という訳で3話です。
時系列とか極力合わせて行きたいと思っていますが、おかしいと思っても温かい目で見てもらえれば幸いです。
今回コロコロ視点変わります
読みずらいかもですがよろしくお願いします
山楯イチゴは不思議な男の子だ。
初めて出会った時は、とても失礼で粗暴な人だと思った。いきなり小学生扱いするし、武装した集団に生身で飛び込んで行くし。つい撃ってしまって気絶させちゃった後、心配になって戻ったらケロッとした顔で起き上がって帰って行く姿を見た時は目を疑った。そして、風紀委員の基礎戦力向上に丁度いいとも思った。私の攻撃を受けてあそこまで平気な人は見た事無かったから。
そこから先生経由で風紀委員の手伝いをして貰ってからも、最初の印象はあまり変わらなかった。言葉遣いは荒いし、行儀も良くない。
けれど、意外と周りを良く見ているんだと分かった。手伝いが必要な所には率先して行くし、他の人が気づかない所もフォローしていた。私にコーヒーをいれたあの時も、きっとそう。
そして、底抜けにお人好し。困っている人を見逃さないで助けに行く。出来ない事でも出来る事でフォローして負担を減らす。そんな事ばかりしている。頼まれ事や面倒な事だって、最初は文句を言う割に最後までやりきっている。
そんな彼だから、いつの間にか周りに人が多くなっていた。頼られたら面倒くさそうにしていても、最後には『しょうが無いな〜』なんて言ってやり遂げてしまう。そんなだから本当は訓練の手伝いだけのつもりが、実戦にも参加して、風紀委員の幹部の様な立場にまでなっていた。
そして、立場が変わったからと言って、態度が変わる訳でも無かった。雑用も進んでやるし、大変な業務もこなしていく。そのせいか、みんな彼に頼ってしまっていた。私もそう。
彼の雰囲気は独特で、一緒に居ると安心する。先生から感じる大人の余裕とは別の、居心地の良さがある。我儘を言っても、甘えてしまっても、許してくれる緩さがある。
だから、このままじゃ駄目だと思った。
ここ最近、イチゴに頼り過ぎていた。その結果、この間なんて風邪を引かせてしまった。シャーレの仕事で1週間程居なくなるこの機会に、前の様にしっかりしようと思った。
……ただ、昨日の女の子との会話は少しだけ、嫌な気持ちになった。
私たちの……私の味方だと言ってくれたのに、女の子と楽しそうに話すイチゴを見て、裏切られた気持ちになってしまった。そのせいで、電話を切って電源まで落としたのは流石にやりすぎたと反省してる。
今日の夜に、電話で謝ろう。そう思っていた。
けれど、
「ヒ、ヒナ委員長!これを!!」
冷たくしてしまった私には、罰が下った。
***
「……これはどういうことかな?」
「……私も困惑しています。詳しい発生元も不明で、ただ情報だけが出回っている状態です」
トリニティの人気の無い一角、そこで先生とナギサは対峙していた。ただ、前回のような雰囲気とは程遠く、睨みつけるような先生の眼差しにナギサは冷や汗を流していた。いつもの余裕のある先生とは違う冷たい雰囲気に、ナギサは動揺を隠せずにいた。
「はぁ……。すまない、少し態度が悪かったね。ただ、イチゴは私の都合で連れて来た子だ。今回の様なしがらみとは関係無く自由にいて欲しかったんだ。そこだけは理解して欲しい」
「わ、わかりました。この件については私の方で調査を進めて行きます。……ちなみにですが、この情報はデマという事で間違いないですか?」
「ああ、間違いないよ。イチゴがゲヘナを……ヒナを裏切る様な真似は絶対しない。私が保証する」
「わかりました。では引き続き先生には補習授業部の方をお願いします」
「了解。何か進展があったら教えてね?」
そう言って立ち去る先生を見送った後、ナギサは大きな溜め息をついて脱力する。そして、思う。
先生と山楯イチゴの関係は本当にただの幼馴染なのか、と。
***
「……マズイことになった」
「ああ、これは由々しき問題だ」
白州とオレは互いに目を合わせ、深刻なこの状況をどうしようかと頭を悩ませていた。まさかこんな事になるとは思ってもみなかった。
「とにかく、これが他の人にバレたらまずい。早急に対処しないと……」
「そうだな。だけどイチゴ」
「なんだ?」
「あんな爆発音がしたらーー」
「今の音はなんですか!?って、ええ!?」
「……きゅぅ」
「ーーこうなる」
「ですよね〜」
諦めたオレは足元に目を移す。そこにはシスター服の女の子が目を回して倒れていた。
ーーーー
