仮面ライダーW Bの天才/メモリの適合 作:ダイヤモンドリリー
前回告知し忘れましたが、今回で最終回です。
「返してもらったぞ...ワンサイドライバー!」
ギャクサイドライバーを腰につけながら、俺はエボルに向かって叫んだ。
『ハッ、そんなもんで何ができるってんだ?』
「これ一つじゃなんの意味もないさ。これも...二つで一つだった!」
『なに...?』
ワンサイドライバーを、土台から切り離す。そして、腰につけているギャクサイドライバーに連結する。
「オールサイドライバー...とでも言っておこうか」
赤と青、ビルドラビットタンクフォームと同じ色をしたオールサイドライバー。これが、佐藤太郎がエボルトに隠していた切り札。そして、もう一つの切り札を切る時が来た。
『GENIUS』
『…やっぱ既に作ってたか』
「想像通りなのはわかってたさ。でも、わかっててもお前は負ける」
ジーニアスメモリをオールサイドライバーに突き刺す。
グレート! オールイエイ!
ジーニアス!
「さぁ、最後の実験を始めようか」
ドライバーを展開する。
Are you ready?
「変身!」
完全無欠のボトルヤロー!
ビルドジーニアス!
スゲーイ! モノスゲーイ!
プラントライドビルダーGNが出現する。そして黄金のビルドマークが体に重なると同時にスーツが装着され、コンベア上を流れる無数のサイエンスメモリが身体中に挿さっていく。
仮面ライダービルドジーニアスフォームが、完成する。
「桐生戦兎の天才の頭脳に、葛城巧のメモリ適合の才能。二つの世界の葛城巧、それぞれの天才の才能を詰め込んだ姿がこのジーニアス。クローズビルドとは違う、佐藤太郎の考えた本来の究極フォーム...!」
『お前それ自分で天才天才言ってて恥ずかしくねぇの?』
「あっ、お前メモリの状態で喋れんの?どうなってんだお前...」
万丈の声が聞こえたかと思えば、クローズメモリから声がしていた。どこから発声してるのか、訳がわからないが今はそんなこと気にしてる場合じゃない。
「気が散るから万丈は黙っててくれ」
『ちょっ、おまっ⁉︎』
クローズメモリを奥の奥にしまい込んで戦いに集中する。ちょうどその時放たれていたエボルの蹴りを避け、距離を取る。
ガトリング!
透明なガトリングメモリがマキシマムスロットに入って消える。
『透明なメモリ...?』
弾丸が空中から現れてエボルに向かってガトリングのごとく飛んでいく。
『60のメモリ全て使える...のか?面倒だな』
「まだまだ行くぞ」
ハリネズミ!ユニコーン!ハチ!
透明な三本のメモリがマキシマムスロットに入っては消えていく。そして一本の巨大な針が出現し、槍のような形に変化したそれを右手で持つ。
「タァッ!ハッ!」
三本のメモリを使って生み出した針の槍がエボルのドライバーに突き刺さる。
『ぐぅっ⁉︎』
「まだまだぁ!」
消防車!海賊!クジラ!サメ!
四本のメモリがマキシマムスロットに入って消える。すると、突如として巨大な水が出現してエボルを襲う。それによって水浸しになった地面からクジラやサメが現れてエボルに噛みつき、海賊船からの砲撃が命中する。
『ぐっ...このっ!』
ダイヤモンド!
エボルの放つトランスメモリーガンの弾丸をダイヤモンドの盾で防ぐ。
『普通の攻撃じゃダメか...なら!』
ブラックホール!マキシマムドライブ!
Ready Go!
ブラックホールフィニッシュ!
「ヤケクソマキシマムなんて意味ないぞ」
エボルのマキシマムが迫る。けれど、焦る必要はない。冷静に対処するまで。
おばけ!
エボルのマキシマムが俺の体を通り抜け、後ろの地面に突き刺さる。
ラビット!電車!バイク!
