仮面ライダーW Bの天才/メモリの適合   作:ダイヤモンドリリー

44 / 48
10162字。

エボルト倒そうとするとどうしても捨て身の攻撃になってしまうんだなぁ...


切り札はH/解かれる枷

「エボルト対策会議を始めまーす!」

 

「イェーイ!」

 

こういう時、場を盛り上げてくれる亜樹子が居てくれると助かる。どんよりとした空気にならないのは大事だ。

 

「さて、見事に敗北を喫したわけだが、まずはエボルトの現在の戦力を考えることにしよう」

 

敵戦力を見誤ると痛い目を見る。フェーズ2を予測できなかったため、前回は負けてしまった。まぁ、フェーズ1に勝てるかどうかは微妙ではあったが。

 

『今のところ見えている戦力はフェーズ1のコブラフォームとフェーズ2のドラゴンフォームだよな』

 

「あの...すまん」

 

「どうした?左」

 

「なんでクローズチャージに変身してるんだ?戦兎」

 

翔太郎にクローズチャージに変身していることを指摘される。

 

『昨日の戦いでダメージを負いすぎたからな。クローズチャージの再生能力で無理やり回復させているんだ』

 

「ああ、なるほど...」

 

『慣れてくれ』

 

「話を戻すぞ。ドラゴンメモリを持っているってことは、ラビットの方も持っていると見ていいだろう。もしかしたら持ってないんじゃないか、という希望的観測はしない方がいい」

 

『あん時ちゃんと壊れたメモリ回収しとけばこんなことにはならなかったんだよな...』

 

「仕方ない。壊れたメモリを直して使ってくるなんて普通考えつかないんだ。そこを後悔したところで何の意味もない」

 

それはそうなんだが、やはり少し悔やまれる。

 

「ドラゴンとラビットは共にメモリブレイクが可能なメモリだ。俺の中のビルドメモリはミュージアム製だから、破壊できてしまう。つまり、俺はフェーズ2や3のエボルと戦うことができない」

 

『やっぱそこがネックだよな』

 

「でも、これは逆にチャンスでもある」

 

「と、言うと?」

 

「ドラゴンもラビットも破壊できるメモリだ。つまり、Wやアクセルが戦闘に参加することができる」

 

『…ああ、なるほど。もしWやアクセルのメモリブレイクを上手く決めることができたら、奴のメモリを破壊して弱体化できるのか』

 

サイエンスのメモリとは相性の悪いWやアクセルも、ミュージアム製なら話は別だ。

 

「…そうだ。俺がロストドライバー使って変身するのはどうだ?トリガーとかヒートとか...Wのメモリで変身すればいけるんじゃね?」

 

「無理だ」

 

「どうして?」

 

「お前はサイエンスのメモリに関しては全てのメモリに適合している天才だ。でも、ミュージアムのメモリはダメだ。お前じゃほとんど適合できない。ロストドライバーは適合率が高くないとほぼ意味ないしな」

 

「そうなのか」

 

「ほとんどが0%に近い。ビルドメモリ以外に一つだけ適合できる物はあるが、それも10%に満たないからな」

 

俺じゃできないのか...ここはメモリブレイクの専門家に任せるべきだろう。

 

「だからWとアクセルに頼るしかないんだが、やりすぎてエボルトの中のメモリまで壊されると困る。Wもアクセルも、加減には気をつけて欲しい」

 

『新世界を作るにはエボルトのメモリが必要だからな。でも、ドラゴンだけ壊すとかってできるのか?』

 

「フェーズ2と3はミュージアムのメモリとサイエンスメモリを同時に使っている。ライダーシステムのメモリのおかげでそれほど深くまでダメージはいかないはずだ。よほど強く、たとえば二人で同時にマキシマムを当てるとかしなければ大丈夫だろう」

 

『フェーズ4...ブラックホールに至っている可能性はあると思うか?』

 

もしドラゴンやラビットのメモリを破壊できても、エボルトリガーに値するメモリがあったら、エボルはフェーズ4になってしまう。最悪は想定しておかなければならない。

 

