風紀委員の肉壁くん   作:阿良良木歴

20 / 27
またまた遅刻ですみません。
GW色々やってたら秒で無くなってました。
あと、今期のアニメ豊作すぎ問題。


エデン条約編
バカは死んでも治らない


「ここがトリニティか……」

 

宮殿のような建物を目の前に、オレは少し距離を取った位置で尻込みしていた。

というのも、ゲヘナとトリニティは仲が悪いという話を聞いていたからだ。犬猿の仲というか宿敵というか、とにかく双方が嫌いあっているらしい。外部の者とはいえ、今やほとんどゲヘナの生徒と言っても過言じゃないほどに染まっているオレも当然、トリニティからしたら敵なのは間違いない。

にも関わらず、オレがここまで足を運んだのは、勿論先生のせいだ。

 

事の発端は数日前からトリニティに泊まり込みに行った先生からの電話だった。

 

『少し足りない物があるから持ってきて欲しい。リストは後でメールで送るよ』

 

一方的にそう言われ、メールまで送られてしまい断るのも気が引けたのでここまでやって来ていた。本来なら風紀委員の活動があったのだが、ヒナに電話してシャーレの仕事で行けない事も伝えてある。とりあえず先生に電話して荷物を取りに来てもらうようにしよう。前のミレニアムの様にフラフラ歩き回るのもなんだか危ない気がするし。ケータイを取り出し電話をかけると、2、3回のコール音の後に電話が繋がった。

 

「先生、着いたぞ。校門の所まで取りに来てくれ」

 

『ありがとうイチゴ。ただ、すまない。今少し手が離せないんだ。こちらまで持ってきて貰えると助かる』

 

「いやいや、オレ今ゲヘナの制服着ちゃってるし。なんか今条約の締結かなんかでピリピリしてるって聞いてるんだけど」

 

オレがこれ以上トリニティに近づかない理由はこれだ。ナントカ条約ってのをトリニティとゲヘナ間で結ぶらしい。それによって何らかの利益があるらしいが、詳しい内容までは理解しきれなかった。ただ、条約が結ばれれば風紀委員の仕事が楽になるっていうのだけは理解したので是非とも結ばれて欲しい。

問題は、いがみ合っている学校同士の条約なので反発する者も多いという事だ。ちょっとしたいざこざでも争いの火種になりかねない以上、自分から火種を撒き散らしたいとは思わない。条約に向け、最近さらに忙しそうなヒナからもさっき電話した時に、

 

『お願いだから、面倒を起こさないで』

 

と、キツく言われている。にも関わらず、先生はのうのうと入ってこいと言い出す始末。

 

『私が居るのはトリニティでも端の方。普通の生徒は寄り付かない場所だから大丈夫だよ』

 

「そういう事じゃない。万が一があったらどうすんだよ、生徒とすれ違ったりしたらよ」

 

『考え過ぎだよ。……それならとりあえず、上着を脱げばいい。ワイシャツにまで校章は付いていないだろう?』

 

「……わかったよ。とりあえずルート送ってくれ」

 

そう言うと、ケータイにすぐにルートが送られてきた。耳から離したケータイから『待ってるよ』とか細い音声が聞こえ電話が切れた。何がなんでも来させる気だったらしい。制服を脱ぎ肩に引っ掛けて溜め息を1つ零すと、オレは送られてきたルート通りに歩き出した。

 

 

 

***

 

 

 

「……ここでホントに合ってんのか?」

 

目的地に着くと人気の無さに驚く。いくら本校舎の端の方とはいえ、あまりにも閑散としていて自分の足音がやけに響く。あまり手入れもされていないようで埃臭い。

 

「とりあえず人の居そうな教室に片っ端から突撃してみるか」

 

聞いた感じ、なんでも成績不振の生徒の補習をしているらしいし、一瞬顔を出すだけなら問題にもなるまい。そう思い歩みを進める。するとある教室から話し声が聞こえる。居ればラッキー、居なくても先生の居場所を聞けるしやらない理由は無い。こういうのは躊躇わずにやるのが波風が立たない、扉に手をかけ一気に開ける。

 

「おーい、先生。頼まれた物持って……来た……ぞ」

 

「……へ?」

 

中には先生の姿は無く、代わりに4人の女の子の姿があった。見覚えのある顔もあったが今はそれどころでは無く、顔より下に目が行ってしまった。

 

