仮面ライダーW Bの天才/メモリの適合   作:ダイヤモンドリリー

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10605字。

原作35、36話です。


Rの彼方に/燃え上がれドラゴン

「助けて!痴漢です!」

 

そんな声が野鳥園に響いた。

 

「おい待て!」

 

逃げる女性を追おうとした男を翔太郎が取り押さえる。

 

「お前こそ待ちやがれ、この野郎!」

 

「女の敵め!うりゃ!」

 

亜樹子も追撃するが、その男はまさかの照井だった。なんで?

 

「慌てるな、所長」

 

「竜君⁉︎」

 

「何だ、お前らも痴漢の仲間か?」

 

なんでそうなるんだ...誤解される前に逃げた方が良さそうだな。

 

「警察!」

 

「警察はここにいます!」

 

いや、そうなんだけどそれを今言うのは逆効果だろ。警察がやったとか思われたら困る。

 

「おい照井、何だってこんな場所に?」

 

なんとかあの場から逃げ切った俺たち。翔太郎が照井に質問する。質問すれば、返ってくる返答は一つだけだ。

 

「俺に質問するな」

 

「ああ、そうかよ」

 

ほらやっぱり。翔太郎もこのやり取りにもすっかり慣れたらしい。

 

「そう言うお前らこそ何しに来た?」

 

「仕事だよ。実は、近所の子供達がうちの事務所に来て...」

 

「その子らが言うには、野鳥の解説をしてくれていたお姉さんが、ある時から急に元気をなくし、子どもたちを遠ざけるようになったらしい」

 

お金にならなそうな依頼で亜樹子もNGという顔をしていました。さすがに情というものがなくないか?

 

けれど、子供たちはなけなしのお小遣いを集めて出してきた。口々に頼み込む子どもたちの姿に心打たれた翔太郎。これは断りずらい。

 

『話は分かった。でもこの金は受け取れねえな。君達の優しい心で十分だ』

 

『さすがハーフボイルド』

 

とまぁそんな感じで依頼を受けたわけだ。でも『元気にして』って探偵の仕事なのか?

 

「名前は島本凪」

 

「...さっきの娘か」

 

「え?」

 

なんたる偶然。というわけで俺たちは先ほどの女性が逃げていった方へと移動していった。あっ、見つけた。

 

「やっと見つけたぞ」

 

「何なの?何で私に付きまとうの?」

 

「君を心配した子供らが、俺の探偵事務所に来たんだ」

 

「ねえ、何で急に元気を無くしちゃったの?」

 

「関係ないでしょ!放っといて!」

 

「何に怯えている?君はわざと子どもたちを遠ざけている。何故だ?」

 

照井が問いかける。

 

「だって...お父さんが」

 

凪が何か話そうとした所で、急に土砂降りの雨が降ってくる。

 

「な、何でこんな急に土砂降り⁉︎」

 

「天気予報外れたな」

 

傘なんて持ってないのでずぶ濡れになる。けれど、明らかに雨に濡れた寒さとは違った様子で震えだす凪。

 

「怖い...!」

 

「どうした⁉︎」

 

「あの夜もそうだった...突然、強い雨が降り出して」

 

凪の父親は今のような土砂降りの雨の夜に雷に打たれて死んだ。そして怪物が現れて、コネクタ手術をして去っていったという。

 

「あの男が来る、そう思うと怖くて仕方なかった...でも誰にも相談できなかった。誰にも...」

 

なるほど、それで周囲から人を遠ざけていたのか。

 

「よく話してくれた」

 

すると照井はペンダントを外して凪に渡す。

 

「これは?」

 

「お守りだ、とてもよく効くぞ」

 

『お揃いですね。約束通り会いに来ましたよ、お嬢さん』

 

ちょうどそこに現れたのはウェザードーパント。

 

「あの時の...怪物」

 

「やはり貴様の仕業か、井坂深紅郎!」

 

「怖い、怖い...怖いよ」

 

「大丈夫、君は俺が守る」

 

アクセルドライバーを装着しながら照井が立ちふさがる。

 

「フィリップ!」

 

『JOKER』

 

「ああ」

 

『CYCLONE』

 

『ACCELE』

 

『RABBIT』『RABBIT』

 

「「変身!」」

 

「変...身!」

 

「変身!」

 

サイクロン!ジョーカー!

