仮面ライダーW Bの天才/メモリの適合   作:ダイヤモンドリリー

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10957字。

原作45、46話です。


Kが求めたもの/恐怖の支配からの逃避

「何すんだよ⁉︎」

 

騒がしく入ってきたのは翔太郎と...変な服着た女の人。探検家みたいな衣装だ。

 

「あなた、誰ですか⁉︎」

 

「私は轟響子。見ての通り、博物館の学芸員よ」

 

見ての通りって...学芸員には見えないぞ?

 

「博物館...?」

 

「あたしの憧れの恩人を助けたいの!」

 

「…はい?」

 

「この街の人間なら知らないはずは無い方よ。風都博物館、館長...」

 

「園咲...琉兵衛」

 

「ミュージアムの頭目。そして、僕の父親...」

 

このタイミングでそんな依頼が来るなんてな。

 

「館長は、発掘現場で何か重要な物を失くされたらしいの...」

 

「イービル・テイル?」

 

「全てにおいてPerfectな館長があんなに悩まれるなんて。博物館の命運にかかわる大事なものに違いない!...一緒にそのイービル・テイルと言うものを探して」

 

依頼...と言うか脅迫のような感じで迫ってくる響子。

 

「いや、それはちょっとあの、無理...」

 

断ろうとする亜樹子の口をふさぐ響子。

 

「分かった...引き受けよう」

 

翔太郎はあえて引き受ける。

 

「決まりね」

 

「え~⁉︎いいの?だって園咲家は...」

 

「ああ。こいつはきっと...運命だ」

 

「そうかも知れないな」

 

「理屈ではなく、俺は肌で感じていた。いよいよフィリップの親父さんの秘密に迫る時が来たことを」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「星降谷発掘現場。園咲琉兵衛はここで貴重な化石や遺跡を数多く発見。そして付近の土地を買い占め、自分の邸宅とした」

 

俺たちは、発掘現場にやってきた。

 

「お先に」

 

「あー!行動力ある...」

 

「…行きたくない」

 

「どうしたの戦兎君?」

 

「嫌な予感がするんだ。行きたくない」

 

言い知れない恐怖が俺の体を包む。

 

「なに怖がってるのさ!ほら行くよ!」

 

「うわっ⁉︎」

 

亜樹子に押されて一緒に落下する。翔太郎が下にいたおかげで俺たちは無事だった。まぁ、翔太郎は痛そうだけど。

 

「痛...ああもう!だから上で待ってろって言ったんだよ!」

 

「何よ!所長様の超感覚の捜査を忘れたの⁉︎」

 

「知るか、そんなもん!」

 

「ここは神聖な発掘現場よ⁉︎」

 

言い争っていたら響子が鞭で地面を叩いて一喝する。来てしまった...どうしてついてきてしまったのだろう。

 

「それにしても、屋敷の地下にこんな広大な空間が広がっていたとは驚いた」

 

「イービル・テイル、直訳すると悪魔の尻尾。寓話の題名やアイテム名など昔から使われてきた言葉だけど、何を指してるのかしら...?」

 

「園咲がらみで無けりゃ、フィリップの検索で一発なのにな...こりゃ広すぎるぜ」

 

「こういう時は...ダウジングスリッパ!」

 

スリッパを取り出す亜樹子。

 

「ちょっと、真面目にお願い」

 

「私は常に大真面目です」

 

真面目だったことの方が少ないと思うんだけど。そんなことを思っていたら、本当にスリッパが反応した。

 

「おお!あっちよ!」

 

「どこ行くのよ⁉︎」

 

「おい亜樹子...」

 

渋々着いていくと、なんかそれっぽいところにたどり着く。ほんとに効果あるのか?

