仮面ライダーW Bの天才/メモリの適合 作:ダイヤモンドリリー
原作25、26話です。
2日に一回投稿になったというのに字数だけが増えてストックがなかなか増えません。どうしよこれ。
「フィリップ。お前宛に郵便だ」
翔太郎がフィリップに封筒を渡す。
「差出人の名前は無し。興味深い」
住所と『フィリップ様』とだけ書かれた真っ黒な封筒。まさかまたメモリが届いたとかじゃないよな。
チーン!
盛大に鼻をかんでいる亜樹子。ちょっとうるさい。
「あ、亜樹子。どうした?」
「この本よ!これが最高に泣けるのよ...」
時期的に花粉症かと思ったが、本を読んでいたようだ。なんと珍しい。けれどこんなティッシュの山を積み上げることになるほど泣けるのだろうか。
「『少女と人形の家』最近文学賞を取り、ベストセラーになった作品さ」
「この主人公の少女が健気で健気で...!」
亜樹子を軽く無視しながら問題の封筒を開封するフィリップ。はたしてその中身は...
「ギジメモリ...と、新しいガジェットの設計図だ」
「何だって⁉︎でも、誰が?」
「シュラウド...とにかく、このガジェットを作ってみよう」
「作るのは俺に任せてくれ。ついでに何か改造でもしてやろうかな」
「あ、ああ。ほどほどに...な」
俺とフィリップはギジメモリとメモリガジェットを完成させるためにガレージに入る。さて、いったい何ができるのやら。
「リコちゃん...今頃どうしてるんだろう?」
亜樹子たちが人形を手にしたまま帰ってきた。
「おい亜樹子、いつまで人形とにらめっこしてんだよ?そんな事やったってな、何も起こんねえよ。な?」
「ほっといてよ!」
「え?」
『ほっといてよ!』
「うわっ⁉︎」
「やっぱり⁉︎」
人形が喋ったと驚き飛び上がる翔太郎。しかし、その人形の背後から作り出したメモリガジェットが飛び出す。
『ほっといてよ!ほっといてよ!』
「ああ、いたいた。まったく、勝手にどこか行っちまうんだから...」
「何だ、戦兎か。完成したのか?これ」
「ああ。録音した音声をあらゆる声に変換できるガジェット、フロッグポットさ」
代わりにフィリップが答える。
「翔太郎」
「ああ」
「亜樹ちゃん、何か喋ってみてよ」
フィリップはメモリを亜樹子に向ける。
「やめてよ。今、そんな気分じゃないし」
「はい、もらった」
亜樹子は断るもフィリップはそれを録音する。
『FROG』
録音したメモリをフロッグポットに装着する。
『やめてよ。今、そんな気分じゃないし』
先程録音した声が翔太郎の声で再生される。
「あ、俺の声だ」
『やめてよ。今、そんな気分じゃないし』
翔太郎の声で喋りながら、人形のほうへ移動するフロッグポッド。
「そういえばどこまで改造したんだ?」
「あー...うん。元々の構造が緻密でね。爆音波を飛ばして敵の耳を潰す機能くらいしかつけられなかったよ」
「それだけで十分大改造じゃねぇか!何やらかしてんだ!」
「ここ押したらなるから気をつけてね」
「あ...!あたし、前にも会ってたんだ!」
「会ってた?って誰に?」
「リコちゃんよ!堀之内の娘!それに、この人形にも!」
「どういう事だい?」
「あたしが、大阪から出てきてすぐの頃...」
どうやら、橋の上で泣いている少女を見かけ、近づいてみると橋の下にはあの人形があった。すぐさま亜樹子はそれを拾いに行ってやり、そしてその時に
『お怪我した?どっか痛い所ある?・・・そっか、全然大丈夫か!はい、大丈夫だって』
と、人形と会話ができているように振舞ってみせたようだ。こういうの子供は簡単に信じてしまうからな...優しくしすぎると残酷なことになってしまうこともある。
