という訳でちょっと戦闘します
この奇天烈な都市ーーキヴォトスに来てから2週間が経った。最初の説明的なやつを幼馴染の隣で聞いてはいたが、頭の悪いオレにはちんぷんかんぷんで何を言ってるのかさっぱり理解出来なかった。ただなんとなく理解したのは、幼馴染が先生として入った組織ーーシャーレが自由度の高い組織だと言うこと。そして色んな生徒を集めてられて、さらに戦闘活動がどこでも可能なこと。くらいか。
正直それで何になるのかオレにはさっぱり分からず、その場にいた同世代の女の子達にじとっとした目線を向けられた精神的ダメージの方が印象に残ってるくらいだ。それでもまあ、幼馴染が先生としていることは結構重要らしく、オレはそのおまけと言ったところだ。
いや、オレも最初は護衛的立場なのかとも思ったが、生徒が持ち回りで護衛するらしくさらにオレより全然強い為存在意義が無いのだ。その為オレは今ーー
「へぇ〜ここにはこういうのがあんのか」
この都市を散歩していた。ぶっちゃけ元の場所となんら遜色無い生活、さらにそれでお金が入って来るのだ。もはや最高以外の言葉が見つからない。
「でもさすがに、このままタダ飯食らいの給料泥棒ってのもなぁ〜。……ん?」
ヒモまっしぐらな現状に頭を悩ませていると、遠くの方で何やら大きな音が聞こえてきた。相当距離があるのか微かにしか聞こえなかったが、耳を済ますとそれは戦闘の音だった。
『君には自由に動いて貰って困ってる人を助けて欲しい』
「……はぁ、しゃーない。かったるいけど、行くか〜」
幼馴染ーー長くてかったるいからオレも先生って呼ぶか、そのお願いを叶える為に、オレは音の鳴る方へ歩き出す。
なんでもここの生徒は頑丈で死ににくいらしいが、先生は違うから前みたいに自由にどこでも首突っ込める訳じゃないらしい。ホント、アイツの人選は間違えない。
先生が駄目でも、オレなら戦場のど真ん中にだって首突っ込めるだろう。
***
……そう思ってた時期がオレにもありました。
「だぁああ!?」
オレが飛び退いた所に砲弾が着弾する。オレへの直撃は避けたものの、余波によってオレは木の葉の様に吹っ飛んでいく。先生から武装した集団の話は聞いていたが、せいぜい金属バットやナイフ、酷くて拳銃くらいだと思っていた。それがーー、
「戦車とか聞いてないんですけどぉ!?」
おまけに周りにいるのも全身武装した集団、素手でどうにかするには無茶が過ぎる!幸いオレを狙っている訳じゃないから流れ弾にさえ気をつければなんとかなりそうだ。もう1つの問題は、
「考え無しに来たけど困ってる奴とかいんのかよ!?」
そう、とりあえず戦場に飛び込んでみたはいいものの、困ってる人なんぞどこにもいなかった。それもそのはず、戦場となってるこの場所は街の市街地よりも遥か遠く、荒野と言って差し支えない場所なのだ。当然、巻き込まれた一般市民などいやしない。
「くっそぉ、これじゃあ骨折り損だぜ。とにかくここから脱出しないと……って、アレ?」
逃げ道を探して辺りを見渡すと、少し離れた場所に人影が見えた。遠目で見てもわかる白髪に小柄な体躯、小学生くらいの少女の様だった。
「なんでこんなとこに小学生が?……ってそんな悠長なこと考えてる場合か!」
銃弾の雨を掻い潜りながら少女の元へ駆けつける。間近で見ると本当に小さい、小学五年生にも満たないんじゃ無いだろうか。
「おい君!無事か!?」
「え?……誰?」
「通りすがりのお節介焼きのお兄さんだ!とにかく無事なら良かった、早く安全な場所へ……っつ!!」
「……っ!?」
表情の変化が乏しいが少しだけ目を丸くした少女に急いで避難を進めるも、不意に感じた感覚に従い小柄な体を覆い隠す様に抱き締める。直後、背中を襲う無数の衝撃に思わず顔を顰める。横目に見ると、銃を構えた集団が何やら嬉しそうな様子で何かを叫びながら更にこちらへ近付いて来ていた。その様子にオレの頭に一気に血が上る。
「よしっ!ついにあの風紀委員長をーー「幼気な少女襲って何嬉しそうにしてんだゴラァァ!!」へぶぅ!?」
一足飛びに集団の元へ駆けると勢いそのままに先頭の奴の顔面に膝蹴りをぶちかます。吹き飛んだ奴は無視しし、その近辺にいた奴らも同様に蹴り飛ばす。色々あって昔から喧嘩慣れだけはしているから、集団戦であっても臆したりしない。
「なっ!誰だテメェは!?」「さっき銃ぶっぱなしたとこから湧いてきやがったぞ!?」「というかコイツ、ヘイローが……!?」
「一気に喋ってんじゃねぇ!全部聞き取れるかドアホ!!とりあえずテメェら血祭りにあげてやるよ!!」
集団のど真ん中に飛び込みそのまま乱戦に持ち込めばこっちのもん。そのあと、味方同士での相討ちを気にして発砲出来ない事を利用して、集団を血祭りにあげていった。
***
ーー数分後、
あらかたぶん殴ったり蹴り飛ばしたりして戦闘不能にしたら、残りのメンバーは蜘蛛の子を散らすよう逃げていった。軽く土煙を払い、少女の元へ戻るとさっきよりも目を丸くした少女が出迎えた。
「驚いた。あなた、結構強いのね。それに、さっき撃たれた筈だと思うのだけれど」
「褒めてくれてサンキューな。まあそこそこ荒事は慣れてんのよ。それと撃たれたことに関しちゃ、まあ体質でな。普通の奴より大分頑丈なんだよ」
それがオレが多分ここに呼ばれた理由だとも思ってる。先生と昔遊んでて、アイツの目の前でダンプに轢かれた時もケロッとしていたのをアイツは覚えてたのかもしれない。戦車の砲撃は分からないが、拳銃やマシンガンくらいなら耐えれると今さっきので実証している。この感じだとロケットランチャーくらいまではギリ軽傷で行ける気がする。
「まあオレのことはともかく君が無事で良かった」
「私の心配を……していたの?」
身長差があるせいか、上目遣いでそんなことを問い掛けて来る少女にオレは胸を張って答える。
「当たり前だろ!君みたいな幼気な少女をほっとく訳にはいかないからな」
「……は?」
「とりあえず戦闘は終了したっぽいし、君を親御さんのとこまで届けないと……って……」
「……」
言葉を重ねた途中から言いようのないプレッシャーがオレの体を襲う。それは目の前の少女から放たれている。先程までは全く気付かなかったが少女の手には武骨で漆黒のマシンガンが握られていた。
「ええっと……?」
「そういえば自己紹介がまだだった。
ゲヘナ学園風紀委員長、空崎ヒナ。3年生、よろしく」
「ウッソやろ!?どう見積っても小学生にしか!?」
「……あなた、頑丈さに自信があるようだけどーー」
「え、ああ!しまっ!?」
「どれくらい耐えられるか見物ね……」
そう言ってオレへマシンガンの引き金を引かれ、オレが耐えれるのは一般的なマシンガンだけだという結果が刻まれた。
そして、オレが彼女たちーーゲヘナ学園風紀委員会の奴隷となる原因でもあった。