仮面ライダーW Bの天才/メモリの適合   作:ダイヤモンドリリー

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10739字。

完全オリジナルとなるとやっぱり執筆スピードが極端に遅くなってしまう...


ぶつかり合うD/気まぐれの起こす不運

「どこまで話したっけ?」

 

「この世界に来てからについて話すってところで中断したはずだ」

 

「オーケーじゃあそこからだな。まず、俺たちはそれぞれミュージアムからメモリを買った。そして俺たちは、まるで運命に引き寄せられたかのように惹かれあった」

 

「ビルドとエボルトの深い因縁がメモリ同士を惹きつけたって解釈でいいか?」

 

「それでいい。俺たちは、道端でばったりと会った。自分がメモリになってるってことは相手もそうなのだろうとお互いに思っていたから、お互いの正体はすぐにわかった」

 

「そしてそして?」

 

「前の世界だったらそのまま戦っていただろうが、その時の俺たちは戦う力を持っていなかった。フルボトルはないし、ドライバーもない。エボルトの方も、自らが持っていた力を喪失していて戦えない。そんな時、奴はこんな提案をしてきた」

 

「提案?」

 

「『元の世界に戻らないか』...だとさ。俺たちからしたら、この世界は風都やガイアメモリなんていう存在しなかったものが存在していることになっている歪な世界だ。だから、元の、本来想定していた新世界をもう一度作り直そうっていう提案だ」

 

「…それってエボルト側にメリットあんのか?」

 

「無い。ましてや俺の方にもない。そんなこと、どっちも本気でやろうだなんて思ってなかったさ。でも、手伝わされることになった。人質...のようなものだな」

 

人質...桐生戦兎にとって人質になりうる人といえば、一人ぐらいしかいない。

 

「万丈龍我のことか」

 

「そうだ。万丈龍我の意識はエボルトのメモリの中にある。協力しなければ、奴はメモリの中の万丈龍我を削除すると言い出した」

 

「そんなことできるのか?メモリの中の一部を消すことなんて」

 

「わからない。でも、消されてしまったら困る。もし本当に新世界に行くことになったら、データが残ってないと消えてしまうからな」

 

「なるほど、それでお前らが協力することになったのか」

 

「まぁ、協力ってのは建前だけどな。それぞれ、自分の目的のために利用しあっていたの方が正しい」

 

「それぞれの目的...桐生戦兎はエボルトを倒そうとしたってのはわかる。じゃあエボルトの目的は?」

 

「自分の力を取り戻すことだろう」

 

「なるほど。フェーズ1までしか持ってないみたいだしな」

 

「俺たちは、建前の目的の達成に必要かつ、それぞれの本当の目的を進められる方法を取った。それがプロジェクトビルド。ビルドの世界で起こったことを、出来るだけ再現することだった」

 

「再現...?」

 

「単純なことだ。一度やったことをなぞれば、もう一度同じ結果に行き着くだろうというような考え。どっちにも好都合だった。新世界を作るという建前にも合致し、エボルトを倒したい俺は葛城巧を使ってビルドを強化できるし、エボルトも自らの力を取り戻すことができる」

 

「ビルドを強化できるってのはなんとなくわかるが、エボルトが力を取り戻すってのがよくわからんな。本当になるかわからないのにそんなことするやつなのかエボルトってのは」

 

「奴は勝算のない賭けはしない。歴史をなぞれば必ず同じところに行き着くとわかっているのさ。例えばそいつ」

 

佐藤太郎は俺の肩に止まっていたクローズドラゴンを指差す。

 

「俺たちはクローズドラゴンについての情報は一切流していない。けれど、お前はそれを作り上げた。まるで歴史は繰り返すとでもいうように。桐生戦兎にはキードラゴンを制御できないという過程を作ったら、クローズドラゴンという結果が返ってきたんだ」

 

「過程を作る...か」

 

「スパークリングも似たようなものだ。ビルドの世界では、ブラッドスタークが浴びせてきたパンドラボックスの光が蓄積されたエンプティボトルを使ってスパークリングボトルを生み出した。こっちの世界では、ブラッドスタークが流し込んできたコブラメモリのデータを使って生み出した。状況が似ているだろう?」

 

「…確かに似てるっちゃ似てるな」

 