そして亜樹子は
『何か困ったことがあったらここに来て』
と、作ったばかりであろう名刺を人形に忍ばせてやった...ということらしい。
「そっか...だからあの子、私の所に」
「おい亜樹子!どこ行くんだよ⁉︎」
人形を抱え、亜樹子は事務所を飛び出す。翔太郎も追いかけるように出て行ってしまった。
事務所でフィリップと留守番をしていた。俺にはミュージアムのドーパントは倒せないからで、フィリップはいつも通りだ。
「翔太郎?」
入り口のほうで物音がする。フィリップが翔太郎らが帰ってきたかと思いドアに近づこうとした瞬間、急に吹き飛ぶドア。現れたのはクレイドールドーパント。
「くそっ!なんでここに!」
慌ててガレージに逃げ込む。
『隠れるな!』
「その声は...人形使い?」
まさかパペティアードーパントが操っているのだろうか。クレイドールドーパントからパペティアードーパントの声がする。どうやら人形の視界も共有しているようだ。
「しまった!」
あわててスタッグフォンで翔太郎らと連絡を取ろうとするが、次々と繰り出される攻撃を避けるうちに落としてしまう。
「駄目元でも俺が変身するしか!」
「いやだめだ戦兎!くっ...!」
クレイドールドーパントは腕の銃をフィリップに突きつける。
『答えろ!鳴海亜樹子はどこにいる!』
「堀之内!お前の狙いは照井竜じゃないのか?」
「あの刑事は私を罠にはめるために挑発しただけだ!だが、あの小娘は違う...あいつだけは許せん!」
フィリップを守るためにファングメモリが飛び出してくる。
「ファング⁉︎」
しかし、ファングメモリはクレイドールドーパントに吹き飛ばされてしまう。前に見たよりもパワーが上がっているような...
「まずい、やられる...!」
「やっぱり変身を...っ⁉︎」
覚悟したその時、アクセルガンナーが現れる。
「あれは、アクセルのユニット...?」
アクセルガンナーは、自動操縦による主砲の一撃でクレイドールを粉々に粉砕する。それによりクレイドールドーパントを繋いでいた糸も切れたようだ。
『あの小娘だけは...絶対に探し出してやる!』
パペティアードーパントは俺たちから情報が得られないのを察したのか、亜樹子を探し出すためにこの場を立ち去っていった。
『ここは一体...?』
クレイドールドーパントはいつものように再生する。
『よくも私に、こんな辱めを!許さない!』
怒った様子ですぐさま出て行くクレイドールドーパント。幹部を操るだなんて...凄まじい能力だ。
脅威から逃れたフィリップは、亜樹子に電話をかけ繋がらないことを確認すると、すぐさま翔太郎に連絡する。
『フィリップか?』
「亜樹ちゃんの携帯が繋がらない!そこにいるのかい?」
『いや、亜樹子ならさっき1人で出てったぜ』
「マズい!人形使いは亜樹ちゃんを狙っている!」
『何だって?照井!亜樹子が危ない!』
「俺は...」
亜樹子を助けるため俺も行こうと思ったが、下手に加勢して暴走してしまえば場を混乱させるだけだ。クレイドールドーパントでさえ操れるのだ。暴走状態で操るなんて芸当もできるかもしれない。
「戦兎はここで待っていてくれ」
うん。フィリップにも言われた。俺は1人待機することになった。
「亜樹子は本当に人形の声を聞いたのか?フィリップはそれが事実ならパペティアーのガイアメモリが、操られた人形に何らかの作用を及ぼしたのだろうと言った。でも俺には思える。あの人形が本当に堀之内の事を思って、亜樹子に依頼しに来たんじゃないか、って」
