仮面ライダーW Bの天才/メモリの適合   作:ダイヤモンドリリー

46 / 48
11016字。

ほんとよくビルド本編でエボルト倒せたな、と書いててしみじみ思う。
ブラックホール相手にするとか無理ゲーすぎる。


Bの終わり/託された力

「なぁ、翔太郎。奴が指定した場所ってこの先だよな」

 

「そうだな」

 

「普通に返す気はないってことかなこれは」

 

目の前に広がる景色は、道路を埋め尽くすほどのコブラドーパントの大群。ざっと数えても百は超えている。

 

「倒すしか道はない。行くぞ」

 

『RABBIT』『TANK』『SPARKLING』

 

ラビットタンクスパークリング!

 

『JOKER』

 

「変身!」

 

シュワッと弾ける! ラビットタンクスパークリング!

イエイ! イエーイ!

 

サイクロン!ジョーカー!

 

「まずはドリルクラッシャー!」

 

ドリルクラッシャーを取り出し、近くで蠢いているコブラドーパントを斬り伏せる。コブラ特攻のスパークリングのおかげで二、三発攻撃するだけで倒すことができた。このまま被害が出る前に倒し切る。

 

「抜いて、挿す!」

 

刀身を取り外して付け直し、ガンモードに変形させる。そしてそのまま周囲のコブラドーパントに一発ずつ撃ち込む。

 

「流石に一発じゃ無理か。なら連射するまで!」

 

ガトリング!マキシマムドライブ!

 

ボルテックブレイク!

 

銃弾を連続で射出し、コブラドーパントを薙ぎ倒していく。

 

「うわっと、人巻き込まないように注意しないといけないのか。面倒だな」

 

コブラドーパントは倒すと人間の姿に戻る。そしてそのまま地面に倒れ込んでしまうため、足の踏み場がなくなっていく。倒れる人をうまく避けながら攻撃しなければならないのだ。

 

「おっとこっから先は立ち入り禁止だ。踏み潰されちゃ困る」

 

即座にブレードモードに戻してコブラドーパントに突きを放つ。コブラドーパントに踏み潰されることも防がなくてはならないのだ。あの野郎このためにこんな狭い道にぎっちり待ち伏せさせてやがったのか。

 

「ちゃんとした剣の方がいいか。4コマ忍法刀!」

 

ドリルクラッシャーを消し、 4コマ忍法刀を取り出す。

 

「もっと下がれよお前ら!」

 

風遁の術!

 

3回トリガーを引いて術を発動する。風の力を持ってコブラドーパントを後ろに吹き飛ばし、ラビットバブルの加速で一気に近づき斬る。

 

「一体一体相手するの面倒いな。分身して一気に倒す!」

 

分身の術!

 

8人に分身し、ラビットバブルで高速移動をしながら連続で斬っていく。

 

「次は...これ!」

 

カイゾクハッシャーを取り出し、ビルドアロー号を引いてチャージする。

 

各駅電車!

 

「これでいいや!」

 

チャージ第一段階でビルドアロー号を手放す。電車型のエネルギーの矢が発射され、コブラドーパントを貫いていく。

 

「効率悪いな。これなら斬った方が速そうだ」

 

集団戦にチャージが必要な武器は不向きだ。矢を撃つことは諦め、カトラスアンカーエッジで斬っていく。

 

「これなら4コマ忍法刀でよかったな...やっぱ遠距離武器はこっちだな」

 

ホークガトリンガーを取り出し、トリガーを引く。流石に一発では倒しきれないが、ホークガトリンガーの魅力はその連射力。威力が足りないなら数を増やすだけ。

 

10(ten)20(twenty)30(thirty)

 

リボルマガジンを回して弾丸を装填していく。

 

「ハァッ!」

 

三十発の弾丸が飛び出し、コブラドーパントを貫いていく。

 

「…なんか違うな。空から撃てないとあまり意味がないか。武器なんていらねぇ!」

 

ホークガトリンガーを消し、一気に駆け抜ける。ラビットバブルでの急加速とインパクトバブルの破裂による攻撃。なんなら武器なんて必要なかったんじゃないかというレベルでコブラドーパントを殲滅していく。

 

「まとめてトドメだ!」

 

スパークリング!マキシマムドライブ!