エボルが体勢を立て直す前に、メモリの力で超加速をしてエボルに連続で攻撃を叩き込む。
忍者!
忍者メモリの効果で8人...いや、数えきれないほどの人数に分身する。そしてそれぞれが個別の武器を持ち、エボルへと攻撃を放つ。
『数だけ揃えたところで...!』
エボルは斬られながらも分身を撃ち落としていく。傷つきながら戦い続け、最後の一体を撃ったところであることに気づく。
『…いない?本物はどこ行った⁉︎』
「ここさ」
『上だと⁉︎』
ヘリコプターメモリの力で空を飛んでいたのだ。
ワンサイド!マキシマムドライブ!
オールサイドライバーのワンサイド側だけを一度戻し、再度展開する。それぞれが独立した構造だからこそできるマキシマムドライブだ。
ジーニアスアタック!
有機物系メモリ全てを詰め込んだマキシマムのエネルギーが右腕に集約される。そして地面へと向かう重力をも利用して、ライダーパンチをエボルドライバーに叩き込んだ。
『ガァッッッ!』
「まだまだ!こんなのじゃ終わらせない!」
ギャクサイド!マキシマムドライブ!
今度はギャクサイド側を戻し、また展開する。
ジーニアスブレイク!
無機物系メモリ全てを詰め込んだマキシマムのエネルギーが右足に集約される。そして右足での中段蹴りをブラックホールメモリの入ったマキシマムスロットに叩きつける。
『くっ、クソがぁぁぁぁっっ!』
ブラックホール!マキシマムドライブ!
エボルが苦しみながらもマキシマムを発動させる。
Ready Go!
ブラックホールフィニッシュ!
まさかこのタイミングで放ってくるとは思っておらず、避けることもできずに直撃してしまう。ブラックホールに飲み込まれ、圧倒的な重力によって押しつぶされそうになる。
「ぐっ!ガハッッ!」
腕がひしゃげる。膝が逆方向に曲がる。体が圧縮されて折り畳まれる。
『これで終わりだ!』
ブラックホールが未知の力で爆発する。後には何も残らない...
はずだった。
フェニックス!
どこからともなく炎が現れる。その炎は少しずつ大きくなり、人ぐらいの大きさになると、ビルドの体を形成していく。
『フェニックス、不死鳥のメモリか...!』
「そうだ。これがある限り、俺は何度でも蘇る。俺を簡単に殺せると思うなよ」
ゴリラ!
サドンデストロイヤーが現れる。
タカ!
ソレスタルウイングが展開する。そして空へと飛び上がり、空から攻撃を仕掛ける。エボルもそれに対抗するために、トランスメモリーガンを乱射する。
「それを渡してもらうぞ!」
マグネット!
マグネットメモリによって強力な磁力が発生する。それに引っ張られて、トランスメモリーガンがエボルの手から抜ける。左手でそれを掴み取り、撃ちながら急降下して右手のサドンデストロイヤーを叩き込む。
『ぐ、ぐぅっ...!』
トランスメモリーガンを失ったエボルはスチームブレードを取り出して反撃しようとするも、俺は既に空の上。当たるはずもない。
「ハァッ!!」
再度急降下して拳を叩き込もうとする。
『させねぇ!』
急降下していたのが急に止まり、上に向かって落ち始める。重力が反転したのだ。俺は攻撃できなくなったし、エボルは好きなタイミングで地面に叩きつけて攻撃できる。さらに、これで時間を稼いでブラックホールで町を削り力を蓄えるつもりだろう。攻防完璧な攻撃だ。
「それで耐えたつもりか!無駄だっ!」
UFO!