 

アクセル!

 

紅のスピーディージャンパー!ラビットラビット!

 

ヤベーイ!ハエーイ!

 

「仮面...ライダー?」

 

三人がかりでウェザーに立ち向かおうとしたその時、ウェザードーパントが合図を送る。すると、ダブルの頭上に雨が集中しだす。

 

「野郎...あ?」

 

「晴れた?...って言うか、Wの上にだけ雨!」

 

「何だこりゃ⁉︎動きが...取れない?」

 

集中豪雨はとうとう水柱となり、Wの動きを封じる。

 

『照井竜、君は私に復讐するため仮面ライダーになったらしいが!何と弱いリベンジャー...話にならないね』

 

アクセルの周りを雷雲か囲み、雷の集中攻撃を受ける。

 

「な、何あの雲⁉︎あの雷⁉︎」

 

二人のライダーは完全に分断され、しかも両者ともまるで身動きを取れなくされてしまった。

 

「動けるのは俺だけ...!」

 

ウェザードーパントはこちらにも雷を放つ。それを、圧倒的な速さで避けて接近し、フルメモリバスターで斬りつける。

 

『あなたではウェザーには勝てませんよ』

 

辺り一体に冷気を撒き散らす。ブリザードが入っていないので少し威力は低いものの、接近し過ぎていたためモロに喰らい体が凍りつき始める。

 

「っ!くそっ!」

 

三人のライダーをいとも容易く排除したウェザードーパントは、悠々と亜樹子と凪の方へと向かっていく。

 

「駄目だってば!来るな!」

 

立ちふさがる亜樹子をも押しのける。

 

『さあ、その印を見せてもらうよ』

 

「来ないで!」

 

逃げる凪を捕まえ、腕にある禍々しいコネクタを確認。

 

『実にいい具合だ...君の心が恐怖の感情に呑まれれば呑まれる程、コネクタは早く成長するのだ。ああ、早くこのメモリを挿したい...!』

 

ウェザードーパントの手にしたメモリには、翼竜の翼のような目立つ装飾がついていた。

 

「何だ、あの奇妙な形のメモリは⁉︎」

 

「その娘から離れろ!」

 

叫ぶアクセルだが、奮闘むなしく雷に打たれ続けてついに変身解除される。

 

『分かったでしょう?あなたは私に近づく事すら出来無い。復讐どころか、誰一人まともに守ることも出来無い、虫ケラです』

 

「っ!クローズドラゴン!」

 

どこからともなく()()のクローズドラゴンが飛んできて炎を吐き、俺の体を溶かす。動けるようになった俺は凪との間に立ち塞がる。

 

エクストリーム!《/b》

 

Wもエクストリームにチェンジし、水柱を叩き割って脱出する。

 

《b》『PRISM』

 

プリズムビッカーを出して臨戦態勢。

 

『おっと!今はまだ君らと戦うタイミングではない』

 

前回痛い目を見て学習したのか、ウェザードーパントは雲と化してあっさりと引き下がった。

 

「逃げやがったか!」

 

「大丈夫か...?」

 

這いずりながらも凪を心配する照井。

 

「嘘つき!守ってくれるって言ったけど、全然敵わなかったじゃない!」

 

凪は照井にそう言い放ち、その場を走り去ってしまった。

 

照井はただ、悔しさに拳を震わせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フィリップは、あの奇っ怪なメモリを検索していた。

 

「分かったぞ...井坂が持っていたのは、ケツァルコアトルスのメモリだ」

 

「ケ...ケツ?アル...?」

 

「ケツァルコアトルスだ」

 

「アステカ文明で、蛇の神と崇められた世界最大の飛行生物。島本凪はそのメモリの過剰適合者だ。翔太郎、インビジブルメモリの事件を覚えているだろう?井坂は過剰適合者であるリリィ白銀の体にメモリを埋め、そのパワーを最大限に増幅しようとした。最後にはメモリを奪い、自分が使用するために」

 

「凪ちゃんも、リリィと同じだって言うのか?」

 

頷くフィリップ。確かに類似点は多い。けれど、相違点も確かにある。

 

「でも、今回違うのは、井坂はまだ彼女にメモリを挿していない...その理由は」

 