「グリスを敵として与えたらクローズチャージを作り出したし、グリスはハザードの暴走で倒した。ローグはラビラビで倒した。エターナルの件は予想外だったが、変身能力が奪われている状況を利用してラビットドラゴンに変身した。少しズレた道を通ることはあったが、出来るだけ同じ道を通るようにしている」

 

「おい、ちょっと待て」

 

「なんだ?」

 

「同じ道を通るようにしたつったな。じゃあ...ハザードドーパントはどうなんだよ...俺に殺させたのも!元の世界の再現のためだとでも言うのか⁉︎」

 

「…悪い」

 

「謝って欲しいんじゃない。説明してくれ」

 

「あれはエボルトがやったことだ。そんなこと、俺の計画のうちに入っていなかった...」

 

「………そうかよ」

 

「エボルトを倒すために、俺はこの町全てを巻き込んでしまった。それは本当に後悔している。だからこそ、今俺は最初はやろうとも思っていなかった、新世界の生成の方法を探している」

 

「もう一度新世界を作るのか?」

 

「ああ。新世界を作れば、この世界で死ぬことになった人間が死ななくなる。これは、この世界に佐藤太郎が生きていて、葛城巧がそのままの顔で生きていることから検証済みだ。そして、俺の調べでは新世界を作るには俺の中にあるビルドメモリと、エボルトの中にあるメモリが必要だ」

 

「なるほど。新世界の創造主のメモリと、新世界創造のエネルギー源のメモリがあれば作れるってわけか」

 

「…いつのまにか話がずれていたな。話を戻そう。俺たちはこの世界においてビルドの世界で起きたことを再現していった。このままいけばなんの問題もなかったのだが...つい先日、エボルトが姿を消したんだ。もう準備は整って、サイエンスにいる必要がなくなったかのように、ね」

 

「なるほど、だから早急にエボルトを倒すために俺たちに依頼してきたってのか」

 

「もともとどこかのタイミングで協力してもらうつもりだったんだが...こちらの準備不足の時に先を越されてしまってな。ドライバーにつけていたGPSも外されているみたいで、こちらからエボルトを追うことはできない」

 

「エボルトを倒すには、奴の方からこっちに出向いてくるか、ドーパント出現の反応を追うしかないってわけね」

 

やっと、今の状況の整理が終わった。サイエンスやエボルト、桐生戦兎についての状況のほとんどが開示された。

 

「さて、これで大体話し終わったと思うが...なんか話してないことあったかな?あっ、なんか質問ある?」

 

「はい!全然わかんないです!」

 

「あー、亜樹子はわかんなくてもいいぞ」

 

「ひ、ひどい...」

 

「そうだ聞きたいことあったの忘れてた」

 

「なんだ?」

 

「お前らドーパントなんだよな。そして記憶はメモリの効果で得た物だ。ならどうしてエターナルのマキシマムの効果を受けてなかったんだ?あん時普通に記憶あっただろ?」

 

これがあったからこいつらがドーパントだって聞いた時ほんの少し違和感を持ったんだよな。

 

「ああそれか。考えてみろ、普通ならメモリを外した段階でドーパント化は解ける。でも、俺がメモリを取り出しても記憶は消えてない。これだけ言えばわかるか?」

 

「…なるほど。トランスか。自分に使ったのか?」

 

「そうだ。一応の非常事態のために一回ずつデータを流し込んでいる。まぁ、ある程度の攻撃を喰らったらそのデータも吹っ飛んじまうけどな」

 

「俺もそれなるのか?」

 

「お前のデータはもう強固だからどれだけマキシマム喰らっても問題はずだ。これで大丈夫か?」

 

「大丈夫だ。質問以上」

 

「他に質問あるやついるか?」

 

「じゃあ僕から。エボルトを倒す方法はあるのかい?」

 

「ある。ジーニアスメモリを作れれば、やつを倒すことができる」

 

「ん?作れるのか?今はまだその時じゃないとか言ってなかったか?」

 

「歴史は繰り返す。思い出せ、ジーニアスに変身した時、エボルトのフェーズがなんだったか」

 

「フェーズ...そうだった、もうすでにブラックホールになってる時じゃねぇか!」

 

