仮面ライダーW Bの天才/メモリの適合 作:ダイヤモンドリリー
ここから先ぜーんぶオリジナル回です。
「エボルトを...倒してくれ!」
「エボル...ト⁉︎いるのか⁉︎この世界に!」
俺の中の記憶が警鐘を鳴らす。
「ちょっと待て、エボルトってなんだ?さっき聞きたいこと全部話すつったよな。聞かせてもらうぜ」
「エボルトは...地球外「待て戦兎。確かにお前の記憶はほぼ完璧に定着している。けれど、それはここにくる前の記憶しかない。全部話すなら、俺が適任だ」…わかった」
俺が語るよりも、こいつの方がわかりやすいだろう。
「まず話すのは、ずっと前の話だ。いや、未来の話の方が正しいな。今から大体八年後くらい未来の話、この世界ができるまでの、軌跡だ」
「未来?それってどう言うことだ。それにお前はなんなんだ」
「話を遮るんじゃないよ翔太郎。ちゃんと聞くとしよう」
「助かるよフィリップ...ことの発端は2007年、スカイウォールが日本を分断し東都、西都、北都の3つに分かれたことだ」
佐藤太郎は話し始める。一人で残した、49に分けたエピソードを。
一人で、なんの笑い要素も入れず、淡々と話していった。
「そして俺は、エボルトを倒した。二つの世界を融合させ、新世界を作るためのエネルギーとすることで。そうして、新世界ができた」
「新世界...?」
「さっき話したスカイウォールが存在しない世界だ。2007年にスカイウォールができない世界」
「もしかして...それって...!」
「そう、今俺たちが生きている、この世界だ」
「そんな...!」
それ自体は、俺の記憶でも覚えている。でも、知りたいのはその先だ。
「…ちょっと待て、エボルトってのは倒したんだよな?でもお前はエボルトを倒してくれと依頼した。復活したのか?」
「それはこれから話すことでわかる。こっから先は、そっちの戦兎も知らないことだ。俺の推論も混じっている。それでもいいな?」
「ああ、話してくれ」
「まず、だ。この世界は、俺がエボルトをエネルギーとして生まれた新世界だ。スカイウォールが2007年に生まれなかった世界。けれど、この新世界は俺が望んだものではなかったんだ」
「どう言うこと?」
「三つ目。世界の融合の時、本来想定していなかった三つ目の世界も融合してしまったんだ。それによって、スカイウォールが無く、代わりに風都という町が前からあったことになってガイアメモリが出回っている世界になった」
「なるほど...」
「それと、さっきスカイウォールが無くなった世界と言ったが...もう一つ、存在しなくなったものがある」
「それは...?」
「桐生戦兎だ。佐藤太郎の顔に葛城巧の記憶を持った桐生戦兎はスカイウォールがなければ生まれなかった存在だ。だから、新世界ができる時に消失した」
「万丈は...どうなった?」
「万丈龍我はエボルトに乗っ取られたままだったからエネルギーになって一緒に消えた」
「そんな...」
救えなかった...
「話を戻そう。桐生戦兎は消えた。でも、完全に消えたわけじゃなかった。桐生戦兎は新世界では生まれるはずのない人間だ。けれど、桐生戦兎がいなければ新世界は誕生しなかった。だから、桐生戦兎本人は消えたが、その記憶、意識を、地球は保存した。新世界創生の重要人物として」
「それってもしかして...」
「そう、地球の記憶の一部となった。そしてそれはエボルトもだ。エボルトはこの地球の源、エネルギー源だ。だから、同じように地球の記憶に保存されることとなった」
人が地球の記憶の一部となる。奇しくも、フィリップがなっていたことと同じだった。
「それだけだったら何も問題はなかった。このまま地球と共に過ごしていくだけだった。けれど、そこから一年後、運命が変わった。君たちWが、ビギンズナイトと呼ぶあの日の出来事だ」
「ビギンズナイトだと?」
「フィリップが救出される少し前、フィリップを介して二つのメモリが作られた」
「…なるほど」
「それは、桐生戦兎の記憶と力、エボルトの記憶と力がそれぞれこもったメモリだ」
「…おかしい。そんな本どこにもないぞ?」
フィリップはいつのまにか地球の本棚に入っていたようで、そんなことを言った。本がない?