ーー下着だ。

色白の肌と色鮮やかな下着の色がオレの目に飛び込み、脳がショートする。あちらも状況が読み込めていないのか、場を静寂が支配する。ふと我に返り、この状況は不味いと扉を閉めようと手を伸ばし、

 

「敵と遭遇、交戦を開始する」

 

「はぁ!?……ってんぎゃぁぁぁ!!?」

 

目の前に何かが飛び込んで来たかと思うとそれはガスを噴射し、オレの目は見事に潰されたのだった。催涙ガスは相性が悪いんだって……。

 

 

 

***

 

 

 

ようやく目が回復しだした頃、オレの体は椅子に縛り上げられていた。ボヤける視界で周囲を確認するも、先生の姿は確認出来ない。これじゃあ単純に覗きに来た変質者になってしまう。……まあ、見てしまったのは事実なので弁明しながらサラッと離脱しよう。

 

「あ〜、見ちまったのは本当にすまん。オレはシャーレから先生に用があって来たんだ。先生はどこにいる?」

 

「えっと、先生なら教材を取りに行くって言ってましたけど……」

 

「そうか。ならオレが持ってきた荷物を渡しておいてくれ。邪魔したな」

 

幸いなことに足までは縛られていないので、そのまま立ち上がり椅子と共に教室を出ようとーー、

 

「ちょっと!待ちなさいよ!」

 

まあ、そんな上手くはいかないか。

 

「いやいや、オレの用事は済んだので。あまり長居するのも悪いでしょ?」

 

「そういう問題じゃない!あ、あんた私達の裸見たでしょ!」

 

「それは最初に謝っただろ?お互いに事故だったということで忘れよう。それじゃあ……いでぇ!?」

 

「忘れられる訳無いでしょ!?ヘンタイ!スケベ!!」

 

こうなるよな〜とは思いつつ、投げつけられた鞄によって倒れたオレは起き上がる事が出来ずに床に横たわった。鞄を投げつけた少女がオレの傍にツカツカと寄ってくる。ようやく回復した視界に映るのは、ピンク髪のちっこい女の子。

 

「いや、本当にこんな態度だけどマジで申し訳ないと思ってるんだよ。見てくれ、この罪悪感に満ち溢れた目を」

 

「どう見ても死んだ魚の目じゃない!」

 

「ひ、ひでぇ言われようだな……。あ〜あとあんまり言いたく無いんだが」

 

「何よ!」

 

「……パンツ見えてる」

 

「……ッ!?」

 

一気に顔を赤くした女の子がバッとスカートを押さえる。床に這いつくばってるオレの傍にきた時点で気づいても良いだろうに。……って、

 

「ちょ!今のはオレ悪く無いだろ!?だから踏みつけるのをやめろ!!」

 

「うるさい!エッチなのは死刑!!」

 

ガシガシと踏まれながら、目線で周りに助けを求める。が、見覚えのあるおさげの子はアタフタしてるし、白髪の子はジトーっとした目で見てるだけだし、もう1人のピンク髪の子に至っては頬に手を当てながら笑ってるだけだし。とにかく耐えるしかない事を悟った。すると、

 

「やあみんな、おまたせ。ってイチゴ、君何してるんだい?」

 

「……アンタがいない事による事故で踏まれてるんだよ」

 

「そうかい、じゃあコハルが満足するまでそのままで」

 

「おいコラ!助けるって発想は無いのか!?」

 

「君がそう言うって事は、多少の否はあるんだろう?」

 

「ぐっ!だ、だけど情状酌量の余地が」

 

「乙女を怒らせたら、罰は受けないとね」

 

「……」

 

結局そのまま、ピンクおさげの怒りが静まるまで踏まれるのだった。

 

 

 

 

***

 

 

 

「……ほら。これ荷物な」

 

「ああ、ありがとう」

 

ようやく解放されたオレは先生に荷物を渡す。力が弱いのが幸いして、特に痛むところは無い。……これがヒナ相手だったらと思うとゾッとする。

 

「じゃあ用も済んだし、帰るわ」

 

「待ってくれ、イチゴ。もう少し用があるんだ」

 

「まだ何かあんのか?」

 

「ここにいるみんなと一緒にテストを受けてもらう」

 

「はあ!?」

 

思わぬ発言に振り向く。先生の顔はいつになく真面目で、本気の発言だということが伝わってくる。

 

「正気か……?」

 

「勿論」

 

「……わかったよ。ただ、他の奴らが納得したらの話だ」

 