パペティアードーパントの事件の顛末を相変わらずローマ字で報告書に打ち込む翔太郎。
『FROG』
「所長、君は美しい。最高の女性だ」
『所長、君は美しい。最高の女性だ』
亜樹子はフロッグポットに声を吹き込んで竜の声で再生して喜んでいた。
「だってさ、だってさ!」
「またそんな使い方して...」
「俺が作った発明品で遊ばないでくれよ...」
『所長、君は美しい。最高の女性だ』
だめだこいつ聞く耳持たねぇ。
「真実は分からない。だが、まあいい。この街にはミステリアスと言う言葉がよく似合う。美しい謎は謎のまま、それも悪くない」
こっちもいつも通りだ。ハードボイルド気取るならローマ字は本当にやめた方がいいと思う。そろそろ本気で英語教え込もうかな。
「そういえばフロッグポット役に立ったみたいだな。どうだったどうだった?」
「爆音波は使ってねぇぞ」
「そっかぁ...」
せっかく頑張って改造したというのに...ちょっと残念だ。
「俺も加勢しにいけばよかったな...フロッグポット使いたい」
「あんまり使う機会がないことを願うぜ...」
「ちょっ、それフラグ」
突然ビルドフォンが鳴り出す。ドーパント探知機が反応したようだ。
「ほら翔太郎が変なこと言うから...」
「え、これ俺のせいなの?」
「誰かついてきてくれ」
フロッグポットを持って外に出る。せっかくならちゃんと使わないとな。
「あっ、おい待てって。置いてくな!」
俺と翔太郎はドーパント反応の出た場所へ急行した。
「あいつ...ロボットドーパントか」
物陰から覗き込む。どうやら俺を待っているようだ。
「頑張ってみるけど暴走したら止めてくれよ」
「頑張ってくれよ...」
ビルドドライバーを腰につける。
『RABBIT』『TANK』
ラビット!タンク!ベストマッチ!
「あいつらがハザードメモリを起動するまでは問題なし...と。変身!」
鋼のムーンサルト!ラビットタンク!イエーイ!
ビルドへの変身を完了する。
「ハァッ!」
勢いよくロボットドーパントのもとに駆け出し、キックを叩き込む。
『んぐっ⁉︎...なんだ、来てたのか』
少しよろけたようだが、すぐに立て直してこちらを向く。
『実験を始めようか』
「できれば戦いたくはないんだがな!」
ツインブレイカーを避けて頭に向かって右足で蹴りを放つ。かがむことで避けられてしまうが、今のは囮に過ぎない。すぐさま左側、タンクサイドで回し蹴りを放ち側頭部に直撃させる。
「どんどん行くぜ!」
ドリルクラッシャーを取り出し、斬りつける。ロボットドーパントはツインブレイカーで防御しようとするが、こっちとしてはそれが狙いだ。相手に攻撃をする隙を与えない。
『そうはさせない!ハッ!』
突然ビームが飛び出してラビットサイドに命中する。おかしい。さっきまでアタックモードだったはずなのに。
「まさか俺の攻撃を利用してビームモードに変えたのか⁉︎」
『正解』
ロボットドーパントの放つビームを避ける。こちらもドリルクラッシャーをガンモードに変えて撃ち込むも、武器の性能差が激しい。命中してもあまり効果がなく、ビームに当たれば打ち消されてしまう。
「まずいな。時間が長引けば...」
ハザードオン!
「やっぱり来たか...」
ハザードメモリがマキシマムスロットに挿さっていた。
ガタガタゴットン!ズッタンズタン!ガタガタゴットン!ズッタンズタン!
「チッ、やるしかないか。ビルドアップ!」
マキシマムスロットを叩きつける。
アンコントロールスイッチ! ブラックハザード!ヤベーイ!
