仮面ライダーW Bの天才/メモリの適合   作:ダイヤモンドリリー

40 / 48
11251字。

原作47、48話です。


残されたU/消失は止められない

「ミック⁉︎」

 

うとうとしていたフィリップが目を覚ますと、その目の前にはミックがいた。

 

「ニャ~オ...ハハハ、どうだフィリップ?俺得意の猫探しの技は」

 

普通にすごいと思う。よく見つけられたな。

 

「とりあえずミックだけだが、お前の家族を取り戻してきたぜ」

 

「さすが翔太郎君!人間相手はイマイチだけどペットは強いわ!」

 

「何だと~⁉︎」

 

「ありがとう翔太郎、亜樹ちゃん」

 

お礼を言いながらミックを抱き上げるフィリップだったが、一瞬その表情が変わる。

 

「…ん?どうした?」

 

「翔太郎、頼みたいことがあるんだ」

 

「何だよ急に、他人行儀な」

 

「若菜姉さんを探して、助け出して欲しい」

 

「え?」

 

「でも、若菜姫は...」

 

「生きてる!僕には分かる。引き受けてもらえないだろうか?姉さんの事...」

 

「…地球の本棚越しに繋がってる...ってことか?」

 

「もちろん引き受けるさ。若菜姫は必ず俺が助け出す」

 

「どんなに辛いことが、起きても...?」

 

「お前のために耐えらんねえ事なんかねえよ、相棒」

 

…フィリップの様子が変だ。それに、この言い方。絶対に何かがあるように思えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ。で、見つけたよ、園咲冴子。サーキットでここ数日、よく走ってるって」

 

今現在、若菜のことを知っている可能性が最も高いのは冴子だ。だから冴子の情報を探していたのだが...さすがウォッチャマン。一瞬で情報ゲットだ。

 

「何でそんな何でもかんでも知ってるの?」

 

「こんな美人が1人で走ってたら、すぐバイク乗りの噂になるってば」

 

「あー...確かに」

 

と、言うわけで俺たちは冴子がいるらしいサーキットにやってきた。案の定バイクで走っていたので、俺たちもそれぞれバイクに乗って追いかけることにした。

 

後ろからハードボイルダーで追い抜く翔太郎と俺、そして正面からは照井。というか逆走するな危ないだろ照井刑事よ。

 

「ゲームセットって事かしら」

 

「そういうこったな、バッドレディ」

 

「あんたみたいな冴えない男が、父を殺してしまうなんて。最悪ね...」

 

フィリップに亜樹子もやってくる。

 

「冴子姉さん!教えてくれ、若菜姉さんをどこへやった⁉︎」

 

「若菜⁉︎若菜が生きてるの⁉︎」

 

…まじか。冴子が知らないとなると誰をあたれば...

 

「知らなかったのかい?若菜姉さんは今、危機に晒されている!僕には感じるんだ」

 

「ひどいですよ、冴子さん。1人で居なくなるなんて。さあ、あなたを迎えに来ました」

 

知らない男がやってきた。危険そうなオーラが出ている。思わずビルドドライバーを出そうとしてしまうのをギリギリで止める。

 

「私がどこへ行こうが勝手でしょう?」

 

「貴様、どこかで...」

 

「財団Xの加頭順と申します」

 

「財団X?」

 

「ミュージアムのスポンサーよ。闇の巨大資本...」

 

「背後にこんな奴等が...?」

 

そんな企業がいたなんて...いや、たしかに聞き覚えがある。葛城巧の記憶か?

