目が覚めたらキタサンブラックの弟になった件 作:通りすがりの邪教徒
サトノのお嬢様がデビューする魔法
名前を変えました。完全に葬送のフリーレンにハマってる作者ですw
※本作品では『有馬記念』と『有マ記念』の文字を人物ごと(主人公だけ)に使い分けているのでご注意ください
それではどうぞ!
第五十七話:ダイヤモンドデビュー
東京レース場にて、僕はツヨシさんとタキオンさんと一緒に、同じバンドメンバーの勇姿を見届けるために、クラウンさんの『天皇賞・秋』を見に来ていた。
今日は11月の1日、東京レース場にて行われる『天皇賞・秋』の距離は2000mと言うことで、皐月賞と同じ距離だ。
「クラちゃん、頑張って!」
「あたしも精一杯応援しなきゃ!」
因みに、僕らスターリオンの隣には姉ちゃんとダイヤ姉ちゃんもいた。
ダイヤ姉ちゃんはクラウンさんと同じチームだし、姉ちゃんにとってクラウンさんは、まだ決着を付けていない間柄だからね。
でも今思えば不思議だ。クラウンさんはダービーの次は菊花賞を狙って来るもんだと思っていたのに、江ノ島行った時に『天皇賞・秋』に出るんだと聞いた時は衝撃を受けた。
ダイヤ姉ちゃん曰く、クラウンさんの脚質では3000mという長い長距離レースを走るのは困難だとチームのトレーナーと話し合って判断した後に、菊花賞への出走を回避したたらしく、それから次は『天皇賞・秋』に出ようと言う話になったんだとか。
今回のレースでは、クラシックレースとは違って、シニア級に昇格したウマ娘達もいるので、クラウンさんはその中で混じってレースをする事になる。
シニア級のウマ娘ということは、レースにおいてのキャリアがクラウンさん達のようなクラシック級よりも上だろう……だが、歴なんて関係ない。自分の実力を試し、示すのには絶好の舞台と言えるだろう。
そして今日の『天皇賞・秋』で注目されているのは、1番人気のラブリーアイという、ゴルシさんとは『天皇賞・春』や『宝塚記念』で一緒に走ったウマ娘だ。最近は勝ち続きでかなり期待されていた。
因みに新聞で読んだ情報だと、クラウンさんは7番人気の2枠3番だった。
『今スタートしました』
ゲートが開き、それぞれウマ娘が走り出す。僕らはクラウンさんを必死に応援した……。
だがしかし、僕らは信じられない光景を目の当たりにするとは、レースを見る前までは誰も予想をしていなかった。
『先頭は8番のラブリーアイ! ゴールイン!』
結果は人気通りの期待を寄せていたラブリーアイが今年の『天皇賞・秋』を制した。
一方クラウンさんは、直線でバ郡に飲まれてしまい、結果は17着という大敗で終わってしまった。
「クラちゃん……。あんなに夏合宿で鍛えたのに……」
この結果に流石の姉ちゃんやツヨシさん、もちろん僕も言葉を失った。あの状態で囲まれたら他のウマ娘を抜くなど困難に等しかっただろう。
「ふぅむ……直線でバ群に飲まれる場面は私も何度も見て来たが、あの状況はかなり厳しそうに見えたね」
タキオンさんは冷静にそう答える。
この後は、クラウンさん様子が心配で控室に行こうとしたのだが、「暫く1人にして欲しい」と言っていたと、レース後に真っ先に控室へと向かったダイヤ姉ちゃんのウマインを通して知らされた。
帰り道にて、僕は姉ちゃんと一緒にトレセン学園へと戻っていた。ツヨシさんとタキオンさんはさんは帰る際に、別件の用事があるため途中で別れた。
「クラさん、大丈夫かな……」
「あの人は姉ちゃんにとってライバル。デュラさんと同様、越えるべきもう一つの壁だ。それにクラウンさんと約束しただろ? またレースしようって。彼女は絶対に立ち直るって信じようよ」
「うん、そうだよね。あたし、またクラさんと走る時は負けないくらいもっともっと強くなるよ」
「その粋だ。それに来週は遂にダイヤ姉ちゃんのデビュー戦だ。絶対に観に行こうぜ」
「もちろん! 楽しみだなぁ〜!」
こうして僕ら姉弟はトレセン学園に到着し、自分たちの寮へと戻る事にしたのであった。
『天皇賞・秋』が終わってから3日が経過した。あれからクラウンさんはバンドの練習に来てはいたが、全然音が合わず、調子が悪いように見えた。
やはりクラウンさんは、『天皇賞・秋』での大敗という大きな傷を心に負っているからなのだろう。あの落ち込み具合は、ダービーで大敗した姉ちゃんと同じくらい深刻そうだ。
そして週の半ばの放課後。
「今日の練習はここまでにしようか、次の練習は金曜日だから忘れずにね……」
この空気に、流石のツヨシさんも落ち気味であった。そして今日の帰り道、僕はクラウンさんと寮へと戻っていた。
「今日もごめんね……。最近の私、全然ダメダメで……」
「クラウンさん、ちょっとお話ししませんか?」
僕はクラウンさんを近くのベンチに座らせて、自販機で飲み物を奢った。
「ありがとう……」