「多分...メモリはあるんだと思う」

 

『…ブラックロストメモリがそれの根拠か?』

 

「そうだ。あれをエボルトが生み出せているということは、力を取り戻しつつあるということ。そして、ブラックロストメモリはおそらく怪人態になるために必要なもの。それを集めているってことは、フェーズ4には既になれる可能性が高い」

 

「じゃあなんで最初からそのフェーズ4とやらにならないの?」

 

亜樹子のその疑問はもっともだ。

 

「しっかりとビルド世界での順序を辿っているのか、それともただ俺たちをおちょくっているだけか...微妙なところだ」

 

『エボルトならやりかねない』

 

「でも、すぐに怪人態にはなれないことだけは確定している。そこだけは揺るぎない」

 

「どうしてだ?」

 

『…そうか。怪人態になるには10本のブラックロストメモリが必要。そして、ブラックロストメモリはロストメモリから作る。そのうちの一つは今、ここにある』

 

「ああ、そうだ」

 

佐藤太郎がバットメモリを取り出す。

 

「桐生戦兎が持っている、昨日マッドローグになるために使ったほうのメモリじゃなくて、ナイトローグに変身するために使っていたこっちのバットメモリはロストメモリだ。これがなければ奴は怪人態にはなれない」

 

『これさえ守りきれれば、奴の進化を止められる。逆にこいつを取られたらジ・エンドだ』

 

「こちらの敗北条件はわかった。今度はこちらの勝利条件だ。エボルトに勝つ見込みはあるのか?」

 

「ジーニアスメモリ。それさえ使えれば、おそらく奴を倒すことができる」

 

「おそらく...か」

 

『でもどうするんだ?ワンサイドライバーがないと使えないんだろ?ってか片側だけでジーニアスになるのか?」

 

「ワンサイドはあくまで部品だ。Wでいうソウルサイド。もう片側のこいつがなければジーニアスにはなれない」

 

佐藤太郎は懐からドライバーを取り出す。青く、ロストドライバーやワンサイドライバーを左右反転させたようなドライバーだ。

 

「ワンサイドライバーをもう一度作ることはできないのか?」

 

「もう一回作るのは無理だ。一応言っておくが、ジーニアスをビルドドライバー用に調整することもできない」

 

思っていたことを先に言われてしまった。

 

『それならもう、どうにかしてエボルトからワンサイドライバーを取り返すしか...無理じゃね?』

 

「そうなんだよなぁ...ひとまず、出来ることからやっていこう」

 

「出来ることって?」

 

「ビルドドライバーを出してくれるか?戦兎」

 

『それはいいけど、何するつもりだ?』

 

「今出来ることはビルドドライバーの調整くらいだ。本来これでエボルと戦うことは想定していなかったからな。つけていた枷を外す」

 

『枷...?そんなのついてたのか』

 

「お前なら想像ついていたと思っていたんだがな。まぁいい、調整には時間がかかる。少しの間ガレージに篭らせてもらうぞ」

 

そんな時またしても、昨日のようにアラートが鳴る。

 

『…またエボルトか。盗聴器でも仕掛けられてるんじゃねぇか?タイミングが良すぎる』

 

「それが偶然なのかはわからんが...誘っているのは確かだな。隠れてやるならここからもっと遠くでドーパントを作るはずだ。わざわざ探知範囲内でやるんだ。誘っているとしか思えない」

 

『しょうがねぇ、行くしかないだろ。ビルドドライバーを返してくれ』

 

「…今のままのビルドドライバーで戦っても勝ち目はない。だから、渡すわけにはいかない」

 

『じゃあどうやって戦えばいい。クローズチャージで戦えってのか?それともクロコダイルでも貸してくれんのか?』

 

「これを使え」

 

『うわっと。これをか?』

 

放り投げられたそれをキャッチする。それは、さっき見せられた青いドライバーだった。

 

「そっちはワンサイドとは違ってメモリの適合値を上げてくれる。前のお前なら即暴走だが、今なら問題なく使えるはずだ」

 