 

「ここは...昔の発掘現場?地震か何かで崩れちゃったのかしら...?」

 

「匂う!何かが埋まっていると、このスリッパが開くのよ!」

 

言っているそばから開くスリッパ。

 

「おお、ここだ!ここ掘れ翔太郎!」

 

「んな馬鹿な事あるか...」

 

「掘りなさい!」

 

「ええ⁉︎」

 

なんで響子は亜樹子を信じれるんだか...仕方なく、翔太郎は瓦礫をどけ始める。

 

「もっと丁寧に!」

 

「はいはい、分かりましたよ...」

 

しばらく掘っている翔太郎。俺も手伝おうかなと思ったその時。

 

「あ?おい、何かあるぞ!」

 

出てきたのは、evil tailと彫られた箱。

 

「イービル・テイル...これよ!」

 

「げ⁉︎」

 

「な?私、凄かろ?な?」

 

「鍵がかかってる...軽いわ。中身、何かしら?」

 

そこに丁度現れたスミロドンドーパント。

 

「か、怪物⁉︎」

 

さすがの響子も相手がドーパントでは腰を抜かすようだ。

 

「何か、見覚えある!」

 

「下がってろ」

 

亜樹子と響子を下がらせ、ダブルドライバーを腰につける翔太郎。俺もビルドドライバーを腰につける。

 

「顔馴染みの組織の幹部だ」

 

『JOKER』 『RABBIT』『RABBIT』

 

「変身!」 「変身!」

 

サイクロン!ジョーカー!

 

紅のスピーディージャンパー!ラビットラビット!

 

変身し、スミロドンを押さえつける。

 

「仮面ライダー⁉︎」

 

「亜樹子!響子さんと逃げろ!」

 

「何で⁉︎」

 

響子を逃がそうとするが、俺たちの静止を振りほどいて響子を追おうとするスミロドンドーパント。響子から箱を強奪し、その場を離れようとするスミドロンドーパントを追う。

 

エクストリーム!

 

相手は幹部だ。Wはすぐにエクストリームに変身する。

 

「敵はスミロドンだ。その全てを閲覧した」

 

超スピードで動きまわるスミロドンドーパントに、タイミングを合わせてカウンター...と思いきや、失敗し相討ちになる。その隙に俺は箱を奪い取った。

 

「反射速度が、分析を超えている⁉︎」

 

「俺なら!」

 

ラビラビならスミドロンドーパントの速さに追いつける。そう思った瞬間だった。

 

『ハハハ...君たちがそれを見つけるとはな。返しなさい』

 

天井からゲル状の何かが溢れ出し、テラードーパントの声が聞こえる

 

「これは...」

 

「園咲、琉兵衛...」

 

「この声...まさか、館長?」

 

『ハハハ...それは我らのガイアインパクトにどうしても必要だ』

 

「ガイアインパクト?」

 

「ふざけんな!何しでかす気が知らねえが、これ以上街を泣かせる真似は許せねえ!姿を現せ!」

 

そう言う翔太郎の脚は震えていた。

 

「亜樹ちゃんたちもいる!この場は、とりあえず脱出しよう!」

 

「仕方ねえ...」

 

俺たちはそれぞれ亜樹子と響子を抱えてその場を離脱した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ガイアインパクト...か。組織の最終計画に違いない。そしてそれには、その小箱が必要」

 

事務所に戻ってきた俺たち。照井も合流した。

 

「イービル・テイル...とりあえず、開けてみるか」

 

「駄目!乱暴に扱わないで!大事な研究物だったらどうするつもり⁉︎」

 

「響子さん。園咲琉兵衛は、この街に悪のメモリをバラ撒いている張本人です!」

 

「ああ、そうだ。そのためだったら家族だって平気で犠牲にする悪魔なんだ!」

 

それを言って、しばらくしてハッとする翔太郎。

 

「すまねえ、つい...」

 

「いいんだ、翔太郎。僕も、真実を受け入れるべきだった...さっき、ちゃんと本を読んでいれば」

 

「何のこと?」

 

「僕は、読めるようになっていたんだ...自分の本が」

 

「何だって?」

 

「でも、読めなかった。真実を知るのが、何故か怖くて...」

 

「無理もねえ。それだけ、お前にとっちゃ重い1冊なんだ」

 

