風紀委員の肉壁くん   作:阿良良木歴

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遅くなってすみません。
ヒナが出せないと筆の進みが……


夜遊びと火遊び

「あん?合宿所抜け出して出歩く?」

 

「そうだ。イチゴも一緒にどうかと思って」

 

電気が回復したものの、勉強する雰囲気でも無くなったので自由時間になった。そこで先生を探して電話を借りようと思っていた時に声を掛けられた。意外にも誘ってきたのは白州だった。

 

「抜け出すって……良いのか?そんなことして」

 

「大丈夫みたいだぞ。ヒフミ達も乗り気だ」

 

「ん〜、まあいいか。オレも行くよ」

 

まだそんなに遅い時間じゃないし、ちょっと買い食いするくらいなら特に問題ないだろう。電話は寝る前に掛ければいいだろうし。部屋に戻り着替えを済ませてみんなと合流する。学校の敷地からこっそり抜け出し近くの商店街に足を運ぶ。この辺りはトリニティが近いこともあり、あまり近寄って来なかったから少し新鮮な気分だ。

 

「んで、なんか目的地とかあるの?」

 

「いえ特には。強いて言えば、こうして夜の街を散策するという背徳感を楽しむことでしょうか」

 

「浦和がそういう性格だってこと、最近理解してきた」

 

「うふふ。それでは、もっと深く理解してみますか?」

 

「遠慮しとく。……こっちに寄ってくんな」

 

笑顔のままにじり寄ってくる浦和に恐怖を感じて距離をとる。正直、浦和の表情からいまいち感情が読み取れなくて苦手だ。バカだから腹の探り合いなんて出来ないし、感情と表情を一致して欲しいもんだ。

堂々と、それでいて楽しそうな浦和とは対称的に、下江はなんだかかなりビクついていた。周りをキョロキョロと見ているし、動きもなんだかコソコソしている。

 

「下江、なんでそんなにビビってんの?」

 

「しょ、しょうがないでしょ!私は正義実現委員会の一員なのよ!こんな所、ハスミ先輩に見られたりしたら、すっごい怒られちゃう」

 

「正義実現委員会って確か、ウチでいう風紀委員みたいなやつだろ?」

 

「そうよ。留年の危機回避の為に今は参加出来ない状況なのに、遊んでる所を見られたら……」

 

「あーうん。なんとなく理解した」

 

確かに勉強しないで夜遊びしてたら絶対怒られる。オレも似たような立場だからわかる。自分の立場で考えると、イオリなら真正面から怒るしチナツはコンコンと説教してくる。アコちゃんは鬼の首を取ったような勢いでヒナに告げ口することだろう。ヒナは、1発良いのを貰ったら後はなんだかんだ許してくれる。……ヒナの顔を思い出したら、なんだか急に会いたくなってきた。

 

「?ちょっと、どうしたのよ?」

 

「すまん、ちょっと感傷に浸ってた。それと下江、そんなにコソコソしてたら逆に目立つぞ。浦和みたいに堂々としてろよ」

 

「そ、そうなの?」

 

「ああ。堂々としてるとむしろ怪しまれなくて済むぞ」

 

オレの今までの経験上、堂々としてれば結構なんとかなる。元いた場所で仲間と深夜徘徊してたことを思い出す。

 

「悪いことでも胸張って歩いてれば疑われることは少ないぞ」

 

「悪いことはしちゃダメでしょ!それでも風紀委員!?」

 

「それにしても、ハスミさんは後輩たちに優しい方だと聞いていましたが……そんなに怒ったりするんですか?」

 

オレが怒られたタイミングで浦和が話に入ってくる。オレは他の学校、特にトリニティのメンツとは面識が無いためハスミ先輩っていうのがどういう人なのか全く分からない。ただ、下江の反応を見るに怖い人っていうより尊敬してる人に失望されたくないって感じだし、悪い人では無さそうだ。

 

「勿論、優しい先輩よ!文武両道だし品もあってすっごい人なんだから!ただ……怒ると本当に怖くて」

 