透明なUFOメモリがマキシマムスロットに挿さる。すると、ある程度の大きさのUFOが出現してエボルの上に止まり、エボルを吸い上げる。そして俺の目の前まで移動させ、勢いよくパンチを叩き込む。
『んぐっ⁉︎』
エボルが地面に叩きつけられるのと同時に、上に向かっていた重力が元に戻る。羽ばたくのを一旦やめていたので一瞬自由落下するも、直ぐに羽ばたいて体勢を立て直す。
あと、もう少しだ。
ローズ!
ローズメモリによって現れた鞭を持ち、連続でエボルに叩き込む。鞭についている棘で少しずつ傷をつけていく。そして最後に鞭でエボルを捕縛する。
ドラゴン!
エボルが鞭の拘束から逃れる前にドラゴンメモリを起動させる。クローズドラゴン・ブレイズが出現し、エボルの体を燃やし尽くす。
消しゴム!
エボルが炎の中飛び出してスチームブレードを振るうも、消しゴムメモリによって姿を消している俺には当たらない。透明のままパンチやキックをエボルに数回叩き込む。
ロケット!
透明化を解除し、ロケットメモリを起動する。エボルの周囲にミサイルが出現し、エボルに向かって飛んでいく。
パンダ!スケボー!ジェット!
スケボーメモリとジェットメモリによって現れたジェットエンジン付きのスケボーを乗りこなす。そしてすれ違い様にジャイアントスクラッチャーで斬り裂く。
タートル!
タートルメモリを起動してエボルの速度を落とす。そのままエボルの周囲を高速で旋回しながら斬り裂いていく。
ライト!スマホ!
二つのメモリを起動すると、複数のスマホが出現して超強力なライトを光らせる。ちょっとした目眩し。けれど、今のエボルにとっては致命的な隙になる。
オールサイド!マキシマムドライブ!
オールサイドライバー全体を一度元に戻し、再度展開する。60本のメモリの力が一つにまとまる。
ジーニアスフィニッシュ!
虹色のグラフがエボルを拘束し、ライダーパンチを放つ。
かつて、エボルトに人の感情を芽生えさせたその攻撃は、フルビルドリアクターによって俺自身の強い感情の力がこもっており、そのエネルギーを全て右手に集約させてエボルに突き刺さった。
エボルは大きく吹き飛んでいき、ビルの壁に激突してやっと止まる。
『ぐぶっ、カハッッ...まだ終われるかよ!』
エボルがなんとか立ち上がって走ろうとしたその時、変身が勝手に解かれる。
「ドライバーが...⁉︎」
エボルドライバーが粉々に砕け散る。これが目的、最初から最後まで、全ての攻撃をエボルドライバーに叩き込んだその成果がやっと出たようだ。ビルドの世界ではエボルドライバーは宇宙由来の謎物質でできていたため壊せなかったが、この世界で作られたエボルドライバーは地球の物質で作った物だ。だから壊せた。
エボルドライバーが壊れたことで二本目のエボリューションメモリも抜け落ちる。一本目が抜けてないのは残念だが、変身が解かれた今エボルトに反抗する力は無い。あとは捕縛して無理やりメモリを引き抜くだけ。
それだけのはずだった。
「まだ終わりじゃない!!」
エボルトが落ちている四本のメモリを拾い上げていく。そして起動した。
『COBRA』
『RIDERSYSTEM』
『BLACK HOLE』
『EVOLUTION』
「お前...まさか⁉︎」
エボルトが起動したメモリを放り投げる。放り投げられたメモリらは空中で静止し、三本は首に、一本は胸に突き刺さっていく。
エボルの体がドーパントに変化していく。姿自体はさっきと変わらなかった。違うところがあるとすれば、それはエボルドライバーがあるか無いかくらいだろう。
「ドーパントに...やられた...!」
捕縛とか考えないで、出たメモリだけでもすぐに回収すべきだったのだ。けれど、もう後悔しても遅い。今はエボルを倒すことだけを考えればいい。エボルドライバーが無くなったため、強さが変わっているかもしれない。補助がなくなって弱くなったのか、直挿しになって強くなったのかはわからないが、きちんと考慮しなければ。
『力を...力を!』
「っ⁉︎」
エボルの体が消える。消える一瞬前ワームホールのようなものが見えた気がしたが、まさか...