「井坂は『君の心が恐怖の感情に呑まれれば呑まれる程、コネクタは早く成長するのだ』だとかなんとか言ってたよな」

 

「コネクタが完成するのを待ってる...って事か?」

 

「ああ、恐怖の感情がコネクタの成長を促進する。だから父親の命を奪った。彼女の目の前で。恐らく完成するまで、これからも恐怖を与え続けるに違いない」

 

全容を聞いた照井は怒りをむき出しにし、柱を殴りつけると黙って外へ出ていってしまう。

 

「どこ行くの⁉︎竜君!」

 

照井を追って、亜樹子も出ていった。さて、こっちは凪と接触することにしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よう。その鳥、何て名前?」

 

野鳥園に行くと、また凪と接触することができた。

 

「ショウジョウトキのヘンリーくん。本当は、マングローブの林の中なんかで大きな群れを作る鳥」

 

よかった、結構機嫌が良さそう。

 

「へぇ...やっぱ詳しいな」

 

「お父さん、飼育員だったの。だから私も、自然と鳥が好きになった」

 

「そっか」

 

「ねえ。あの人、どうして私を守ろうとしたの?」

 

凪はあんな事を言いながらも、照井の事が気に掛かっていたようだ。

 

「奴の家族も、あの男に命を奪われた」

 

「え⁉︎」

 

「だから...どんな事があろうと、君を守ろうとした」

 

「そんなの、勝手に重ねられても困るよ。もしそれで死なれちゃったら...」

 

「あいつは死なない。守るべきものが居れば、男はどこまでも強くなれる。俺の尊敬してる人の言葉さ」

 

「てか奴が死ぬ場面を想像できない」

 

凪が照井に手渡されたペンダントを見つめていると、急に鳥が騒ぎ出す。

 

「おはよう。昨日は良く眠れましたか?」

 

井坂が現れた。

 

「ふざけんな。てめえの下らねえ欲望のために、彼女に恐怖を与えようとしてんのは分かってる」

 

「ならば話は早い。今日はその娘がどんなに恐ろしい怪物になるのかを、身せに来ました。複製した、お試し品ですがね」

 

複製したというガイアメモリは、剥き出しの基盤に翼の意匠を施した、なんとも歪なメモリであった。

 

『QUETZALCOATLUS』

 

井坂の投げたメモリは近くにいたオウムに刺さる。オウムは建物を内側から壊しながら巨大化し、ケツァルコアトルスドーパントに変化していく。そしてまっすぐに凪を狙い、そのまま爪で捕まえて飛び去ってしまいまう。

 

「嫌!降ろして!嫌!!」

 

「しまった!フィリップ!」

 

「助けて!嫌!降ろして!」

 

『JOKER』 『TAKA』『GATLING』

 

タカ!ガトリング!ベストマッチ!

 

「変身!」

 

それぞれ変身し、Wはハードボイルダーに跨り追走。ホークガトリングに変身した俺は空を飛び追いかける。そしてケツァルコアトルスドーパントの放つ攻撃を撃ち落とす。いくつかあぶれるも、Wはきっちり回避しつつリボルギャリーを呼び寄せる。

 

『敵は空だ。ハードタービュラーで倒そう』

 

「よし!」

 

リボルギャリーを反転させ、ハッチを開ける。すると、そこにはアクセルガンナーがあった。親しげに笑顔で挨拶までしてくる。

 

「これ、照井のガンナーユニットじゃねえか⁉︎何だってお前がここに?」

 

『そう言えば、前に一度、突然ガレージに』

 

困惑する2人をよそに、『使え使え』とばかりに揺れ動くアクセルガンナー。

 

「なんでもいい!早く手伝ってくれ!俺1人じゃ止められん!」

 

「まあいいや、こいつで撃ち落とすぜ!」

 

アクセルガンナーとドッキングする。

 

「今だ!」

 

砲弾を放つと、上空を飛び回る相手に一撃で命中する。その攻撃により、落下していく凪をキャッチして地面に下ろす。

 

「ここに隠れてな、Wがすぐ終わらせてくれる」

 

エクストリーム!

 

「「プリズムビッカー!」」

 

エクストリームになったWはすぐにプリズムビッカーを取り出す。

 

『PRISM』

 

サイクロン!マキシマムドライブ!

ヒート!マキシマムドライブ!

ルナ!マキシマムドライブ!