そういうと、下江は最近あった怒ったエピソードを話してくれた。

簡単にまとめると、ゲヘナに訪れたハスミ先輩に万魔殿の会長が『デカ女』と言ったそうな。それで体型を気にしているハスミ先輩が激昂して、ダイエット宣言をしたと。……。

 

「あ〜すまん、ゲヘナに入り浸ってる身として謝罪する」

 

「べ、別にイチゴが悪い訳じゃないでしょ」

 

「それでもだよ。一応風紀委員の一員だしな。ただなあ、オレ万魔殿と関わったことなくてな。会長の顔と名前もあやふやなんだよ」

 

何故かヒナに万魔殿と関わる事を頑なに拒否された。いつもは不干渉気味のアコちゃんまで絶対に関わるなと言って来た為、交流がまるでない。曰く、関わってもいい事がない、百害あって一利なし。……ゲヘナの生徒会なんだよな?

 

「イチゴ、こんな所にスイーツ屋があったぞ。中に入ろう」

 

「白州、意外と甘い物好きなんだな」

 

「イチゴ君、アズサちゃんだって女の子なんですから、そんなこと言っちゃいけません」

 

先を歩いていた白州が美味しそうな店を見つけたらしく、オレの腕をグイグイ引っ張る。白州の意外な一面に驚いていると一緒に戻ってきたヒフミに怒られてしまった。なされるがままに引きづられていくと、そこにはファンシーな感じの店構えが。

 

「ここの限定パフェが凄く美味しいらしいですよ」

 

「パフェか。悪くない」

 

「……あ〜。オレ、ラーメンの気分だから違う店ーー」

 

「何を言っている。行こう」

 

「ほら、イチゴ君も一緒に」

 

「さあ行きましょう〜」

 

「あ゙あ゙〜!」

 

ファンシーな店構えに怖気付いたオレを、右腕を白州に左手をヒフミから取られ後ろから浦和が押すという布陣に囲まれ、抵抗虚しく店に押し込まれてしまった。下江はビクビクしながらさらに後ろから入ってきていた。

というか、この状態他の人から見たら女の子侍らせてる嫌な奴じゃん。そう思った矢先、聞き覚えのある乾いた音を聞いた気がした。

 

 

 

***

 

 

 

「いらっしゃいませ。何名様でしょうか?」

 

「5人だ」

 

店に入ると店内は思いの外落ち着いた雰囲気になっていて安心する。白州とヒフミが店員と話している間にキョロキョロと店内を見渡す。夜だからかそこまで混んではいなく、数人お客さんがいるくらいだった。

 

「限定パフェは売り切れてしまったらしい」

 

「直前に来た別のお客さんに取られちゃったみたいです」

 

「マジか。こんな時間帯でも食べに来る人いるんだな」

 

そこまで遅くは無いとはいえ今は夜。晩御飯の時間だし夜に甘味を食べるのは体型を気にする女性にはなかなかハードルが高いように思うが、それ以上の魅力が限定パフェにはあるのかもしれない。

 

「まあ無いもんはしょうがないだろ。ヒフミ、なんか別のでおすすめとかある?」

 

「えっと、そうですね……。それなら」

 

「ーーあら?」

 

切り替えて違うのを注文しようとヒフミとメニューを一緒に見ていると、不意に近くから声がかかる。振り向くと、黒髪ロングの女の人がいた。整った顔立ちと落ち着いた雰囲気、全身黒の制服のせいか、女の子って感じでは無く大人の女性のような気がしてくる。

 

「え、あ。は、ハスミ先輩!?」

 

「あぁ、この人が」

 

「貴方は?」

 

「申し遅れた、オレはシャーレ所属の山楯イチゴ。……まあ、ゲヘナ風紀委員長の犬って言った方がわかりやすいか」

 

「ああ、貴方がそうなんですね。私は正義実現委員会の羽川ハスミです。よろしくお願いします」

 

「こちらこそよろしく」

 

下江の反応と言葉を聞いて、噂のハスミ先輩って事に気づく。一応オレなりの丁寧な挨拶をしてみたが、ゲヘナの名前を出した辺りで少しだけ目が細くなっていた。やはりというか、あんまり印象は良くないみたいだ。補習授業部の連中があまりにも気にしないから忘れていたが、こういった反応が普通だ。