事の発端は夜、ヒナとの電話の件で寝れずにいたオレはトラップを仕掛けている白州と遭遇。聞けば侵入者対策との事だったのでそれならばオレもと手伝う事にしたのだ。そのまま一緒にせっせと仕掛けていたのだが、途中から悪ノリして威力強めのを数箇所仕掛けたのだ。無論、白州も一緒に悪ノリに巻き込んで。その結果、
「マジですみませんでした」
「い、いえ!事情は分かりましたから。お気になさらないでください」
「……あなたが天使ですか?」
「ええ〜!?」
「イチゴ、いい加減にしないと怒られる」
「う……はい。でも本当にすまなかった。大した怪我も無くて安心してるよ」
トリニティのシスターフッドから来たケモ耳シスターーー伊落マリーを複数のトラップに巻き込んだ挙句、最後に爆発させるという鬼畜の所業を行うこととなってしまったのだ。
「ふぅ。たまたま先生が不在で助かった。女の子爆発させるとかマジ怒られる案件だしな」
「もう!何事も無かったから良いですけど、今度から気をつけてくださいね!アズサちゃんも!」
「はーい」
「反省している」
「……アズサちゃん、モモフレンズグッズ当分お預けです」
「!?ま、待ってくれヒフミ!本当に反省している!!」
ちゃんと反省はしているものの、それはそれとして侵入者対策の実地テストとしては申し分無い結果にオレと白州が満足しているとヒフミがそんな事を言い出し、白州が慌てて弁明を始めていた。……アレ好きなのヒフミだけじゃ無かったのか。ヒフミに詰め寄っている白州を眺めていると、横から下江と浦和が話しかけてきた。
「あんたもちゃんと反省してるの?」
「してるって。ただ、侵入者対策がちゃんと機能してる確認が出来て良かったとも思ってる」
「それってどうなのよ……」
「あらあら。でもイチゴ君、これでマリーちゃんが怪我してたらどうするんですか?」
「そりゃ……責任はとるけど」
「そうですか〜。そういえばマリーちゃん、お腹の所に傷がありましたよ?」
「……え?」
「さっき治療の為に見たので本当ですよ。ねぇ、マリーちゃん?」
「え、ええっと。……はい」
「あの感じだと傷跡が残るんじゃないでしょうか〜」
「……すみませんでした!」
「え、ええ〜」
目を背けて肯定する伊落に向け、オレは地面にめり込む様な勢いで土下座した。困惑する伊落の声が聞こえるが、頭を上げることは出来ない。
「イチゴ君、責任取るんですよね?」
「ハ、ハナコさん!?でもお腹の傷は……」
「ああ、分かってる。……オレと結婚しよう、伊落」
「ええぇ!?」
「安心してくれ、貯金はある。何一つ不自由な暮らしはさせない。必ず幸せにしてみせる」
「ええっと!?」
「だから結婚しよう、伊落……いや、マリー」
「っ!?」
マリーの手を取り、片膝を着きながらそう宣言するとマリーの顔はボフンという音が聞こえそうなくらい一瞬で茹で上がった。混乱しているせいで目はグルグルと泳ぎ、握った手すら赤くなっていた。……ところで、
「なあ浦和、こんな感じで良いか?」
「……へ?」
「あらあら。バレてました?」
「そりゃあな。怪我してるのは本当だろうけど軽傷なんだろ?」
「ふふ、そうですね〜。それにしても、随分ノリノリでしたね」
「オレをおちょくるなんざ100年早いぜ。伊達におちょくられまくって生きて無ぇよ。相手の話に乗ってやるのも朝飯前だ」
「これは一本取られましたね〜。ところで、大丈夫ですか?」
「は?一体なに……が……」
浦和が指指した方を見ると、マリーとは別の意味で赤くなっている下江。笑っているのに怒気を感じるヒフミ。いつもより刺さる視線の白州。その3人がマリーを庇う様に立ち、
「乙女心を弄ぶなんて最低!!」
「イチゴ君、これは流石に酷いです」
「イチゴ、君はそんな人間じゃないと思っていたんだがな」
「……本当にすみませんでした」
下手に暴力を振るわれるよりダメージがデカかった。なおマリーは気にしていない、と少し赤みが残る顔でオレをフォローしてくれた。……本当に結婚して貰っても良いですか?
キヴォトス各所、
「ねぇ聞いた?あの話」
「あ、知ってる知ってる!」
「アレでしょ?ゲヘナの肉壁のこと」
「結構ガチらしいよ」
『山楯イチゴは、ゲヘナに侵入させたトリニティのスパイ』
噂は街を走る。しかして、当の本人には行かず。
裏切り者のレッテルを貼られている事に気付かぬまま、2人はすれ違う。
ーーーー
とりあえずの一言。
どうしてこうなった?
いや本当に思ってたの以上の方向に走り始めちゃったのでちゃんと着地出来るか不安になってきました。イチャイチャドコ……?
ちなみに後半の茶番はイチゴが学校生活に浮かれている性です。
それではまた次の機会に。