ハザードビルドに変身する。
「暴走する前にケリをつけさせてもらうぞ」
先ほどよりも何倍も速い速度でロボットドーパントに近づき、パンチを放つ。ツインブレイカーで防御されるが、それを貫き顔面を勢いよく殴り抜く。
『ぐっ!』
何度も何度も蹴りとパンチを叩き込む。どれだけ持つのかわからない。だから制御できる短い時間のうちに出来るだけ多く攻撃を叩き込まなければならない。
吹き飛ばされていくロボットドーパントに一瞬で追いつきタンクサイドで攻撃する。
「久しぶりのラビタンは最っ高だ!」
やはりラビットタンクは相性がいいみたいだ。基本にして最高。全てのベストマッチフォームの中で1番の適合率を叩き出したこのフォームは、ハザードを使うことでさらに強化されている。
「まだまだ行くぜェ!」
ツインブレイカーを取り出し、高速回転したレイジングパイルをロボットメモリを挿したであろう首に突き刺す。
『ア゛ッッガァァア゛ア゛ッッ!!』
ロボットドーパントが叫び声を上げる。
「あと少し...ぐっ⁉︎くそッ!」
ロボットドーパントの手からゲルのようなものが飛び出し、俺の体を吹き飛ばす。あと少しでメモリを抜けそうだったというのに。
「もう一度...うわっ!」
もう一度レイジングパイルを叩き込もうと足を踏み込んだ時、バランスを崩して倒れてしまう。
『そろそろか。逃げなければ!』
『PHOENIX』
チャージメモリ!入らなーい!
フェニックスメモリを取り込んだロボットドーパントは炎の翼で大空に飛び立ち、逃げようとする。
「左右のバランスが...タンクサイドが動きづらい...?なるほど、そろそろ潮時ってことか」
まだちゃんと動くラビット側でなんとか立ち上がる。
『TAKA』『GATLING』
タカ!ガトリング!スーパーベストマッチ!
「ビルドアップ!」
ブラックハザード!ヤベーイ!
ホークガトリングのハザードフォームに変身する。
「安定した。これならいける!」
ソレスタルウイングを展開し、逃げるロボットドーパントを追跡する。そしてホークガトリンガーを取り出し、リボルマガジンを回転させる。
「逃がさない!」
トリガーを引き、二十発の弾丸を発射する。ハザードメモリのおかげで強化されているのか、弾速が前よりも上がっていた。前の感覚で偏差撃ちをしていたのでほとんどの弾丸が逸れてしまうが、一発当たっただけでロボットドーパントが落ちてくる。威力もしっかり上がっているようだ。
『…なるほど、ハザードはそうやって対処できるのか。メモリになって仕様が変わったのか...?』
「何をぶつぶつ言ってやがる!」
墜落したロボットドーパントに向かって特殊弾丸、バレットイレイザーを撃ち込む。
「さっさと締めに...くそっ!」
マキシマムを発動させようと、ガトリングメモリに手を伸ばそうとした瞬間、タカサイドの動きが急に鈍りだし、ソレスタルウイングが消滅する。
「メモリを変えるか」
『KAIZOKU』『DENSHA』
落下しながらメモリを入れ替える。
海賊!電車!スーパーベストマッチ!
「ビルドアップ!」
ブラックハザード!ヤベーイ!
海賊レッシャーのハザードフォームに変身し、なんとか五点着地をして安全に着地する。そしてカイゾクハッシャーを取り出し、ロボットドーパントに近づく。
『なに⁉︎』
おそらく近づいてきたことに驚いたのだろう。今は弓として使うつもりはない。いつ暴走するのかわからないのだ。チャージしている時間すら惜しい。カイゾクハッシャーの末弭と本弭の部分についているカトラスアンカーエッジで直接斬り裂きにいく。
「遠距離だけが弓じゃねぇんだよ!」
電車サイドの足裏についている車輪を利用し、地面を走りながらカトラスアンカーエッジで斬りつける。
「んぐっ⁉︎また...かよ...!」
海賊サイドが動きづらくなる。だんだん暴走までの時間が短くなってきているように感じる。
「別の...メモリ...!」
『DRAGON』
メモリを取り出そうとしているうちにドラゴンメモリが起動してしまう。間違って押してしまったようだ。
「…こうなったらこいつで!」
『LOCK』
ドラゴンメモリとロックメモリを取り出し、起動する。
ドラゴン!ロック!スーパーベストマッチ!
『おい待て!そいつは...!』
「ビルドアップ!」
ブラックハザード!ヤベーイ!