 

「もはや背後ではない。私は冴子さんとともに達成します。ミュージアムの宿願、ガイアインパクトを」

 

「あなたが若菜を⁉︎」

 

「ええ。彼女は尊い犠牲となります」

 

「若菜姉さんを返せ!」

 

「お断りします」

 

加頭は、金色のメモリを取り出す。

 

「園咲の者にしか使えないゴールドメモリ...!」

 

「スポンサー特権と言う奴ですね。これは、私と適合率98%。まさに...運命」

 

『UTOPIA』

 

メモリを起動すると同時に、加頭以外の周囲のものが全て浮き上がる。

 

「な、何だ⁉︎」

 

「重力が⁉︎」

 

メモリは勝手に加頭のドライバーに挿さり、エネルギーの放出とともにユートピアドーパントへと変身する。

 

『ACCELE』 『RABBIT』『RABBIT』

 

「変...身!」 「変身!」

 

急いで俺と照井が変身する。

 

「フィリップ!俺たちも変身だ!」

 

「まだ、出来無い...!」

 

「え?何でだよ⁉︎」

 

「次のダブルへの変身は、若菜姉さんを助けるその瞬間に取っておかなければならない!今度ダブルに変身したら...僕の体は、消滅してしまう。この地上から、永遠に...」

 

そう言ってフィリップは非実体化して失われようとしている手をあらわにする。

 

「私...聞いてない」

 

「何言ってんだフィリップ...でたらめ言うなよ」

 

「…マジかよ。最っ悪だ」

 

Wの加勢は期待できない。ここはアクセルと俺だけでやるしかない。ゴールドメモリ、幹部級に立ち向かう。

 

「ハァッ!」

 

フルメモリバスターで斬りつける。しかし、攻撃が効いている様子はない。いくら攻撃しても、永遠と反撃をもらうばかり。

 

ユートピアドーパントは、火炎放射や竜巻を放ってくる。重力や火炎放射など、幾つもの能力を持っている所はウェザーと似ているが、これは本当にユートピアの能力なのか?まだ、奥の手を隠しているような、そんな気がした。

 

「何だ、このパワーは?」

 

『あなた達とは、次元が違う』

 

俺たちは何もすることが出来ず変身を解除してしまう。

 

「来人、今頃お父様もきっとお墓で泣いているわ。お墓でね」

 

「え?」

 

冴子が、フィリップに何やら意味深なことを言うのと同時に、ユートピアドーパントに引き寄せられて捕われてしまう。引力を操ったのか。

 

「加頭!離しなさい!」

 

『行きましょう、あなたの望みを叶えるために』

 

地面が割れ、その中にユートピアドーパントと冴子は消えてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「知りたい項目は、若菜姉さんのいる場所。キーワードは、『ミュージアム』『財団X』『施設』」

 

フィリップは淡々と地球の本棚で調べる。

 

「組織の秘密施設は、風都内に大小27箇所ある。しらみ潰しに探すしかないか...いや、待てよ」

 

思い出すのは、冴子の言葉。

 

『今頃、お父様もきっとお墓で泣いているわ』

 

しかし、琉兵衛は屋敷の跡地に埋れているはずだ。お墓なんて作られていない。

 

「父さんは埋葬されていないはず...そうか、追加キーワード『墓』」

 

フィリップが地球の本棚から戻ってくる。

 

「『CHARMING RAVEN』そこにメモリ製造工場が隠されている」

 

「何故、墓で分かったんだ?」

 

「社名がCHARMIN『G RAVE』N。墓は『GRAVE』」

 

「言葉遊び...か。それで絞り込めるのか」

 

「僕の検索に引っかかるのを見越した、冴子姉さんのヒントだ。あの人の心も動いているかも知れない。さあ、行こう」

 

「待てよ!そんな事よりさっきの話だ。お前が消えるってどう言う事なんだよ...?」

 

そう、それだ。消えるってのは、いったいなんなんだ。

 

「知っての通り、僕は一度死んでいる。この肉体は、地球の本棚の能力を得た事により、奇跡的に再構成されたデータの塊だ。それが今、加速度的に消滅している」

 

「こないだ若菜姫と融合したせいか⁉︎」

 

「…そうだ。僕らは地球に近づきすぎたんだ。今度ダブルになったら、僕の体は完全に消え、地球の記憶の一部となってしまうだろう。でも姉さんを救ってからであれば、悔いはない」

 

「地球の記憶の...一部に...」

 

「…もう、覚悟は決めてあるんだな」

 

「それ、絶対に避けられないのかな...?」

 

「ああ、回避できない...諦めてくれ」

 

全てを検索でき、全てを知ることができるフィリップだからこそ、この事実が避けられないことがわかるのだろう。しかし...