フィリップの告白に気遣う優しさ。やはりハーフボイルドだ。それでいい。

 

「翔太郎...」

 

「まずはイービル・テイルだ」

 

そう言って向き直ると、いつの間にか姿を消している響子。

 

「あれ?」

 

「居ない⁉︎」

 

「しまった、追うぞ!」

 

箱を持ってかれた。おそらく、響子が向かったのは博物館だ。急いで博物館に向かうと、響子が琉兵衛に箱を渡してしまいそうになる直前だった。

 

「渡しちゃ駄目だ!響子さん」

 

「やあ、ここで会うのは2度目かな?左翔太郎くん。そっちは文音、いやシュラウドの操り人形くんかな?そして君は...面白い。君が戻ってくるなんてね」

 

「黙れ!そう簡単にお前の思い通りにはさせんぞ」

 

「そうだ。この街の涙は俺達が拭う!」

 

威勢の良い2人だが、琉兵衛が謎の眼光で翔太郎を一睨みすると、蛇に睨まれた蛙のように縮こまってしまう。

 

「どうした左⁉︎」

 

「分からねえ、急に体に震えが...!」

 

「私の力を何度も見たからだ」

 

「何...?」

 

「今まで君は、私がミュージアムの頭目と知ってもなお、その核心に触れようとはしなかった。そうだろう?...分かるかね?その理由が」

 

…俺も体の震えが止まらない。

 

「君の体は私への恐怖で無意識のうちに我が屋敷への接触を拒んでいたのだ」

 

「まさか、テラーの能力とは...相手の恐怖心を増幅する力⁉︎」

 

「そうだ。ミック!」

 

スミドロンドーパントが現れ、響子からイービル・テイルを強奪しようとする。

 

「しまった!」

 

『ACCELE』

 

「変...身!」

 

アクセル!

 

照井はアクセルに変身し、スミドロンドーパントを追う。残った俺たちはまだ動けない。

 

「初めて私の姿を見た時から、君は既に負けていたのだよ。私の恐怖、テラーにね。ハハハ...」

 

琉兵衛が笑いながら去っていく。

 

「…そうだ...ドーパントを追わないと...」

 

震える体を動かして博物館の外に出る。見えてきたのは、スミロドンドーパントと戦うトライアル。パワーで押し負けるのは仕方ないが、スピードでも劣ってしまっていた。

 

「速い⁉︎」

 

「照井...」

 

「翔太郎!翔太郎、僕は、僕は...」

 

フィリップが現れるも、俺たちはぼんやりとしてしまっていた。

 

「照井...」

 

「何をしているんだ翔太郎、戦兎⁉︎変身だ!翔太郎!!」

 

その声を聞いて、ハッとする俺たち。

 

「…いけねえ。俺は何をボーッとして...?行くぜ」

 

「…そう...だな」

 

「ああ」

 

『CYCLONE』 『RABBIT』『RABBIT』

『JOKER』

 

「「変身!」」 「変身!」

 

サイクロン!ジョーカー!

 

紅のスピーディージャンパー!ラビットラビット!

 

変身したものの、やはりスミロドンドーパントは強く速い。俺ならギリギリ追いつける...かと思われたが、体が思うように動かず速度に追いつけない。Wは言わずもがな。追いつけるはずもない。

 

「何か手は無えのか⁉︎」

 

『僕に任せて』

 

そうしてフィリップが出したのはメタルメモリ。

 

『METAL』

 

サイクロン!メタル!

 

『メモリ使用者を、人間と仮定していた所に僕らの落とし穴があった』

 

フィリップはそう言うと、メタルシャフトを揺らす。

 

『ミック、静かに!』

 

その言葉に、ピタリと動きが止まってしまうスミロドンドーパント。その間にスタッグフォンを装着する。

 

メタル!マキシマムドライブ!

 

『メタル・スタッグブレイク!...少しだけ我慢して』

 

メタルシャフトから飛び出たクワガタ状のエネルギーで幹部用ドライバーを破壊すると、同時にメモリも破壊され、スミドロンドーパントは猫の姿に戻る...猫?

