風紀委員の肉壁くん   作:阿良良木歴

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大変遅くなってすみません
GWにもう少し上げれると思うので許してください


ポニーテール好きに悪い奴はいない

ある日の風紀委員の執務室にて、

 

ーーサラッ

スっーー

ーーサラッ

 

「……ヒナ、髪邪魔になってないか?」

 

「……ええ、少しだけ。この間の戦闘で髪留めが壊れたから、前に垂れて来るせい」

 

書類整理をするヒナが何度も髪をかきあげていた。元々長くて綺麗な髪だが、流石に留めて無いと邪魔になってしまうらしい。とはいえ、オレが髪留めなんてオシャレなものを持っている訳もなく、かと言って輪ゴムなんかじゃ髪が傷んでしまいそうでやりたくない。なので、

 

「ヒナ、オレが髪纏めても良いか?」

 

「良いけど、出来るの?」

 

「まあな。意外と手先は器用なんだぜ?」

 

執務に勤しむヒナの後ろに回る。手櫛でヒナの髪を優しく梳く。柔らかい感触と不意に漂ってくるお日様の様な良い香りに少しドキドキするが、今は仕事中。真面目にやらなければヒナに申し訳ない。少しペンの進みが遅くなったヒナに後ろから問いかける。

 

「纏めていくけど、もし痛かったりしたらすぐに言ってくれよ。仕事に支障ない様にするから」

 

「う、うん。わかった」

 

持ち上げた髪の隙間からヒナの耳が覗き、少しだけ赤くなっているのが見えた。最近暑いし、これだけ長いと熱が篭ってしまうのかもしれない。そこも考慮しながら纏めて行くことにする。

髪の根元を3つに分ける。そこから毛先までは分けない様に気をつけながら編み込んでいく。それを続けていき、毛先を長めに残して最後に纏めあげてっと。

 

「ほいよ、完成。まあ普通の三つ編みだけど、これで多少は良くなるだろ」

 

「すごい……。本当に器用ね」

 

「だろ?どこか違和感とかある?」

 

「大丈夫よ。ありがとう、イチゴ」

 

「どういたしまして。またなんかあったら、言ってくれよ」

 

「ええ、その時はお願いするわ」

 

それからオレたちは書類整理の仕事に戻った。時折、チラリとヒナの様子を伺う。髪を纏めたおかげか、仕事が捗っているようで安心した。それに心做しか機嫌が良い様に見えた。ホッとするのと同時に三つ編みのヒナを観察する。三つ編みを左から前に流している姿は、いつもより大人しそうな印象で少しだけ雰囲気が柔らかい感じがする。いつもの髪型も好きだけど、こっちも新鮮で結構好きかもしれない。そのままぼーっと眺めていると、段々とヒナの頬が赤くなっていく。なんでだと思っていると、じとっとした目のヒナに睨まれた。

 

「……ねぇ、いくら私でもそんなに見られると恥ずかしいのだけど」

 

「あ、悪い。つい新鮮でな、見惚れてた」

 

「っ!?」

 

「うんうん、いつもの髪型も好きだけど、三つ編みも凄い似合っててオレは好きだな〜」

 

「な、何を言って……!?」

 

「ヒナはどんな髪型でも似合いそうだよな……って痛ぁ!?」

 

「へ、変なこと言ってないで、仕事して!」

 

「いてて。話を脱線させたのは悪いけどさ。何も叩かなくても……」

 

「うるさい。いいから仕事して!」

 

「理不尽……まあ、良いけどさ」

 

一悶着あったが、その後は滞りなく終わり、帰れるようになった。先の1件で機嫌を損ねたかな?とも思ったが、意外にも機嫌は良くそのまま髪も解かずにヒナは帰路について行った。

 

 

 

***

 

 

 

数日後、

 

「戦闘終了。みんな、お疲れ様」

 

「怪我や異常がある人はチナツに相談するんだぞ〜」

 