 

「馬鹿野郎!!そんな事、諦められるかよ...!」

 

それを認められないのが翔太郎だ。

 

「翔太郎君!」

 

そのまま、事務所を飛び出してしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「みんな、もうすぐ翔太郎が戻ってくるぞ。今階段を登ってる」

 

仕掛けたカメラで翔太郎の位置を確認する。

 

「開けたら行くぞ...せーっの!」

 

翔太郎が玄関のドアを開けた瞬間、大量のクラッカーが鳴らされる。

 

「...何だこれ?」

 

「私がみんなを呼んだの!フィリップ君の海外留学を祝した、サプライズパーティ!」

 

ウォッチャマンにサンタちゃん、クイーンにエリザベス、刃野と真倉まで集まったこのパーティー。こういう時、亜樹子の行動力はヤベーイと感じる。天井には『フィリップくん海外留学いってらっしゃいパーティ』という幕が垂れ下がっているし、飾り付けまでしてある。手伝うの疲れた...

 

「おい亜樹子!」

 

「シーッ!」

 

「何だよ、サプライズパーティって?」

 

「色々考えたけど、これが私の決めた事」

 

「さあ皆、プレゼントを開けてみて。僕からのプレゼント」

 

「戦いに行くのは明日にして、今晩だけ良いでしょ?フィリップ君に、思い出たくさんあげなくちゃ」

 

それが亜樹子の答え。せめて笑って送ってあげようという思いだ。

 

「フィリップから貰った」

 

そう言って真っ赤なカップを見せつける照井。

 

「俺もな、新品の工具セットを貰ったよ」

 

「はい、みんな!では主役からご挨拶があります!」

 

「え!?亜樹ちゃん...」

 

「待ってました!」

 

大盛り上がりの参加者。フィリップは一瞬困惑するも、話し出す。

 

「僕は、人との付き合いに興味が無かった。悪魔みたいな奴だった...でも、翔太郎に連れられて、この風都に来て...」

 

「今では...どうなの?」

 

「大好きさ。街も、皆も...」

 

はにかむように笑って答えるフィリップ。それは心からの本音なのがわかる。それでも、納得ができずにデスクに引っ込んでしまい、こちらに背を向ける翔太郎。

 

「それじゃあ、皆でもう一回、乾杯!」

 

フィリップは、盛り上がるゲストと亜樹子をよそに、プレゼントの箱を手に翔太郎の背後へ歩く。しかし、翔太郎は顔を合わせてくれない。

 

「翔太郎、プレゼントだ。後でいいから、開けてみてくれ」

 

それだけ言って、フィリップはプレゼントを置いていった。

 

…そして夜が開け、ゲストたちは寝入る中、俺たちは準備を進める。

 

「所長、敵の工場に乗り込むんだぞ。君には危険すぎる」

 

亜樹子も着いていくつもりのようで、照井が引き止める。

 

「行くよ?これが、最後のお別れかも知れないんだし」

 

しかし、亜樹子も食い下がる。

 

「…俺のそばを離れるなよ」

 

この覚悟を、照井も認めたようだ。

 

「もち!」

 

かくして、俺たちは敵の牙城、CHARMING RAVENに乗り込む。マスカレイドドーパントが次々と襲いかかってくるが、変身しないでも対応できる。武器を使って薙ぎ倒して若菜のもとに突き進む。

 

「若菜姉さんはこっちだ!」

 

「超便利!若菜姫レーダー!」

 

フィリップには若菜の場所がわかる。レーダーとは言い得て妙だ。しかし、背後からは多数のマスカレイドドーパントが迫ってくる。

 

「左、ここは任せろ」

 

『ACCELE』

 

「変...身!」

 

アクセル!