『はっはっはっはっ!』
ワームホールが一瞬現れ、そこからエボルが現れる。先ほどとは姿が微妙に異なっていた。一度元に戻っていた腕が巨大化していて、さらに両肩にも装甲が付いていた。この姿は、あの時と同じ。
「お前...またどこかの惑星を犠牲にしたのか!」
『答える必要はない...行くぞォ!』
ダイヤモンド!
エボルのパンチが飛んできたのでダイヤモンドの盾を作り出すが、貫かれる。
「こいつ石目を...いや違う。パワーで無理やり突破しやがった⁉︎」
慌ててバックステップで距離を取る。それにしても、とてつもない威力だ。エボルドライバーを使っていた時とは出力が違いすぎる。やはり、直挿しは強いということだろうか。そんなことを、井坂深紅郎が前に言っていたような覚えがある。
タンク!ダイヤモンド!ロボット!潜水艦!
とにかく堅そうな守りを築けそうなメモリを片っ端から起動する。それらの堅さという成分だけをうまく取り出して盾という形に押し込み、即席の盾を作り出す。それを使い、近づいてさらにパンチを放ってきたエボルの攻撃を受け止める。
「砕かれた...!これでもダメなのか!」
盾は粉々に砕けた。正直に言って、盾で守り切れるなんて思っていなかった。どれくらいの威力が出ているのかの試金石にするつもりだったし、もし耐えたならしばらく使ってやろうくらいのものだった。結果、得られた答えは防御を考えてはいけないということだった。
「避けるしかないか」
ラビット!
ラビットメモリが起動して身体能力が向上しだす。その瞬間、エボルは先ほどまでとは比べほどにならないくらいの速さで接近して蹴りを放つ。なんとかギリギリで避けることができたが、あらかじめラビットメモリを使ってなければ避けきれなかった。
「速いけど...避けきれないほどじゃないな」
攻撃を避けながら思考を加速させる。エボルを倒すには、どうすればいいのか。それを永遠と考え続ける。
「まずはそいつを潰さないとな」
エボルの両肩と両腕の追加装甲を見る。あれを潰せば、威力もスピードも落ちるはずだ。
ハザード!ハザード!マキシマムドライブ!
ハザードメモリ二本を取り出し、マキシマムスロットに突き刺す。
オールサイド!マキシマムドライブ!
追加でジーニアスのマキシマムも発動する。ハザードとジーニアスを使ったマキシマムなら...!
ハザードジーニアスフィニッシュ!
「ハァッッ!」
ハザードの力も込めたパンチをエボルに叩き込む。エネルギーがエボルに流れ込む。
『こんな攻撃...⁉︎』
両肩の追加装甲が消失する。そして両腕の装甲もだんだん消えていく。
「不思議って顔してるな。簡単な原理だよ」
エボルが攻撃を仕掛けてくるも、速度がどんどん落ちていて避けるのは簡単だった。
「ハザードとジーニアスを同時に使えば、ブラックロストメモリを普通のロストメモリに戻せる。ビルドの世界でやったことあるだろ?」
『まさかお前...!』
「流石にここまで言えばわかるよな。想像通りさ」
二本目のエボリューションメモリの起動のために、エボルトはブラックロストメモリのデータをメモリに流し込んでいた。なら、そのデータを使い物にならなくさせられれば。エボリューションのメモリは機能不全を起こす。
「完全に使えなくさせるのは無理だったみたいだけど...次で終わらせる」
オールサイド!マキシマムドライブ!