「なるほど...わかった」

 

首からドラゴンメモリを抜く。回復完了だ。エボルトが移動しないうちに早く向かわなければ。

 

「左、戦兎について行ってくれ。後で調整したドライバーを届けるからそれまでサポートを頼む。照井はここに残ってくれ。一応の保険と、ドライバーを届ける係だ。頼んだぞ」

 

「了解だ」

 

「早く行くぞ翔太郎。それほど遠くはないけど、もう一度反応が消えてまた探知が発動した。急がないとやばい」

 

俺たちは急いで反応のある方にバイクで走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よぉ、待ってたぜ」

 

ドラゴンフォームのエボルが待ち伏せをしていた。

 

「やっぱり待ち伏せしていたか。しかも作ってたドーパントはコブラみたいだし」

 

作ったドーパントを一度倒してもう一度生み出したのは俺たちを急いでここに向かわせるためのフェイク。ブラックロストドーパントを作り出していると思わせるための小細工だ。

 

「もうメモリは集め終わってんだ。あとはあいつの持つバットメモリだけさ」

 

もう既に9本集まっているらしい。

 

「あいつじゃなくてWがついてくるとは思わなかったが、まぁいい。お前らを倒してから直接乗り込むとしよう」

 

「悪いがそうはさせねぇ。行くぞ翔太郎」

 

「ああ、フィリップも行くぞ」

 

腰にあの青いドライバー、ギャクサイドライバーを装着する。

 

「…ギャクサイド?」

 

『JOKER』 『MAGMA』

 

「変身!」 「変身!」

 

サイクロン!ジョーカー! マグマ!

 

「そのメモリ、壊させてもらうぞ」

 

「なるほどそういう魂胆か。無理だろうけどな」

 

「無理かはどうかは...俺たちが決める!」

 

マグマナックルを持ち、一気に駆け出す。Wのエボルへのキックを皮切りに戦闘が始まった。キック自体は避けられたが、避けた方向に先回りしていた俺がナックルを叩き込む。

 

『翔太郎、ルナトリガーで行こう。僕たちのすることは戦兎のサポートだ』

 

「そうだな」

 

『LUNA』『TRIGGER』

 

ルナ!トリガー!

 

「オラァッ!」

 

エボルの正面から殴りかかる。バックステップで避けられてしまうが、俺の背後から飛んできた曲がる弾丸がエボルに命中する。

 

「くっ、面倒だな」

 

「そういえばWとの共闘久しぶりだったな。ルナトリガーのサポートが厚いぜ」

 

後ろから連続でルナトリガーの弾丸が飛んでくる。俺との攻撃に合わせて撃ってくれるため、どちらかを避けようとしたらどちらかには当たってしまう状況を生み出せている。

 

「翔太郎!ドライバーを待つ必要無い!とりあえず一発マキシマム叩き込め!」

 

マグマ!マキシマムドライブ!

 

マグマメモリをマキシマムスロットに移しながら叫ぶ。

 

「『わかった!』」

 

トリガー!マキシマムドライブ!

 

「ハァアアアアッ!」

 

右足全体に灼熱のマグマがまとわりつく。ドラゴンメモリを使っていないためマグマライズドラゴンは呼び出せないが、ルナトリガーのマキシマムと合わせれば威力は十分なはずだ。

 

ボルケニックフィニッシュ!

 

「『トリガーフルバースト!』」

 

「ハァッ!!」

 

俺はライダーキックを、Wは青と黄色の曲がる弾丸を放つ。両方とも、狙いはエボルドライバーのドラゴンメモリ。ドライバーから外れるか破壊するかを狙って総攻撃に出る。

 

「っ!」

 

結論から言うと、エボルはその攻撃を耐え切った。

 

前に俺がやったようにエボルはわざと俺のマキシマムを喰らって後ろに下がると、どこからともなくビートクローザーを取り出してルナトリガーのマキシマムを全て斬り落としたのだ。もちろんのことだが弾丸を斬るなんて芸当普通ではできない。まして、曲がる弾丸を斬ることなんてできようがない。けれど、エボルはそれを成し遂げてしまった。