 

照井はアクセルへと変身し、マスカレイドドーパントの足止めをしてくれるようだ。後ろはアクセルに任せて俺たちは前に進む。

 

しばらく走っていると、ついに若菜と対面する。

 

「若菜姉さん!」

 

「若菜姫!」

 

声をかける。しかし、反応が返ってこない。

 

「若菜姉さん!姉さん!」

 

「来人、来人...」

 

フィリップの呼びかけに応じたかと思えば、うわ言のようにつぶやくばかり。狙って反応を返したわけではなさそうだ。

 

「とっとと連れて逃げるぜ」

 

「待って!何かの計測器...何を測っているんだ?」

 

フィリップが若菜の額にあるアンテナのようなものを見て言う。

 

「彼女の能力の発動数値」

 

端末を手に現れた加頭。

 

「加頭...!」

 

「これと直結しています。クレイドール・エクストリームを100とした時、今は...43%」

 

「姉さんをプログラム扱いする気だな」

 

「流石、元祖データ人間。理解が早い」

 

「ふざけるな...!」

 

「これが、ふざけている顔に見えますか?」

 

『UTOPIA』

 

不気味なまでの無表情でメモリを発動すると、やはり周囲の全てが浮き上がる。

 

「翔太郎!いよいよその時だ、こいつを倒す!その後は...頼んだよ」

 

『CYCLONE』

 

若菜を守るため、覚悟を決めるフィリップ。

 

「翔太郎!...翔太郎!!」

 

しかし、翔太郎の覚悟はまだ。

 

「翔太郎君...」

 

「うるせえよ!やるさ...」

 

メモリを持つ手が震えている。テラードーパントの時以上に恐怖している可能性すらある。

 

「…ふっ、それも翔太郎らしいな」

 

『RABBIT』『RABBIT』

 

「変身!」

 

ラビットラビットに変身し走るも、一手遅かった。若菜を引き寄せて連れ去られてしまう。

 

「若菜姉さん!」

 

『大事な生贄です。返してもらいますよ』

 

「生贄になんかさせないっ!」

 

フルメモリバスターで斬りつけるも効果が出ない。アクセルも追いつき、エンジンブレードで斬るもやはり効果はなく、反撃をもらう。

 

「照井!」

 

「竜君!」

 

防戦一方の俺たちを目にしてもなお変身できない翔太郎。

 

「翔太郎!」

 

ユートピアドーパントは挑発するように若菜を壁に張り付ける。

 

「おのれ!」

 

『TRIAL』

 

トライアル!

 

「貴様...!」

 

アクセルはトライアルに変身する。スピードで押し切る作戦だ。

 

「若菜姉さん!...翔太郎!」

 

まだ、翔太郎は動けない。そしてスピードで翻弄しようとするトライアルと俺だったが、まったく遅れる事なくユートピアドーパントは追従する。

 

「トライアルと互角の速さだと⁉︎」

 

『すぐに私が勝ちます。と言うより、君達が遅くなる。今度はちょっと、分かりやすくお見せしましょう』

 

ユートピアドーパントはトライアルと俺を掴むと、天井を突き破り空へと飛び上がって上空から突き落とす。

 

すると、トライアルが強制的に解除され、アクセルに戻ってしまう。

 

「これは...?」

 

『ユートピアとは希望の力のメモリ。君の生きる気力をもらい、私の力とした』

 

俺も少し動いたらわかった。明らかに出力が落ちている。特に、時間経過で増幅されるハザードメモリの力が落ちていた。ハザードのパワーが肩代わりしたようだ。

 

「まずい!翔太郎、早く変身だ!翔太郎!」

 

俺たちのピンチを目前にしても、まだ変身出来ない翔太郎。

 

『喪失感を味わいなさい』

 

ユートピアドーパントが俺たちに向かって手をかざす。俺はまだ速く動けるのでなんとか避けることができたが、アクセルに戻った照井はすぐには動けなかった。突如としてアクセルが燃え始め、火だるまになる。

 

「竜君!」

 

「照井竜!」

 