「その記憶は唯一無二。メモリとして引き出したなら、地球の本棚には無くなってしまう。ビルドや桐生戦兎などの記録がなかなか見つけられなかったのはそういうことだ。もっとも、この世界で新たに作ったサイエンスメモリとかの記録はあっただろうけど」
確かに、メモリの記録はあったな。
「話を戻すぞ。作られた二つのメモリは、とある男たちの手に渡った。そしてそれぞれメモリを使った。そいつらが、佐藤太郎と、石動惣一だ」
「…ってことはお前らの正体って!」
「そうだ、君たちの想像通り、俺と石動惣一は、桐生戦兎とエボルトの記憶を宿したドーパントだ」
「ドーパント...だと⁉︎」
「そう。姿が変わるわけではなく、記憶と力が受け継がれるだけだが、確かに俺たちはドーパントだ」
まさか、こいつらがドーパントだったなんて。
「本当にドーパントなのか?メモリを出してみろ」
「出していいのか?メモリで記憶を手に入れられるなら、メモリを出したらその記憶は消えるんじゃないのか?」
「それは問題ない。メモリブレイクさせられなければ記憶は残ったままだ」
佐藤太郎が首の裏からメモリを取り出す。
「これが、桐生戦兎の記憶と力を内包したメモリ。ビルドメモリだ」
赤色と青色の混ざったようなメモリだ。
「これの記憶のおかげで、俺はサイエンスメモリやドライバーを作ることができたんだ」
「というと?」
「このメモリは桐生戦兎以外の地球の記憶に少しだが干渉できる。そのおかげで、メモリの製造方法とか色々知ることができた」
「…サイエンスメモリを作ったのは君で間違いないんだね?」
「そうだがそれがどうした?」
「前にサイエンスメモリやドライバーを作った者が誰なのか検索したことがあった。答えは葛城巧。そして君のことを調べた時は佐藤太郎だと出た。これはどう言うことだい?」
「……なるほど」
佐藤太郎は少し考えるそぶりを見せてから話し始める。
「今の俺を簡単に説明すると、体は佐藤太郎で精神や頭脳は桐生戦兎。おそらく、俺自身について調べた時は本来の体の名前である佐藤太郎の名前が出る。メモリやドライバーを作ったのはこの知識を利用してのことだから、桐生戦兎の本来の名である葛城巧の名前が出るのだろう」
「もう一つ質問しよう。君がメモリによって桐生戦兎の記憶を有しているのなら、こっちの葛城巧はどうして桐生戦兎の記憶を持っているんだい?」
「俺としてはそっちの説明の方が簡単だな。これだ」
佐藤太郎はトランスメモリーガンを取り出す。
「トランスメモリーガン...?ああ、なるほど」
「戦兎はわかったみたいだな」
「そいつで俺の中にデータだけ入れたってそういうことだろ?」
「正解だ」
トランスメモリーガンって結構便利だな。
「???」
あっ、亜樹子がよくわからないって顔してる。そういえばトランスメモリーガンの説明ってしてたっけ?