 

スパークリングフィニッシュ!

 

泡で満たされた図形のような形のワームホールを作り出し、そこにコブラドーパントを拘束する。そしてそのまま飛び蹴りを放ち、ドーパント化を解除させる。

 

「ふむ、数は多いが大したことはなかったな」

 

「『ジョーカーエクストリーム!』」

 

後ろを見ると、Wが最後の一体にマキシマムを叩き込んでいる最中だった。特に防がれることもなくコブラドーパントに命中し、人間の姿に戻る。

 

「全部倒せたが...どうする?この人たち」

 

「こいつらはエボルトに操られていただけの被害者だが...ひとまずは放置だ。時期に目を覚まして元の生活に戻るだろ。先を急ごう」

 

見た感じ怪我をしている人もいなさそうだったし、今は急いでいるのだ。ここで足止めを喰らっている余裕はない。

 

「この建物...多分ここだ」

 

地図にあった通りの建物だ。ここが、エボルトの根城。

 

「エボルト!どこだ!ちゃんとバットメモリは持ってきたぞ!」

 

扉を蹴り破りながら中に入る。

 

「おお、結構な挨拶じゃないか」

 

エボルトが出てくる。

 

「佐藤太郎はどこだ!」

 

「この奥だよ。返してほしければロストメモリを渡しな」

 

奥の部屋を指差すエボルト。要求を飲むか否か、そんなの決まってる。

 

「ほら、今渡すぞ。ほれ!」

 

持っていたバットメモリをエボルトに向かって放り投げる。

 

それと同時にラビットバブルで加速してインパクトバブルを破裂させながらエボルトを蹴り飛ばす。

 

「大人しく渡すと思ったか?エボルトよぉ」

 

落ちてきたバットメモリをキャッチしながら言う。

 

「ぐぶっ...まぁわかってたさ。渡す気なんてハナからないってな」

 

エボルトが痛みに苦しみながらもエボルドライバーを腰につける。

 

「ならいい。ならば、今日がお前達の命日だ」

 

『BLACK HOLE』

 

オーバー・ザ・エボリューション!

 

「変身はさせない!」

 

エボルトに向かって走り出そうとする。

 

「行け」

 

しかし、コブラドーパントが間に割り込んでくる。

 

「くそっ、邪魔だ!」

 

『COBRA』『RIDERSYSTEM』

 

コブラ!ライダーシステム!レボリューション!

 

「まずい...止められねぇ!」

 

コブラドーパントが倒しても倒しても出てくるせいで、エボルトの変身を妨害することができない。ブラックホールフォームの対抗手段である、そもそもの変身を防ぐ方法を取ることができない。

 

Are you ready?

 

「変身」

 

ブラックホール!ブラックホール!ブラックホール!レボリューション!

 

フハハハハハハハハ......!

 

一瞬、エボルトの姿が完全に消え、エボルブラックホールフォームになって出現する。

 

「やられた...!」

 

変身されてしまった。エボルの放つ力の余波だけでコブラドーパントが吹き飛ばされ、跡形もなく消し飛ばされてしまう。

 

「翔太郎、逃げろ」

 

「なに...?」

 

「逃げろ!ここは俺が食い止める!お前らは人命救助に専念しろ!」

 

『一人じゃ無理だ!』

 

「奴は影響範囲内における全存在の生命活動を強制停止させる程の力を持っている!ビルドなら対抗できるがWじゃ無理だ!死にたくなきゃ逃げろ!」

 

「…わかった。お前も死ぬなよ」

 

「当然だ。死ぬつもりなんて毛頭ないね」

 

Wが建物を出る。

 

「一人で勝てると思ってるのか?」

 

「勝とうだなんて思ってないさ。食い止めるって言ったの聞いてなかったか?まぁでも、ここで倒してしまってもいいだろ?」

 

「無理だな。お前はここで死ぬ」

 

「簡単に死んでたまるか」

 

『HAZARD』『HAZARD』

 

「ハザードハザードか?」

 

「安心しな。そいつはしねぇ」

 

マックスハザードオン!!