 

「ビートクローザー盗られてるの忘れてた...」

 

「今度はこっちの番だぜ?」

 

そこからの戦いは一方的だった。

 

まず、俺の攻撃はほぼほぼ無視された。避けることもせず、殴られるだけ殴られる。そしてWの攻撃だけに集中して、全て捌いていた。今のエボルにとって脅威なのは、メモリブレイクをすることができるWの攻撃なのだ。さっきの同時マキシマムの時もそうだ。早々に俺の攻撃を避けることを諦め、逆に利用してWの攻撃を防ぎ切った。

 

さらに、エボルは俺を攻撃することをやめた。理由は同じ。メモリブレイクできるWを先に始末する。それだけだ。Wさえ倒せば俺なんか一瞬で倒せるとでも言うように俺のことを後回しにしてWを攻撃するエボル。その結果、Wを守りながら戦う羽目になって人数有利の状況を活かせなくなってしまった。

 

「くそっ、このままじゃジリ貧だぞ!どうすんだ!」

 

「…そうだハザードだ!ハザードでなんとか巻き返す!」

 

『HAZARD』

 

ハザードオン!

 

頭からすっかり抜け落ちてしまっていたハザードメモリを起動してマキシマムスロットに挿す。

 

「なんだ忘れてただけだったのか。随分余裕だなーと思ってたんだ」

 

「ほんとイラつかせるのが上手いなお前っ!」

 

ハザード!マキシマムドライブ!

 

マキシマムを発動させる。ハザードまで使ったんだ。無視なんてさせない。防御無しに受け切るなんてことさせない。

 

ハザードアタック!

 

ドス黒く染まったマグマを拳に纏い、一気に殴りかかる。

 

ヒッパレー!

 

スマッシュヒット!

 

「んなっ⁉︎」

 

殴ろうとした瞬間、蒼炎を纏ったビートクローザーが振られて袈裟斬りを喰らう。マキシマムを使ってないそれを喰らって、俺は変身解除しながら後ろに吹き飛ばされてしまった。

 

「戦兎っ!」

 

このままじゃ地面か壁に激突する。そう思ったその時、何かに掴まれる。俺を掴んだそれは、いつのまにかルナジョーカーに変えて伸ばされたWの腕だった。

 

「た、助かった」

 

「こっからどうする?」

 

「…撤退する」

 

ビルドドライバーが届くまでの時間すら稼げなかった。このまま戦っても無駄だ。

 

「逃すとでも思ったのか?」

 

勝ちを確信したかのようにゆっくりとこちらに向かって歩くエボル。けれど、昨日それをして逃げられたことを思い出したのか、さっきの打って変わって走り出した。Wが腕を伸ばして妨害するも斬られて少しも減速させることができない。

 

『TRIAL』

 

トライアル!

 

そんな音が聞こえたと思ったら、バイクだけエボルに突っ込んでいった。そして圧倒的な速さを持って何回か蹴りを叩き込むと、トライアルが俺のすぐそばで立ち止まる。

 

「照井⁉︎もう終わったのか!」

 

「早く変身しろ」

 

トライアルは俺の腰にビルドドライバーをつけながら言う。

 

「佐藤からの伝言だ。ベストマッチの枷を解いた」

 

その言葉で、俺はビルドドライバーに課せられた枷がなんなのかすぐにわかった。

 

「なるほどね...行くぞエボルト。第二ラウンドと行こうか」

 

『PANDA』『GATLING』

 

パンダ!ガトリング!

