ヒナが大好きです!
てなわけでデート回
ソワソワした気持ちでオレは待ち合わせ場所をフラフラしていた。前回の休みから少し間が開いたが、今日はオレとヒナどっちもが休みの予定となっている。そこで前に話した買い物やアイスを食べに行くってことになったんだが、
「これは、デートってことだよな?」
生まれてこの方、女の子と2人で出掛けたことが無い。女の子と関わりが無かった訳じゃないけど、だいたいがグループで遊びに出掛けるくらいで2人きりなんて親密な仲の子はいなかった。
「つか、この格好変じゃねぇよな?」
黒のスラックスに上はグレーのワイシャツ、黒のジャケットは暑いので腕に引っ掛けて持っている。いつもゲヘナ学園に行く時は汚れたり穴が空くので、全身ジャージで行っていた。初めてヒナに連れていかれた時も寝巻きに使っていたスウェットだったし、今更真っ当な格好で行く気が無かったっていうのもある。それでも今回ばかりはジャージで行く訳にも行かず、私服を引っ張り出てきた。……先生がオレの部屋の衣装ケースごとこっちに持ってきていなかったら、ジャージで休日に女の子と出歩くなんて失礼をぶっかますとこだった。
「おまたせ」
「い、いや!オレも今来た……とこ……?」
後ろから聞こえた声に振り向くと、そこにはいつもと変わらない制服姿のヒナ。目元には薄らと隈が出来ている。
「ヒナ、眠そうだけど大丈夫か?服も制服のままだし」
「さっきまで仕事してたから、少し眠いだけ。それに私は制服しか持って無い」
「え、さっきまで?」
「それよりも早く行こう。頼んでた備品関係のお店、バラバラだから」
「備品……。ああ、なるほど」
ーーバチンっ!!
「!?ど、どうしたの?」
「いや、浮かれてたオレの脳ミソに喝をちょっと……」
「??」
突然頬を自分で叩いたオレを少し心配そうに見つめるヒナから気まずそうに視線を逃がす。休日に二人で出掛ける。これだけ聞けば確かにデートっぽい。ただ内容の買い物が風紀委員の備品調達。つまり、仕事の延長だ。ワーカホリック気味のヒナのことだ、買い物って名前にしておけば休みに仕事をしてないって名目になると考えたのだろう。おまけにアイスを食いに行けばさらに休みっぽい。これは最初からデートなんてものでは無かったわけだ。
そんな訳で浮かれたままヒナの隣にいるのは失礼なので、気持ちを締め直しヒナと向き合う。
「それで?最初はどこの店?」
「最初はここで、次がここ。後は他にも三、四軒回る」
「回る順番とかは決まってる?」
「別に。時間指定の物も特にない」
「じゃあ他の所も教えて。……なるほど。だったら、最初をこっちにしてそこから近くのを巡って行けば1番最短で回れると思うよ」
「……!ほんとだ。イチゴはこういうのは凄い」
「だろう?多趣味だと移動時間の短縮とか得意になるんだよね」
ヒナと並んで歩き出す。まだ午前中だし、早くに回れればヒナが休む時間も捻出できそうだ。
***
「これで粗方終わりか?」
「そうね、後は1箇所で終わり」
両手に荷物を持ちながらヒナに問い掛けると、後1件だけだと知る。重さはそこまででも無いが、結構な量がある。
「もしかして、これ全部ヒナ1人で回ろうとしてた?」
「そんなことは無い。急ぎのが数件増えただけ」
「結局は1人でやろうとしてたんじゃねぇか……。オレに言えばいつでも付き合うよ」
「別に、そこまでしてもらわなくても」
「好きでやるって言ってんだから、甘えりゃいいんだよ」
「……本当に必要な時は、呼んでもいい?」
上目遣いで不安そうにオレを見つめるヒナを撫で回したくなる衝動を押さえ込みながら、オレは胸を張って答える。
「良いに決まってんだろ。なんならどうでもいい時でも呼んで良いんだからな?寂しいとか甘えたいとか」
「そっ!そんなこと思ったりしない!」
「そうか?そんなこと無さそうだけど……。お、いい物みっけ?」
「話を逸らさないで!……?何してるの?」
「コインロッカーに荷物を入れてる。もうすぐ昼だし飯食いに行くにはこの荷物は邪魔だろ?」