 

『TANK』『TANK』

 

タンク&タンク!

 

「ビルドアップ!」

 

鋼鉄のブルーウォーリア!タンクタンク!

ヤベーイ!ツエーイ!

 

「ハザードハザードは佐藤太郎に禁止されてるんでな。助けた時に怒られちゃたまらん。タンクタンクで我慢してくれ」

 

そう言いながらエボルに向かって肩のBLDタンクタンクショルダーから砲撃を放つ。直撃するも、ダメージはない。

 

「人間が認識出来ない虚無の空間シールド...だっけか。厄介だな」

 

エボルの力の解析は既に佐藤太郎がやってくれていた。ビルドの世界で見た能力なら、突破できるかは別として対処することはできる。

 

なら、今一番怖いのはこの世界でのスペックがどうなっているかだ。フェーズ1があれだけ強くなっていたんだ。ブラックホールフォームは自らの戦闘能力を最大50倍にまで増幅できるらしい。あれの50倍とか考えたくもない。

 

「まずは様子見...!」

 

肩のBLDタンクタンクショルダーを分離させ、自動で砲撃させる。どのあたりでシールドに阻まれるのか見るためだ。

 

「大体あの距離か...もっと威力を上げたらどうなるんだ?試してみよう」

 

正座の姿勢になり、脚部のダッシュマッシュレガースについているブルータンクローラーで移動をする。それにフルメモリバスターを構えた姿はまさに戦車。エボルの周囲を旋回しながら砲撃を浴びせる。

 

「効かねぇなぁ...ほらよっ!」

 

エボルが弾丸を受けながらこちらに近づき、パンチを放つ。避けれるかと思われたそれは、急に加速して俺の体に命中する。

 

「ぐぅっ⁉︎重力操作か!」

 

直前で背部のキャタタンクマニューバーを体に巻き付け、防御することができたが簡単に吹き飛ばされる。重力操作によって攻撃の瞬間、加重と加速をしたのだ。

 

「砲撃も効いてる様子ないし...直接叩くしかないか!」

 

すぐさま正座の姿勢に戻り、無限軌道で一気にエボルのもとに走る。エボルの放つトランスメモリーガンの弾丸を蛇行しながら避け、肉薄する。

 

「遅い!」

 

腕部のファイトマイトガントレットに付いているブルータンクローラーを高速回転させ、エボルに押し付けようとする。ビルドの世界で怪人態のエボルトの弱体化に成功した技だ。当然、エボルも抵抗してスチームブレードで防ごうとする。

 

「その攻撃はもう見たことあるんだよ!」

 

「知ってるからといって受け切れると思うな!」

 

そのまま両腕を押し付ける。高速回転する履帯はスチームブレードの刃を削り取っていき、貫通、そのままエボルに押し当てる。

 

「ぐっ、ぐうっ...!」

 

「直接削りとれば、シールドも意味ないみたいだな!」

 

全身を使ってエボルを押し潰し、両手両足の履帯を押し付ける。それだけでみるみるうちにエボルの装甲が削れていく。

 

「このっ!」

 

一気に後ろに引っ張られる感覚と共に、後ろに吹き飛びされる。いや、本当に引っ張られたのだろう。重力を操って俺の体を引き寄せたのだ。

 

「もう一度...くっ、前に進めねぇ!」

 

もう一度履帯を使って攻撃しようとするも、重力で後ろに引っ張られ続けていて前に進めない。ならば、ここから攻撃するしかない。

 

タンク!タンク!マキシマムドライブ!