 

「猫が...組織の幹部だと...?」

 

オウムがドーパントになるのだから、動物がドーパントになることはさほどおかしくない。けれど、まさか幹部が動物だなんて思ってもみなかった。

 

「どういう事だ?フィリップ!」

 

俺以外のみんなは変身解除してフィリップに問いかける。

 

「さっきのポーズは、ミックに特別なご馳走を与える時にはいつもの仕草さ。園咲家独特の。お前は僕の猫だった。もうこれで、ドーパントになる事も無いよ」

 

「フィリップ、お前...本を読んだのか?」

 

「ああ...全てを知った。僕は...」

 

『おめでとう、来人!ようやく己の使命を知ったな』

 

フィリップが何かを打ち明けようとしたタイミングで現れるテラードーパント。

 

「どういう意味ですか⁉︎」

 

『来人、お前とイービル・テイルが揃えば私の望むガイア・インパクトが実現する!』

 

「翔太郎、もう一度変身だ!翔太郎!翔太郎!!」

 

しかし、またしても恐怖に固まってしまう。

 

『彼らはもう終わっているよ、来人。2度と私に立ち向かうことは無い!』

 

ジェット!

 

「生憎だが、俺にはそいつほど効果はないぞ」

 

動ける照井が再度アクセルに変身してテラードーパントに攻撃を加える。けれど、さほど効いている様子はない。

 

『ハハハ、そうそう、そう言う体質らしいな、君は。だが、テラーを精神攻撃のみのドーパントと思うか?』

 

「なに⁉︎」

 

テラードーパントがマントで顔から下を覆うと、頭の装飾が巨大化、分離してドラゴンに変形し、アクセルを襲う。

 

アクセルはスピードで翻弄するも、ドラゴンも大きさの割りに素早い。一人では何もできず、捕まってしまう。

 

「照井竜!」

 

『君は噛み砕いて差し上げよう。物理的にね!』

 

アクセルがやられ、俺たちは動けない。

 

『終わりだよ、仮面ライダー諸君!』

 

「お父様、コソ泥よ」

 

「離せ!」

 

いつのまにか現れていた若菜が、響子を捕らえ、イービル・テイルの入った箱を奪い取る。

 

『おお、イービル・テイル』

 

「来人、一緒にいらっしゃい。読んだ筈よ、自分の本を」

 

「あんなの...あんなの嘘だ!」

 

いったい、なんの話をしているんだ。

 

『嘘ではない、お前は死んだのだ。12年前にな』

 

「どう言う事だよ...フィリップ...おい⁉︎」

 

「今、あの人が言った通り...翔太郎、僕はもう...死んでいる」

 

「フィリップが死んでる...?」

 

「そこにいる来人は人間じゃないわ、データの塊よ。人類の未来を変えるために必要な」

 

そんな...馬鹿な...

 

『もう、終わりにしよう』

 

ドラゴンから吐き出され、変身を解除した照井は血まみれのボロボロだった。

 

「照井竜...!」

 

『ハハハ...さあ、来るんだ来人』

 

「僕は物じゃない...!翔太郎、変身だ」

 

震える手でどうにかダブルドライバーを引っ張り出し、腰につける翔太郎。

 

『CYCLONE』

『JOKER』

 

サイクロン!ジョーカー!

 

エクストリーム!

 

『ハハハ...無駄な事を』

 

翔太郎は恐怖をかき消すように叫び声を上げながらテラードーパントに立ち向かう。しかし、簡単に吹っ飛ばされる。

 

『これが真の恐怖だ』

 

そして俺たちは、テラードーパントのゲルの直撃を受けてしまい、変身解除した。テラードーパントは、もう攻撃の必要は無いとばかりに変身を解く。

 

「ようこそ、私の世界に!君達はもう終わりだ。一生を、恐怖の中で生きる」

 

恐怖にやられてしまい、錯乱する翔太郎。

 

「翔太郎!恐怖に飲まれちゃダメだ!翔太郎!」

 