『何度やられたところで何度でも蘇ってやるさ!メモリさえ無事であれば俺は何度でも復活できる!お前にはメモリは壊せないんだからなぁ!』
そうだ。そこだけが問題なのだ。何度倒しても、またメモリを使われてしまえば何度でも復活できてしまう。
「お前を倒す方法ならあるさ」
『なに...?』
方法は二つある。一つは、エボルを変身解除させた後に出てきたエボリューションメモリを押さえること。これはできるかもしれないが正直難しい。まず、エボリューションのメモリが体から出てくるかはわからない。さっきの攻撃で出てこなかった以上、もう一度やっても無理そうだ。そして、もし全部のメモリが出てきたとしても、最初に回収するのはそのメモリだ。それだけ持って逃げられたら面倒なことになる。
なら、取るべき方法はもう一つの方だ。
ビルド!マキシマムドライブ!
ビルドメモリをマキシマムスロットに挿す。ビルドの本来の力が身体中を駆け巡る。
『メモリを全て引きずり出すつもりか!』
「まだだ。まだ足りない...!」
これだけじゃまだ足りない。四本のメモリは取れるだろうがエボルトの意識の入ったメモリまでは引き抜けない。
「翔太郎!」
近くに隠れているであろう翔太郎に声をかける。エボルに変身解除させられてから姿を見ていないが、絶対にいるはずだ。
「俺に最後の切り札を!!」
「切り札...なるほど!」
翔太郎が物陰から出てきて、一本のメモリを放り投げる。このメモリさえ有れば...!
『何がなんだかわかんねぇが...二度目はさせねぇ!』
エボルがスチームブレードを投げ、メモリを弾き飛ばす。メモリが宙を舞う。やられた。翔太郎が拾いに行くには遠いし、生身では危険だ。俺も拾いに行けない。マキシマム発動中で迂闊に動けないのだ。あれが無けりゃエボルは...⁉︎
メモリが地面に落ちる直前、青いなにかが横切ってメモリが消える。
その青いなにかは、エボルに何回か蹴りを叩き込んでから俺の横に立つ。
トライアル!マキシマムドライブ!
「10秒キッカリ...なんとか間に合わせたぞ!」
「照井⁉︎お前怪我は!」
「俺に質問をするな。これを使うんだろ?」
トライアルがメモリを差し出してくる。
「ああ、これがあれば...!」
『お前...まさか俺のメモリを⁉︎』
「終わりだ!」
Ready Go!
ジーニアスフィニッシュ!!!
右足に全エネルギーを集め、左足で地面を跳ぶ。そしてエボルに向かってライダーキックを叩き込む。
『この俺が...この俺が消えるだと...?ふざけるな!俺がこんな奴に!人間に負けるなんてあり得てたまるか!』
エボルが段々と巻き返し始める。右足を掴み、なんとか引き剥がそうとする。しかし。
「無駄だ!」
『んぐぅ...⁉︎』
エボルの体が動かなくなっていく。体の中に入っていたメモリが少しずつ外に出て行く。
「どうしてお前が負けるのか教えてやろうか?」
『な、なぜだ...!』
「俺に質問...いや、ちゃんと言ってやろう」
たった一つの、単純な答え。
「メモリの数が違う...そして!」
万丈でもわかる、単純な答え。万丈が気づかせてくれた答えだ。
「抱えてる思い、その重さがちげぇんだよ!!」
エボルの体から全てのメモリが抜け落ちる。
エボルの体が、石動惣一の姿に戻る。
エボリューションのメモリ。
その一つが、砕け散った。
エボルトとの長い戦いが終わった。
けれど、長いということは、それだけこの日本が飲み込まれたということだ。
「なぁ、わざわざ俺のメモリ使ってまでメモリ壊す必要あったのか?まずかったんじゃ...」
「他の人に使われても困るしな。万丈がメモリの状態で話せてたのを考えると、あいつもメモリのまま喋りそうで面倒だし」
「でも新世界ってのに必要だったんじゃないのか?」
「そんなもの、佐藤太郎のビルドメモリが壊された時点でとっくのとうに破綻してるんだ。エボルトのメモリを壊したところで何も変わらない」
「というかお前ガイアメモリ使えないんじゃなかったか?」
「あいつが言ってただろ?ビルドメモリ以外に一つだけ俺に適合したものがあるって。それがジョーカーメモリだったんだよ」
エターナルの事件の時、ジョーカーのT2メモリが事務所に落ちてきたのは翔太郎が居たからだけじゃないのだ。あの時、T2メモリは事務所の床を突き破り、ガレージにまで到達しかけていた。ガレージに居た俺にも引かれてきていたのだ。
「適合率は10%にも見たない。変身には使えない。けれど、マキシマムを使えるくらいの力は引き出せる。あの時使える最高の切り札だった」
「なるほどなぁ...」
「ってか、こっちとしては切り札をくれと言ったらちゃんと理解してジョーカーメモリを渡してくれたことに驚いてるぞ?」
「夢の中で...ちょっとな」
話しながら事務所に戻る。病院から抜け出してきたらしき照井もそのまま着いてきた。病院戻っとけよ...