「悪い、トランスメモリーガンのちゃんとした説明をしてやってくれ」
「わかった。まずこいつはメモリを体の中に入れないでメモリの力を引き出すための道具だ。中身のデータを抜き出し、直接人体に注入する。そうすることで、複数の人物に一つのメモリを使うことができる」
「ふむふむ、ってことはそのメモリを私もそれで使えば戦兎君みたいな天才になっちゃうわけ?」
「なるにはなるが...メモリに意識が乗っ取られるな」
「怖っ!」
「戦兎は乗っ取られてないぞ?どういうことだ?」
「いや、乗っ取られているぞ。現に今、葛城巧の記憶や人格はほとんどないはずだ。ゆっくり馴染ませるつもりだったから記憶の定着に段階を踏むようにロックを掛けていたんだが、この一年でほとんど馴染んだはずだ」
「…?葛城巧の記憶、少ないけどあるにはあるぞ?」
「それはビルドの世界の葛城巧の記憶だ。この世界の葛城巧の記憶はないはず」
そう言われるとそうな気もする。
「トランスメモリーガンはミュージアムのメモリを体内に入れた人以外に使うと暴走するようになっている。だからドーパントである俺たちは意識を保っていられる。戦兎の場合、完全にメモリが定着したわけじゃなかったからコブラメモリを入れられた時やヘルブロスの時拒絶反応が出た。今使えば、なんの拒絶反応も出ずに使えるだろう」
「もしかしてそれ、ハザードメモリも同じか?」
「おっ、鋭いな。正解だ」
前々から不思議に思っていた。佐藤太郎や石動惣一がハザードを使っても暴走しない理由。そして、この一年で少しずつハザードを使える時間が伸びたこと。全てに合点がいった。
「どうして戦兎に桐生戦兎の記憶があるのかはわかった。でもわかんねぇな。どうして戦兎に記憶を入れたんだ?」
「どうして記憶を入れたのか...か。それは適合率の問題だな」
「適合率?」
「そうだ。なぜサイエンスメモリを作ったのは後で話すが、メモリを作った時にまず俺は自分との適合率を調べた。結果から言うと、あまり芳しくはなかった。俺ではメモリの力を引き出すことができなかった」
「ビルドメモリを入れた君がビルドの力を使いこなせないなんてことあるのかい?」
「フィリップの言うことは正しい。確かに、本来なら俺がビルドになるはずだった。でもなれなかった。何故だかわかるか?」
「…なんでだろ?」
「この世界の変身システムがメモリだったからだ。ビルドメモリが与えてくれた適性、ハザードレベルは本来のビルドシステムのものだ。メモリの適性じゃなかったんだよ」
「だから戦兎を...葛城巧を選んだと?」
「そうだ。俺がダメだったから、代わりとなる者を風都中から探し回った。そして見つけたのが、葛城巧だった。葛城巧は天才だった。全てのサイエンスメモリと適合し、完全に力を引き出すことができた。それこそ、ドライバー越しでないとメモリと過剰反応しすぎて乗っ取られてしまうくらいに」
「なるほどな」
「…じゃあどうしてそのビルドメモリを戦兎君に入れなかったの?君が使っててもビルドには向かないんだよね?」
「ビルドメモリはミュージアムのメモリだ。生体コネクタが俺にある以上、このメモリを譲渡して使うことはできない。まぁ、もう一つ理由あるんだがな」
「もう一つの理由って?」
「俺がエボルトを監視して、葛城巧がビルドの力を得る、そのためだ。エボルトの動向を見ていないと、何をしでかすかわからないからな」
それはそうだ。エボルトだし。
「こっからはこの世界に来てからのことを話そうか」
佐藤太郎がまた語り出そうとした瞬間、アラートが鳴り出す。
「…なんだ?この音」
「ドーパントを検知した音だ。佐藤太郎、お前じゃないんだよな?」
「当然だ」
「じゃあエボルトの仕業だ。すぐ行くぞ」
「そうだな、話の続きは後だ」
俺たちは急いで事務所の外に出ると、マシンビルダーを起動して発進した。
「ドーパントはどこだ?」
「その交差点を右だ!」
右に曲がり、見えてきたのは三体のドーパント。
「全部コブラドーパント...エボルトの仕業か」
「これ、仲間だと思わせて背中を刺すとかそんなことしないよな?佐藤太郎」
「するわけないだろそんなこと」
「オーケー、安心した」
それぞれビルドドライバーを腰につける。
『RABBIT』『TANK』『SPARKLING』
ラビットタンクスパークリング!