クラウンさんは曇った表情で俯きながら、しばらく静寂が続いた。彼女にとって、僕はライバルの弟だ。
でも同じバンドメンバーの仲間としては、お節介かもしれないけど今後のことを考えるとクラウンさんを落ち込んだままにしておけない。
「私ね。生まれつき腰回りの骨格に難があって、疲れやすくてレースを多数やれる程の体質じゃないんだよね。それで中距離路線を中心に活路を見出したんだけど……結局、この前は何もできずに負けちゃった……」
そういえば、サトノクラウンの体質はちょっと癖があるって、牧場でニンジンを与えていた時にスタッフさんが言ってたのを思い出す。
「このままじゃ、何も結果を残せないまま終わっちゃうのかな? サトノのウマ娘として結果を残したいのに……私はきっとここまでなんだ」
そう弱音を吐きながらクラウンさんは涙を流してた。
「クラウンさん、たしかに体質的な問題はどうにもできません。でも、自分で限界を決めないでください。姉ちゃんはあなたとまたレースをできる日を楽しみに、毎日トレーニングに励んでいるんです。それに答えるためにクラウンさんも諦めないでください!」
それに、クラウンさんの実力はこんな物じゃないはずだ。彼女は間違いなく、姉ちゃんにとって最高のライバルの1人なんだから。
「そうだよね……。私もキタサンとキッチリ決着をつけたいって思ってる。ここで立ち止まったら、もう直ぐデビューするダイヤにも追い抜かれちゃう。直人くん……ありがとう!」
クラウンさんは涙を袖で拭い取って、ジュースを飲み干すと、ベンチから思い切り立ち上がった。
「絶体絶命? いいじゃない、燃えて来た。この先の運命なんて、私がひっくり返してやる! 負けてもその度に立ち上がって、私も強くなるんだ!」
クラウンさんの目に光が灯った。これなら心配なさそうだ。
「よーし、そうと決まればトレーニングだ。明日からまた頑張るぞ!」
こうして話し合いを終えた僕とクラウンさんはそれぞれ寮へと戻って行った。
そして金曜日の練習でクラウンさんはいつものドラムパフォーマンスを取り戻していた。
「クラウンくん、機嫌を取り戻したようだね」
「直人くん何かしたの?」
「う〜ん……ちょっと背中を押しただけですよ」
「ちょっと……ね……」
「どうしたの、皆? 練習しますよ!」
「分かりました!」
こうして僕らスターリオンは春にある大きなお祭りの準備のための練習を続けるのであった。
そして、ダイヤ姉ちゃんの出走するデビュー戦の情報を、練習後にクラウンさんから聞くことができた。
ダイヤ姉ちゃんのデビュー戦の舞台は京都レース場にて開催される、芝の距離は2000mでその日は雨が降る予報になっている。デビュー戦にして早々、重馬場の地面を走る事になる。
出走するウマ娘は全員で10人。1番人気の6枠6番か。流石はメジロ家に次ぐ、名家のお嬢様と言ったらところだろうか? 期待が大きい分、プレッシャーも相当な物なんだろうな。
「でもね、ダイヤは強いよ。キタサンに追いついて、直人くんに良い所見せるんだって張り切ってたし」
「あっはは、相変わらずブレないなぁ〜」
何はともあれ、デビュー戦が楽しみだ。レース当日は、姉ちゃんとマックイーンさんで一緒に見る事となった。
そしてダイヤ姉ちゃんのデビュー戦当日がやって来た。交通費に関しては、マックイーンさんが出してくれることになった。
「マックイーンさん、今日はありがとうございます。高い交通費を出してくれて」
「いえいえ、大した金額では無かったので、お気になさらず」
大した金額ではないだと……!? 流石は金持ち、金銭感覚のスケールが違うぜ。
「それにしても……やっぱり降って来ちゃいましたね」
「はい、ですがどんな天候や状況でも、柔軟に対応できなければ今後のレースで勝つことは難しいでしょう」
「大丈夫だよなおくん。ダイヤちゃんなら絶対に勝てる!」
「うん、そうだね」
僕は新幹線の外で降っている雨を見ながらそう答える。
そしてやって来た京都レース場。傘を刺してレース場の観客席へと向かうと、クラウンさんとチームのトレーナーさんらしき人を見かけたので隣で見ることにした。
「なおくん、もうちょっとくっつかないと濡れちゃうよ?」
「良いんだよこれで!」
「ダメだよ。ほら、もっとこっちに寄って!」
「相変わらずイチャイチャしてるわね」
「ダイヤさんの言った通り、本当に仲良しな姉弟ですね」
姉ちゃんは自分の傘を持っているにも関わらず、僕が刺している傘に入ってくる。狙いはもちろん相合傘だ。
「キタさん、直人さん。ダイヤさんが出て来ましたよ」
『さあ、今回1番の人気を誇るサトノダイヤモンドが姿を現しました!』
「ダイヤちゃーん!」
ダイヤ姉ちゃんの顔は、やる気に満ち溢れていた。そして僕らを見つけたのか、こちらを見てウインクをして来た。
『おっと、このウインクは誰に向けてのものでしょうか!?』
おい、実況! 細かく口にするんじゃないよ!