ジョーカー!マキシマムドライブ!

 

Wは4本のメモリを挿入したビッカーシールドを投げ捨てる。そしてそれをアクセルガンナーに撃ち出させ、それに乗って飛行する。

 

「「ビッカー・チャージブレイク!」」

 

そのまま、ビッカーソードで一刀両断しメモリブレイク。変身させられたオウムは元気に飛び去っていった。

 

「離して!嫌!離して!」

 

「井坂!」

 

凪が井坂に見つかってしまった。ミスったな、リボルギャリーの中にでも隠しておけばよかったか。

 

「離して!」

 

「おかしい...まだコネクタが完全ではない。これだけの恐怖を味わえば、確実に完成するはずなのに。何故だ?一体何がお前の心を支えている⁉︎」

 

未だコネクタが成長しきらない事に不可解さと焦りを隠せない井坂。

 

「井坂!」

 

『WEATHER』

 

エクストリームが近づいてくると、井坂はウェザードーパントに変身して応戦する。

 

「ブリザードを使われる前に決めちまえ!」

 

「ああ!」

 

サイクロン!マキシマムドライブ!

ヒート!マキシマムドライブ!

ルナ!マキシマムドライブ!

ジョーカー!マキシマムドライブ!

 

「「ビッカー・ファイナリュージョン!」」

 

ゾーンドーパントを倒した時の虹色光線を撃ち出す。けれどウェザードーパントは雲を出してその中に紛れると、そのまま消えてしまった。また、逃げられてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

事務所では、井坂の対策を考えるフィリップら。

 

「井坂は、君のこのコネクタが完成したら、メモリを刺しに必ず現れる」

 

「怖い...!」

 

恐怖する凪。メモリを入れられた後のことを想像してしまったのだろう。

 

「大丈夫だ!」

 

「きっと、あの刑事さんが守ってくれるよね...?」

 

「そうか!君の心が恐怖に染まりきらないのは、照井竜の存在が君を支えているに違いない」

 

照井の存在が支えになっていると理解するフィリップ。凪は同意する様に頷き、あのペンダントを探す。

 

「無い...?」

 

慌てて探しに行こうとする凪を制止する翔太郎。

 

「凪ちゃん!今、外に出るのは危険だ」

 

「ここを出たら、いつ井坂に襲われるかわからない。少なくとも1人はここにライダーがいるようにするから、な?」

 

そう言うと、渋々納得したようで凪は外に出ようとしなくなった。ちょうどその時、翔太郎に着信が入る。

 

「おう亜樹子、どうした?」

 

『竜君が大変なのよ!モモ、モ、モトクロスで10秒切れなくて電撃ビリビリで...』

 

翔太郎の持つスタッグフォンに耳を近づけて聞くも、まったく何を言っているのかわからない。焦ってるのはわかるが説明下手すぎやしないか?

 

「照井がどうした?...バイクで転倒?意識がない?」

 

「私が、お守りを失くしちゃったからだ...」

 

責任を感じ、俺たちが電話に気をとられている隙に凪はペンダントを探しに出ていってしまう。

 

「怪我はしてんのか?ああ...だから落ち着けって!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「見せてやる...トライアルの力を!」

 

ギリギリ間に合った。アクセルがマキシマムドライブを使おうとした所でちょうど合流できた。

 

「駄目だよ竜君!本当はまだ10秒の壁を切ってなかったの!」

 

「いや!奴はやるさ」

 

「え?」

 

全員が固唾を飲んで見守る中、トライアルメモリのスイッチを押して空中に放り投げ、マキシマムドライブを発動する。

 

いっそう加速し、ラビットラビットにも勝るとも劣らない速さでトライアルはウェザーの発する虹ビームを回避しながら距離を詰め、蹴りの連打を放つ。一発一発はあまり効いている様子はないが、さらに加速して目にも留まらぬキックの連打を浴びせると、次第に打点が『T』を描いて収束していく。

 

そして、ひとしきり打ち終わった所で落ちてきたトライアルメモリを掴み取りスイッチを押す。

 

トライアル!マキシマムドライブ!