変身解除しても、まだ火だるま。転がっても火は消えない。そしてそこへ向けられたフィリップの悲痛な叫びに呼応するかのように、光を放つ若菜。

 

『若菜さんの能力数値が向上しましたね?』

 

すると、翔太郎は変身せずにそのままユートピアに立ち向かうという蛮行に出る。

 

「翔太郎⁉︎」

 

しかしかなう筈もない。返り討ちに会う。これど、そこで諦める翔太郎でもなく、ボロボロになりながらも一人ユートピアドーパントに立ち向かう。

 

「やめろ...やめろ!」

 

フィリップが叫ぶたびに、それに呼応して光る若菜。

 

「やめろ!やめるんだ翔太郎!やめろ!やめてくれ翔太郎...やめろやめろやめろ!やめてくれ...やめるんだ翔太郎!」

 

やがて、ユートピアドーパントが何かに気づく。

 

『彼女の意識は今、園咲来人とシンクロしています。素晴らしい...若菜さんの復活法が見つかった。来人君の精神的苦痛が、若菜さんを呼び覚ます。ちょっと死んでみてください。来人君の前で!』

 

「左...」

 

炎は消えたものの照井はもう虫の息。

 

「やめてくれ!!」

 

フィリップの悲痛な叫びが響く。ちゃんと動けるのは、俺だけ。

 

『仲間を痛めつけられるのが君の苦痛ですか?』

 

「クソッ、翔太郎!離れろ!」

 

「翔太郎!今度こそ変身だ!」

 

『CYCLONE』

 

翔太郎もメモリを出すものの、やはり起動できない。

 

「翔太郎!!」

 

『数値が上向いている...72%。もう一声!』

 

ここままだと翔太郎が死ぬ。急いで翔太郎を引き剥がし、ここから離脱しようとしたその時だった。

 

エネルギー弾がユートピアドーパントに命中し、変身解除しながら吹き飛ばされていく。攻撃の主は...タブードーパント、冴子だ。

 

「冴子さん...⁉︎」

 

「来人、早く若菜を連れて行きなさい!」

 

変身が解けた加頭にも容赦なく攻撃するタブードーパント。

 

「冴子姉さん...?まさか、僕らを助けて⁉︎」

 

『まさか?こいつの方が気に入らなかっただけよ!』

 

続けてざまにエネルギー弾の連打を浴びせる。生身で喰らったのだ。流石に死んでしまっただろう。

 

…かと思えば、体を炎上させながら立ち上がる加頭。

 

「あなたは...?」

 

「嘘⁉︎生身で攻撃受けたのに...!」

 

「私、ショックです。冴子さん、死んでいる所ですよ?私がNEVERでなかったら」

 

NEVER...か。死人なら、あの無表情で感情がなさそうなのも、人間離れした耐久力も納得だ。もしかしたら、別の技術も自らの体で実験しているのかもしれない。ユートピアに複数の能力があると考えるよりも、火炎放射や暴風は別の技術だと考えた方がそれらしい。

 

『死者蘇生兵士?...この場は逃げなさい、来人!』

 

「分かった!」

 

『UTOPIA』

 

タブードーパントの攻撃をものともせず、加頭は再びユートピアドーパントへと変身した。

 

「照井!」

 

「若菜姉さん!」

 

照井と若菜を救出する時間を稼ぐタブードーパントだったが、エネルギー弾は悉く逸れ、捕まえられた上に若菜まで奪われてしまう。そしてユートピアドーパントは追えないように炎で道を塞ぐ。

 

「フィリップ君、行こう!...フィリップ君!」

 

それでも若菜を取り戻そうとするフィリップだが、亜樹子に引っ張られて退却。

 

『若菜さんを復活させるため、来人君には後でじっくり味わってもらいますよ...理想郷の力を』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

照井は病院に担ぎ込まれた。生身で燃やされてしまったため、傷は深い。

 

「ユートピアは、人間の希望、願望など生きるための感情を吸い取って自分の力にする」

 