「コブラにはスパークリングだよね」
『ROBOT』『BLIZZARD』
「パワーで押しつぶす」
ボトルキーン!
グリスブリザード!
「「変身!」」
シュワッと弾ける! ラビットタンクスパークリング!
イエイ! イエーイ!
激凍心火!グリスブリザード!
ガキガキガキガキガッキーン!
俺はスパークリングに、佐藤太郎はグリスブリザードに変身する。
『すっげーなんだよこの力!コックローチの比じゃねぇ!』
『たっのしいー!』
『あっ、あれって仮面ライダー?でもこの力なら勝てるかも!』
「なぁ、あれって...」
「ああ。意識を保ってやがる」
本来なら、コブラドーパントは喋らない。苦しむように暴れまわるだけだ。一つの例外以外は。
「あいつら全員ミュージアムのドーパントでもあるってわけか」
「コブラは俺たちで倒す。ミュージアムのメモリの処分はWに任せよう」
『よっしゃお前ら!いっくぞー!』
『それそれー!』
『覚悟しろ仮面ライダー!』
コブラドーパントたちが地面を這うようにして接近してくる。
「よっと」
俺はそれをラビットバブルの破裂による高速移動で避け、蹴りと共にインパクトバブルの破裂を叩き込む。
「ほれ」
グリスブリザードもブリザードナックルを持って顔面にパンチを叩き込み、倒れ込んだところにもう一発殴る。
それだけで、攻撃を喰らった二体のコブラドーパントは元々のドーパントに戻っていった。
「お前が適性弱いって信じられないよ」
「グリスブリザードのスペックがいいだけだ。お前が使えばもっと強い」
『お、おいお前ら...?そんな一撃で⁉︎』
残った一体が怯えたような動作を取る。
「こんな調子ならマキシマムもいらないよな。ほらじっとしてな、楽に終わらせてやるから」
『ヒイッ...!』
怯え逃げようとするコブラドーパントに近づき蹴りを放つ。
『…なんてね、隙あり!』
どうやら逃げようとしていたのは嘘だったようで、低い体勢からアッパーカットを放ってくる。
「不意打ちで隙ありとか言う神経がしれないな」
顎めがけて放たれた拳をあっさりと避け、その手を掴んで投げ飛ばす。飛んでいった先はグリスブリザード。
ブリザード!マキシマムドライブ!
グレイシャルナックル!
冷気を纏ったナックルで容赦なく殴り飛ばす。コブラドーパントは元のドーパントの姿に戻りながら吹き飛ばされていき、壁にぶつかってミュージアムのメモリも中から抜けた。
「お前容赦ねぇな。マキシマムいらなかっただろうに」
「こいつらは被害者じゃない。元々ミュージアムのメモリを使っていたドーパントだ。慈悲はいらない。死ぬわけじゃないしな」
「おいおい、ラブアンドピースはどうしたんだ?桐生戦兎たちよぉ?」
この、声。聞き間違えるわけのない、あの敵の声だ。
「エボルト...!」
「おまえを止める。ここで終わらせる!」
「無理だな。それはお前が一番わかってるだろ?」
『COBRA』『RIDERSYSTEM』
石動惣一...いや、エボルトは、腰につけたビルドドライバーに似たドライバー、エボルドライバーに起動したメモリを挿していく。
コブラ!ライダーシステム!エボリューション!
Are you ready?
「変身」
コブラ! コブラ! エボルコブラ!
フッハッハッハッハッハッハ!