 

フルフルマッチデース!

 

二つのタンクメモリをフルメモリバスターにセットする。そしてエボルに向かって照準を合わせ、引き金を引く。

 

フルフルマッチブレイク!

 

青い巨大なエネルギー弾が生成され、エボルに向かって放たれた。

 

「遅いよ遅い。眠っちまうぞこんな速さじゃあなぁ」

 

エボルの言うように、明らかに速度が遅い。俺の想定よりも弾速が遅いのはおそらく後ろ向きに引っ張っている重力のせいだろう。俺だけでなく、弾にも影響を及ぼしているのだ。

 

「ほぉら、簡単に避けれる」

 

ゆっくりと横に歩いて飛んでくるエネルギー弾を避けるエボル。

 

「避けるだろうなぁ。そりゃそうだ。わざわざ当たりに行くやつなんていないよな」

 

「…何が言いたい」

 

「そもそも狙ってるのはお前じゃねぇんだよ」

 

「なに...?」

 

突如としてエボルの背後から大きな破壊音が聞こえる。

 

「俺の狙いは最初から一つ」

 

「扉の...破壊か!」

 

そう、俺の狙いはエボルトを倒すことではない。佐藤太郎の救出それだけだ。

 

「佐藤太郎!助けに来たぞ!」

 

BLDタンクタンクショルダーにエボルを攻撃させて妨害させながら、壊れた扉を通り、佐藤太郎のもとに駆け寄る。

 

「お前...」

 

佐藤太郎はとても衰弱していた。目立った傷はない。けれど、よく見れば小さなアザがいくつもあった。本来ならこの程度の傷、ビルドメモリでドーパント化している佐藤太郎なら一瞬で治せるはずだ。でも、それができていない。回復が追いつかないほどエボルトにやられたのだろう。

 

「今すぐにここから逃げるぞ!エボルがここに来ないうちに...!」

 

フルメモリバスターを壁に撃ち込み、逃げるための穴を開ける。その時の音に紛れて、俺はエボルがBLDタンクタンクショルダーを破壊した音を聞くことができなかった。

 

「この先に行けばWがいるはずだ。エボルは俺が食い止めるから。走れるか?」

 

「ああ...」

 

建物の中にまだエボルがいるはずだ。そう思って後ろに振り返った時だった。

 

パンッと乾いた音がする。

 

「うっ...」

 

「お、お前!」

 

撃たれた。佐藤太郎が、撃たれた。ゆっくりと傷が治っていくのが見えるが、これではすぐには動けないだろう。

 

ブラックホール!マキシマムドライブ!

 

…マジかよ。

 

《big》Ready Go!《/big》

 

ブラックホールフィニッシュ!

 

エボルが空中で前方宙返りを繰り返して勢いを付ける。慌てて間に割り込んで佐藤太郎を庇うも、またしても重力操作によって横に引っ張られて軌道から外れてしまう。

 

「させ...ない!」

 

横に引っ張られながらフルメモリバスターの引き金を引くも、エボルには当たらない。エボルのマキシマムは止められない。

 

「避け...!」

 

エボルの跳び蹴りが佐藤太郎に突き刺さる。吹き飛ばされた佐藤太郎の先にはブラックホール。そこに吸い込まれた佐藤太郎は圧縮、爆発してしまう。

 

「そんな...佐藤太郎!」

 

メモリが体から弾き飛ばされながら吹き飛んでいく佐藤太郎のもとに走り、地面に激突する前にキャッチする。

 

「お前メモリが...!」

 

「やっとだ。この時をどれだけ待っていたことか...!」

 

ビルドメモリを拾い上げるエボル。

 

「あれを壊されちゃ、お前は...!」

 