エボルトはフェーズ1から進化しない。エボルトを倒すのにジーニアスが必要なのに、ジーニアスを作るにはエボルトが進化しないといけない。このままじゃ、ジーニアス無しでエボルトを倒さなければならないなんてことになってしまう。

 

「とまぁ冗談はここまでにしておいて...」

 

「って冗談かい!じゃあ作れるのか!」

 

「忘れたのか?ジーニアスの初戦はマッドローグだ。ちょーっと裏技感はあるが作れるは作れる」

 

「な、なるほど」

 

「じゃあガレージに行こう。変身してちょっと殴り合うだけでいいから」

 

「えぇ...殴り合うの?」

 

なんで?いや、言ってることはなんとなくわかるけど。

 

「ほら行くぞ。あと、バットとエンジン渡してくれる?マッドローグ用に調整してからやるから」

 

なるほど。マッドローグはエボルドライバーで変身する必要があるから、ビルドドライバーで変身するためにメモリ側を調整するのか。

 

「よし、調整完了」

 

「早っ」

 

「ほらドライバーつけろー早く済ますぞ」

 

『KOUMORI』『HATSUDOUKI』

 

コウモリ!発動機!エボルマッチ!

 

「ほら早くしろって」

 

『RABBIT』『TANK』

 

「あんま急かさないでくれる?急ぐとメモリ挿す手が震えて上手く入らん」

 

ラビット!タンク!ベストマッチ!

 

「「変身」」

 

バットエンジン!ヌゥハハハハハハ......!

 

鋼のムーンサルト!ラビットタンク!イエーイ!

 

「ねぇ、ほんとに殴り合う必要ある?」

 

マッドローグがゆっくりこちらに歩いてきて、軽く肩パンしてくる。

 

「早くしろ。こんなんでいいから」

 

「それでいいのか?マッドローグとの戦闘の既成事実作りって」

 

こっちも軽く叩こう...としたけど、なんとなく勢いよく殴る。

 

「痛え」

 

「いやー手が滑っちゃったなー」

 

「いやーそんなことされちゃったらこっちも手が滑っちゃいそうだなー」

 

「事故なのに反撃されたら今度はタンクの拳が火を吹くことになりそうだなー」

 

「何やってんのさ2人とも...」

 

あかん。亜樹子に言われるのはなんか癪だ。

 

「あー、やめだやめ。さっさとジーニアス作ろうぜ」

 

変身を解除する。

 

「お前からやってきたんだけどなぁ...」

 

佐藤太郎も変身を解除する。

 

「よーし、じゃっ、ジーニアス作ってくか」

 

「どうやって作るん?」

 

「とりあえずお前そこに横になれ」

 

「お、おう」

 

佐藤太郎の指差した机の上に乗っかり、寝っ転がる。

 

「よーし始めるぞ」

 

佐藤太郎は、トランスメモリーガンを取り出した。

 

「おいちょっと待て待てお前まださっきの根に持ってんのかやめて待て早まるな!」

 

「ちょっと、なんで動くのさ」

 

「説明しないで銃を向けるのは止めろ!何する気だお前!」

 

インフォームド・コンセントをちゃんとやってくれ。これから何やるかの説明が欲しい。

 

「ジーニアスフルボトルを作ったのは桐生戦兎じゃない。葛城巧だ。だから、まずお前の中に入っているメモリのデータをいじる。メモリの記憶だけを残して桐生戦兎の記憶を一度シャットダウンさせて、葛城巧の意識を覚醒させるんだ」

 

「なるほど、葛城巧に作らせるのか...大丈夫?痛くない?」

 

「さぁ?」

 

「本当に大丈夫?怖いよ?」

 

「大丈夫だろ多分。ちょっとくすぐったいだけだ」

 

ヒェッ

 

「なんか微妙に聞いたことある気がするなそのセリフ...」

 

「左だっけか。ちょっと押さえてくれるか?こいつ暴れる」

 

翔太郎ががっしりと押さえてくる。

 

「し、翔太郎⁉︎う、裏切り者ーっ!」

 

首にひんやりとした銃口の感覚を感じた瞬間、俺の、桐生戦兎の意識は一旦途絶えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「冷た⁉︎」

 

目が覚めたとき、俺の体にはトランスメモリーガンが突きつけられていて、なぜか翔太郎、フィリップ、亜樹子に押さえつけられていた。

 