「エボル、フェーズ1......!」
「フェーズ1だなんて随分と余裕だな。さっさとブラックホールにでもなればいいのに」
「いや、出来ないんだ。奴の中のメモリで手に入れた力はフェーズ1まで。ドラゴンエボルメモリから先は作れてない」
「なるほどね。それなら、今倒すまで!」
『HAZARD』『RABBIT』『RABBIT』
ラビット&ラビット!
「ビルドアップ!」
紅のスピーディージャンパー!ラビットラビット!
ヤベーイ!ハエーイ!
ラビットラビットに変身し、エボルに立ち向かう。
「さぁ、準備運動と行こうか」
エボルトがこちらに向かってくる。そう認識した瞬間、突如訪れた激痛と共に後ろに吹き飛ばされる。
「なっ⁉︎」
吹き飛ばされ、壁に激突するまでの間になんとか見えたのは、グリスブリザードに蹴りを放つエボルの姿だった。
「んぐっ⁉︎」
壁に激突する。そこに痛みはない。それだけで、エボルの攻撃能力の高さが窺える。ハザードによって高められた速さでも追いつけず、防御力も意味をなさない。思えば、ビルドの世界でやつはローグの特殊装甲を貫通させていた。その強さは、メモリになっても健在だった。
「これでフェーズ1かよ...!」
何回かハザードメモリの入ったマキシマムスロットを叩く。もう暴走しないのだから、どれだけハザードの力を引き出しても問題ないのだ。限界まで叩き、速さを最大限まで跳ね上げさせるしかない。
「ちょこまかと動くようになったじゃねぇか。フルボトルの頃よりも速いんじゃないのか?」
高速でエボルの周りを走り回り隙を窺うも、なかなか攻撃に転じれない。逃げてるだけでは勝てない。そんなことわかっているのに、まだ逃げることしかできない。でも、それでいい。
「なるほど、囮か」
ブリザード!マキシマムドライブ!
エボルはグリスブリザードがマキシマムを発動させているのに気づいたようだ。でも、もうこの攻撃は避けられまい。
グレイシャルナックル!
エボルは近づいてくるグリスブリザードを迎え撃とうとして...
背後に迫っていた俺を回し蹴りで蹴り飛ばした。
「囮はグリスの方だろ?」
「クソッ!」
不意打ちの挟み撃ちが失敗した。その後、当然のごとくグリスブリザードの攻撃も避けられ、蹴り飛ばされる。
「もっと速度を上げるしか...!」
「これを使え!」
何かが投げられ、それをキャッチする。
「これ...!」
「ギジメモリの方と取り替えろ!」
「面白そうなことしてんじゃねぇか。でも、俺がそれをさせるとでも思ったか?」
エボルは俺に近づこうとする。しかし、その動きはグリスブリザードのトランスメモリーガンの弾丸によって妨害される。
「早くしろ!」
言われるがままに、手にした二本目のハザードメモリをマキシマムスロットに挿す。
マックスハザードオン!!
大量の力が俺の体に流れ出す。俺の中にビルドメモリのデータがなければ即暴走レベルの力が身体中を駆け巡る。
「ハザード二本挿しか。そんなので俺に勝てたら褒めてやるよ」
「言ってろ。褒める間も無くぶっ潰す」
足にグッと力を込める。そして溜めたエネルギーを一気に解き放つように、地面を蹴る。
さっきとは逆だった。エボルが、俺が動くのを認識した瞬間にはもう蹴りを叩き込んでいた。さっきと違うのは、あまり大きなダメージにはなっていないことだ。少しよろけただけ。けれど、初めて与えられたダメージだ。
「くっ、制御がむずいな。速すぎるのも困ったもんだ」
けれど、しばらく走っているうちに慣れてくる。先ほどの何倍もの速さを制御できるようになってくる。ギジメモリが本物に変わるだけでここまで出力に差が出るのかと驚きながら、俺は超高速で動き回り蹴りつける。
「フルメモリバスター!」
武器を手に取り、今度は斬りつける。武器の重量の分少し遅くなるも、減速した分の速度はすぐに元に戻り、さらに加速していく。
「ほんとちょこまかと動くなお前。ハエくらいのうざったさだ」
「決める!」
ラビット!ラビット!マキシマムドライブ!