 

「9,8秒...それがお前の絶望までのタイムだ」

 

ブリザードメモリを使う暇すらなかったウェザードーパントは、照井のその言葉と同時に大爆発を遂げる。ウェザーメモリも砕け散り、ウェザードーパントの完全な撃破に成功する。

 

「やったー!竜君が勝った!」

 

「信じられん...私への憎しみが、ここまでお前を強くしたのか...?」

 

とっくに虫の息の井坂が問いかける。

 

「俺を強くしたのは...憎しみなんかじゃない」

 

そう答えながらケツァルコアトルスのメモリを破壊する。それによって凪の腕から生体コネクタが消失する。縄を解いてやると凪はペンダントを返却する。

 

「ありがとう...これ」

 

「君を守れて良かった...」

 

少し前の照井では考えられなかった言葉だろう。これでやっと綺麗にまとまるか...と思ったら、急に苦しみだす井坂。顔面にまで生体コネクタが浮かび上がっていた。

 

「うわぁ...な、何が起きてんの⁉︎」

 

「メモリの過剰使用のツケが回っているんだ」

 

「こ、これで終わったなんて思うな...!お前らの運命は仕組まれていたんだ。あのシュラウドという女に...!先に地獄で待ってるぞ!」

 

全身に無数の生体コネクタを浮かび上がらせながら、そんな捨て台詞を吐く。そして最終的には全身真っ黒に染まり、ヘドロが崩れるように消えてなくなる...そのはずだった。

 

井坂の懐に入っていた、ブリザードメモリが独りでに浮き上がった。

 

「ブリザード⁉︎」

 

「なに...が...」

 

浮かび上がったブリザードメモリは、そのまま井坂の首めがけて飛んでいき、勝手に井坂の体の中に入り込む。

 

「おいおいマジかよ...」

 

ブリザードメモリにより、井坂はブリザードドーパントに変身する。そしてそのまま周囲に冷気を撒き散らしながら暴れ回る。

 

「あいつ...生き返ったか!」

 

「いや、奴は死んでいる」

 

「戦兎...?」

 

「あの感じ、理性を感じられない。メモリに意識を乗っ取られているか、そもそも意識がないかだ」

 

「じゃあ乗っ取られてる可能性も!」

 

「だとしても奴は死ぬ。メモリの過剰使用...ネビュラガスの過剰投与に状況が似ている。もし仮に生きていたとしても、メモリを抜き取れば命を落とす」

 

ビルドドライバーをつけながら前に出る。

 

「俺に任せろ。サイエンスのドーパントは俺が止める」

 

ドラゴンとマグマのメモリを取り出す。

 

「クローズマグマになるつもりかい?前は出来なかっただろう」

 

「できるさ。さぁ、実験を始めようか」

 

二体のクローズドラゴンが飛んでくる。そのうちの一つを掴み、ドラゴンメモリをセットして起動する。

 

『CROSS-Z DRAGON』

 

クローズドラゴン!

 

クローズドラゴンをビルドドライバーに挿し、もう一体のクローズドラゴンを掴み取りマグマメモリをセットして起動する。

 

メモリバーン!

 

クローズマグマ!

 

二体のクローズドラゴンがドロドロに溶けてビルドドライバーと一体化する。背後にマグマナックルに形状が似た坩堝型のマグマライドビルダーが出現する。

 

「変身!」

 

ビルドドライバーを展開すると、マグマライドビルダーの中で煮え滾る大量のヴァリアブルマグマが頭上目がけてぶちまかれる。

 

「ま、マグマに飲み込まれたー⁉︎」

 

固まったヴァリアブルマグマが足元からヤマタノオロチのように八頭の龍が伸び上がり、冷めて全身に固着したマグマをマグマライドビルダーが後ろから押し割り変身が完了する。

 

極熱筋肉!クローズマグマ!

アーチャチャチャチャチャチャチャチャチャアチャー!