「…もしかして葛城巧めっちゃ抵抗した?」

 

「うん」

 

まぁ、そりゃそうだ。せっかく本来の自分の人格が戻ってきたのにもう一度桐生戦兎にならされるって嫌だよな。うん。

 

「ジーニアスできたのか?ってか早く手離せ。起きれないだろ」

 

「ほれ、出来たぞ」

 

起き上がりながら完成物を見る。

 

「エクストリームみたいだな」

 

見た目ほぼほぼエクストリームメモリだ。

 

「ドライバー両方同時に挿すならこの形状が一番良いんだよな。ってかスパークリングもこうやって作るもんだと思ってたらマキシマムスロットに挿してて初見びっくりしたわ」

 

「まぁ当時エクストリームメモリなんて知らなかったからさ。両方のスロットに上手く挿せなかったから仕方なく、ね」

 

「とりあえず、だ。これでジーニアスになれるはずだ」

 

「よし、フェーズ1のうちに倒しちまおう」

 

その時、アラートが鳴る。

 

「ナイスタイミングすぎて怖いけど行くぞ!打倒エボルトだ!」

 

ガレージから外に出る通路を通って、バイクを走らせる。

 

「場所はどこだ?」

 

「ここから南西に一キロくらいの所!」

 

エボルトはわざとドーパント探知範囲内でドーパントを作っているのだろう。俺たちを誘い出すために。けれど、奴はジーニアスを作ったことを知らない。初見殺しでここでトドメを刺すしかない。

 

「…ってあれ?」

 

「どうした?」

 

「ドーパントの反応が消えた...?」

 

「範囲外に出たとかじゃないのか?」

 

「まだ範囲には余裕があるし、変身解除したのか...いや、トランスメモリーガンで変身させられたならその可能性は低いか...っ⁉︎またドーパントだ。今度は西だ」

 

再度ドーパントの反応が出る。

 

「いや、また消えた...?な、なんだなんだ?またドーパントの反応が...ついたり消えたり何がどうなってんだ?故障か?」

 

「とりあえず行こう」

 

少しずつドーパントの現れる位置がずれていく。けれど、5、6回ドーパント反応が消えたりついたりした辺りで俺たちは現場に追いついた。

 

「あれって...クワガタドーパント?ロストフルボトルのドーパントだと?」

 

そこにいたのは、クワガタドーパントだった。

 

「ロストメモリはエボルトが作ったメモリだ。だからロストメモリのドーパントがいること自体は不思議でもない。でもおかしい、あれは既にブラックロストメモリ化してやがる...パンドラパネルもないのにどうして...?」

 

「それよりもあれだよあれ!なんでエボルトが戦ってやがるんだ?」

 

何故なのかはわからないが、クワガタドーパントとエボルが戦ってた。といっても一方的な戦いだが。

 

「あれエボルトが作ったんだろ?だったらなんで倒してんだ?」

 

「ブラックロストメモリは怪人態になるために必要なはずだから...か?でもそもそもブラックホールフォームになってないとその先には慣れないはずだし、なんでだ?」

 

「あっ、倒した」

 

エボルがマキシマム無しでクワガタドーパントを倒した。そして出てきたメモリを回収した。何回かドーパント反応が出たり消えたりしてたのは、こうやってエボルトが作っては倒してを繰り返していたからだろう。

 

「ん?なんだ居たのかお前ら。まさかこんなところまで探知出来るとは思っていなかったな」

 

「どうしてお前がブラックロストメモリを作れている。言え」

 

「嫌だね。自分で考えてみたらどうだ?天才...いや、てぇんさいなんだろ?」

 

「まぁいい。ここでお前は終わりなんだからな」

 

ビルドドライバーを腰につける。

 

「あっ、待て。ビルドドライバーじゃアレは使えない。ワンサイドを出せ」

 

「お、おう...」

 

ドライバーを取り出して佐藤太郎に渡す。

 

「何をするつもりだ?」

 

「ワンサイドライバーは、ただ一つのメモリで変身できるってだけじゃない。こうやって分解することで...あれ?」

 

佐藤太郎はワンサイドライバーを掴んで引っ張る。けれど、何も起こらない、

 

「おかしいな...外れない」

 