フルフルマッチデース!
ラビットメモリをフルメモリバスターに挿し、マキシマムを発動させる。
フルフルマッチブレイク!
無言でエボルの背後に周り、赤いエネルギーを纏った剣を振るう。
けれど、その剣はあっさりと受け止められ投げ捨てられる。
無駄な抵抗だとは思いながらも、なんとかすぐに蹴りに転じるが軽く叩かれて中断される。
「やっぱうざったいハエは叩き落とすに限るよな」
おかしい。背後に周った瞬間少し速度が落ちたのは自分でも感じていたが、それでも普通ならこの速さには追いつけるはずがない。少なくとも、ビルドの世界でのフェーズ1なら、反応できずに倒せていたはずだ。
「俺も少しは成長してるってわけだ」
「少しってお前限度ってもんを考えろ!」
「そういうこと言ってる暇あったら...!」
俺の背後からグリスブリザードが飛び出してきてナックルでエボルに殴りかかる。あっさりと避けられるが、少し距離ができた。
「さっさと走れ!」
「お...おう!」
再度加速を始める。あの速度で反撃を喰らうなら、もっと速くするだけ。とりあえず武器を拾わないと...
「拾うな!」
その声を聞いて慌てて飛び退くと、通ろうとしていた軌道上に弾丸が飛ぶ。
「チッ、避けられたか」
いつのまにかエボルはトランスメモリーガンを持っていた。いや、コブラドーパントを作っていたのだから持っていないわけないのだが、鬼に金棒すぎる。
「やっぱ新人ビルドよりもお前の方を先に倒した方が良さそうだなぁ?と、いうわけで消えてもらおうか」
グリスブリザードを蹴り付け、動きを止めさせる。
コブラ!ライダーシステム!マキシマムドライブ!
「ついレバー動かしたくなっちまうよな。癖ってなかなか抜けないもんだな...お前もだろ?」
足元に星座早見盤を模したフィールドが発生し、エネルギーが右足に収束する。
Ready Go!
エボルテックフィニッシュ!
エボルは防御体勢を取ったグリスブリザードを蹴る。当然防御なんてなんの意味も成さず、あっという間に吹き飛ばされていく。
「これであとはお前だけだ」
「一撃かよ...!」
スペックの差が歴然だ。勝てる未来が全く想像できない。けれど、今は走るしかない。なんとかして攻略の糸口を見つけなければ、負けは必須。
「クローズドラゴン!」
俺の声に反応したクローズドラゴンがエボルめがけて飛んでいく。あくまで牽制。炎を吐いて、少しでもエボルの動きを封じさせる。
「うざったいなぁ...」
エボルはトランスメモリーガンで俺を狙って撃ってくる。クローズドラゴンなど眼中にないようだ。実際、ほとんど効いておらず目眩しくらいにしかなっていなかった。
「逃げてるだけじゃ勝てねぇのはわかってんだろ?」
「くっ...!」
そんなこと俺もわかっている。でも、攻撃すれば負けは必須。なら、少しでも可能性のあることをするだけ。もっともっとスピードを上げて一瞬で潰すしかない。
「加速すればなんとかなると思ってるなんて...おめでたいやつだなお前」
「こいつ...!」
さっきから、何回か弾丸が掠っている。方向転換で一瞬速度が落ちるタイミングでちょうど弾丸が飛んでくる。でもおかしい。この速度じゃ、俺が方向転換するであろう位置を先読みしてあらかじめ撃っていないと当たらないはずだ。そんなことできるのか?