 

クローズマグマは、普段のビルドのように左右でドラゴンサイドとマグマサイドに分かれているわけではなく、両サイドがクローズマグマとなっていた。まるでワンサイドライバーを使った時のように。

 

「クローズマグマ...力がみなぎる...!魂が燃える...!俺のマグマがほとばしる!」

 

マグマナックルを手に持ち、構える。

 

「もう誰にも止められねぇぇぇ!!」

 

今もなお冷気を辺りに撒き散らしているブリザードドーパントに近づき、マグマナックルで思い切り殴り抜く。超高温のマグマと、超低温のブリザードがぶつかり合う。周囲に氷の粒となって漂っていた水分がマグマで急激に加熱される。水を通り越して昇華し、急激に体積が増したことで水蒸気爆発が起こり周囲のものをまとめて吹き飛ばす。

 

「オラッ!オラァッ!!」

 

背部のソレスタルパイロウィングから現れる燃え盛る炎の翼で大空を飛び回り、マグマナックルで殴り飛ばす。

 

「俺らが使ってた時よりも威力が上がっている?マグマメモリも挿れてないのに!」

 

「これがクローズマグマの力か!」

 

全身八か所に装着されたフレイムドラグライザーによりボルケニックモードへ移行することで性能を飛躍的に向上させ、ブリザードの装甲すらも融解するほどの熱を放ちながら何度も殴り飛ばす。

 

「終わりだ!」

 

マグマ!マキシマムドライブ!

 

マグマメモリをビルドドライバーから抜き取り、マグマナックルに装填する。ドラゴニックイグナイターを起動してただでさえ膨大な熱量をさらに倍増させる。

 

ボルケニックナックル!

 

アチャー!

 

全身から噴出した紅い炎をマグマナックルに纏わせ、ストレートパンチと共に胸部装甲のボルケニックリアクターから現れたマグマライズドラゴンを放つ。ブリザードドーパントの装甲が全て溶けるも、内側から新たな冷気が漏れ出して身を包み始める。

 

「もう一発!!」

 

ドラゴン!マグマ!マキシマムドライブ!

 

ドラゴンメモリとマグマメモリを今度はビルドドライバーのマキシマムスロットにセットする。

 

ボルケニックフィニッシュ!アーチャチャチャチャチャ チャチャチャチャアチャー!

 

「いや、何発でもぶち込んでやらァ!!」

 

全身に紅炎を纏った状態で何度も何度もラッシュを打ち込む。一発当たるごとに水蒸気爆発が起こるも関係ない。そのままの勢いで冷気の壁をぶち抜き、ブリザードドーパントを殴り抜く。

 

ウェザードーパントを倒した時以上の大爆発が起こる。あまりの爆炎に、俺ですら耐え切ることが出来ず大きく吹き飛ばされる。

 

「…ふぅ...やったか」

 

爆炎が晴れると、ブリザードメモリが井坂から抜き出るところだった。メモリの抜けた井坂は、まるでメモリの入る直前から止まっていた時が動き出したかのように全身真っ黒に染まり、ヘドロが崩れるように消えてなくなる。

 

「悪魔に相応しい最期か...」

 

…ラブアンドピースを掲げる俺としては、どんな巨悪だろうと人ならば生きていて欲しかった。けれど、これでやっと、照井の戦いは終わったのだ。

 

「っとと、ブリザードメモリ回収しないとな」

 

ビルドドライバーからメモリを抜き変身解除しつつ、落ちているブリザードメモリに近づく。二体のクローズドラゴンがビルドドライバーから外れて元気に飛び回っていた。

 

『CROCODILE UPGRADE!』

 

『悪いけどそいつは渡さない!」

 

横からクロコダイルドーパントが現れてブリザードメモリを掠め取る。

 

「ちょっ、おまえ!」

 

『じゃあな!』

 

クロコダイルドーパントはそのまま走り去っていった。

 

「…くそっ!まじかーメモリ取られた...」

 

「戦兎ー!大丈夫かー!」

 

遠くから翔太郎が駆け寄ってくる。連続して起こる水蒸気爆発から逃げるためにものすごい遠くまで逃げていたらしく。こちらに辿り着く頃にはものすごい息が荒れていた。

 

「こっちは大丈夫だ。ブリザードメモリは取られちまったけど...ってかそっちが大丈夫か?めっちゃ辛そう...」

 

「はぁ...はぁ、だ、だい...じょうぶ、だ」

 

「ぜんっぜんダメそうだけど⁉︎」

 

「すぅーーーふぅーーー...その二体目のクローズドラゴンはなんなんだ?ついでにクローズマグマとかいうやつも」

 

翔太郎が深呼吸してから質問してくる。

 

「俺に質問するな」

 

「照井の真似してねぇで教えてくれよ...」

 

「少しは乗ってくれてもいいじゃん...二体目のクローズドラゴンはクローズマグマを完成させるために作ったものだ」

 