キードラゴンのハザードフォームに変身を終えた...その時だった。
「ガッ...ア゛ッッ!!」
ロックサイドが全くと言っていいほど動かない。そして右半身、ドラゴンサイドがものすごい熱を帯びて焼けるほど熱くなる。
『こいつ...!』
ロボットドーパントがビルドドライバーに手を伸ばす。
それが最後に見た景色だった。
物陰に隠れて戦いを見ていた翔太郎は、戦兎の動きがおかしいことに気づいた。
「あいつ暴走しやがった!」
よくみると、キードラゴンのロックサイドがドラゴンサイドに侵食されていっているように見えた。ロボットドーパントがビルドドライバーに手を伸ばした瞬間、両半身全てがドラゴンと化した戦兎がその手を掴む。
『まず...!』
『PHOENIX』
ロボットドーパントがフェニックスメモリを首に当てようとする。しかし、その前に戦兎がパンチを放ちフェニックスメモリを遠くに弾き飛ばした。
マックスハザードオン!
空いていたもう一つのマキシマムスロットにハザードのギジメモリが出現する。
オーバーフロー!......ヤベーイ!
マキシマムスロットを叩きつけると、オーバーフローモードに切り替わる。
『クソがっ!』
手からゲルを発射して戦兎を弾き飛ばし、拘束から逃れるロボットドーパント。どうやらそのまま逃げることを選んだようだ。戦兎に背を向けて走り出す。
ハザード!マキシマムドライブ!
それを見た戦兎は、逃がさないとでも言うようにマキシマムを発動させる。
ハザードフィニッシュ!
ロボットドーパントの真後ろまで一瞬で追いつくと、飛び越すようにジャンプする。そして顔面めがけて後ろ回し蹴りを叩き込んだ。
「ッッッッ!!!!」
ロボットメモリが首から排出され、痛みに声も出ない佐藤太郎。
「倒したか...あとはあいつを止めるだけだな」
翔太郎は腰にダブルドライバーを取り付ける。そして戦兎の方を向いたその時だった。
「戦兎の奴なにを⁉︎」
戦兎が、佐藤太郎の首を掴み、持ち上げていた。
「まずい!」
『行っちゃダメだ翔太郎!』
ダブルドライバー越しに飛んでくるフィリップの静止を振り切り、翔太郎は戦兎のもとへ向かう。何があったとしても、人を殺させるわけにはいかないのだ。
戦兎は佐藤太郎の首を掴みながら、こちらを向く。その生気のない目にぞくりと恐怖を感じるも、今はすべきことをするだけだ。
「これでもくらえ!」
『FROG』
フロッグのギジメモリをフロッグポットに挿す。そして戦兎の言っていたボタンを押し、戦兎の方へフロッグポットを投げつけた。その瞬間、爆音波が鳴り響く。
メモリに飲み込まれていたとしても、耳を潰されれば流石に堪えるようだ。戦兎は佐藤太郎を掴む手を離し、耳に手を当てる。
「ッ!!」
自分の耳もやられたが、そんなことを気にしている暇はない。ほんの僅か、戦兎の動きが阻害されている間にドライバーを閉じ、ドラゴンメモリを抜き取った。
無事に戦兎の変身を解除することができたようで、戦兎はぐったりとした様子で地面に倒れ込んだ。
「ああ...まだ耳がキーンとする。まさかここまで爆音だとはな...」
軽くフラフラとしながら落ちていたロボットメモリを拾い上げる。
「さて、佐藤太郎。大人しくお縄についてもらおうか」
「…嫌だね。助けてもらった恩はあるけど、ここで捕まるわけにはいかない」
佐藤太郎は勢いよく駆け出す。確かあっちは戦兎がフェニックスメモリを弾き飛ばした方向だ。まさかドーパントになって逃げるつもりだろうか。
「待て!」
「どこだどこだ...ない⁉︎くそっ!」
慌てて追いかけるが、どうやらメモリを見つけることができなかったようだ。
「あいつの仕業か...?チッ!尚更捕まるわけにはいかなくなった。帰らせてもらう!」
「うおっあぶな⁉︎」
トランスメモリーガンを撃ち込んできた。地面に命中し、砂埃が辺りに舞う。それが晴れた時、もうすでに佐藤太郎の姿はなかった。
「逃げられちまったか...さて、フェニックスメモリはどこだ?」
佐藤太郎が見つけられなかったということは、どこか見えにくいところにあるはずだが...