「もう夜か...随分と長く戦ってたんだな」
夕日が沈んでいく。
「…夜になっても、あまり驚くなよ?」
俺の予想が正しければ...
「……どうして驚くんだ?」
「日が沈めばわかるさ」
事務所の目の前に着いたのは、太陽が沈み切るのとほぼ同時だった。辺りに電灯の光が灯る。
「…なぁ、今日って新月だったか?」
ああ、やっぱり。予想が当たってしまったみたいだ。
「ねぇ!みんな大変だよ!」
亜樹子とフィリップが事務所から外に飛び出してくる。
「どうしたんだよそんな慌てて」
「月が無くなっちゃったの!」
「亜樹子お前...そんなわけないだろ。ただの新月だ」
「昨日は満月だったじゃん!」
「なに...?」
「さっきラジオで流れたんだよ、翔太郎」
「何がだ?」
「一つはブラックホールのようなものが日本の町を飲み込んでいるということ。そしてもう一つは...月が消滅したことだ」
「な、なんだって⁉︎」
「やっぱりやってやがったか...」
「どういうことだ。説明しろ、桐生」
『月が消えたってあの時と同じじゃねぇか!』
「ちょっ、バカ万丈!今喋んな!話がややこしくなる!」
『バカって言うなせめて筋肉をつけろよ!』
「だ、誰が喋ってるの...?」
話がずれていく...しょうがないので、クローズメモリを取り出して見せる。
「メモリ...?」
『よぉ』
「メモリが喋った⁉︎」
「こいつが万丈龍我の意識が入ったメモリだ。エボルトのメモリから無理やり抜き出してきたんだ」
『そういえばお前後で状況説明するつってたよな!説明しろ説明!』
「それはまた今度な。とりあえず今は月の話をしないと」
クローズメモリをポケットの奥底にしまう。
「えーっと...翔太郎は見てただろうけど、エボルトの両肩と両腕が戦いの最中に変化しただろ?」
「一瞬消えて戻ってきたらなってたな」
「あの姿は、星をブラックホールで飲み込んで力に変えることでなれる姿だ。ビルドの世界だと、奴はどこかの遠い惑星とこの地球の一部と、月を飲み込んであの姿に至った」
「あの姿になっていたってことは、それがこの世界でも起こったってことか」
「月がなくなるって...大丈夫なの?」
「ダメだな。はっきり言ってヤバい」
「月がなくなると地球の環境が滅茶苦茶になるんだ。潮の満ち引きがなくなってしまうし、自転が速くなって暴風が起きたり一日が八時間くらいになったり...とにかく、今いる生物はほとんど適応できないだろうね」
フィリップから、月が無くなるとどうなるのかの説明がされる。この説明からも分かる通り、月が無くなると大変なことが起こる。エボルトは本当に面倒な置き土産をしてくれやがった。
「もう地球終わりじゃん!どうすんのさ!」
「ビルドの世界では、新世界を作ってそれを回避した」
「でもビルドもエボルトのメモリももうないだろ?新世界は作れないじゃないか」
「…メモリならあるだろ?」
「それって...?」
「これだよこれ」
ビルドメモリと、エボリューションメモリを取り出す。サイエンスメモリとT2メモリの方だ。
「両方ともちゃんとビルドとエボルトの力が入ってるからな。これを使えるはずだ」
「でもさっき新世界の計画は破綻したって言ってなかったか?」
「本来想定していた新世界プロジェクトは確かに破綻した。でも、ビルドのメモリを発見した時、二本目のエボリューションのメモリを見た時、使えるって思った」
「じゃあ新世界は作れるってことでいいのか?」
「…新世界はもう作らない」
「え?」
「新世界を作らないってどういう意味だよ。じゃあそのメモリは何に使うってんだ」
「新世界は作らない。ただ俺がやるのは...