 

「…なに⁉︎」

 

「変身!」

 

軽快な音と共に、パンダとガトリングのトライアルフォームに変身する。

 

『ベストマッチじゃない...?』

 

「ハッ、今更トライアルフォームを使って勝てるとでも思ったのか!」

 

エボルがビートクローザーを構えながら近づいてくる。そんなエボルに向かって左手のガトリングを連射する。効果は薄く接近を許してしまうも、振られたビートクローザーを右手のジャイアントスクラッチャーで受け止める。

 

「今!」

 

俺の合図で、ルナトリガーに戻ったWの弾丸とトライアルの蹴りがエボルに突き刺さる。

 

「チィッ!」

 

攻撃から逃れようとしたエボルが俺に蹴りを放つも、直前でバックステップをとっていた俺には当たらない。そして次のメモリを取り出す。

 

『LION』『COMIC』

 

ライオン!コミック!

 

「ビルドアップ!」

 

ライオンコミックに変身し、4コマ忍法刀を左手に持つ。

 

分身の術!

 

トリガーを押し、8人に分身する。そしてエボルを囲み、右手のゴルドライオガントレットからライオン型のエネルギー弾を放つ。

 

火遁の術!

 

怯んだエボルに火炎を纏った剣で斬りかかる。

 

ヒッパレー!

 

スマッシュヒット!

 

エボルもビートクローザーで抵抗する。けれど、斬ったのは全て分身。本体含めて残った分身2人と一緒に三方向から斬る。

 

「ぐっ、クソがァッ!」

 

ヒッパレパレパレー!

 

メガヒット!

 

隠れ身の術!

 

エボルの放った攻撃を隠れ身の術で避ける。そして煙の中、次のメモリを取り出す。

 

『GORILLA』『ROCKET』

 

ゴリラ!ロケット!

 

「ビルドアップ!」

 

ゴリラロケットに変身して、すぐに左腕のロケットで飛行する。下ではWが曲がる弾丸を放ち、弾丸と弾丸の間を縫ってトライアルが蹴りを叩き込んでいた。エボルがなんとか2人の攻撃から逃れ、離れたところで急降下して右手のサドンデストロイヤーで思い切りぶん殴る。

 

「な、なんだこの威力は⁉︎」

 

「違うね、威力が高いんじゃない。お前が慣れてないだけさ」

 

この世界に来てから、俺はベストマッチフォームにしか変身していなかった。そのため、エボルトの武器とも言える慣れが機能しない。慣れようとしても、すぐに別のトライアルフォームに変わる。思いもしない組み合わせで戦う。それが対エボルトの対策になりうる。

 

そもそも、ビルドの一番の特徴はその使える力の多さだ。特殊なものを除いた60のメモリ。その基本の60のメモリでできる組み合わせは900種類。Wの基本フォーム9種類の100倍。この応用性がビルドなのだ。

 

『OCTOPUS』『TANK』

 

オクトパス!タンク!

 

「ビルドアップ!」

 

変身した直後、右足のカラストンビシューズから水流を噴射してエボルに近づく。そして右足の無限駆動で装甲を削り取りながら右腕にフューリーオクトパスをまとわりつかせて八倍となった腕力で殴る。

 

「お前、タコ苦手だったろ?」

 

「慣れたと前に言ったの忘れたのか?」

 

「覚えてるよ。ちょっとした口撃だ気にすんな。そして...俺ばっか気にしてていいのか?」

 

「っ!」

 

トライアルのマキシマムを発動する時、特に音は出ない。マキシマムの音声は発動後、タイマーを停止した後に流れる。そのため、エボルへと奇襲が成功した。トライアルの超高速移動からの連続蹴りが炸裂した。

 

マキシマムの終わる10秒までの間に、別のメモリに変える。

 

『RABBIT』『DENSHA』

 

ラビット!電車!