「ふっふっふっ...」

 

エボルが笑っていた。

 

「…お前、これはロストドライバーじゃないか。ふざけてないでワンサイドを早く出せ」

 

「いや、それがワンサイドだぞ?こんな時にふざけるわけないだろ」

 

「でもこれはロストドライバーだ!ワンサイドはどこに行った!」

 

「ハァーッハッハッハッ!!」

 

エボルは高笑いする。

 

「お前なんで笑って...」

 

「なるほど...あの時お前がやったことの意味がやっとわかった」

 

佐藤太郎はギロっとエボルを睨みつける。

 

「お前があの時、戦兎からドライバーを奪ってハザードメモリを挿すなんて面倒な方法を取ったのは!ワンサイドライバーとロストドライバーをすり替えるためだったのか!!」

 

「あー面白かった。なんとなくの遊びのつもりですり替えてみたが、どうやらいい方向に傾いたみたいだ」

 

それが起こったのはただの偶然。ほんの少しの気まぐれ。けれど、それだけで俺たちの切り札が意味をなさなくなった。

 

「笑わせてくれたついでに見せてやるよ。俺の進化を」

 

エボルトはドライバーからメモリを引き抜くと、別のメモリを取り出した。

 

『DRAGON』『RIDERSYSTEM』

 

ドラゴン!ライダーシステム!エボリューション!

 

「ど、ドラゴンメモリ⁉︎」

 

Are you ready?

 

「変身」

 

ドラゴン! ドラゴン! エボルドラゴン!

フッハッハッハッハッハッハ!

 

「フェーズ2、完了......!」

 

「なんでお前がドラゴンメモリを持っているんだ!」

 

「さぁね。自分で考えろって何回言えば済むんだ?」

 

「チッ、なんでもいい倒すしかねぇ」

 

『CROSS-Z DRAGON』

 

メモリバーン!

 

クローズドラゴン!クローズマグマ!

 

「変身!」

 

極熱筋肉!クローズマグマ!

アーチャチャチャチャチャチャチャチャチャアチャー!

 

フェーズ1の時でさえ敵わなかったのだからフェーズ2にラビラビが通用するわけない。だから、クローズマグマに変身した。これでハザードも使えばまだ戦いにはなるはずだ。

 

「おい、佐藤太郎。お前も早く変身を...どうした?」

 

「………そうか」

 

「どうしたんだ。変身しないとやられちまうぞ!」

 

「悪い。俺は戦えない」

 

「どうして!」

 

「あのドラゴンメモリは多分、ラビットドラゴンに変身するために作ったメモリだ。あの時壊れたメモリを、エボルトが回収していやがったんだ」

 

「おぉ、よく気づいたな。褒めてやるよ」

 

「でもそれがお前が変身しない理由とどう繋がるんだ」

 

「あれはメモリブレイクできるメモリだ。もしあれと戦って俺が負けたら...俺の中のビルドメモリが破壊される。だから戦えない」

 

「ん?あぁ確かにそうなるのか。フェーズ1以降になるために拾ってきたが...運がいいな」

 

くっそこれも偶然だってのかよ。

 

「とりあえずお前は逃げとけ。お前が狙われちまったら守りきれん」

 

佐藤太郎に二本のラビットメモリを渡す。ラビラビに変身すればエボルからも逃れる筈だ。

 

「助かる。じゃあハザードは任せた」

 

ラビットメモリを受け取った佐藤太郎は、俺にハザードメモリを押し付けてきた。

 

「えっ?でもコレなきゃお前ラビラビには...」

 

『RABBIT』『RABBIT』

 

『これでいい。じゃあな、頑張れ』

 

佐藤太郎は二つのラビットメモリを挿してドーパントになると、そのまま駆け出して逃げていった。

 

「ああなるほど...うわっ危ねぇ⁉︎今攻撃すんなエボルト!」

 

「長えよ。ここまで待ってやったんだから感謝しやがれ」

 

エボルの攻撃をギリギリで避ける。コブラフォームの時より若干速度が落ちているおかげでなんとか避けれているが、攻撃をする余裕まではない。こうなったら、やるしかない。

 

「んぐっ!」

 

「ん...?当たった?」

 

エボルの攻撃をわざと喰らって無理やり距離を取る。めっちゃ痛い。でも、こうするしか手はない。

 

『HAZARD』『HAZARD』

 

マックスハザードオン!!