翔太郎は反応しない。

 

「くっ、戦兎は...戦兎!起きてくれ戦兎!」

 

桐生戦兎は、先ほどの攻撃を受けてから動かない。うつ伏せになってなんの反応も示さなかった。

 

「戦兎!」

 

「っ、うぅ...」

 

「戦兎⁉︎よかった起きた!」

 

桐生戦兎がゆっくりと起き上がる。

 

「君は...運命の子⁉︎どうして外に...!」

 

「…え?」

 

様子がおかしい。まるで、ここにいてはおかしいものを見たかのようだった。

 

「戦兎!どうしたんだ戦兎!」

 

「戦兎...?俺は葛城巧だ」

 

「………そんな...」

 

桐生戦兎は、桐生戦兎じゃ無くなっていた。

 

「ああなりたくなかったら、私のことは忘れたまえ。轟君」

 

琉兵衛は腰を抜かした響子に近づいてそう言うと、イービル・テイルの箱を手に取る。

 

「さあ来人、帰るわよ」

 

『TERROR』

 

琉兵衛はもう一度テラードーパントに変身し、笑い声を上げながら若菜、フィリップとともに姿を消してしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ、ここがWの拠点か」

 

初めて来るが仮面ライダーの拠点がまさか探偵事務所だったとは。しかし、今仮面ライダーは使い物にならないらしい。アクセルとか言う刑事は全身傷だらけで介抱を受けているし、Wの片割れは毛布にくるまって恐怖に震えている。

 

「翔太郎君...ココア、飲んで」

 

Wの片割れはこの事務所の所長が声をかけただけでビクビクしていた。完全に恐怖に取り憑かれている。かく言う俺もそうなのだが、俺の恐怖は琉兵衛に対してのみだ。

 

「しっかりしてよ...戦兎君もどうしちゃったのさ」

 

「だから戦兎じゃないって言ってるだろ。俺の名前は葛城巧だ」

 

「夏だ!花火だ!お祭りだ!」

 

「いや、楽しかったな!ハハハ....」

 

空気を読まずに変な奴らが騒ぎながら乱入してきた。

 

「ん?おい、どうしたんだ翔太郎?夏風邪か?おい」

 

「シーッ!静かにしてあげて!お願いだから...」

 

「なに?この間は老人にされるし、ろくな目に遭わないな。大丈夫か?探偵」

 

2人がちょっかいを出しにかかると、またしても錯乱して暴れる。

 

「おい...こりゃ随分まずいんじゃないのか?え?」

 

軽く引くほどの異常さだ。

 

「私のせいで...」

 

責任を感じている...冒険家かなんかか?この人。

 

「ここにいても何もできない...か」

 

俺もいつのまにか仮面ライダーになっていたらしい。今戦えるのは俺だけ。けれど、テラードーパントと戦うことなんてできない。

 

しかし、ここにいても何もできないのも事実だ。何をするでもなく、俺はぶらりと事務所の外に出たのだった。

 

「風都タワーが壊れてるし、何がどうなってるんだ」

 

俺が意識を取り戻すまでの間に結構な時が経っていたらしい。町は結構変わっていた。やはり一番目立つのは壊れた風都タワーだが。

 

「そうだ...あの場所に行ってみよう」

 

俺の中にある、記憶を失う前の最後の記憶。

 

ミュージアムから引き取られて実験材料にされた、あの研究所だ。

 

「確かこの廃ビルの地下だったか...」

 

地下への階段は開けっぱなしだったので中に入る。

 

「もう動いてないな...誰もいないのか」

 

もう放棄されてしまっているのだろうか。ここ以外にあいつらとコンタクトを取れる場所なんて知らないのに、困った。

 

「どこに行けば桐生戦兎に会えるんだ...?」

 

仕方ないと思って外に出ようとしたその時だった。

 

「よかった見つけれた...」

 

「お前は...桐生戦兎⁉︎」

 

「テラーにやられて記憶を失うなんてな...今思い出させてやる」

 

「お前いったい何を⁉︎」

 

桐生戦兎はどこからともなくメモリを取り出すと、銃のようなデバイスにセットして俺の首に突きつける。そして、容赦なく引き金を引いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぅ...ここは...どこだ?」

 

確かテラードーパントの攻撃を喰らって...どうなったんだっけ?