というかこの人、かなり身長が高い。挨拶の為に立ち上がって来たが、オレと同じか、少し高い気がする。女の子の中じゃ高めの浦和が羽川先輩の隣にいると小さく見える。

 

「それで、山楯さんと補習授業部の皆さんはどうしてこちらに?しかもこんな時間帯に」

 

「あ、あああ……」

 

「今は先生からの要請でな、補習授業部と一緒に行動してるんだよ」

 

「……い、イチゴ?」

 

青褪めて狼狽する下江の前に体を出して隠すように立つ。後ろから小声で名前を呼ばれるが、今の状態の下江にやり取りさせるのは酷だろう。

 

「そうでしたか。ですが、補習授業部に外出の許可は降りていないはずですが」

 

「そこについては、オレが無理矢理全員連れてきた」

 

『!?』

 

「勉強ばっかだと疲れるだろ?だから良い息抜きになればいいと思ってな。規則違反なのも承知の上だ」

 

「……」

 

オレの発言に補習授業部全員が驚く。下江に至ってはオレの右腕を握っちゃってるし。

ただまあ、これが1番丸く収まるやり方だろう。オレは部外者な訳だし、罰しやすい。他のメンツは補習授業部以前にトリニティの学生だ。今後の生活の事も考えれば変に波風立てない方が良いだろう。

暫しの沈黙の後、羽川先輩が口を開こうとする。ーーと。

 

「それにしてもハスミさんも奇遇ですね!こんな時間帯にパフェを3つも!確かダイエット中だとお聞きしたのですが?」

 

「え!?あ!な、何故それを……」

 

「ふふふっ!分かります。悪しき欲望に導かれここまで来てしまったんですよね?」

 

「……え?」

 

「そうして欲望のまま振る舞った結果、理性を取り戻した頃には取り返しのつかないほどめちゃくちゃに」

 

「先程から一体何の話を!?」

 

「落ち着け浦和」

 

唐突に話に割り込んできた浦和がパフェとダイエットに関して言及したかと思えば、なんか凄いことを言い出した。羽川先輩の座っていた席に目を向けると、そこには確かに空の容器が並んでいた。……こんな時間帯に食べたのか。しかも3つも。

 

「んんっ!立ち話も何ですし、こちらの席に座ってはどうですか?」

 

「……それじゃあ、お言葉に甘えて」

 

そう言って席につく。近かった順に座ったからか、オレが下江と浦和に挟まれた席になってしまった。下江に関しちゃまだオレの右腕掴んだままだし。

まあ席に着いたはいいものの、この話題は既に決着が着いた様なもんだ。オレらの外出は当然規則違反だが、羽川先輩のこの状況では強く言うことは難しい。自分からダイエット宣言をしているんだから、尚更。

 

「この件については互いに見なかったということで」

 

「……それが一番良さそうですね」

 

そこからは、下江の勉強状況を聞いてきて褒めたり応援の言葉を掛けたりしていた。話で聞いていた通りの良い先輩だと思った。ヒフミや白州なんかも下江の頑張りの事を伝えていて、なんというかとても良い物を見た気がする。

 

「こういうのが青春って奴なのかね」

 

「あらあらイチゴ君。賢者タイムですか?」

 

「もっと違う言い方ってもんがあると思うんだが!?」

 

隣りの浦和に変な茶々を入れられていると、羽川先輩の携帯が鳴った。そこで少し席を外した羽川先輩を待つこと数分、不意に大きい声が聞こえた。

 

「なんですって!?ゲヘナが!!」

 

……ものすごく、嫌な予感がする。

 

 

 

 

 




ハスミ通話中、

「ね、ねぇ」

「ん?」

「さっきは……ありがと。庇ってくれて」

「なんだそんなこと。どっちにしろオレも同罪なんだし気にし無くていいよ」

「どうでも良くないでしょ!アンタが怒られる所だったじゃない!」

「下江の代わりに怒られるんなら安いもんだ」

「っ!?」



ーーーー

というわけで、少々原作から乖離していきます。
先生が出てこない理由は前回同様。ですが、そこが今後の分岐点になる予定です。
というわけでまた次回。
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