エボルがビルドメモリを握る力を強める。少しずつビルドメモリにヒビが入っていく。

 

「最後にこれを託す。これでアイツを...うっ!」

 

佐藤太郎が俺にそれらを託したのと、エボルがビルドメモリを破壊したのは同時だった。

 

「意識が...!」

 

ビルドメモリの破壊と同時に、佐藤太郎は意識を失った。

 

「桐生戦兎はあと一人。ここで終わらせる」

 

「エボルトォォォッ!!!!!!」

 

フルメモリバスターを連射する。けれど、シールドによって意味をなさない。さっきと同じように直接叩くしかないのか...!

 

正座状態になって高速移動をする。エボルに履帯を押しつけて攻撃するために。けれど、エボルも黙ってはいない。

 

ブラックホール!マキシマムドライブ!

 

Ready Go!

 

ブラックホールフィニッシュ!

 

エボルが右足で回し蹴りを放つ。カウンターキック。エボルに向かって突っ込んでいた俺に向かって、完璧なキックが決まった。それによって吹き飛ばされた俺は、地面に叩きつけられて変身解除に追い込まれる。

 

「お前の中のビルドメモリのデータさえ消してしまえば、桐生戦兎はもういない。俺を倒せるやつもいなくなるってわけだ。終わりだ」

 

「終わらねぇよ。俺は死なねぇ。死ぬわけにはいかねぇんだよ!」

 

『BLIZZARD』

 

さっき、佐藤太郎から手渡されたメモリを起動する。

 

「ブリザードだと?グリスにでもなるつもりか?」

 

『MAGMA』

 

ブリザード!マグマ!ベストマッチ!

 

「ベストマッチ...!」

 

佐藤太郎の遺してくれたメモリ。前からずっと持っていたマグマメモリのベストマッチが、まさかこれだったなんて。

 

「変...身!」

 

心火爆炎!ブリザードマグマ!イエーイ!

 

「ブリザードマグマ。行くぞエボルト、俺は絶対生きて帰るからな」

 

エボルに向かってゆっくり歩く。エボルの放つパンチを避け、ブリザードサイドで殴る。そしてマグマサイドで同じ場所を殴る。ユートピアドーパント相手に佐藤太郎と二人でやった、ブリザードとマグマの温度差を利用した攻撃。それを、一人でエボルに叩き込む。

 

「温度差か...!」

 

連続でパンチやキックを放つ。絶対零度と全てを溶かし尽くす熱。単体でも強力なメモリが、ベストマッチでさらに力を増していく。

 

「狙いはブラックホールメモリ...狙いはブラックホールメモリ...!」

 

自らに言い聞かせながら攻撃を叩き込む。ブラックホールメモリを叩いてフェーズ1に引き摺り下ろす。それしか勝ち筋はない。

 

「行くぞオラァッ!」

 

ブリザードナックルとマグマナックルをそれぞれ構える。そしてエボルの重力による加速パンチに合わせて相殺する。

 

「冷えて冷えて冷えて...燃えろ!」

 

何度もブリザードナックルで殴り、最後にマグマナックルで殴る。温度差の攻撃で装甲の内側にダメージを通していく。

 

「くそっ、ハァッ!」

 

「重力が...!」

 

周囲の重力が乱れ始める。エボルを中心に、外側に重力が向いている。なんとか壁を掴んで遠くまで飛ばされないように踏ん張る。

 

「…あれ?生きて帰るんだったら手を離せば良くね?」

 

エボルを中心に外側に重力が向いている。つまり、今手を離せば勝手にエボルから離れることができる。

 

「いやでもきっと...!」

 

手を離す。しばらく横に落ちる...かと思えば急にエボルの方に重力が向いて引き寄せられる。

 

「そうすると思ってたよ!」

 

エボルに向かって落ちながら両足で蹴りを放つ。極低温と極高温を同時に叩き込む。そうしようとしたが、今度は真上に重力が向いて空に向かって落ちる。

 