 

「ビルドアップっと...トライアルはどうなった?」

 

そろそろ10秒経ってもおかしくないはずだが、なかなかマキシマム完了の音が聞こえない。

 

「まさか⁉︎」

 

エボルとトライアルの方を見る。

 

「ぐわぁっっっ!」

 

「トライアルのマキシマムは10秒まで。調べておいてよかったぜ」

 

エボルは、トライアルが放り投げていたメモリをビートクローザーを投げることで弾き飛ばしていた。それによりメモリ内蔵のタイマーを止めることができず、10秒が経ってしまったのだ。トライアルのマキシマムドライブは10秒経ってしまうと逆にダメージを受けてしまう。結果、変身解除と共に反動ダメージを負って照井は倒れてしまった。

 

「ああクソ。のんびりしすぎた。ごめん照井、もっと早くやっておけばよかった...」

 

流石にトライアルフォームではエボルには勝てない。撹乱には使えるが、あくまで時間稼ぎ。その間にWやトライアルが倒すという作戦は失敗した。

 

「メモリ破壊は止めだ。切り札を切る。援護頼むぞ翔太郎、フィリップ!」

 

『HAZARD』『HAZARD』

 

ハザード!ハザード!

 

「ハザードハザード⁉︎」

 

「ビルドアップ!!」

 

ハザードメモリから紫電が放たれドライバーを駆け巡る。次第にその紫電は黒色に変わり、全身に流れていく。ドス黒い装甲が装着されていき、両目も黒いハザードフォームに変身する。

 

「ハザードハザードか、面白い。かかってきな」

 

「かかってきな...か。随分と余裕だなエボルトよぉ」

 

身体中がキリキリと痛む。ハザードで暴走することはないと言っても、反動まで無くなったわけではない。

 

「あっ、わかった、怖いんだろ。ハザードだから時間かけてほしくないんだな。時間経って超強化されたハザードハザードと戦いたくないんだな」

 

「お、やる気か?」

 

「うん、やる気だよ。  もうすぐ終わる」

 

「…なに?」

 

エボルは困惑した。ついさっき、ほんの一瞬前まで目の前にいたはずのビルドが消え、後ろから声がしたことに。

 

「んぐっ⁉︎」

 

「あと何回   叩き   込めば   やられてくれる?」

 

ほとんど辻斬り。超高速移動を繰り返しては止まる。

 

「早すぎんだろ...!」

 

「なんだこの速さ!」

 

『こんなの人体が耐え切れるはずがない...!』

 

フィリップの言う通りだ。いくら俺の体の中にビルドメモリのデータが入っていて、半分ドーパント化して耐久力が増していると言っても、この速さでずっと動いていては体は持たない。

 

「ハァッ!」

 

一瞬だけ動いてエボルの顔面に蹴りを叩き込む。それだけで、あれだけ強かったエボルが吹き飛んでいく。動くのは一瞬。それ以上動いたら、速さについていけず体がバラバラになるだろう。

 

「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっっ、はぁっっっ、はぁっ...!」

 

呼吸が苦しい。脳に酸素が回らない。いしきがおちそうだ。じめつしそう。でも、いま、ここで、エボル、たおせる!

 

「はっ、はっ、はっ、はっ、ふぅーっ!」

 

ハザード!ハザード!マキシマムドライブ!

 

一瞬で二つのハザードメモリをマキシマムスロットに入れる。ほんの少し動くだけでも激痛が走る。だから、全ての動きを一瞬で終わらせなければ痛みで意識が吹っ飛ぶ。けれど、速すぎても体がバラバラになる。今もなお出せる速度の限界値は上がっているが、人体にはその速度は耐えられないためほぼ無意味。このマキシマム、制御を誤れば即死の諸刃の剣!

 

「っはー、っはー、っはー、っはー、っはー、っっっ!」

 

ハザードフィニッシュ!!

 

超高速、誰の目にも止まらない速さでエボルの目の前に立ち、エボルドライバーからドラゴンメモリを引き抜きながら、漆黒のオーラを纏った蹴りを叩き込む。エボルは一瞬で後方へと吹き飛んでいき、ビルの外壁を何枚もぶち抜いていく。

 

遥か彼方まで飛んでいったエボルが、ここまで戻ってくることはなかった。

 

「っはー、っはー、っっはぁ、ゴフッごふっ!」

 

ハザードメモリがマキシマムスロットに挿さっていたままだったため自動的に変身が解かれる。そしてそのまま地面に倒れ込む。

 

「せ、戦兎!なんて無茶を...戦兎!起きろ戦兎!戦兎ォ!!」

 

薄れゆく意識。けれど、体は無意識のうちに動き、生存するために足掻いていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パッと目が覚める。最初に目に入るのは見慣れた天井で、横を見るといつもの景色。いつもの事務所のベッドの上だ。

 

『そうだった。エボルをハザードハザードで倒して...そのまま倒れたんだった』

 

起きあがろうとするが、手足が全く動かない。それにこの声。自分の耳で聞こえる自分の声がいつもと違う。例えるなら、クローズチャージに変身してる時の声のような...