 

「よぉ、起きたか」

 

「お前...佐藤太郎!何しにきた!」

 

「もう用は済んだ。じゃあな」

 

佐藤太郎はそれだけ言い残して去っていった。

 

「いったい何が...ってどうして俺はここにいるんだ?事務所に戻らないと」

 

目を覚ましたらあの研究所にいたのは謎だが、そんなことを気にしている場合じゃない。さっさと事務所に戻った。

 

「ただいま」

 

俺が事務所に戻ったのと同時に翔太郎のスタッグフォンに着信が入る。翔太郎は出ることなく、スタッグフォンを放り投げた。

 

「ちょっ、どうしたんだ翔太郎!それにフィリップはどこ行ったんだ?」

 

「覚えてないの?」

 

「…なんの話?」

 

亜樹子から不思議に思われるも、身に覚えがない。攻撃を喰らってそのあとどうなったんだ?思い出せない。

 

放り出されたスタッグフォンを取った亜樹子が電話に出る。

 

「はい、もしもし?...えっ⁉︎翔太郎君!フィリップ君が...」

 

その名を聞いても、自ら電話を取ろうとしない翔太郎。

 

「何してんのよ!相棒が連絡くれたんだよ⁉︎ほら!」

 

強引に受話器を押し付ける。

 

『翔太郎...?』

 

「フィリップ...」

 

『お別れだ...』

 

フィリップから発せられた、突然の別れの言葉。それを聞いて崩れ落ちる翔太郎。

 

『僕は今日、若菜姉さんの生贄にされて消滅するらしい』

 

「フィリップ...!」

 

『でも忘れないでくれ、相棒。僕は消えない。君の心に、悪魔と相乗りする勇気がある限り...』

 

その言葉を最後に、電話を切られた。

 

すっかり脱力してしまい、動こうとしない翔太郎。

 

「…行かないの?」

 

なおも沈黙する翔太郎。翔太郎らしくない。

 

「何で?何で今の話を聞いて事務所を出て行けないのよ⁉︎翔太郎君!!」

 

激しく食って掛かる亜樹子に、翔太郎は錯乱する。まるで、全てに恐怖しているかのように。

 

そこに、ドアを開けて入ってきたのは響子。

 

「響子さん。どこ行ってたの?」

 

「箱の中身よ!イービル・テイル」

 

「園咲家から持ってきちゃったの⁉︎どんだけ行動力あるのよ、あなた...って事は、ガイアインパクトやらは阻止した⁉︎」

 

「勘違いだったみたい。だって、それが何かの役に立つとは思えないもの!」

 

袋は小さく、イービル・テイルとやらはそこまで大きくなさそうだ。そして、形状的にメモリでもなさそうだ。

 

「これ...翔太郎君、戦兎君、見て!どういう意味だろうね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すべて、上手く行く...あと数分もすれば」

 

「そうはさせない!」

 

ここは園崎の屋敷。そこに現れたのは、亜樹子に支えられながらの翔太郎と俺。

 

『邪魔をする気?』

 

「ああ、そうだ」

 

「ハハハ...よく私の前に立てたな、左君、葛城君」

 

恐怖に耐えながらの翔太郎が出したのは、イービル・テイル。

 

「こいつの謎が、どうしても知りたくてね...!」

 

イービル・テイルもとい、刷毛。

 

「イービル・テイル⁉︎」

 

にわかに取り乱し、箱を開ける。しかしその中身は空。

 

「いつの間に...?返せ!私の家族だ!」

 

「家族...?」

 

「これが家族だって言うの⁉︎」

 

刷毛の柄には確かに園咲の家族全員の名前が書かれていた。

 