海岸でうなだれる翔太郎に、フィリップが検索で得られたユートピアの情報を話す。

 

「生きるための感情...?」

 

「生きるための感情を死人が吸い取るだなんてな...」

 

「照井竜が精神波攻撃に強い体質でなければ、もっと恐ろしい症状になっていただろう」

 

「竜君...」

 

「翔太郎...何か言うことは無いのかい?」

 

「…何の事だよ?」

 

「君が変身をためらったばかりにこの様だ!若菜姉さんも救えなかった!」

 

「俺は!俺は...」

 

語気を荒げるフィリップに釣られてようやく反論しに立ち上がるも、言葉がうまいこと出てこないようで、黙ってしまう。

 

「ほれ!ちょっと2人で話でもしたら?私、先帰って待ってるね!」

 

亜樹子は突然駆け出して何をするのかと思うと、波打ち際のボールを拾って投げた。

 

「ほら、戦兎君も行こ!」

 

「お、おう...」

 

まぁ、確かに今の二人には俺たちは居ても邪魔になるだけだ。ここはさっさと事務所に戻ることにしよう。

 

「それにしても、フィリップが消える...か」

 

正確には地球の記憶の一部になる、だったか。

 

「もし地球の本棚と繋がっていたら、地球の記憶の中のフィリップを引っ張り出したりすることもできるんだろうな...」

 

フィリップのメモリでも作るなり、もう一度データの体を作るなりしてフィリップを呼び戻すことは不可能ではないかもしれない。

 

けれど、それは地球の本棚と繋がっていたらの話だ。園崎の館が崩れ、あの地下も埋まってしまった今、新たに地球の本棚と繋がることはできない。フィリップを呼び戻すことができるのは、若菜しかいない。

 

「と言っても、全部憶測でしかないんだけどな...」

 

「なんの話?」

 

「もしかしたらフィリップが...悪い、話は後だ」

 

ビルドドライバーを腰につける。前からは、同じようにビルドドライバーをつけた佐藤太郎が歩いてきていた。

 

「亜樹子。先に事務所に戻っていてくれ。巻き込みたくない」

 

「わかった!」

 

亜樹子がその場を離れていく。それが、俺たちの戦いの合図になった。

 

『HAZARD』 『HAZARD』

 

マックスハザードオン!

 

ハザードメモリを起動し、ギジメモリの方も入れて準備を整える。

 

『RABBIT』『RABBIT』 『TANK』『TANK』

 

ラビット&ラビット!   タンク&タンク!

 

ドンテンカーン! ドーンテンカン! ドンテンカーン! ドーンテンカン!

 

ガタガタゴットン! ズッタンズタン! ガタガタゴットン! ズッタンズタン!

 

「「変身!」」

 

オーバーフロー!

 

紅のスピーディージャンパー!ラビットラビット!

ヤベーイ!ハエーイ!

 

鋼鉄のブルーウォーリアー!タンクタンク!

ヤベーイ!ツエーイ!

 

赤のウサギ型装甲と、青の戦車型装甲がやってくる。分離して空中に浮いたそれらを、それぞれ跳び上がって自らの体に装着していく。

 

「さぁ、こい。返り討ちにしてやるよ」

 

「それより前にいいか?」

 

「ん?」

 

「お前も跳ぶようになったな」

 

「…最っ悪だ」

 

完全に無意識の行動だった。まるで、いつもそうだったかのように自分から装甲を付けに跳んでいた。今までずっと否定していた分、ちょっと恥ずかしい。

 

ハザード!マキシマムドライブ!

 

ハザードフィニッシュ!

 

「ちょっ、お前!照れ隠しのマキシマムはやめろ⁉︎」

 

ラビットラビットフィニッシュ!

