留置場で拘束中のミホノブルボントレーナー。彼は、拘留期間が過ぎるのを大人しく待っていた。担当ウマ娘が下手な暴走をしない事を三女神に祈りつつ日々を過ごす。
だが、神という存在は、何もしない。だからこそ神なのだ。こう言うときに祈るべきは、悪魔である。対価と引き替えに願いを叶えてくれると評判だ。こう聞くと、どちらが神なのかと思いたくなる。現代社会において、無償で叶う物などたかが知れている。
トレーナーは、既に対価を支払っている。金銭という、現代社会で大事な糧を。そして、悪魔……と言っても差し支えないウマぴょい保険会社の者が留置場までやってきた。
「ブルボントレーナー。とりあえず、ワンセグ機能付きのスマホです。後、各社新聞とウマ娘関連情報誌です」
「……警察官が副業っていいのかよ」
警察管理下にある留置場に物を持ち込む。それが難しいのは事実だ。
「違います。警察官の方が副業なんです。ウマぴょい保険会社は、各方面に手が長くないといけませんからね。有事の際だけ、こう言う本職の仕事をしているんです。割と儲かるんですよ。なんせ、保険会社と警察官の双方から給料が貰えますから」
「まぁ、そんなことはいい。しかし、今回の件、おたくの不手際じゃないのか。完全にスキャンダルだろう、これ。こういう事態にならないために、高い保険料を払っていたと思うのだがね」
トレーナーという職業において、スキャンダルは辛い。今後の活動に大きく支障がでるのは間違いない。これを未然に防げなかった。
「我々とて、神ではないんですよ。後、確認ですが――ウマぴょいしてますか?場合によっては、ほとぼりが冷めるまで海外へ出国して貰います」
「してないに決まっているだろう。お前等まで、俺をどういう人間だと思っていやがる。俺は、全てブルボンのためにだな……」
その時、スマホ画面で『ミホノブルボン会見』というニュースが飛び込んできた。そして、すぐさま番組を見るべく集中する。ブルボントレーナーは、目を副業警察官に向けるが知らぬと返答する。
『この度は、お忙しい中お集まり頂きありがとうございます。この場で、マスターへの誤解を解こうと思います。無実の罪で、拘留されているマスターを見るとエラーが発生します』
『ゴミカス新聞社のナマゴミです。誤解と申されましても、あなたの勝負服は些かデザインが尖っておりませんか?正直、無茶なトレーニングをさせられており潰れてもおかしくなかった程と聞いております。距離適正を克服し3冠を取るためと聞いておりますが……それも何処まで本当のことか』
まずいまずいまずい。この流れはまずい!とブルボントレーナーは本気で思っていた。あの純粋培養されたウマ娘ミホノブルボンがどのように返事をするか目に見えたからだ。自分が横に居たならば、絶対に割り込んで回答したのにそれができない。
『マスターは、全て私の事を考えて行動してくれておりました。勝負服についても、少しでも軽く、動きやすい事に重点を置くべくマスターの部屋にあった物を参考に致しました』
ざわざわと、会見の場がどよめく。
トレーナーの部屋に担当ウマ娘を連れ込んで、あの勝負服の参考になる資料を……とか、爆弾発言でしかない。
『ミホノブルボンさんの勝負服は、トレーナーの趣味が混ざっているという認識で宜しいのでしょうか?』
『その通りです。後、マスターは私に無茶なトレーニングなどしておりません。その証拠を、本日はお持ち致しました』
電子機器に対して、壊滅的に相性が悪いブルボンが持ち出したのが、ボイスレコーダーであった。しかも、昨今の精密な物とは異なり年代物で彼女が使ってもギリギリ壊れない。
【叡智!! 叡智!! やっぱり、叡智は最高のトレーニング材料だ】
という、恐ろしい音声データであった。これが、記者側にはどのように聞こえたかと言えば…
【H!!H!!やっぱり、Hは最高のトレーニング材料だ】
となる。
ざわざわざわ
『こ、これは大ニュースだ。急いで、明日の朝刊の原稿を……いや、この後にあるライスシャワーさんの会見も聞いてからに~』
………
……
…
ブルボンの記者会見を聞いて、留置場の床に崩れ落ちるトレーナー。だが、彼は不幸中の幸いであった。留置場に居る限りファンの暴動に巻き込まれないからだ。
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