元の、本来あるべき世界を取り戻すことだ」
「取り戻す...?」
「この世界は三つの世界が融合している。とりあえず、ビルドの世界をA、本来融合させようとしていた世界をB、混ざってしまったWの世界をCとしよう。今の世界はABCだ。その世界をABとCに分離させる」
「分離...だと?」
「C世界は本来混ざるべき世界じゃないからな。それを分離させようってわけだ。分離したら、この世界で起こったことも全て無かったことになる。地球滅亡の未来も変えられる」
「分離だなんてそんなことできるのか?」
「これだけのメモリが有ればできるはずだ。もう一個必要な物があるけどな」
「必要な物?」
「エクスビッカーだ。照井、あれって警察で押収してるだろ?使わせてもらえないか?」
「ああ、まだ押収品として保管されているはずだ」
「それなら早く使わせてもらうぞ。時間がない」
月明かりがなくなり、電灯の灯りしかない道を歩く。月の光は思っていたよりも地球を照らしていたようで、警察署までの道は結構暗かった。
「ここの中だ」
警察署の、押収品倉庫の中に入る。
「あったあった...少し壊れてるな。まぁ調整が必要だったし別にいいか」
フィリップが抵抗した時に少し壊れたのだろうか。持ってきていた機材と器具を使って改造を進める。
「ここをこうしていけば...!」
「なぁ、ちょっといいか?」
「なんだ?照井」
「世界をABとCに分離させる。そう言ったな」
「そうだが?」
「本当にできるのか?」
「できるつったろ?」
「そうじゃない。その二つに正確に分離させることができるのかを聞いているんだ」
それを聞いて作業の手が一瞬止まる。でも時間はない。すぐに再開する。
「要するに、お前はABとCじゃなくて、AとBとCに分離してしまうのではないか。そう思ってるんだろ?」
「そうだ」
やっぱりそんなことを考えていたか...
「もし三つに分離してしまったらどうなる?」
「また全て最初からだな。AもBもCも最初からやり直すことになる。エボルトとの戦いも最初からやり直しになるかな」
「そんな...戦兎くんの努力はどうなっちゃうの?」
「そう言われてもねぇ...もう一回やればいいだけさ。一度できたんだ。何回だって成し遂げてみせるよ」
最後の部品をつけ終える。
「それに、失敗するつもりはない。狙って分離くらいやってみせるさ。科学があればなんだってできるんだぞ?」
『BUILD』 ビルド!
『EVOLUTION』 エボリューション!
エクスビッカー改造品にメモリを挿していく。
「使える物は全部使うとしよう」
『COBRA』 コブラ!
『RIDERSYSTEM』ライダーシステム!
『BLACK HOLE』 ブラックホール!
『GENIUS』 ジーニアス!
ビルド世界に関わるメモリを挿れていく。
『BAT』 バット!
『COBRA』 コブラ!
『KUWAGATA』 クワガタ!
『FUKUROU』 フクロウ!