 

蹴りを叩き込んでやったが、上手く受け止められてしまったようだ。やはりタンクタンクの装甲は固い。まだ変身してから時間が経ってない今、ラビットラビットのパワーと速さは十分とは言えない。でも、タンクタンクも同じ条件のはずなのだ。防御力が上がり切る前に潰すしかない。

 

「「フルメモリバスター!」」

 

お互い武器を取り出す。おれはバスターブレードモードで、タンクタンクはバスターキャノンモードで戦い出す。フルメモリバスターとタンクタンクの砲台から放たれる二つの弾を、必要最低限の動きで回避して斬りかかる。狙いは首、脇、肘、膝などの装甲の薄い関節部分。

 

「ハァッ!」

 

首めがけて振ったフルメモリバスターは、切先が掠るくらいのギリギリで避けられてしまう。

 

「遅い!」

 

しかし、そのまま回転して左手に握っていたドリルクラッシャーで斬りつける。

 

「やっぱ武器は幾つも持っておいた方がいいねぇ」

 

ドリルクラッシャーを放り投げ、ネビュラメモリーガンに持ち替える。タンクタンクの放つ弾を撃ち落としながら近づき、近距離で斬って撃ってを繰り返す。

 

「次ィ!」

 

ネビュラメモリーガンを投げ捨てツインブレイカーに持ち替え、アタックモードでパイルを突き刺す。

 

「くそ面倒なの作りやがって!」

 

タンクタンクは砲弾から弾を飛ばして、避けさせることで俺を無理やり下がらせる。

 

「このまま近接で...ああもう剣邪魔!」

 

「嘘だろ⁉︎」

 

フルメモリバスターをタンクタンクに投げつける。それを弾いたタンクタンクの目の前には、左手にツインブレイカーを、右手にマグマナックルを構えた俺の姿があった。

 

「オラァッ!」

 

パイルを突き刺し、マグマナックルでツインブレイカーを殴ることで押し込む。

 

「ぐ、ぐぅ...!」

 

何度も何度も殴りつける。このままなら押し切れる。

 

「絶対!お前に勝つ!」

 

マグマ!マキシマムドライブ!

 

これでトドメを挿す。そう思い、マグマメモリをマグマナックルに挿した。

 

「ハァッ!」

 

ボルケニックナックル!

 

しかし、その攻撃はタンクタンクには当たらなかった。

 

突如戦う二人に触れる者が現れたのだ。

 

そして俺は、何者かに触れられた瞬間、マキシマムをソイツにぶつけた。ソイツは大きく後ろに吹き飛ばされていく。

 

「ハザードの力が...!」

 

「この感覚...ユートピア!!」

 

『いきなり攻撃だなんて...ひどいじゃないですか』

 

「お前からやっといて...何言ってやがんだ」

 

ハザードメモリで増幅された力が失われていく。

 

『君たちがいると面倒なのでね』

 

ユートピアドーパントは俺たちを狙っているようだ。

 

「戦兎、ここは一時休戦といこうじゃないか。流石に断らないだろう?」

 

「ああ、俺も同じことを言おうとしていたよ」

 

流石に一人で立ち向かえるような敵ではない。連携が必要だ。

 

「戦兎、ロボットメモリを渡せ」

 

「ロボットメモリ?どうして?」

 

「いいから早く!あとお前はクローズマグマになっとけ」

 

「お、おう」

 

ロボットメモリを手渡しながらクローズドラゴンを呼び出す。同時にハザードメモリも外しておく。

 

『CROSS-Z DRAGON』

 

メモリバーン!

 

クローズドラゴン!クローズマグマ!

 

「ビルドアップ!」

 

極熱筋肉!クローズマグマ!

アーチャチャチャチャチャチャチャチャチャアチャー!

 

俺がクローズマグマに変身する中、佐藤太郎は隣でメモリを起動していた。

 

『BLIZZARD』『ROBOT』

 

「その二つ...まさか⁉︎」

 

ボトルキーン!

 

グリスブリザード!

 

もう一度ブリザードメモリのスイッチを押してから、同時にメモリをビルドドライバーにセットする。

 

「ビルドアップ!」

 

激凍心火!グリスブリザード!

ガキガキガキガキガッキーン!