「やっと慣れてきたぜ」
「慣れ...だと⁉︎」
そんな慣れなんかでこの速度に対応できるなんて考えたくもない。どこまで進化しやがるんだこいつは⁉︎
「さて、そろそろ終わらせるとしよう」
エボルがドライバーに挿さっているメモリに触れる。ゆっくりとメモリを抜き、マキシマムスロットに挿していく。完全に舐めてやがる。でも、ここから勝てるビジョンが見つからない。
「逃げるだけじゃ勝てないっての、ちゃんと体に叩き込んでわからせてやるよ」
逃げるだけじゃ勝てない。でも立ち向かっても負ける。もう、手はない。
「いや、違うか...?」
コブラ!ライダーシステム!マキシマムドライブ!
エボルの足元に星座早見盤が出現する。
「逃げるだけじゃ勝てない...か」
立ち止まる。
「諦めたか」
「ああ、諦めたよ」
Ready Go!
エボルテックフィニッシュ!
「
エボルが俺を蹴る直前に駆け出す。勝つためじゃない。一瞬で俺は倒れている佐藤太郎を回収し、その場を離れた。
「追ってきてはない...か」
この速さにエボルは追いつけない。マキシマムを発動していたタイミングなら尚更だ。
「ここなら...大丈夫だな」
佐藤太郎を下ろして変身を解く。
「う、うぅ...」
「起きたか。よかった死んでなかった」
エボルのマキシマムの直撃を喰らっていたが、目立った傷は無さそうだ。流石に内臓が傷ついているとかだったらわからないが。
「これでもドーパントだからな...耐久力は普通の人間よりもあるし再生能力もある...」
「再生能力...そんなのまであるのか」
「前に何回かトランスメモリーガン撃ち込んでたから...」
「いや何してんだお前」
そのまま始末してしまえばよかったのに。
「あんなのじゃ殺せないのはわかっていたからな...」
「ナチュラルに心を読むんじゃないよ」
「お前は俺だぞ?同じ桐生戦兎なんだから考えてることぐらい大体わかるさ」
まぁ確かに、それもそうだ。
「それはそうと...よく逃げ出してくれた。ナイス判断だ」
「勝てる気がしなかったからな...あれしかなかった。それに、倒すのなら今じゃなくてもいいわけだしな」
「それで正解だ。今の装備じゃ絶対に勝てない。少なくとも、あれを作らない限り奴には勝てないだろう」
「あれってもしかして...」
「そうだ。ジーニアス、あれが必要だ」
「ジーニアスって今から作れるのか?」
「今はまだ無理だ。まだその時じゃない」
「その時?」
「その話は後でまとめて話す。とりあえず、あの事務所のガレージまで連れて行ってくれ。準備だけ始めとくから」
「お、おう」
とりあえずバイクに...ってあそこに置いてきちゃった。後で回収しないとな。
「ってかお前再生能力あるんだろ動けんじゃん何肩貸してもらって楽しようとしてんだよ」
「バレたか」
「バレるわ。お前の考えてることぐらいわかるわ。キリキリ動けよ先輩よぉ」
「先輩...か。自分に言われるのも変な感じだな」
「俺も自分に言ってると思うと変な感じするわ」
とりあえず俺たちは事務所のガレージまでやってきた。佐藤太郎は俺の作っていた実験場の一角を陣取ると、そこに置いてあった機械やらの設備を整えていく。多分、メモリ制作に適した形に変えているのだろう。
「これでとりあえずはオッケーっと」
「こんなのでいいのか」
「逆にこんなのでスパークリング作ったと思うと感心するよ。よくこの設備で作れたなこれ」
「データはあったからな。つぎ込むだけだし」
「それはそうとこれで準備は終わりだ。上に戻ろう。話の続きをしよう」
桐生戦兎の語りがまた始まる。
…やっぱ説明って難しいわ。
うまく話がまとまらなくて、頭でははっきりとしてるのに文字に書き起こせない...誰か俺に文才を分けてくれ。元気玉の要領で一人0.01くらいでいいんで。