風紀委員の肉壁くん   作:阿良良木歴

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完全にオリスト入っちゃってます。
苦手な方はすみません。


裏切りの正体を知っているようで知らない

ーー息が苦しい。呼吸が上手くいかない。

朦朧とした意識の中でそう思う。深く息を吸い込んだ時に口と鼻を圧迫される感覚に陥る。呼吸が上手く出来ず、また意識を失いそうな感覚の中顔に被せられた物が取られた。

 

「っは!はぁ……はぁ」

 

「おはようございます」

 

体が酸素を求め、自然と呼吸が荒くなる。呼吸が落ち着いたタイミングで声を掛けられた方を見ると、ふわふわした赤髪の女の子が気だるげに濡れタオルを持っていた。

 

「……アンタは?」

 

「私は棗イロハ。万魔殿の者、と言えばこの後の事もある程度理解出来るでしょう」

 

そう言われ自分の状況に気付く。服を脱がされ上半身裸で椅子に縛られている。最近縛られてばかりだな、と場違いな事を考えながら今後の展開を察する。

 

「山楯イチゴ。これから尋問を開始します」

 

 

 

***

 

 

 

《各校に潜入し情報を仕入れていたスパイ!》《ゲヘナの中枢まで潜り込み、掌握しようとしていた!》《何人もの女生徒を手篭めにしようとしていた大罪人!!》

 

「……他にも色んな情報が飛び交っています」

 

「根も葉もない、って言い切れれば良かったけど……」

 

「……」

 

ゲヘナ学園、風紀委員会の一室には重苦しい空気が流れていた。理由は明確で、イチゴがスパイ容疑及びその他の余罪で拘束された事だった。今は嬉々として確保を行った万魔殿によってどこかに監禁されている。

証拠も無しの不当逮捕であれば異議申し立ても出来たであろうが、机の上には証拠となる写真の数々が置かれていた。

 

「こちらはミレニアムの一室に入る姿、アビドスの方達と食事をとる姿。トリニティの正義実現委員会の副委員長に携帯端末で何か情報を送っている写真もあります」

 

「イチゴ君はシャーレ所属ですが、ゲヘナ風紀委員として活動している姿が派手な分あまりそういう認識がされていません」

 

「他校の生徒にとっては、ゲヘナが各校にスパイさせてるようにも見える訳か」

 

「……」

 

エデン条約締結のデリケートな時期も相まって、ゲヘナへの風当たりは強くなるだろう。その事もあってか、万魔殿が率先してイチゴを拘束しゲヘナ学園はイチゴとは何も関係が無い、むしろ被害者側であると対外的に示したかったのだろう。締結目前の今は大丈夫だろうが、締結後に万魔殿から風紀委員会に対して何かしらの不当な要求が来るだろう。

だが、それも悲痛な表情で言葉を発しないヒナからすれば些細な問題だった。その視線の先にある写真には。

 

「それから……あぁー。女の子2人と腕を組んでる写真と裸の女の子と抱き合ってる写真……とかだね」

 

「他にも女生徒と2人でコソコソ抜け出している写真やパンツを覗き込んでいるような写真まで……。あの男は一体何をしているんですか!!」

 

机の上に置かれた写真にはそういったいかがわしい物まであった。実際の出来事は差し置いて、その場面を切り取ればそういう関係の写真と見えてしまう。

 

「イチゴ……」

 

「ひ、ヒナ委員長!イチゴ君がこんな事するとは思えません!」

 

「そ、そうだ!きっと何か事情があるはずだ!なんとか面会して話を聞けば!」

 

現在、風紀委員とイチゴは面会禁止となっている。

状況的に、イチゴと関係の深い風紀委員会を面会させることは危険とされ、面会すれば風紀委員会も共犯の疑いを掛けられかねないからだ。通常であれば関係なくゴリ押しするだろうが、今は条約締結前。1つの行動次第で導火線に火をつけるも同義だった。

 

「……。2人ともありがとう。もう、大丈夫」

 

「ヒナ委員長……?」

 

今まで沈痛な面持ちで顔を伏せていたヒナが、全員に向け顔を上げる。その表情は、今まで鎮圧してきた生徒に向けるのと同じく冷酷。

 