 

「やっぱり...グリスブリザード...!」

 

「ナックルを持て。直接触れなければ奴の力は使えない」

 

グリスブリザードはブリザードナックルを構える。俺もマグマナックルを構える。

 

『触れなければいい?無駄ですよ、そんなこと』

 

「無駄かどうかは俺らが決める!」

 

左右からナックルで殴りつける。マグマとブリザード。急激な温度の差がユートピアを襲う。

 

『マグマにブリザード。サイエンスメモリですか。どうして財団Xの支援を断ったのですか?』

 

しかし、やはり効果は薄い。こうやって質問する余裕まであるようだ。

 

「お前らがきな臭いからだよ」

 

「俺に質問するなとか言っとけばいいぞ佐藤太郎。話に乗る必要なんて無い」

 

こっちにもまだ話す余裕がある。でも、それは虚勢だ。触れられればほぼ一発アウトの状況だ。軽口叩いてないと緊張感に押し潰されてしまいそうになる。

 

『遊びはそろそろ終わりにしましょうか』

 

ユートピアドーパントが火炎放射や暴風を放ち始める。

 

「クオークスの超能力か!」

 

『知っているのですか。どこで知ったのやら...』

 

今度は持っている杖で地面に叩くユートピアドーパント。すると重力が狂いだし、俺たちの体が浮き出す。

 

「重力...!その杖か!」

 

「重力重力...そうだクローズマグマなら...!」

 

ドラゴン!マグマ!マキシマムドライブ!

 

右手に重力が集中しだす。集まった重力はブラックホールを生み出した。

 

「ハアァァァァ!!!」

 

「あっ、お前バカ!直接殴んなナックルで殴れ!」

 

その忠告虚しく、俺はブラックホールを纏った右拳をユートピアに叩きつけ、多少のダメージと引き換えに生きる希望というエネルギーを吸い取られ意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……っ!」

 

気がついたら、硬い地面の上で寝ていた。

 

「どうして俺はこんなところで...そうだ、ユートピアにやられて...」

 

少しずつ思い出してきた。ユートピアドーパントの重力に対抗するために、ブラックホールを使って殴ろうとしてやられたんだった。

 

「あっ、こいつも寝てんのか」

 

隣で佐藤太郎が地面で寝ていた。俺がやられた後、こいつもやられたらしい。

 

「そうだロボットメモリ返してもらおう...くっそ取れねぇ。どうしてドライバー握りしめながら寝てんだよこいつ...」

 

がっしりと掴んでいてメモリが引き抜けない。手を外そうにも死後硬直でもしてんのかってレベルで動かない。

 

「諦めるしかないか...あっ、じゃあタンク貰っておこう」

 

佐藤太郎の懐を探り、二つのタンクメモリを拝借する。

 

「やっと取り戻せた...」

 

ちょうどその時、佐藤太郎が目を覚まして起き上がる。

 

「戻ってこれた...ユートピアが倒されたのか...?」

 

「…ちょっと待て、今お前なんて言った?」

 

「俺に質問するな」

 

「今それを言うんじゃねぇ!ちゃんと質問に答えろ!」

 

「ユートピアが倒されたって言ったんだ。そうじゃなきゃ俺たちはずっと眠ったままだった」

 

「マジかよ...!」

 

ユートピアドーパントが倒された。それは、Wが倒したということを意味している。そしてそれは、翔太郎とフィリップがWに変身したということも表している。

 

「フィリップは...どうなった⁉︎」

 

俺は急いで事務所に向かって走る。嘘であって欲しい。何かの間違いであって欲しい。この天才の頭脳の予測が間違っている、そうであって欲しい。

 

けれど、現実は非情だ。

 

「俺はこれからもずっと街を守る。仮面ライダーとして。見ててくれよ。なあ、フィリップ...」

 

事務所に戻った瞬間、聞こえた翔太郎の声。

 

それで、俺は全てを察した。

 

今日をもって、フィリップは、地球の記憶の一部となって、消えた。




ユートピア回終わりです。

またテスト週間に入ったので次の投稿は7月10日になります。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。