目が覚めたらキタサンブラックの弟になった件 作:通りすがりの邪教徒
今回は直人くんにとっての重要回です
どうぞ!
ダイヤ姉ちゃんのデビュー戦を終え、姉ちゃんは次の目標として、『有馬記念』への出走を目指すことを決めることにした。
ダイヤ姉ちゃんのデビュー戦から1週間が経過したある昼休み。僕と姉ちゃんは図書室で有馬記念について調べていた。
『有馬記念』
中山レース場にて行われる、距離・芝2500mの長距離GⅠレース。このレースではオグリキャップのラストラン、トウカイテイオー奇跡の有馬記念など、数々の伝説のレースが繰り広げられた凄いレースだ。
年内最後のレースという事もあり、中山レース場は毎年多くのファンで埋め尽くされるそうだ。
因みに、有馬記念に出走するための条件として、優先出走権などと言うものは存在しない。有馬記念ではファンによる投票で出走するウマ娘が決まるのだ。
ファン投票が行われる期間は、だいたい11月中旬〜12月上旬までが目処となっている。フルゲートに16人。最低でも16位を取れれば、有馬記念に出走することが出来る。
「あたし、有マ記念に出るって言っても、順位内に入れるかな〜」
「その点は問題ないと思うよ、この前の菊花賞が効いたのか、姉ちゃんは結構注目されている。この調子なら有馬記念もいけるんじゃないかってな」
何てったって、距離で苦しんでいたあのキタサンブラックが3000mを走って菊花賞を制したんだぜ? 最初の頃は無名かも知れなかったが、今となっては今後の活躍を期待されるウマ娘にクラスアップしたんだ。もっと自分に自信を持って欲しいものだ。
そして僕は、図書室で本を沢山借りて、姉ちゃんと一緒に教室へと戻っている最中のこと。姉ちゃんにとある質問を投げかけられた。
「そう言えば、なおくんって最近ウマ娘に関係する本いっぱい読んでるよね」
「ああ、姉ちゃんのためと思って色々勉強してるんだよ」
「今のなおくんってさ……将来はトレーナーになりたいって思ってたりするの?」
将来トレーナーか……入学した時は、なりたいかどうしようかなんて考えた事も無かったからな。
僕は最初、そもそもトレーナーになる気はなかったし、大切な家族の力になれればと思って、一緒に同じ景色を見たいと思って、チームスピカに入った。
でも、時が経つにつれて心境の変化もあった。日本ダービー以前から、姉ちゃんが出るレースのコース地形とか過去のレースデータを漁ったりもした。走りに必要な要素などを本で読んだり、ネットで調べまくりもした。
菊花賞間近の時は遅くまで起きてたくらいに……あれ? 僕がやってるのってトレーナーみたいなことなのかな?
前世やトレセン入学当初は僕自信、この先なりたい物が何なのかが分からない。将来の夢を探している旅の最中だった。
もちろん、バンドで皆に歌を届ける夢とかも持ってる。こんな事をしてみたいという願望もある。でも、将来の事となると話が変わってくる気がする。
姉ちゃんの質問から色々考えてみた。でも、僕がトレーナー学科でウマ娘に関する知識を詳しく付ければ、姉ちゃんの役にだってもっと立てるかも知れないじゃないか。
まだ何処に向かえばいいか分からなかったけど、面白そうな未来が待ってるなら……本気で目指してみても良いと思った。
「思った。姉ちゃんのさっきの質問でめっちゃ考えて今だけどね……。本気でトレーナーを目指しても良いかも知れないな」
「なおくん……。なんだか懐かしいなぁ〜!」
「何がだ?」
「なおくん覚えてないかもだけど、小さい頃は「お姉ちゃんのトレーナーになりたいんだ〜!」って毎日一緒に寝てる時によく言ってたんだよ?」
へぇ……この世界の僕って、昔はそんな事言ってたんだ。そういえば思い出した事がある。昔の僕は、将来キタサンみたいな強い競走馬を育てたいと考えてた時が一時期あったな。そう考えると、トレーナーも同じ……なのかな?
夢を持つと、時々すっごく切なくなるけど、時々すっごく熱くなるって僕の好きなヒーローが昔言ってたけど、確かにその通りかも知れないな。
同じ景色を夢見初めて、ダービーで切なくなって、菊花賞で熱くなった。あの感情は今でも忘れられない……。
「よし、そうと決まれば……。姉ちゃん僕はこれで!」
「うん、またトレーニングでね!」
僕は心を新たに入れ替えて、教室へと戻って行った。
「頑張れ……なおくん」
決意をしたのは良いものの、トレーナー学科に入るにはどうすれば良いんだろうか。
中等部からもトレーナー学科はあるけど、学科を途中から変えられる転科試験とかあったりするのだろうか? トレーナーさんか誰かに聞いてみようかな。
「直人さん、そんなに悩まれてどうしたんですか?」
「お? たづなさんじゃないですか!」
そうだ、ちょうど良いな。学園で理事長秘書を長年やっているたづなさんなら分かるかも知れないし、聞いてみようかな。
「実は僕、トレーナー学科に移りたいって思ってて……どうすれば良いか考えてたんですよ」
「直人さんがトレーナー学科にですか……でしたら、学科を移す為の試験を来年の1月末にする予定です」
来年の1月末か……勉強出来る期間が2ヶ月後くらいって所だな。
「詳しい詳細が知りたければ、それに関する資料をお渡ししましょうか?」
「良いんですか!? ありがとうございます!」
「それでは、今日の授業が終わったら理事長室に来てください。もう直ぐでお昼休みも終わってしまいますしね」
「はい、分かりました!」
たづなさんとの話を終えた僕は、改めて教室へと戻っていった……。あれ? たづなさん、さっき理事長室に来いって言った? マジかよ。
そして放課後。僕は現在、理事長室の扉の前に来ていた。ここの場所には初めてやって来たので、どんな風に入れば良いのだろうと右往左往していた。ライブでは普通に話していたのに不思議だ。
取り敢えずノックは必須だよね。でもでも何か緊張するんだよな。相手は体格がロリでも理事長なわけだし。
「よし、男として……ここは根性だ!」
意を決した僕は、理事長室の大きい扉をノックした。
「入りたまえ!」
「し、失礼しましゅ!」
「噛んだな」
「噛みましたね」
は、恥ずかしすぎぃ! めっちゃ緊張してるじゃないか僕!