「山楯イチゴは、テロリストと仮定。エデン条約締結に向けて、私達はすべき事をするだけ。……イチゴがいなかった時と何も変わらない」

 

誰1人声を上げず、その指示に従う。一人ずつ部屋を去っていき最後の1人になったヒナは窓から空を見上げた。イチゴをいないものと言ったヒナの口調は、自分に言い聞かせてるようだった。

 

 

 

***

 

 

 

「あの、面倒なので早く喋って貰った方が楽なんですけど」

 

「だから……げほっ!やってねぇ……って、言ってんだろ!」

 

ゲヘナの一角。そこでイチゴは尋問ーー拷問と言っても差し支えない扱いを受けていた。水を張った桶に何度も何度も顔を沈められ、酸欠で気を失えば水を顔に掛けられ強制的に起こされる。物理的耐性の強いイチゴに最も効果的な尋問が、もう何時間も続けられていた。

 

「はぁ、こんな証拠写真まであるのに白を切るおつもりですか?」

 

「それは、実際起きた事故がそう見えるだけだ!悪意のある切り抜きだっつってんだろ!!」

 

「では、これらの不埒な行為は認めると?」

 

「だから事故だって言ってんだろ!?話の通じねぇやつだな!!……グボボボッ!」

 

「……。それくらいで良いですよ。また意識を飛ばされても面倒なので」

 

「……ッゲホッ!ゴホッゴホッ、オエェ!!」

 

「貴方にこんな事を考えつく頭があるとは思っていません。早く黒幕の名前を教えてください」

 

「あぁ?黒幕??……!まさか、先生を疑ってんのか!?」

 

「いえ。ですが、貴方が主犯として行ったには少々粗が多すぎます。必然的に貴方は囮で他の共犯から目を欺く為の行動と考えれば辻褄が合います」

 

「はっ!オレが風紀を乱すような輩とつるむかよ。寝言は寝て言え、赤モップ頭!」

 

「……どうやら、もっと過酷な尋問をお望みの様ですね」

 

尋問は続く。過酷さと苛烈さを増しながら。

 

 

 

***

 

 

 

「すまない……私のミスだ」

 

補習授業部の部室、そこでヒフミ立ちに向け先生は頭を下げていた。出回ってしまった写真、イチゴ以外の顔は上手く写らない様に撮られていたが、見るものが見れば個人を特定することが出来る物であった。

 

「私達のことは大丈夫です!けど、イチゴ君は無事なんですか!?」

 

「……わからない。万魔殿で取り調べを受けている事はわかっているが」

 

「先生の力でなんとか出来ないの!?」

 

「今回の条約締結、私は中立の立場だからどこかに深入りすることは難しい」

 

「そんな……」

 

「……」

 

ヒフミとコハルが先生にイチゴの事を必死で聞く中、アズサは1人眉を顰めていた。ハナコもいつもの微笑みはなりを潜め、難しい表情で何かを考えていた。

 

「……イチゴ君はシャーレ所属、それも先生のサポート要員。そこを話せば、スムーズに解決出来るのでは?」

 

「それも難しい。大多数がイチゴをゲヘナ風紀委員として認識している。言うなれば、私がゲヘナ風紀委員に貸し出しているということ。ここで無理強いしてイチゴを取り返す様な事をすれば……」

 

「先生も共犯とみなされる、という訳ですか」

 

「風紀委員長と会う約束もある。そこで可能な限り情報と釈放の目処を立ててみるよ」

 

「お願いします!」

 

「イチゴはその、エッチなとこはあるけど、悪い奴じゃないから!」

 

「……」

 

先生は教室を後にする。終始無言だったアズサのことは気がかりだったが、それでもまだ手遅れではない。

 

「……まだやり直せる」

 

誰に言うでもなく、言葉を零した先生は廊下を進む。

 

そして、無情にも時間は進んでいくーー。

 

 

 




「ヒナ!」

「先生……」

「すまない、イチゴの件なんだが」

「ああ、それなら問題ない」

「ヒナ……?」

「私は大丈夫よ。いつも通り、なすべきことをするだけだから」



***



という訳で、だいぶ話が逸れてきました笑
今回のヒナちゃんイベ最高だったので早くイベの話を描きたいです。
次回もよろしくお願いします!
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