ウマぴょい保険   作:新グロモント

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そなた(2)

 

 ファインモーションのトレーナーの失敗は、籍を入れていない内縁の妻と子供が居る事を担当ウマ娘に一切伝えてなかった事だ。当然だが、未婚既婚の有無を伝える義務もないし、教える義務もない。トレーナーの中には、それを利用して担当ウマ娘と疑似恋人みたいなポジションでやる気を常に絶好調に保っている猛者すら居る。

 

 絶好調というステータスは、ウマ娘育成において大変なアドバンテージになる。

 

 大人のトレーナー側の考えとしては、リップサービスのつもりなのだが担当ウマ娘側からしたら、違うという事が事実だ。そのせいもあり、トレセン学園は婚活会場だという風評被害も発生している。

 

 事実であっても認める事ができないのだから、風評被害と言うほかない。

 

「トレーナー。今日から新メニューのラーメンが始まるんです。アイルランドに帰る(・・)前に、食べ収めにいきましょうね」

 

「あぁ、そうだね」

 

 トレーナーに残された猶予は少ない。

 

 トレーナーの知らない所では、着々と爵位授与の準備もされている。それに加えファインモーションの婚約発表などが予定されている。この状況下で、トレーナーにとって、幸いだったのがアイルランドと言う事だ。資源国であるサウジアラビアなどであった場合は、ウマぴょい保険会社でも厳しいと言える。

 

 ファインモーションに連れられてトレセン学園の外へ出かけていく二人。そんなトレーナーを遠くで見つめる彼の同僚達は、行く末を見守っている。同じ保険加入をしている身であり、王族相手であっても保険が適用されるか気になっていた。

 

 毎月高い保険料を払っているのだから、いざという時に役に立つかは重要である。

 

………

……

 

 ファインモーションのトレーナーの手元に届けられた携帯電話。驚く事にウマぴょい保険会社に電話をして僅か一時間で彼の部室に届いた。トレセン学園の中には、既にウマぴょい保険会社の手の者が入学している。

 

 その携帯電話に一通の計画書が届く。その中身を確認して、トレーナーは本気か!?と思った。だが、状況が状況だけに納得する。覚悟が決まっている担当ウマ娘から逃げるには、担当トレーナーも覚悟を決めねば失礼というもの。

 

 ラーメンを食べ、公園を散歩し、ショッピングし、担当ウマ娘を門限までに送り届けたトレーナー。年齢的に女子高校生に対して、社会人である男性が最大限の接待プレイをしているから、こんな状況になる。

 

 手を抜かないのはトレーナーの職業病であるが、この期に及んでここまでやるのかと様子を見守るウマぴょい保険会社の者達は遠くから見ていた。

 

 仲睦まじい二人であるが、その日の終わりは遠くなかった。

 

 間もなく二人で帰国するという、ある日の夜。一通の悲報がファインモーションに届く。SP隊長からの言葉が、ファインモーションには理解できなかった。

 

「もう一度、言ってくれますか?」

 

「殿下。殿下のトレーナーが、一時間前に不審者に刺されて意識不明の重体です」

 

 幸せな時間とは、短く儚い物である。それは、掬い上げた水のように。

 

 

 

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