そして、全10人のウマ娘が出揃いゲートへと入って行く。
『スタートしました。6番サトノダイヤモンド、好スタートを切って出るか? 内は3番、ロードバンドーラ。2番手に6番サトノダイヤモンド』
「よし、ナイススタートだ!」
「頑張れー! ダイヤちゃーん!」
ダイヤ姉ちゃんは1コーナーを回った所でも2番手をキープしていた。2コーナーに入っても順調に進んでいる。
『2番手に6番サトノダイヤモンド。これから3コーナー』
そして残り600mという所で、ダイヤ姉ちゃんは3番手に落ちてしまった。
だが……僕らは本当の雨の中の輝きを目の当たりにする。
『サトノダイヤモンド。200を切って堂々の変わった! 1バ身から2バ身にリード。強い強すぎる! 後続を突き放して3バ身差でゴールイン!』
「「やったー!!!」」
「脅威の末脚、やっぱりダイヤは凄いなぁ」
凄い……ダイヤ姉ちゃんガチで強い。これぞまさしく最高の原石と言っても良いだろう。そして僕らはダイヤ姉ちゃんの勝利を祝福しようと、彼女の元へと向かった。
「ダイヤちゃん、やったね! この勢いで進んでいけば、きっとGⅠレースだって取れるよ! 夢を叶えて、そして……!」
「うん、キタちゃん。少し遅れたけど、必ず追いついてみせる。だから先に行って見て来て! クラシック三冠の後。来年、私たちが再開するレース……クラシック級とシニア級のウマ娘が一斉に集う『有マ記念』へ!」
「『有マ記念』……! なおくん!」
「そうだな。次のレースは『有馬記念』に決まりだ!」
次のレースの相談。トレーナーさんにいてみよう。1年前倒しの夢の予習、『有馬記念』への出走。
「なおくん、お姉ちゃん頑張るよ! 『菊花賞』はキタサン祭りのつもりだったけど、次は本物の年末祭りを! 名いっぱい盛り上げるぞー!」
「よっしゃ、そうと決まればトレーニング頑張ろー!」
「それはそうと……なおくん。私の走りはどうだった?」
「ん? そうだな……名前の通り、ダイヤモンドみたいに輝いてて、カッコよかったよ!」
「な、なおくん……! そんな事言われると、嬉しくてハグしたくなっちゃうじゃん!」
「ちょ、ムグっ! 息でぎねぇ〜!」
僕がダイヤ姉ちゃんのレースでの感想を述べると、ダイヤ姉ちゃんは口元を緩めて、突然抱きしめて来た。顔がダイヤ姉ちゃんの胸に埋まり、離れようとしても身動き出来ねぇ……。
「ダイヤちゃん! なおくんから離れて……って力強っ!」
姉ちゃんが僕を力強く引き離そうとしたが、ダイヤ姉ちゃんの力が強すぎて、なかなか拘束から逃れることができなかったのだった。
「私達、完全に空気ですわね……」
「あっはは……いつもの事ですから」
すみません……クラウンさん、マックイーンさん。
今後のお話を書き溜めしていたので投稿が遅くなりました。もう有馬記念の話も書き終わっちゃってます。
今はダイヤちゃんの3戦目とキタちゃんの天皇賞・春に向けての大特訓になるまでの日常話などを書いてます。
長く続けるためにバレンタインイベントも描きたいからなぁ
どんな逆境でも何度だって立ち上がる。それがサトノクラウンっていうウマ娘なんだ! クラちゃんの頑張えー!
アニメで描かれないサトノクラウンの天皇賞・秋の様子を頑張って描きました。
そしてサトノダイヤモンド見事デビュー戦に勝利しました! おめでとう!
先の話が描き終わり次第、随時投稿して行くのでお楽しみに!
それではまた次回お会いしましょう! おつコーン