「そうか...あんたは自分の道を誤り、家族を犠牲にし続けてきた。でも、そうなっていく自分が恐ろしかった。だから幸せだった頃の象徴であるこの刷毛を家族自身とすり替え、自分の気持を誤魔化してきた。違うか?」

 

テラーの適合者は、誰よりも恐怖していたただの老人だったわけだ。

 

「あなたにも、怖いものがあったんだ...」

 

「馬鹿を言うな。そんな事は無い。さあ、それを寄越せ。最早、どんな抵抗も無駄だ」

 

『TERROR』

 

テラードーパントに変身し、イービル・テイルを取り返そうと迫る琉兵衛。

 

『ハハハ...!来人ももう消えた。若菜とともにある!』

 

テラーを前にし、より激しい恐怖感に苛まれる翔太郎と俺。恐怖を克服できたわけではない。けれど、潰れるわけにはいかない。

 

「そうだった...!あいつが俺を相棒と呼ぶ限り、俺は折れない...約束だった!」

 

闘志を取り戻す翔太郎。イービル・テイルを亜樹子に預けると、ジョーカーメモリを手に取る。

 

『JOKER』 『RABBIT』『RABBIT』

 

「さあ、来い...相棒!」

 

ダブルドライバーにジョーカーメモリを挿入し、応答を待つ翔太郎。

 

『う!お、お父様!』

 

『どうした、若菜⁉︎』

 

『来人が、来人が生意気なことを!』

 

クレイドールドーパントが異変を感じると同時に、ダブルドライバーに転送されるサイクロンメモリ。

 

「変身」 「変身」

 

サイクロン!ジョーカー!

 

紅のスピーディージャンパー!ラビットラビット!

 

『そ、そんな馬鹿な⁉︎』

 

Wに変身できたという事実に驚くテラードーパント。

 

『見事に僕を呼び込んでくれたね、翔太郎』

 

「フィリップ!」

 

「フィリップ君!」

 

『どう言う事なんだ⁉︎』

 

『母さんがヒントをくれた、最後の逆襲策だ。Wの変身システムは知っているでしょう?僕の意識をメモリに乗せて、翔太郎に飛ばした』

 

仕組みは、いつも見ていた通り。Wに変身する際にフィリップの意識が肉体を離れて翔太郎に憑依するという、当たり前のシステムの応用。フィリップが取り込まれることを理解したシュラウドの、『切り札』だ。

 

『そんな真似をしたら、若菜はメインプログラムを喪失した状態になる!』

 

制御プログラムであったフィリップの意識が抜けることで、暴走を始めるクレイドールドーパント。

 

『そう、バグる』

 

『おお...なんと愚かな!』

 

「街を泣かせてきた諸悪の根源、園咲琉兵衛!」

 

「「『さあ、お前の罪を数えろ!』」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『裁きを受けるがよい!』

 

「あんたがな!」

 

テラードーパントに対して善戦する俺たち。恐怖はとっくのとうに吹き飛んでいる。打開するためにテラードーパントは再び頭のドラゴンを分離させ、俺たちを襲わせようとするも、間にリボルギャリーが割り込む。

 

「リボルギャリー⁉︎」

 

中から出てきたのは、アクセルガンナーと合体したアクセル。

 

「俺が操り人形?上等だ!それで悪を砕けるなら、人形でも何でも構わん!」

 

「照井...」

 

「竜君!」

 

間合いをとって得意の砲撃を浴びせるものの、アクセルガンナーがドラゴンの噛み付きの餌食に。するとアクセルはアクセルガンナーを早々と切り離し、リボルギャリーに戻るとなんとハードタービュラーに接続し、空を飛んで直接ドラゴンを斬りにかかった。

 

「ドラゴンはあいつに任せるとしよう。俺たちはテラーを!」

 

そう意気込んだ瞬間、園咲の屋敷が突如として爆発を起こす。

 

『若菜...若菜!』

 

『エクストリームメモリが、僕の肉体のデータを取り戻した!』

 

エクストリームメモリが飛来する。と言うことはこの爆発はクレイドールドーパントがフィリップを失って起こったものだろうか。

 

エクストリーム!