 

二本のハザードメモリをマキシマムスロットに挿し、ハザードフォームに変身する。そして右手にマグマナックルを、左手にビートクローザーを持って構える。

 

「同じドラゴンで勝負と行こうぜ、エボルトよぉ!」

 

まず一撃。一撃決めて流れを持っていきたい。ハザードを使っているから時間をかけるのもいいが、早く倒すに越したことはない。一気に接近して右手のナックルを振りかぶり、左手のビートクローザーを振るう。

 

『お、おい戦兎!助けてくれ!』

 

「っ...!」

 

攻撃の手が、エボルにあたる直前に止まる。この声は、聞き間違えるはずもない、万丈龍我の声。

 

「なんてね」

 

「ぐっ⁉︎」

 

エボルに左手のビートクローザーを奪い盗られ、そのまま斬られる。

 

「くっ...万丈の意識が戻ってきただなんて甘い考えをした俺が馬鹿だったよ」

 

忘れていた。ビルドの世界の時でも万丈龍我の体を乗っ取っているのをいいことに、万丈龍我の声で助けを求めて俺の攻撃の手を止めさせたことがあった。この世界では体を乗っ取っているわけではないが、エボルトの中にあるメモリには万丈龍我の記憶が入っている。同じようなことができるのだ。

 

「そもそも、今の俺はクローズマグマなんだ。もし本当に意識が戻っていたとしても、俺を見て『戦兎』だなんて言うわけないんだ」

 

『待ってくれよ戦兎!俺だって!信じてくれよ!』

 

「もう...騙されねぇからな」

 

「チッ、まぁいい。小細工と遊びは終わりだ」

 

エボルがビートクローザーを構えながらこちらに向かって走る。

 

「ハァッ!」

 

「ぐっ、タァッ!」

 

振られたビートクローザーの軌道をなんとかマグマナックルで逸らす。第二撃はのけぞることでなんとか避け、回転しながらマグマナックルを顔面に叩き込む。

 

「浅い...!」

 

当たった瞬間に後ろに移動して衝撃を逃された。でも今やつの重心は後ろに傾いている。このまま追撃を...消えた?

 

違う!こいつわざと地面に倒れてやがる!

 

「よっと」

 

エボルは地面に寝転んだまま、前傾姿勢の俺を両足で蹴り飛ばす。

 

「くっそ!」

 

ドラゴン!ライダーシステム!マキシマムドライブ!

 

こいつ俺が地面に落ちる前に決め切るつもりだ。俺もマキシマムで迎え撃つしかない。

 

ハザード!マキシマムドライブ!

 

ハザードフィニッシュ!

 

ボルケニックフィニッシュ!

 

Ready Go!

 

エボルテックフィニッシュ!

 

マグマナックルを左手に持ち替え、右手にブラックホールを出現させる。ハザードのおかげでユートピアの時よりも威力は何倍も上だ。これならなんとか迎え撃てるはずだ。

 

対するエボルは右腕に蒼い炎を纏わせていた。よかった、前にも見たことがある攻撃だ。これなら合わせられる。

 

お互いの拳がぶつかり合う。ブラックホールと蒼い炎。パワーは同等。互いに後ろに吹き飛ばされる。

 

「はぁ、はぁ、お前、さっき小細工は止めるとか言ってなかったか?」

 

「言っただけさ。蛇ってのは人を騙すモンだぜ」

 

なんとか打ち消せた。でも、俺は消耗していて、エボルはピンピンとしている。本当に、さっきはなんとか相殺できたが力の差が歴然だ。

 

「ブラックホールの力...いいねぇ、早く俺も使いてぇなぁ」

 

「使わせねぇ。それより前にお前を倒す!」

 

…クソ、まだ右手が痺れていやがる。でも、ここは虚勢を張ってでも戦うしかない。エボルト相手に隙は見せられない。痺れる右手にマグマナックルを持ち替える。

 

「オラァッ!...っ!」

 

殴るが受け止められる。

 

「速度と威力が落ちているな。さっきので痛めたのか?」

 

「っ!」

 

バレたが攻撃の手を止めるわけにはいかない。捕まれているマグマナックルを手放して足払いをかける。

 

「これで終わりだ!」

 

ハザード!マキシマムドライブ!

