誤解されがちだがレースで活躍するウマ娘は、高等部だけでなく中等部で既に才能を開花させる者もいる。高等部のウマ娘を牛蒡抜きような強者もいる。相性の良いトレーナーと日夜切磋琢磨した結果である事は疑いようがない。
休日のサポートも当然忘れない。厳しいトレーニングをこなす英気となればと思い昨今の流行にもアンテナを高く張っている。これは、中央トレーナー試験における必須事項だ。年頃のウマ娘達と会話のキャッチボールすら出来ないトレーナーなど不要な人材。
だが、誤って一線を踏み越えてしまうとこのような事態になる。
土曜日に担当ウマ娘が、某ネズミに国に行きたいと言われ完璧なエスコート計画を立てた。夜のパレードを見終えた帰りに事件はおこる。急な豪雨に見舞われて、ウマ娘もトレーナーもびしょ濡れになってしまう。
お風呂上がりに温かいココアまで用意した。
「お兄ちゃん。中央トレーナー試験を合格したんだから、『据え膳食わぬは男の恥』って言葉は知っているよね?」
「………」
お風呂上がりの担当ウマ娘は、何故かトレーナーのワイシャツを着ている。トレーナーの予想では、お風呂の横に乾燥機付きの洗濯機があるから、てっきり乾いてから出てくるかと思っていた。
「じゃあ、言わないでも分かるよね。ここで問題です。今、カワイイ貴方の担当ウマ娘が、なんとワイシャツ一枚で担当トレーナーのベッドに座っています」
「すまなかった、今椅子を用意するね」
何事も無かったかのように立ち上がり、客間から椅子を持ってこようとするトレーナー。だが、カワイイ担当ウマ娘の顔が真顔になる。無駄に顔が良いウマ娘が真顔になると、恐いという事実が新たに判明した。
だが、落ち着いている担当トレーナー。
今こそ、国内最難関と言われる中央トレーナー試験を合格した頭脳の出番だ。
「お兄ちゃんも面白い冗談をいうんだね。本当に分からない?ねぇねぇ、にぶちんなのもそろそろ許されないぞ」
「よし、分かった。冷蔵庫に冷凍エビがあるから、エビチャーハンでいいよね。お風呂に入った後は、ご飯だったよね」
ポケットの中に忍ばせた端末から、ウマぴょい保険会社に助けを求めた。
状況が非常に宜しくない。中等部のウマ娘を連れ込んでいるだけでも、万が一があるのだ。事実、過去にそう言う事例が発生してトレーナーとウマ娘がこの業界から消えた。
【三分で駆けつける】
短いメッセージだけが、彼の端末に届く。
長いようで短い時間。トレーナーという立場を考えても、この状況で騒ぎが大きくなれば、明日には全国ニュース間違いなし。担当ウマ娘の体調管理のため、担当トレーナーの部屋でシャワーを浴びせましたなんて……字面だけでも犯罪臭がする。
「ねぇ、お兄ちゃん。カレンチャンは、カワイイよね?」
「あぁ、カワイイ。世界一だ。君の担当トレーナーである俺が保証する」
「だよね~。じゃあ、何時も頑張っているカワイイ カレンチャンが今、何を考えているか分かるよね?」
「わ、わからないな~。良い子でカワイイ カレンチャンは、エビチャーハンを食べたら直ぐに寮まで帰らないとね。さーーーて、作るぞ~」
「カレン、今日は悪い子になっちゃ……ぅ…ねぇ」
バタン
カレンチャンが急に眠りに落ちた。手に持っていたコップが床に落ちてココア色に絨毯が染まる。対ウマ娘用無色無臭睡眠薬。ウマぴょい保険会社から提供される護身グッズの一つだ。
ピンポーン
『ウマぴょい保険会社の者です。返事が無ければ3秒後にドアを蹴破って突入します。32…』
「はいはい!無事です。今、開けます」
カレンチャンの担当トレーナーは、直ぐに保険会社の制圧部隊を部屋に入れる。当然、現場の惨状から、ぴょいしたのかという確認があるが、何事もなかったと告げた。
『対象を確保したので、これから中央トレセンの寮まで我々が護送します。コチラにサインをください。後、睡眠薬はウマ娘に
「どうもありがとうございます。……もしかして、貴方達って元重賞レースに出てました? 体幹やトモの発達が素晴らしいと思って」
ウマ娘を制圧できるのはウマ娘のみ。そんな事から、ウマぴょい保険会社の制圧部隊は、元重賞レースに出るレベルの猛者が多い。
『あぁ、掲示板入りはできなかったがな。では、今後は不用意に担当ウマ娘を連れ込まないように』
こうして中等部ウマ娘カレンチャンのトレーナーは、一度目の攻防に勝利した。