「チッ、ユートピアを思い出すな...重力まじ面倒くせぇ!」

 

クローズマグマではないから前にやったブラックホールは出せない。今使える武器はナックルしかないのでこうやって距離が離れるとこちらからは攻撃できない。エボルの方に引き寄せられる時にすれ違いざまやるしかない。

 

「…来た!」

 

真下に重力が向く。エボルから離れたところで地面に叩きつけるつもりなのだろう。地面に落ちるまでざっと二秒。大丈夫だ。間に合う。

 

マグマ!マキシマムドライブ!

 

ボルケニックナックル!

 

マグマナックルにメモリを入れるまで一秒、マキシマムを発動して地面に叩きつけるまで二秒。叩きつけられたナックルは地面を砕き、溶かしてマグマに変える。できたマグマだまりにマグマサイドで着地する。

 

「セーフっと...いやこれ使えるな...」

 

「アレを耐えるなんてな。もう一回やるとするか」

 

再度上向きに重力が向き始め、俺含めた周囲の物が浮いていく。さっき作り出したマグマ含めて、だ。

 

「さぁどうする?今下せばお前は大量のマグマを浴びることになり、その隙に俺がお前を叩ける。上げ続けてればそのまま俺はホークガトリングにでも変えて空飛んで逃げるぞ。どっちを選ぶんだ?やられるか、逃げられるか、どっちだ!」

 

「それなら...」

 

エボルがこちらに急接近してくる。

 

「こちらから出向くまでだ」

 

「こいつ重力で自分を飛ばしやがった!」

 

マグマは薄く広く撒いている。そのためマグマは俺よりも軽く、俺よりも下側に広がっている。なんとかそこのマグマ層を乗り越えれば、エボルはなんの障害もなく俺を叩けるのだ。

 

「くそっ...!」

 

ブリザード!マキシマムドライブ!

 

グレイシャルナックル!

 

ギリギリでブリザードナックルのマキシマムの発動に成功する。そしてなんとかエボルのキックに合わせることができた。エボルの足が凍りついていく。けれど俺も吹き飛ばされて、持っていたブリザードナックルが手からすっぽ抜ける。

 

「まず...!」

 

地面に重力が向く。

 

マグマ!マキシマムドライブ!

 

また着地のためにマグマのマキシマムを発動させる。

 

「させないぜ」

 

「んな⁉︎」

 

エボルの放ったトランスメモリーガンの弾丸が、俺のマグマナックルに命中して弾き飛ばされる。

 

「メモリが⁉︎」

 

そのまま地面に叩きつけられる。しかし、今気にするべきことはそれではない。ナックルと共に飛ばされていったメモリだ。あれがなければ変身を維持できない。

 

「メモリメモリ...ブリザード⁉︎ここに落ちたのか!」

 

すぐ近くにブリザードメモリが落ちていた。飛ばされてすぐに地面に向かって重力が向いたため近くに落ちたのだろう。すぐに拾ってビルドドライバーに挿し直す。

 

「マグマはどこだ...?」

 

エボルの攻撃を紙一重で避けながらマグマメモリを探す。マグマナックルは見つけられたのに肝心のメモリがない。弾き飛ばされた時にメモリが抜けてしまったのだろうか。

 

「このままじゃ変身が...!」

 

「戦兎オォォ!!」

 

「っ⁉︎」

 

その声にびっくりして振り返ると、何かが飛んできていて反射的に掴み取る。

 

「マグマメモリ⁉︎」

 

変身が解ける前に急いでビルドドライバーに挿し込む。Wが届けてくれたこの力、これでエボルを止める。

 

ブリザード!マグマ!マキシマムドライブ!