 

ハザードフィニッシュ!

 

ボルケニックフィニッシュ!

アーチャチャチャチャチャチャチャチャチャアチャー!

 

八体のマグマライズドラゴンを呼び出し、地面で転んでいるエボルに突撃させる。そして右足に炎を纏い、かつては決まらなかった踵落としを叩きつける。

 

「決めた感覚がねぇ...逃げられたか?」

 

確かに命中はさせた。でも、倒した感覚がない。とりあえず、この炎の中から離れなければならない。本当に逃げられたのかハッキリしない時に視界の悪いところに居続けるのは悪手だ。

 

「さて、どこから来る...?」

 

逃げた可能性はあるが本当に考慮すべきは、エボルが俺を攻撃する機会を待って潜伏している可能性。そっちの方がエボルトの性に合っているはずだ。

 

ドラゴン!マキシマムドライブ!スペシャルチューン!

 

「来たっ!」

 

これはビートクローザーのマキシマムの音だ。音は背後から聞こえた。急いで振り向く。

 

「…囮かよ⁉︎」

 

そこにあったのはビートクローザーだけ。それに気づいた瞬間、背後からのドロップキックが直撃する。

 

「ぐっ、ガァっ!!」

 

あまりの威力に変身が解除されてしまう。こいつ最後まで小細工使ってきやがった。

 

「さーて。前回は逃げられちまったからな。今度はちゃんと殺してやるよ」

 

ゆっくりエボルが近づいてくる。やばい。死んだ。今からビルドに変身しようとしても間に合う距離じゃない。こうなったらドーパントになって離脱するしか...

 

「じゃあな、サヨナラだ。チャオ!」

 

拳を振りかぶるエボル。思わず、俺は目を瞑ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その瞬間、何かが走ってくる音が聞こえた。

 

そしてガバッと体を抱えられ急に体がものすごい速さで動く。

 

「ら、ラビット⁉︎おま、佐藤太郎!戻ってきやがったのか!」

 

もし攻撃を喰らっていたらメモリが砕けていただろうに、なんて無茶をするんだこの天才は!

 

『そんなこと言ってる場合か!早く逃げんぞ!』

 

「おっ、戻ってきやがったのか。なら、まとめて殺すだけだ」

 

「ちょっと待って速度遅いってもう少し速く走れないのか追いつかれてきてんぞ!」

 

少しずつエボルとの距離が狭くなっている。このままじゃ一分もしないうちに追いつかれてしまう。

 

『仕方ないだろお前抱えてんだしハザードないんだから!』

 

「じゃあハザードを...挿さんねぇ!」

 

『ハザードは直接人体に挿さんねぇんだよ!』

 

「じゃあネビュラで!」

 

『ネビュラはヘルブロスメモリ専門だ!他のメモリは使えねぇ!』

 

「じゃあトランス出してくれよ!」

 

『出してるうちに追いつかれる!そんな暇ねぇ!』

 

まずいまずいまずいまずい!このままじゃ追いつかれる!

 

『TRIAL』

 

トライアル!

 

こ、この音!

 

「佐藤、桐生は任せろ」

 

「照井⁉︎」

 

『任せた』

 

「おわっ⁉︎」

 

せめてゆっくり受け渡してくれないかなぁ!投げ渡すのは怖いって!

 

「ってあいつは大丈夫なのか⁉︎」

 

ラビラビのドーパントよりもトライアルの方が速いらしく、エボルとの距離が開いていく。でも、エボルも本気を出したようで、フェーズ1のコブラフォームに変身して速度を上げてきた。トライアルには追いつけないが、このままじゃ佐藤太郎が捕まってしまう。

 

「大丈夫だ。すでに手は打ってある」

 

「それって...ああ、なるほど」

 

エボルにリボルギャリーが突っ込んでいった。それを見たラビラビのドーパントが困惑したような仕草を取ってからこっちに向かって走ってくる。

 

「た...助かった」

 

Wとアクセル、この町の誇る二人の仮面ライダーのおかげで、俺たちはエボルトから逃げ切ることができたのであった。




せ、説明が苦手すぎる...

分かりにくかったら修正追記するかも。
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