二体目のクローズマグマを掴んで説明する。

 

「そもそもドラゴンメモリとマグマメモリは真のベストマッチじゃない。相性はいいが、それだけだと変身できない」

 

「そのためのクローズドラゴンってことか?」

 

「そう。原理的には同じクローズドラゴンを通すことで二つのメモリの共通点を増やし、適合させる。だけど、本当に必要だったのはそれじゃない」

 

「…話が見えてこねぇんだが」

 

「マグマメモリ...そのオリジナルはドラゴンマグマフルボトル。これはドラゴンクラッシュゼリーが燃やされたものを万丈が触れたことでできたものだ」

 

「フルボトル?スクラッシュゼリー?万丈って誰?」

 

「俺の記憶の中にある何かだ、ひとまずそれは置いといてくれ。とりあえず俺は、本来のルートを再現した」

 

「再現?」

 

「もとのルートだと、スクラッシュゼリーがマグマになった。こっちだとスクラッシュの代わりはメモリ強化アダプターだったから、それをもう一つのクローズドラゴンに組み込んだ」

 

「だからそのもう一つのクローズドラゴンってのはいつ作ったんだよ」

 

「材料は既にあった。前に俺がハザードになって壊したやつだ」

 

「え?でもそれは修理したはずじゃ」

 

「粉々になっていたからな。修理したんじゃなくて新しく作り直していたんだ。だから一体目の部品が残っていた。それをメモリ強化アダプターを中に入れながら修理したのがこいつ、マグマメモリ専用のクローズドラゴンだ」

 

掴んでいた手を離すと、電子音を出しながら飛び回る。

 

「どう?てんっさいでしょ!さいっこうでしょ!」

 

聞いていたみんなは『最後のこれさえなければいいんだけどなー』とでも言いたげな微妙な顔をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日、風都野鳥園では以前のように優しく元気に鳥の解説をする凪と、それについてまわる子どもたちの姿があった。

 

「この子たちが、ヘビクイワシのミー君と、エイトちゃんです」

 

「へ~!」

 

「アフリカにある、サバンナって言う所で...」

 

「事件は終わり、島本凪は明るい笑顔を取り戻した」

 

もう怖がることはない。子供たちと仲良く接している微笑ましい光景を見ながら翔太郎がつぶやく。

 

「まぁた、お金にならない仕事しちゃったよ」

 

そこへ駆け寄ってくる子どもたち。

 

「探偵さん、ありがとう!」

 

「え?ああ...今回のヒーローは俺じゃなくて、あっち」

 

指さす先には、凪を幸せそうに見つめる照井の姿があった。子どもたちはそっちに移動し取り囲む。

 

「お兄さん、誰?」

 

「何歳ですか?」

 

「職業は?」

 

質問すれば当然...

 

「俺に質問...しないでくれるかな?」

 

「…嘘だろ?あの照井が⁉︎」

 

内容はいつも通りだが随分と優しい言い方をしてる。あんな言い方できたんだな...

 

なぜだかそれが子どもたちには大ウケだった。色々あったが、やっぱり子供たちが元気に暮らせているのを見ると、平和を感じることができて好きだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ようやく取り返せた...」

 

「おっ、ブリザード取り返せたのか。よかったな」

 

「お前も手伝ってくれりゃもっと楽だったのに」

 

「こっちだってやることあんだよ。色々とな」

 

「コソコソいつも何をやってるのか教えてほしいよ」

 

「それよりもブリザードなんて何に使うんだ?今のお前の手札じゃ使えんだろ?ワンサイドもないしロボットもない」

 

「また話そらしやがって...ひとまずは保管する。使うのはだいぶ後だ」

 

「一体何に使うんだか、教えてほしいねぇ」

 

「答えるのはお前が何やってるのかを言ってからだ」

 

「ふっ、遠慮しとくね」

 

「まぁいい。とりあえず、ナックルくらいは作っておくとしよう」

 

サイエンスの間で、それぞれの思惑が交差していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

CROSS-Z MAGMA wa subete wo moyashitsukusu.

 

Darenimo tomesasenai.




なんかあんまりうまくウェザーとブリザードを組み合わせられなかった...

あと、ビルドの変身音声長すぎるのでこれからは省略することもあります。
Wと比べて長いんじゃ。
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