 

『許さん!』

 

テラードーパントは怒り、Wに襲い掛かるも二人が揃い、フルの力を発揮できるならばもはや無敵。格闘のみでテラーを圧倒する。俺の出る幕もない。

 

アクセルの方も、テラードラゴンを圧倒していたを

 

アクセル!マキシマムドライブ!

 

「絶望がお前の...ゴールだ!」

 

エンジンブレードを構え、フル加速で『A』の形の炎を展開しながらドラゴンに突撃する。ドラゴンは貫かれ、落下していく。

 

エクストリーム!マキシマムドライブ!

 

『「ダブルエクストリーム!」』

 

Wも、マキシマムのキックがテラードーパントに炸裂し、ついにメモリブレイク。

 

琉兵衛が倒れたすぐ背後にドラゴンが墜落し、爆発炎上する園咲家。

 

「勝った...!テラーのメモリを、砕いた...」

 

「やった!」

 

ケガをおして出撃した照井は、傷口が塞がっていないのか変身解除すると再び血まみれになっていた。

 

「大丈夫?」

 

「大丈夫だ...」

 

照井がそう言うなら大丈夫だろう。振り向くと、ドラゴンの墜落を発端として一面が炎に包まれる園咲家と遺跡。

 

「お屋敷が...」

 

かつての自らの家が今まさに焼け落ちようとし、思わず飛び込もうとするフィリップ。それを制止する翔太郎。

 

「やっと...やっと、悪魔のメモリからみんなを引き離せたのに...」

 

やっと取り戻せるはずだった家族。しかし、結果はバラバラになり家族は二度と集まることができなくなってしまったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

事務所に戻り、この一大事件の記録をまとめる翔太郎。

 

「俺達は、園咲琉兵衛の最期を響子さんに伝えた。彼は怪物だったが、最期の瞬間にイービル・テイルを見て、かすかに人間に戻ったと...彼女を慰めるために付け加えた。俺の勝手な憶測かな...?」

 

「それ、本当の事だと思うよ。ね?」

 

「そうした方が事件の幕切れとしてはいいだろう」

 

「ああ、俺もそう思う」

 

死んでしまったのは残念だ。因果応報...とも言いたくはない。

 

「地球の記憶を巡る、ひとつの家族の愛憎劇は幕を閉じたかに思えた。だが...事件はまだ終わっていなかった。若菜姫が、焼け跡から見つからなかったのだ」

 

フィリップと同じくデータに分解されてしまったのか、それとも規模が規模だけに遺体も上がらないのか。

 

どちらなのかはわからないが、若菜が見つかるまで、事件は終わらない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさか葛城巧の記憶が戻るだなんてな」

 

「ああ、俺も予想していなかった」

 

葛城巧の記憶が戻る。あの時起こったことが、また起こるとは思っていなかった。

 

「おそらくテラーのあの攻撃を喰らったからだな。葛城巧の時に一度喰らい、心の奥底に刻まれていた恐怖がもう一度喰らったことで表に出てきた。そのせいで、葛城巧の心も表に出てきたのだろう」

 

「それでまた注入したんだろう?記憶は大丈夫なのか?」

 

「問題ない。桐生戦兎は消えたのではなく、葛城巧と入れ替わって内側に潜ってしまっただけだ。再起動させれば、元の桐生戦兎が戻ってくる」

 

「もしまた最初からだったらどうしてたんだ?」

 

「…またやり直すだけさ。時間がかかってもいい。桐生戦兎を取り戻させるまでだ」

 

「そうか。まぁ、もうテラーもいないし大丈夫だろ」

 

「ああ。あと心配なのは...財団Xとやらの動きだけだな」




テラーに葛城巧は絶対に勝てない。恐怖を桐生戦兎で塗りつぶさなければ...というわけで葛城巧が一瞬出て一瞬で消えていきました。

そういえばですけど最後のローマ字はもう辞めました。映画編に移るための導入書いてたらやっぱ要らないことに気づいてしまった。
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