いつものように暴れ回る生徒を鎮圧した午後。部隊の解散指示や怪我人の有無を確認しつつ、オレは周りに指示を出しながら歩き回っていた。以前までと違いオレも最前線で指示を出す側の人間のポジションになってきていた。ある程度状況の確認が済んだ後、オレはヒナのもとへ向かう。

 

「ヒナ、確認終わったぞ。どこも大した異常なし」

 

「そう、ありがとう」

 

「にしても、今回の戦闘は久々に激しかったな」

 

「ええ、今回は温泉開発部の班長も居たし、少し面倒だったわ」

 

「だな。あ、ヒナの髪もこんなに乱れちゃって……」

 

そう言ってヒナの髪に触れる。戦闘の激しさからか、いつもの様なサラサラした感触よりも傷んだ手触りになっていた。それにボサボサとまとまりの無い髪になってしまっているのが、なんだか勿体ない気がした。

 

「イチゴ、その……あんまり人前でこういう事しないで」

 

「悪い、けど気になっちゃって」

 

少し頬に赤みがさしたヒナにそう言われるが、どうしても気になってしまい優しく髪を解していく。砂埃も酷かったから、そういうのも気にしながら丁寧に。

 

「……やめる気がないのはわかったから。せめて場所を変えて」

 

「ん、了解」

 

ふいっと人気がない方へ歩きだしたヒナに袖を引かれながら向かう。周りに誰もいないのを確認した後、ヒナはちょっとした段差に腰掛けた。その意図を汲む様にオレもまた後ろから再度髪を解していく。ある程度解れた所で胸ポケットからヘアゴムとヘヤピンを取り出す。先日の事からこういう事もあるかもと常備していた。

今回はまた違う髪型にしてみようと思い、思いついたのを試していく。両サイドの髪を後ろに向かって三つ編みにしていく。それを見えない様にヘヤピンで固定し後ろで1つに纏めれば、

 

「よし、完成。クラウンハーフアップ」

 

「……女の子の髪型に詳しいのね」

 

「え、ああ……。まあ色々あってな」

 

「そう、まあ良いわ」

 

渡した手鏡で確認するヒナにそんな事を言われ少々ドキッとする。……ヒナの髪型をいじりたくて色々調べてたのは、オレだけの秘密だ。

 

「やった本人が言うのもアレだけど、よく似合ってる」

 

「あ、ありがとう」

 

「言っとくけどお世辞とかじゃ無いからな。本当に似合ってる」

 

「そ、そんなに言わなくても良い」

 

「マジだって。初めて試した髪型だけど本当に良く似合ってるし、いつもとは違う気品って言うの?も感じるし、本物のお姫様って言われても納得するくらいにーーむぐっ!?」

 

「わかったから!それ以上は言わなくても良い!」

 

オレの口を無理矢理押さえ込んだヒナはもう一度だけ手鏡で自分の姿を確認するとスタスタとみんながいる場所に戻っていく。その後について行き、オレも戻る。余談だが、髪型を変えたヒナに全員がザワつき、何故かイオリとチナツに咎める様な目で見られた。

 

 

 

***

 

 

 

「……イチゴ、なんで毎回三つ編みベースのヘアアレンジばかりするの?」

 

「……え?」

 

またまた数日後、オレは執務室でヒナの髪型を特に理由も無くいじっていた。なんだかんだ理由をつけては、ここ最近髪型を任せて貰ってる。今日はこの後、他校との会議もあるらしいからあまりラフ過ぎない感じの三つ編みギブソンタックにしてみた所で、そんな事を言われた。

 

「そ、そうだったかな?」

 

「ええ、そうよ。……何か隠してる?」

 

「べ、別に?変な手癖でも着いちゃってたかな〜?」

 

「……怪しい」

 

