ綻んでる様に見えた。

 

 

 




数時間後、

ーーパタパタ。

(……じー)

ーーツツゥ……。

ーービクンッ!?

「え?あ、ごめん!」

「……」

「ちょぉ!?無言で手を振り上げんのは!……ヘヴァ!?」

「……次は容赦しない」

「……女の子からの平手ってメンタルに来るんですけど」


ーーーー

主人公働かせ過ぎて申し訳ないな〜って思ってたけど、てめぇヒナちゃんに看病して貰うとか何様だ!っていう怒りが込み上げて来たので後書きにて制裁。
でも膝枕されて目の前にアレがあったら触るのは仕方ないと思う。
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