「最近、貴方の行動が目に余ります。山楯イチゴ」
「は、はあ……?」
ゲヘナ学園に通うのにも慣れてきた今日この頃。今日も元気に撃たれるか〜と、呑気に考えていた所、風紀委員の部屋でオレは風紀委員の行政官ーー天雨アコに問い詰められていた。
「ええっと。オレ特に変な事はしてないと思うんですけど?」
「自覚が無いとは重症ですね。シャーレの人間とはいえ、ゲヘナ学園風紀委員に出入りしている者が、風紀を乱しているということを認知していないとは」
「オレが……風紀を?」
「おはよう。ん?イチゴとアコちゃん、どうしたの?」
「お疲れ様です」
風紀を乱しているなんて誤解に困惑していると、イオリとチナツが部屋に入ってきた。何故こんな誤解されているのかは分からないが、二人にオレの潔白を証明するのを手伝って貰おう。
「二人とも聞いてくれ。オレが風紀を乱しているって勘違いでアコちゃん行政官が怒ってるんだ!」
「変な呼び方しないでください!二人もこの男の不埒な行動の数々を目にしているでしょう?」
「おちつけ、二人とも!何で言い争ってるのかはわかった。けど、今回はアコちゃんの思い込みじゃないのか?」
「私もイチゴ君が風紀を乱しているなんて事はないと思いますが……」
二人からの援護にオレは安堵する。ここで3人に責められたら、オレが本当に自覚なく風紀を乱しているなんて事になってしまっているからな。安心していると、納得いかない様子のアコちゃんが、
「いいえ、確かに風紀を乱しています。私がパトロールで見かけた時もーー」
***
『荷物オレが持つよ』
『い、いえ。これ量多いですし』
『大丈夫大丈夫。こういうのは男の仕事だから、気にしないで』
『あ、ありがとうございます』
『どういたしまして。にしても風紀委員も大所帯だから荷物が多くて買い出しも大変だな。声掛けてくれればいつでも手伝うからさ』
『いえそんな!そこまでして貰う訳には!』
『平気平気、好きでやってるだけだから。遠慮しないで言ってくれれば、一緒に付き合うよ』
『えっと、それでは、お願いしても良いですか?』
『おう。いつでも呼んでよ』
『はい……』
***
「ーーという場面を目撃しました」
「って言われても、別に普通じゃないか?」
「私もそう思う」
自信満々に言い放つアコちゃんとは裏腹にオレとイオリは顔を見合わせ困惑する。多分、風紀委員の買い出しで普段一緒に訓練している子と買い出しに行った時の事だろう。別に特筆しておかしな事をしている訳でもないと思っていると、
「……確かにそれはいけないですね」
「やはりそうでしょう!」
「「うそぉ!?」」
まさかのチナツが裏切った。驚くオレとイオリを置いてアコちゃんの隣に移動したチナツはオレをじとっとした目で見つめる。
「イチゴ君の言動は乙女心を弄んでいると思います」
「今の話のどこに乙女心が!?」
「単に買い出しをしに行ったって話だろう!?」
まるで理解出来ない話に2人で猛抗議していると、
「他人事の様に言ってますが、貴女も被害者ですよイオリ」
「なに……?」
「アレは早めに下校出来た日ーー」
***
『買い食いなんて……』
『まあまあ。今日暑いし、オレが勝手に買ってきただけだから。それにほら、アイスに罪は無いだろ?』
『うっ!まあ、そういうことなら……ってあれ?このアイス』
『そうチョコミント。前にミント系が好きって言ってたから好きかなと思って』
『あ、ありがと。……ん、美味しい』
『それは良かった。それじゃあ1口貰うね』
『なっ!はぁ!?』
『ん〜チョコミントも偶に食べると美味いな〜。ん?どうした、イオリ?……ああ、オレのバニラも食べていいよ』
『……っ!このバカ!ヘンタイ!!』
『!?』
***
「いや、確かに買い食いは悪かったと思うけど……」
「私が間違ってた、イチゴは風紀を乱している」
「イオリ!?」
買い食いを見られていることにバツの悪さを感じていると、共犯のはずのイオリがまさかの裏切り。アコちゃんの横に並び立ち、オレが恐れていた3対1の状況になってしまった。
「お前はもっと乙女心を学ぶべきだ」
「買い食いで!?」
混乱するオレに勝ち誇った表情のアコちゃんが詰め寄ってくる。
「反省の色が見えませんね。これでは罰を与えなければ」
「ば、罰?」
「ええ……今後、"ヒナ委員長の犬"を名乗るのやめてください」
「……はい?」
ヒナ委員長の犬ーーそれはオレがここ最近呼ばれている渾名だった。
シャーレ所属のくせにゲヘナ風紀委員に入り浸り、ヒナと行動を共にすることが多いオレにつけられた。他にも『風紀委員の肉壁』『動くタワーシールド』『殺しても死なない男』などなど色々な渾名が巷で流れていた。こういった渾名は訂正してもキリがないから放置しているだけなんだが、
「別にオレが名乗ってる訳じゃないぞ?」
「訂正しないというのは肯定しているのと同義です」
「それはそうだけど……。つかなんでそこまでこだわるんだよ?」
「決まっているでしょう?犬の方がペットより距離が近くて気に食わないんです!」
「私怨じゃねぇか!」
そんな言い争いをしているうちに、ヒナが訪れ全員仲良く粛清された。
『なんで私まで……』という恨みの籠った視線をイオリとチナツから向けられて、正直申し訳なかったと思う。
余談だが、先程までの話をヒナにチクられて追加で折檻された。
折檻後、
「あんまり面倒かけないで」
「納得いかない……けど、ごめん」
「別にいい。……今度の休みにアイス奢ってくれれば。あと買い物にも付き合って」
「それで良ければ喜んで。それじゃあ次の休日に行こう」
「ん、楽しみにしてる」
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一応風紀委員全員出たし、次は閑話で他のとこの子を書こうと思ってます。