ファインモーショントレーナーの容態が悪化した数日後。
とある会場で、彼の親族を含む関係者達が喪服に身を包み最後の別れの時を過ごしていた。その中に、一際美しい女性…ファインモーションも喪服で参列している。目が充血しており、ここ数日間泣き続けていた事が窺える。
「ねぇ、聞いた?トレーナーを刺した男性……彼女のファンで、トレーナーに逆恨みしていたんですって」
「聞いた聞いた。なんでも、未成年だから少年法で守られるとか、ウマッターにあげていたとか。Z世代っていうのかしら?物騒になったわね」
文字通り何も知らない参列者達が、今回の悲惨な事件について色々と騒ぎ立てる。
ここ数日で気持ちの整理を付けた彼女だが、不謹慎ですと参列者を叱り倒しそうになった。だが、SP隊長が止めに入る。大事なトレーナーのお葬式で、王族たる彼女が粗相などしたら全国メディアのさらし者間違い無しだ。
この期に及んで、トレーナーの顔に泥を塗るような行為だけは避けたかったので、我に返るファインモーション。
彼女の元にご年配の男女。トレーナーのご両親が、挨拶に来た。
初の対面がトレーナーのお葬式になるなど、悲しいと言うほかない。
「貴方がファインモーションさんですか。うちのバカ息子が、本当に世話になったね。こんな別嬪さんに、最後の最後でこんな迷惑掛けるなんて…本当に……ほんとうに」
泣き崩れるトレーナーの母が、深々と頭を下げる。勿論、母として息子が犠牲となった要因であるウマ娘に対して思うところはある。だが、そんな思いも、ファインモーションを一目見て、トレーナーの母親は誤った考えだと気が付いた。
彼女の方が、もっと苦しんでいると。
「トレーナーの御母様どうか、顔を上げてください。トレーナーは私のせいで……申し訳ありません」
本当に心が痛む光景だ。
そんな光景をよそに、参列した同僚トレーナー達が分厚い香典袋を積み上げていく。無駄に高給で使い道がないお金が、ウマぴょい保険会社傘下の葬式屋から、どこぞで第二の人生を送り始める男の元へと届くシステムだ。
お葬式は何事もなく進行された。そして、火葬場へ送られる。
最後の別れを惜しみ涙する彼の担当ウマ娘ファインモーション。
………
……
…
ガチャリ
火葬場の扉が閉められた。
火葬場内部のエレベーターが起動し、地下へとトレーナーが移動する。そして、変わりとなる生け贄が火葬場へと送り込まれた。
ウマぴょい保険会社の者が、死んだように眠るトレーナーに対して緑の薬品が入った注射器を使う。そうすると、不思議とトレーナーの目がぱっちりと開き覚醒する。
「あぁぁぁぁぁぁぁーーーーー!! 罪悪感で胸が張り裂けそうだ。なんで、聴覚が正常に機能しているんですか」
「あまり大声を出さないでください。ウマ娘の方々は聴覚が優れているのですから。善は急げです。新しい身分証と戸籍、ご希望の北海道に住居も用意しています。良い人生を」
アグネスタキオン謹製の薬の効果は絶大であった。ウマ娘の五感すら誤魔化す程の効果は彼女しか作れない。ウマ娘を騙すのにはウマ娘の力が必要だ。
トレーナーは、既に後戻りなど出来ない。一度決めた覚悟を再度思い出し、彼は第二の人生へと旅立つ。元々、トレーナーは有能な人材だ。何処へ行っても、暮らしていけるだけの能力がある。
後は、目立つような事はせず、静かにひっそりと余生を送るだけだ。
………
……
…
それから、半年後……北海道で有名になりつつある
今日も家族の為、毎日一生懸命働くイケメン店主。
開店時間少し前、ラーメンの仕込みをしており、彼はカウンターに背を向けていた。
ガラガラと扉を開けて入店してくるお客―――開店の札も出していないのに、実に失礼なお客様だ。
「すみません。うちの開店時間は11:30ですので、後30分待ってください」
「じゃあ、30分ほど私とお話しましょう。死んだはずのヒトがなぜ、こんな場所にいるか。ねぇ、
ウマ娘からは逃げられない……この世界の真実である。
次は、「マスター」「お兄ちゃん」もいいな。
だが、両名ともゲームでお迎えできていないんですよね。悲しい。