目が覚めたらキタサンブラックの弟になった件 作:通りすがりの邪教徒
サブタイトルはアニメ虹ヶ咲の優木せつ菜の言葉からです
キタちゃんの苦難を書くのがかなり大変だった。
これで良いのかなって思いながら書いたけど自信無し。
それではどうぞっす!
『残り200m! デュラハンテ先頭! やっぱり強い! あっという間に抜けだした! デュラハンテ二冠達成!!』
そんな……スタートからずっと2番手で走ってたのに、直線からいきなり失速だと!? ターフビジョンを見ると、日本ダービーの着準が表示された。1着のデュラハンテさん強すぎないか? タイムは2分23.2秒のレコードタイムだそうだ。
姉ちゃんの日本ダービーでの結果は14着というまさかの大敗に、流石のチームスピカのメンバーたちも驚愕の表情をしていた。
「ハイペースに呑まれたか……それとも……」
隣に立っているトレーナーさんが、口元を手で覆ってぶつぶつと言っていた。姉ちゃんの方に目をやると、身体が震えていたのを確認した。
すると、近くにいた観客の人達が姉ちゃんを見ながらこう言った。
「どうしたんだ、キタサンブラック……。だいぶガクッと来てるみたいだけど……」
「もしかして“距離”かな。ダービーでこうなるウマ娘って、結構多いから……」
距離適性……つまり姉ちゃんは中距離以上向きでは無いってことなのか?
「あっ! キタちゃん!」
テイオーさんの声で、僕が姉ちゃんの方を見ると今にも倒れそうなくらい震えが続いていた。今にも膝から崩れ落ちそうなくらいだ。
「姉ちゃん!」
疲労困憊の姉ちゃんを見ていられず、気付けば僕は客席からレース場内に入り、水を持って姉ちゃんの近くに急いで駆け寄った。
「姉ちゃん、大丈夫か!? 水飲めるか!?」
「はあはあ……なお……くん……?」
「バカ! 喋るな! ほら、取り敢えず飲め!」
ペットボトルを近づけると、姉ちゃんに水を飲ませることが出来た。それでも尚、息切れが続いていた。
「キタ! 大丈夫か!?」
「トレーナーさん、取り敢えず控室に行きましょう。今は疲れすぎて、まともに話せないみたいですし」
「ああ、分かった!」
近くにいたテイオーさんにも来てもらって、姉ちゃんを僕の背中におぶって、控室へと向かった。とてもウイングライブを見ていられる余裕はなさそうだな。
異常に疲弊した姉ちゃんをおんぶしている時、震えと同時に啜り泣く声が聞こえる。
控室に着き、室内にあるソファへと座らせた。今日は日差しが照り付けるくらいの晴れで、気温も高く暑かったため身体が熱を帯びているのが分かる。
「スペさん、冷やしたタオルを!」
「分かった!」
それから、姉ちゃんが普通に話せるまでに、かなりの時間が掛かった。控室には僕とトレーナーさんを残して、チームの皆には外で待ってもらうことにした。
「姉ちゃん、もう平気?」
「うん、なんとか……。でも驚いた。タフさには自信あったんだけどな……あんなに疲れたのはダービーの重みか……それとも他の……」
真相が分からない。ひたすら考えた瞬間、観客が囁いていた言葉を思い出した。でも、これって言っていいのか? でも可能性のひとつかもしれないし。
「観客席にいた時に、周りの人が“距離”がどうのって言ってたんだ。僕はそう思ってないけどね」
「距離……。2400mはあたしには長すぎるってことですか?」
「俺としては、お前の走りを見た限り、長距離でもこなせるって考えてたんだがな……だが今日の走りを見た限り、絶対とは言えないな」
取り敢えず話はここまでにし、学園へと帰ることにした。
そして翌日。月日は変わり、6月になった。今日は暑いというよりも、じめっとした暑さといった感じで過ごしにくかった。
東京レース場での帰りに、念の為病院に行ったが骨折ではなくて一安心した。姉ちゃんは疲れてはいたものの、至って普通だった。心配させたくないと思ってるのか、空元気になっているようにも見えた。
レースの翌日は学校があり、姉ちゃんと朝一緒に登校をして、それぞれ普通に授業を受けて、カフェテリアでご飯を食べる。ここまでは変わらずだ。
全ての授業が終わり、いつも通りスピカの部屋へと向かうとチームの皆が揃っていた。姉ちゃんを除いて。
「あれ? 姉ちゃんは?」
「まだ来ていません……」
「そういえば、ここにいる人達。ゴルシさん以外は姉ちゃんと同じ寮ですよね? 様子はどうでした?」
「そうだな〜……食堂で食べてる量。いつもより少なかった気が……でも、ボクらの前では普通だったよ」
他のメンバーからの証言では、寮で偶然すれ違って話しても、どこか無理しているように見えたという。今までいい戦績だったからか、ダービーの14着という結果が相当心に来てるのだろう。
「僕、探してきます!」
「探すって……何処いるかも分からないのよ!?」
「それでも……放ってはおけません。だって姉ちゃんは、僕の大切な家族ですから!」
「直人くん! ボクも探すの手伝うよ?」
「お願いします……。トレーナーさん、暫く抜けます!」
「分かった。俺は昨日から調べている、キタのレースでの失速原因を調べてみる!」
「私達はトレーナーさんのお手伝いをしましょう!」
こうして、僕はテイオーさんと一緒に姉ちゃんを探すことにした。この広い学園の何処かに必ずいる筈だ。友達の音也くんにも連絡をして、協力してもらうことにした。