 

二つのメモリでマキシマムを発動する。ブリザード、マグマ共に出力が上昇し、温度が極まっていく。

 

「ぐっ、ぐぅっ...!」

 

二つの相反する熱が、ビルドの中心で干渉して莫大なエネルギーを生む。そのエネルギーが、とてつもない痛みをもって俺の体を襲う。けれど、こんな痛みなんの障害にもならない。ハザードハザードの方が何千倍も痛かった。こんな痛みに負けてエボルトにも負けるだなんて、俺自身が許さない!

 

ブラックホール!マキシマムドライブ!

 

「お前はここで終わりだ!」

 

「お前がな!」

 

Ready Go!

 

ボルテックフィニッシュ!

 

ブラックホールフィニッシュ!

 

両足でのライダーキックがぶつかり合う。膨大なエネルギーを伴った俺のキックが、エボルのブラックホールに吸収されていく。全て吸い込まれてしまう前にエボルの足をもう一度蹴り、飛び上がる。

 

「足りない...もう一回!」

 

ブリザード!マグマ!マキシマムドライブ!

 

もう一回マキシマムスロットを叩きつけ、マキシマムを発動する。

 

ボルテックフィニッシュ!

 

ブリザードサイドの右足で空中を蹴る。すると空気中の水分が、いや、空気そのものが凍りつき即席の足場を作る。その足場を蹴り、エボルの周りを飛び回ってブラックホールメモリの挿さっているマキシマムスロットを狙う。

 

「オラァッッ!」

 

ファングジョーカーのファングストライザーのように、回転しながらマグマサイドの左足でエボルにキックを叩き込む。

 

「ぐ、ぐわあぁぁっっっ!!」

 

エボルが吹き飛ばされていく。そして俺が開けた穴から建物の中に突っ込んでいき、中で大爆発を遂げた。建物がぐらぐらと揺れて、今にも崩れそうだ。

 

「はぁ、はぁ、はぁ、た、倒せ...た?」

 

生死を確認している暇はない。今はすぐにでもここから離れなければならない。

 

「変身が...無理しすぎたか」

 

二連続のマキシマムの負荷が大きかったのか、勝手に変身解除してしまう。

 

「早く...逃げないと」

 

倒れている佐藤太郎を抱える。メモリが壊されただけで死んでいるわけではない。じきに佐藤太郎の人格を取り戻し、目を覚ますはずだ。死なせるわけにはいかない。

 

「っ、メモリが...なに⁉︎」

 

佐藤太郎を背中に背負ったその時、服の内側に入れていたバットロストメモリが地面に落ちた。そしてそれを拾い上げようとした瞬間、建物の方に落ちていく。

 

「あいつあれ喰らって変身解除もしてねぇのかよ...!」

 

ロストメモリはそのまま穴から建物の中に入っていく。

 

「はっはっはっ!やっと手に入れたぞ!最後のロストメモリィ!!」

 

崩れゆく建物の中からエボルの笑い声がする。その歓喜の声がが途切れたのは、建物が完全に崩れたのと同時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっ、ここどこ!なにここ!なにこの瓦礫の山!」

 

帰る途中、そんなことを言って佐藤太郎が起きた。ドーパントの力を失って回復能力を失った佐藤太郎を病院に連れて行き、俺と翔太郎は事務所に戻った。桐生戦兎に侵食されて記憶が無いとはいえ、ミュージアムからメモリを買ったのには変わりないのだ。どこかのタイミングで警察に捕まるだろう。

 

「太郎君やられちゃったの⁉︎」

 

報告をすると、亜樹子が驚く。

 

「ああ、ビルドメモリを破壊された。今は病院で治療を受けているよ」

 

「そんな...」

 

「ロストメモリも取られちまったし...まずいな」

 

「今すぐに行動するなんてことはないはずだ...と思いたいな」

 

どれだけエボルトにダメージを与えられたのかわからない。考えたくもないが、すぐにでも動く可能性もある。

 

「ロストメモリをブラックロストメモリに変える必要があるから、狙うとしたらそこかな」

 