「あと1件だけだから回った方が楽だとーー」
ーーくぅぅ。
ヒナの言葉に割って入るように、可愛らしい音が聞こえた。ついつい見つめてしまったヒナの顔が徐々に赤みを帯びていく。
「つーわけだ、昼飯行こうぜ。この近くに先生オススメの美味しい店があるらしいんだよね」
「ま、待って。今のは私じゃない!」
「はいはい。オレが腹減っただけで、それにヒナを付き合わせるだけだから」
「絶対わかってない!」
言い訳をするヒナの言葉を聞き流し、コインロッカーに荷物を突っ込んだ後オレは先生オススメのお店へと歩みを進めた。最初聞いた時は遠い場所だと思ったが、今いる場所から行けばすぐに着きそうだ。
んで、店に到着。オシャレそうな外観に臆しながらも店内に入ると、案の定女の子が好きそうな感じの雰囲気のお店だった。テーブル席に案内されメニューを開くと洋食中心の料理名が美味しそうな写真と共に載せられている。……あまり疑いたくは無いが、先生変な気を使ったんじゃないだろうな。
「ヒナは決まった?」
「うん、私はこのパスタにする」
「はいよ」
店員さんを呼びオレのグラタンとヒナのパスタ、それと食後のコーヒーを2人分頼んだ。軽く仕事の話をすること数分、料理が運ばれてきて食事を開始する。
「そういえばヒナは買い物の後何か予定はあるのか?」
「無い。アコに今日はオフの日にされてるから」
「……この買い物もバレたら怒られるんじゃない?オレが」
「……その可能性はある」
「おい!……まあだったら、買ったやつはオレがそのまま風紀委員の部屋に持っていくから、ヒナは終わったら家に帰ってゆっくり休んでよ」
「そんな、さすがにそこまでさせるのは……」
「いいっていいって。ヒナは頑張り過ぎなんだから、たまには息抜きしないと」
「でも……」
食事も終わり、コーヒーを啜りながら今後の流れを話し合う。あと1件だけだし上手く行けば昼過ぎくらいにはヒナが家に帰れるだろう。仕事を途中で任せるのが申し訳ないのか食い下がる。と、
「ん〜?やや、君はいつぞやのマットレスくれた気前の良いお兄さん〜」
「え?ああ、小鳥遊先輩!」
「小鳥遊……ホシノ?」
通路側から掛けられた声に振り向くと特徴的な見た目の小鳥遊先輩が数人の女の子と一緒にいた。1人は銀髪に犬か狼の耳が生えたどこかクールそうな女の子、それと黒髪に眼鏡の耳が尖った女の子。もう1人はベージュ系の髪色に……でっか!?いや何がとは言わないけど。
心做しかヒナから刺すような視線を感じるので残りの1人に目を向けると、
「……げ」
「ア、アンタは!」
あの日オレを蜂の巣にした猫耳ツインテールがいた。余計なことを言われる前に口封じをしたかったのだが、
「おい、ちょ待っーー」
「ホシノ先輩と一緒に寝てたヘンタイ男!!」
間に合わなかった。周囲の温度が2、3℃下がった気さえする。特に、ヒナからの視線が物理的に刺さってるんじゃないかってくらい痛い。
「イチゴ、どういうこと?」
「いや、変な意味じゃなくて、そういう事は全く無かったというか」
「そうそう、2人で気持ち良くなっちゃって一緒に寝ただけだよ〜」
「小鳥遊先輩ちょっと黙って貰えます!?」
必死に弁解を試みるも、小鳥遊先輩の援護という名の誤射によって状況は悪化。ヒナの視線はさらに痛くなるし、他の女の子達にはゴミを見るような目で見られている。
「風紀委員が風紀を乱しては……」
「ひっ」
「ダメ!」
「あぶぁ!?」
流石に店内で銃ブッパは考慮したのかそれともオレへの温情か、頭への鉄槌がオレに与えられたお仕置きだった。
「いや〜悪い事しちゃったね〜」
「というかゲヘナ風紀委員長の攻撃を受けて……もしかして、死!?」
「平気、そのうち起きる」
「いやいや、先生と同じなんでしょ?だったらーー」
「いてて、頭割れるかと思った」
「「「!?」」」
「……ん、戦ったらおもしろそう」
ーーーー
長くなりそうだったので、一旦区切ります。
あと、最終編でみんな狂ってるので今から駆け抜けるか悩み中。