それから学園の外や校舎内を見て、途中ですれ違った知り合いのウマ娘に姉ちゃんを見たか、聞いたりもした。
「直人!」
「音也くん。もしかして見つけた?」
「ああ、お前の姉ちゃん。校舎裏に行くの見たぞ!」
「ホント!? ありがとう! テイオーさん、行きましょう!」
「いや……直人くんだけで行ってきて」
「えっ……でも……」
「今のキタちゃんを救えるのは、直人くんだよ!」
「テイオーさんがこう言ってるんだ。大事な家族を救って来いよ」
「分かりました。音也くん、今度何か奢るよ!」
「くそっ! 何で勝てないの!? なおくん達があんなに協力してくれたのに……何で……」
僕は、音也くんが教えてくれた校舎裏に急いで向かうと、曲がり角から聞き慣れた声が聞こえた。様子を見てみると、姉ちゃんがベンチに体育座りの体勢で座っていた。近づくと僕の足音に気付いたのか萎れていた耳がピンッと立った。顔を上げて僕の方を見た姉ちゃんの頬には涙が流れていた。
「な、なおくん!? どうしてここに……もしかしてさっきの聞いて……」
「姉ちゃん。何の連絡も無しにトレーニングに来ないから心配したんだよ? もちろん皆も……やっぱ無理してたんだね」
「ごめんね。なにも言わずに……」
僕が姉ちゃんの隣に座ってから2、3分くらい静寂が続いた。空は曇っていて、今にでも雨が降りそうな感じだった。
「お姉ちゃんね……日本ダービーに負けたのが悔しかった……悔しかったんだけどね……」
「うん……」
「一番悔しかったのは、なおくんの前であんな負け方したことなんだ……カッコ悪いとこ見せちゃったなって……。レースの後に距離のことを聞いてから、色々考えちゃって……あたしはマイルか短距離路線で活躍した方が良かったのかなって……思って」
それは姉ちゃんの本心なのか? 憧れのテイオーさんに近づくために昔から頑張って来たんじゃないの? ダイヤ姉ちゃんと真剣勝負をするために今まで頑張って来たんじゃなの? いつも前向きに頑張ってたのに……こんな弱気になった姉ちゃん見た事ない。
「姉ちゃんはどうしたいの?」
「えっ?」
「今回はたまたまだったかもしれないじゃん! 次やってみなきゃ……」
「やってみなくても分かるよ! なおくんだって見てたでしょ? 今回のダービーの結果であたしは菊花賞に出られない。この先どうすれば……!」
姉ちゃんが頭を抱えながら涙を流していると、ポツポツと雨が降ってきた。そして雨の勢いはだんだんと強くなってくる。
「違う……僕の知ってるキタサンブラックはこんな所で折れたりしないんだ! やってもないのに分かるとか言わないでよ……!」
「なおくん……(泣いてるの久しぶりに見た)」
「姉ちゃんはいいの? ダイヤ姉ちゃんとレースが出来なくても!」
「そんなの嫌だよ! だってダイヤちゃんとレースをしようって言ったし、昔からの約束だから!」
「だったら、こんな所で諦めるなよ! 周りが距離が原因でとか言ったとしても、そんなの関係ない!」
誰かに笑われたって構わない。自分の信じる道を貫いてほしい。いっぺん覚悟決めたんだ……僕は姉ちゃんと一緒に夢を見たい。
「姉ちゃんの本心……聞かせてくれ。菊花賞に出たいか?」
「なおくんの言葉で目が覚めたよ。なに弱気になってたんだろう……こんなの、あたしらしくないよね……? こんなんじゃダイヤちゃんに追い越されちゃうし、他の皆に笑われちゃうよね……? 出たい……あたし、菊花賞に出たい!」
力強く姉ちゃんは答える。
「その言葉……待ってたよ!」
「あたし、なおくんが誇れるような……立派なウマ娘になるって約束するよ! だから見ててね? あたしの走りを!」
「ああ! 最初の目標は、初のGⅠ制覇だ!」
姉ちゃんが決意を露わにした瞬間、勢いが凄かった雨がだんだんと弱まり、雲から太陽の光が差し込んできた。
「姉ちゃん……虹だよ!」
「綺麗だね……でも、菊花賞に出るにはどうすれば……」
「それなら考えてある。それをトレーナーさんと相談しようと思ってさ。もしもの時に調べておいたんだよね」
「ホント!? なおくん、ありがとう!」
「ちょっと……お互いびしょびしょなんだから……!?」
姉ちゃんがくっついて来たので振り払おうとしたが、制服の下の下着が透けて僕は思わず目を逸らした。キタサンブラックだけに黒ってか……? すると、ポッケに入れてたスマホけら着信音が鳴った。
「あっ、トレーナーさんだ。もしもし」
『直人、キタは見つかったか!?』
「はい、バッチリです。それで?」
『実は、ダービーでの失速原因の可能性を見つけたんだ』
「マジですか!? じゃあ今から……」
『いや、明日にしよう。今日は2人ともゆっくり休んでくれ』
「分かりました。それじゃあ……てことで、今日はお互い休みだ!」
「後でトレーナーさんにも謝らないとだね……」
「そうだな……それよりも早く帰って風呂入らないと! このままじゃ風邪をひいちゃうからね」
僕は、自分が着ていたジャージを姉ちゃんに羽織らせて、一緒に寮へと帰ったのだった。
ゲームだと育成シナリオでダービーに勝つとバクシンオーが駆け寄ってくる場面があるんだけど、出来るだけオリジナルにしたいって決めてました。距離の話はまんま書いたけどね。
これから菊花賞に向けての話を頑張って書いていきます。
感想いつでもお待ちしてます!
それではまた次回!