いくら探してもフェニックスメモリを見つけることはできなかった。
「…消えた?」
見つけられないなら仕方ない。後でまた探すことにしよう。今は戦兎を連れ帰るのが先だ。
「おーい起きろ戦兎!...起きねぇなこいつ。また爆音波鳴らしてやろうか」
流石にそれはやめて、普通に連れ帰ることにしたのだった。
「ビルドドライバーでの暴走の原理がわかった」
俺は目が覚めてすぐにそう言った。
「どうした急に」
「翔太郎は見たんじゃないか?ドラゴンサイドがロックサイドを侵食するところを」
「…見たけどそれがどうしたんだよ」
「ハザードメモリにより、使っている二つのメモリの力と、そのメモリに対する適合率がだんだんと上昇していく。でも、その速さは一定じゃないんだ」
「というと?」
「ラビットとタンクだと、かろうじてだけどラビットの方が元々の適合率が高く、適合率が上昇しやすい。そしてドラゴンとロックだと、ドラゴンの方が圧倒的に適合率が上だ。そのせいで先に適合率が上がりやすい」
「適合率がドライバーの防護システムを上回ると暴走するって話だったよな」
「そう。そしてその適合率の上がりやすさの差によって左右のバランスが崩れていき、やがて片方のメモリがもう片方を侵食して暴走する。暴走までの速さはお互いのメモリの適合率の差によって変わるのだろう。ラビタンは遅く、キードラゴンは早く暴走する」
「なるほど...そういえば何度もメモリを変えてたけどそれはなんでだ?」
「ハザードで適合率が上がるのはそのメモリに対してだけだ。だから別のメモリに変えれば一度リセットすることができる。うまく運用すればハザードを安全に使える、そういう算段だった。まぁ、暴走のメカニズムをちゃんと解明していなかったから失敗したがな」
「ってことはこれからは暴走はしないってことでいいか?」
「うまくいけば、だけどね。でも、いずれ乗り越えてみせるさ」
いつか、完全に暴走する危険性を取り除く。ハザードメモリを奪い取ることも大事だが、その方法を探すことも保険としていいだろう。
「そういえばフロッグポットどうだった?使ったんだろう?感想を聞かせてくれ!」
「せめて音量下げろ!あれじゃこっちまで耳がやられちまうじゃねぇか!」
ダメ出しを喰らってしまった。あれのおかげで暴走を止められたんだからいいじゃないかと思いつつ、翔太郎の指令でフロッグポットの調整をする羽目になってしまったのであった。
「さーて、フェニックスは回収したしこれからどう動こうか」
石動惣一はフェニックスメモリを手にしながら、歩いていた。フェニックスメモリが弾き飛ばされて翔太郎が暴走を止めるまでの間に回収していたのだ。地味にフロッグポットの爆音波を喰らって一人で悶絶していたのは一生の不覚だ。
「ハザードをああやって使うだなんて思わなかったな。最後には暴走してくれたけど、あの調子じゃ三度目はなさそうだな。まったく、つまんねぇな」
手元のハザードメモリに目を落としながら呟く。
「…これ使って戦兎の奴を困らしてやろう」
ものすごい悪い顔をしながら、ゲームメイカーは1人呟いた。
Hazardmemory no chikara wo anzen ni tsukau.
Hatashite kindan no memory wo tsukaikonaseru hi wa kurunodarouka.
頑張ればハザードを暴走なしに使えるって結構優しくなった気がする。
まぁその分石動が頑張って鬱っぽくしてくれるはず。
戦兎ならフロッグポット作る時改造しそうだなとか思ってやったけど、今後使うかどうかはわからん。