「でもどうやって倒す?」

 

「まずはどうにかしてワンサイドライバーを取り返す。そしてジーニアスでエボルトを倒す」

 

「ハザードハザードを使えば行ける...か?」

 

「それをしたらジーニアスなる前に死んじまうよ」

 

できればその手は使いたくない。

 

「…もしエボルトを倒しても、ビルドメモリがないから新世界を作れないんだよな...」

 

これまで、多少の犠牲は致し方ないとして割り切っていた。何がどうなっても、新世界を作れば全て無かったことになる。割り切りたくはなかったが、もうすでに世界の歯車は狂っているのだ。佐藤太郎が、桐生戦兎が、エボルトが、この世界の部外者たちが犠牲にしてきたもの。全て戻さなければならない。

 

けれど、それが出来なくなってしまった。俺の持つデータだけでは、新世界は作れない。

 

「佐藤太郎...今はあいつの遺してくれたものを探すしかない...か」

 

俺は、佐藤太郎に託されたドライバーを取り出した。

 

「なぁ、これを使えそうなところってないか?」

 

ドライバーといっても、変身に使うドライバーではない。なんの変哲もない、ただのマイナスドライバーだ。

 

「マイナスドライバー?どうしてあいつがこれをお前に託したんだ?」

 

「どこかで使えるはずなんだが...」

 

なんの意味もないものを、あの状況で、あいつが渡すわけがない。何か意味があるはずなんだ。

 

「そういえば...」

 

「何か知っているのか?フィリップ」

 

「いや、気のせいかもしれないんだが...佐藤太郎が連れ去られたあの時、コブラドーパントからある一点を守ろうとしていたように見えたんだ」

 

「…それはどこだ?」

 

「君達が作業をする時に使っていたあの机だよ」

 

「……もしかして」

 

ガレージに向かう。中に入ってよく見てみると、たしかにあの机だけあまり荒らされていない、綺麗なままだった。

 

「ってことはこのどこかに...みんな協力してくれ。これが使えそうなところを探すんだ」

 

マイナスドライバー片手に、机の周りを徹底的に探す。机の上にはいくつもの機材が置いてある。あるとしたら、そこだろうか。

 

「これは?使えるんじゃないか?」

 

「…いやダメだ。ネジ穴が小さすぎて入らない」

 

「じゃあこれは?」

 

「…これもだ。というかこれ、一般的なマイナスドライバーより大きいな。入らないわけだ」

 

あれこれと試すも、一向に見つからない。

 

「…ない?」

 

「見当違いだったか...?」

 

「もしかしたらあの研究所にあるのかも」

 

「その線もあるな」

 

「あ痛っ!」

 

「何やってんだ亜樹子...」

 

亜樹子がなぜか机の下に潜り込もうとして、頭をぶつけていた。

 

「いやーもしかしたら机自体に仕掛けがあったりとか思っちゃったりして...あー!あった!」

 

「マジで⁉︎」

 

「見せろ見せろ...ちょっと亜樹子退いてくれ見えない!」

 

亜樹子を退かし、机の下に潜り込む。そして上を見ると、ちょうどマイナスドライバーの入りそうな穴があった。

 

「いつ仕掛けてたんだこんなの...お手柄だ亜樹子!」

 

そう言いながらマイナスドライバーを穴に挿す。そして90度右に回転させると、カチャリという音がする。

 

「ほんといつ作ってたんだこんなの...」

 

机の足の一部が開く。ほんとにいつ作ってたんだよ。

 

「これは...メモリ?」

 

そこに入っていたのは、二つのメモリ。一つは青と赤のメモリ。もう一つは、色もイニシャルも、何も書いていない無色のメモリだった。

 

「…希望はまだある...か」




佐藤太郎、退場。

なんで佐藤太郎がメモリを買ったのかは...考えてません。
バカだし騙されて買ってそうだな。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。