じーっとヒナに下から覗き込まれて、視線を逃がす。その時、机の上に置いたままのオレの携帯端末にモモトークの通知が届く。送り主はネル先輩。

 

<おいイチゴ、最近三つ編みの練習頑張ってるらしいじゃねぇか!そろそろ本番行っとくか?>

 

端末の画面にそんな文が見える。……非表示設定の意味をオレはこの時初めて理解した。

 

「……どういうこと?」

 

「いや、その……」

 

「答えて」

 

「……はい」

 

ここまで来ては言い訳する事も出来ず、オレは観念して話す。

事の発端はミレニアムのゲーム開発部でネル先輩と話していた時のことーー。

 

 

 

『そういえば、ネル先輩の片側だけの三つ編み。めっちゃオシャレっすよね』

 

『お!イチゴ、てめぇわかってんじゃねぇか!』

 

『女の子はそういうアレンジ多くて凄いっすからね〜』

 

『まあな。……なあ、イチゴ。試しにあたしの三つ編み、やってみるか?』

 

『え!?』

 

数分後、

 

『あははっ!すげぇ下手だな、イチゴ!!』

 

『ぐぅ!!つ、次やる時は完璧にしてみせます!』

 

『だったら、練習してくるんだな』

 

『やってやりますよ!アリスちゃん、練習台お願い!!』

 

『パンパカパーン!アリスはクエストを受付ました!イチゴ、存分に練習してください』

 

そうしてオレは三つ編みの練習を開始したーー。

 

 

 

「……っていう感じ、なん、だけど」

 

「……」

 

ヒナは無言のままオレを見つめている。んだけど、何故かヒナの背後からゴゴゴッ!という効果音が聞こえてくる気がしている。

 

「ほ、本当にごめん!無断で練習台にしちまって!でも、ヒナのヘアアレンジをしたかったのも本当なんだ!」

 

「……」

 

「ヒナの髪めっちゃ綺麗なのにあんまり頓着してないから勿体ないな〜って思ってて」

 

「……っ」

 

「いざアレンジしてみたらどんな髪型でも似合うし、雰囲気も可愛くなったり大人っぽくなったりして偶にドキッとしたりするし!」

 

「も、もういい!理由はわかったから、別に怒ってない」

 

「そ、そうか」

 

必死の弁解が幸をそうしたのか許して貰えた。ホッと胸を撫で下ろしていると、ヒナがせっかく結んだ髪を解きながらオレに1歩近づく。

 

「でも、この髪型は嫌」

 

「え……」

 

「イチゴが1番好きな髪型にして」

 

「ええ!?いや、でもそれは……」

 

「いいから、やって」

 

「……はい」

 

そうして、オレはヒナの髪を後頭部の少し高い位置で纏め、ポニーテールにした。揺れる髪と覗くうなじにドキドキしてしまい、顔に熱が集まる。

 

「これがイチゴの好きな髪型」

 

「なんだろう、そう言われるのはめっちゃ恥ずかしいんだけど」

 

「ふふっ、今日はこのまま会議に行くわ」

 

「ええ!?良いのかよ、ってかちょっと待って」

 

執務室の扉を明け歩き出すヒナの後ろに慌ててついて行く。顔は見えないが、後ろで楽しそうに揺れ動く髪を見て機嫌がよくなったんだと何となくそう思った。




「あ?あんたは確かゲヘナの風紀委員長……」

「……美甘ネル」

「はっ!イチゴがあたしの三つ編みの練習台にあんたを選ぶとはな!」

「そうね。でも、イチゴはこの髪型が1番好きみたいよ」

「……」

「……」

(……え?何この雰囲気)


ーーー



ネル先輩が練習してるのを知ったのは、SNSでヒナのヘアアレンジ画像が流れて来たせい。有名人だから勝手に情報は出てくるっていう感じです。

サラッとアリスちゃん出しちゃったけど、2章ネタどっかで番外編みたいな感じで書きたいな〜。
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