先生の後ろにいるメンバーに目を向ける。おさげの子とピンクのでっかい方は友好的に見えるが、白髪ジト目とピンクのちっこい方は敵対視している節がある。オレはこのまま何事もなくこの場から去りたいので、出来れば追い出してくれる事を願う。

 

「コハル、アズサ。1度だけテストを一緒に受けて貰っても良いかな?理由はテスト後にわかるから」

 

「……そこまで言うなら」

 

「問題ない」

 

「だそうだよ?」

 

「……はあ。わかったよ」

 

オレの本気、見せてやるよ。

 

 

 

テスト終了後ーー、

 

 

「こ、これって……」

 

「あら〜」

 

「凄いな」

 

「あ、あはは〜」

 

山楯イチゴ、全科目0点。

 

「あんた、すっごいバカね!」

 

「ふふっ、困った方ですね〜」

 

「私よりバカがいた」

 

「い、一緒に勉強頑張りましょう!」

 

「いっそ殺してくれ!!」

 

先程まで敵視していた2人にも憐れみの目を向けられると、流石に心にくるものがある。

オレが高校に行かず、自堕落な生活をしていた理由。それは単純にバカだからである。志望校全部落ちて、私立に行ける金も無いオレはそのまま学校生活を諦めたのだった。

 

「やっぱり、前よりバカになってたね」

 

「そりゃ受験の時は流石に勉強してたしな」

 

「今も書類仕事の手伝いしてるんだろう?それなのに漢字も全部ダメなのは?」

 

「……ケータイって便利だよね」

 

「まあそんな事だとは思ってたよ。というわけでイチゴ、君も勉強合宿に参加ね」

 

「嫌だ!勉強なんかしたくない!」

 

「あんた、流石に少しは勉強した方が良いと思うわよ」

 

「……」

 

あんな事故があったのに本気で心配してくるピンクのちっこい方の心遣いが逆に痛かった。

そんなこんなで結局オレもこの合宿に参加する事となった。

 

 

 

***

 

 

 

「すまん、ヒナ。都合上このまま先生と泊まり込みになりそうだ」

 

『わかった。理由は聞かないでおく』

 

「……そうして貰えると助かる」

 

勉強会が終わり、夜の自由時間に空き教室からヒナに電話をかける。バカ過ぎて一緒に補習です、とは言いたくなかったので適当にぼかして言ったが、良い方に解釈してくれたみたいだ。

 

「大体1週間くらいらしいから、終わったらすぐそっちに行くよ」

 

『別に来なくてもいい』

 

「んな寂しいこと言うなよ……。今は条約締結に向けて忙しいだろうし、せめて通常の仕事は残しといてくれればオレやるからさ」

 

『……そういうことなら、任せる』

 

「おう、任せろ」

 

そのまま電話を切ろうとする。廊下から女子連中の話し声が聞こえるし、シャワー室が空いたのだろう。

 

『待ってイチゴ。女の子の声が聞こえるのだけど』

 

「ん?ああ、先生が勉強教えてる女の子達の声だろ。一緒のとこで生活してるから、そこはしゃーないな」

 

『……』

 

「……ヒナ?」

 

結構外の雑音も拾うんだな〜なんて考えていると、電話の向こうが無音になる。通信状況が悪くなったかと疑っていると、

 

『……イチゴ、ビデオ通話にして』

 

「んぇ?まあ、良いけど」

 

少し語調が強くなったヒナにそう言われ、ビデオ通話に切り替える。ケータイの画面に制服姿のヒナと見慣れた執務室が映る。

 

「切り替えたけど、これなんか意味あるのか?」

 

『別に無い。ただ、イチゴが風紀を乱してないか監視してるだけ』

 

「いやいや、いくら女子との共同生活だからってそんな事……あ」

 

『……なに?』

 

風紀云々を言われ、やらかした事を思い出す。鋭い目付きのヒナに為す術などあるはずも無く、オレは自白と懺悔を同時にしながら今夜は長くなりそうだと思うのだった。

 

 

 

 

 




2時間後、

『以後、気をつけるように』

「……了解」

『……あと、明日もこの時間に電話する』

「え?」

『1日問題がないか確認する』

「わ、わかったよ」

『ビデオ通話でするから、そのつもりで』

「はいはい。まあオレとしてもヒナの顔見たいし異論は無いよ」

『……っ!』

「あれ?ヒナ??……電話切れてるし」


ーーーー


ってな訳で3章やっていきます!
更新はこんな感じで遅くなるとは思いますが、見守ってもらえると幸いです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。