『SHIMAUMA』 シマウマ!
『CASTLE』 キャッスル!
『HASAMI』 ハサミ!
『CD』 CD!
『HAMMER』 ハンマー!
『SPANNER』 スパナ!
ブラックロストメモリも挿れていく。
「これで...終わりだ」
ポケットの奥底に入れたクローズメモリを取り出す。
「これを挿れればエクスビッカーが起動する。Wの世界を分離できる」
翔太郎たちの方に振り返る。
「突然だけどお別れだな。万丈も挨拶しとけ」
『お前結局なんの説明もしてねぇじゃねぇか!』
「ちゃんと挨拶しなさいよこの馬鹿」
『バカって言うんじゃねぇよ...ここがどこなのかすらよくわかってねぇけどよ、じゃあな』
万丈がみんなに別れの挨拶を告げる。
「俺も挨拶しないとだよな」
この世界での葛城巧として生きた年数は、おおよそ二年といったところか。二年という年月は普通なら長いと感じるも、なぜかとても短く感じた。戦いがあったとはいえ、こいつらと過ごした日々がとても楽しかったのだろう。できれば、エボルトとの騒動無しでこいつらと会いたかったものだ。
「じゃあな。みんなと過ごした時間、めっっちゃ楽しかったぜ」
「戦兎...」
「みんなからの挨拶はいらない。聞いたら別れたくなくなっちまう」
「戦兎君...」
「さよならだ、みんな!今度、また何かが起こって会うことがあったらよろしくな!」
最上魁星のエニグマによってエグゼイドと出会ったことを思い出す。あれのように、誰かが何かをやらかして別のライダーと会うことがあるかもしれない。
「行くぞ万丈」
『CROSS-Z』
クローズメモリを起動する。
クローズ!
メモリを挿すと、エクスビッカーが起動する。激しい電流がエクスビッカーを駆け巡る。
「これは...!」
時空が歪んでいく。全てのものが曲がって見え、上下前後左右の区別がつかなくなってくる。
「さらばだ!Wの世界よ!それぞれの平和な世界へ突き進め!平和な明日を創り出せ!」
この世界の、終わりが訪れた。
その後どうなったのかは語らないでおこう。
一つ言えるのは、新世界プロジェクトは成功した、ということだ。
Wと新世界の分離は無事に成功した。
俺たちのことは誰も覚えていないが、それでもいい。
新世界に来て俺たちが始めたことは、今までの記録を残すことだった。
ビルドの世界での出来事を49のエピソードに、Wの世界での出来事を翔太郎に聞いた話も含めて48のエピソードに分けてデータ化することにしたのだ。
「あとはWの世界での話だったな。出だしはどうしようか...」
少し考えて、話し出す。
「それは、彼らのビギンズナイトから一年後...いや、一年には少し満たないくらいの時のことだった。左翔太郎というハードボイルドになりきれないハーフボイルドの探偵がとあるメモリの取引現場を見てしまったところから始まった。彼らの正体はW!二人で一人の探偵かつ仮面ライダー!」
「まずそのメモリってのはなんなんだよ。まだなんの説明されてねぇぞ!」
「うるさいよ!そう言うこいつは全ての元凶の片割れ、万丈龍我」
「エボルトの中にいたからって全ての元凶扱いは止めろよ!」
「お前の出番は最後の二話だけなんだから黙っておきなさいって。なんやかんやでハリネズミのドーパントを倒したWはメモリブレイクできないことを疑問に思いながらも、メモリ取引をした組織のアジトに潜入!そしてそこでもう一人のヒーローと出会うのであった...!」
エボルト最終決戦とその後は話を分けるつもりでしたが、それぞれ短かったのでくっつけました。
これにてこの作品は完結になります。
いつも通り活動報告にこれからのことを書いておくので、そちらをご覧ください。
それでは、ダイヤモンドリリーの次回作にご期待ください!