 

「あっ、みんなー!戦兎君起きたっぽいよー!目開いてるのかよくわかんないけど!」

 

「本当か!」

 

いつものみんながドタバタと駆け寄ってくる音が聞こえる。

 

「よ、よかった、生きてた...」

 

『体が動かない...それになんで俺クローズチャージになってんだ...?』

 

首は動かないが、視線だけ下ろすとクローズチャージになっている自分の姿が見えた。

 

「覚えてないのか?」

 

『変身が勝手に解けてからの記憶はほとんど...』

 

「あれ無意識の行動だったのか...すごいな」

 

「あの時、君は持っていたドラゴンメモリにメモリ強化アダプターをつけて首に挿したんだ。クローズチャージになって回復するために、ね」

 

『嘘でしょ...全く覚えてねぇ。よく動けたな俺...』

 

「今は喋れるくらいだが後2日もすれば動けるようになるだろう」

 

「エボルトもあんな攻撃喰らったんだ。しばらくは動けまい。戦兎が治るまでの間に攻撃を仕掛けてくることはないはずだ」

 

『そうか...そうだ照井はどうなった?』

 

「怪我は戦兎よりは酷くない。でもメモリによるダメージは現代医療では治せない。戦兎みたいにクローズチャージで治すこともできないからしばらくは動けない」

 

『そうか...』

 

「どうして人の心配しているんだ?」

 

『佐藤...太郎...?』

 

「ハザードハザードだなんて無茶して、大怪我して、どうして人の心配ができる。クローズチャージにギリギリでなれたから良かったものの、なれてなかったら死んでてもおかしくなかったんだぞ!」

 

まさかここまで怒られるとは...でも、俺は間違ってはいない。

 

『あの時無茶してなかったらそれこそ全滅だった。すでに照井も重症だったし、俺がもっと早く切り札を切っていたらこうはならなかった。でも、後悔する暇は無かった。これ以上の犠牲を増やさないためにはこうするしかなかったんだよ』

 

最速でエボルを倒すにはアレしかなかった。たとえ、それが自分の身を滅ぼすことになっても。

 

『そして俺はこうして生きている。クローズチャージで治せることもわかってる。だったら、今することは照井の心配だ。桐生戦兎ならそうする、違うか?』

 

桐生戦兎はそういうやつだ。万丈にこれ以上クローズチャージに変身させないために、暴走の危険があるハザードを使った。エボルトを倒すために、ハザードレベルを急上昇させて相打ちを謀ったこともあった。桐生戦兎は大切な人を守るためなら、どんな無茶だってする。ビルドメモリによって与えられた記憶は、そう告げている。

 

「…今後、ハザードハザードは禁止だ。何があっても、どんな状況になっても変身することは許さない」

 

『わかった。とりあえず、使えそうな組み合わせのトライアルフォームを考えておくよ。ドラゴンも手に入ったしね』

 

今俺の中にあるドラゴンメモリ。これは使える。きっと来るであろうフェーズ3、エボルラビットに対抗するために。

 

でもひとまずは、体を回復させることが優先。翔太郎も戦いで少なからず傷を負っている。万全の状態で戦えるよう、頭だけは働かせながら休養の日々を送ることとなった。




この話を書くまで、トライアルフォームとハザードハザードなんて出す気なかったんですが...面白そうだったんで書いてみました。
やっぱりクロスオーバー二次創作書いてるからにはオリジナル性を出していきたい。

ちゃんと限界を見極めれば激痛だけで済むしヘルライジングよりかはマシだな()
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。