「ま、まぁ取り敢えず、そこの椅子に座りたまえ。ゆっくり話そうじゃないか!」
「う、うっす……」
因みに、今日のトレーニングは遅れて行くとトレーナーさんには伝えてある。
「歓迎っ! よく来たな、北島少年。君と最後に会ったのは感謝祭のライブ以来だったな。あのライブは本当に素晴らしかった!」
「改めてありがとうございます。それで、早速本題に入っても?」
「おっと、そうであったな。たづな、例のアレを!」
「直人さん、こちらをどうぞ」
僕はたづなさんから試験に関するプリントを貰った。プリントには試験日と試験時間、そしてトレーナー学科に移るのに必要な合格点数その他諸々が記載されていた。
僕は表と裏に書かれている文章を詳しく読み進めて行く。転科試験の申し込みは1ヶ月前くらいからやっていたらしく、他にも普通科の生徒で受ける人がいるらしい。
「本来であれば、トレーナー学科でもなければトレーナーを目指すかどうかも分からない君をスピカに入れるのは、反対だったんだ」
「えっ!? じゃあ何で……?」
「君のチームのトレーナーくんが「キタにはこいつがどうしても必要になる!」と言って来てな。彼の熱意に負けたんだ……。そしてたづなと話し合って、北島少年を特別にチームに入れたんだ!」
トレーナーさん、必死にお願いしてくれたんだ。
「あのトレーナーくんが言っていた事も確かではあった。実際に、『セントライト記念』や『菊花賞』で素晴らしい戦績を残したのだからな。それとトレーナーくんが、『菊花賞』の後「直人にはトレーナーの才能があるかもしれない」と言っていたのだ!」
トレーナーさんがそんな事を……。僕はあの時、姉ちゃんのためを思って我武者羅にやってただけなんだけどな。
「では、北島少年に問う……。君は、本気でトレーナーを目指す気はあるのか?」
理事長が真剣な表情で僕にそう聞く。こう見るとロリなんて事をすっかり忘れてしまうほどの真剣な眼差しと貫禄を彼女から感じる。
本気でトレーナーを目指す気はあるか、か……。トレーナーとしてウマ娘と二人三脚で目標に向かって、担当のウマ娘と夢に向かって一緒に走る覚悟があるかどうかだろう。
「あります。トレーナーへの道を歩みながら、今頑張ってる姉ちゃんを全力で支えたいです。その為に、全力で勉強します!」
「うむっ、よく言った! 君の今後の活躍、大いに期待しているぞ!」
「ありがとうございます。それに僕のために時間を使ってもらって」
「結構ッ! では、この後のトレーニングでも精を出したまえよ!」
「あっ、直人さん、これをどうぞ。試験の役に立ててくださいね!」
「たづなさん、ありがとうございます。それでは失礼しました!」
僕は一例をして、理事長室から出た。僕はたづなさんから預かった袋を片手で持ち、プリントを折りたたんで、制服のポケットにしまってから、レース場へと向かった。
僕がレース場に到着すると、姉ちゃんがテイオーさんとゴルシさんと併走をするのが見えた。
そう言えば、ゴルシさんは今月末にジャパンカップがあるんだったな。姉ちゃんが有馬記念に出るとなったらゴルシさんともぶつかるんだろな。
「よお、直人。もう用事は終わったのか?」
「はい!」
「何処に行ってたんですの?」
「それは後ほど、トレーニングが終わったら言いますよ」
そして数十分後。トレーニングが終了して、スピカの皆が部屋に集まって休憩を取っていた。
「実は僕、トレーナー学科に転科するために、来年の1月に試験をすることになりました」
「お前、本気か!?」
「はい、ガチです。もう覚悟は決めましたから」
僕がトレーナー学科に行くと言ったら、姉ちゃん以外の皆は目が点になっていた。
この世界での幼かった頃の僕の夢も叶えたいし、今の僕自身もトレーナーになるって決心を決めたんだ。
「トレーナーになるのは、とても困難な事だ。特に中央のライセンスは地方よりもレベルが高い。それでもやるか?」
「やってやりますよ。僕は、夢に向かって走りたいです。これからも姉ちゃんと……キタサンブラックと共に!」
「なおくん……! お姉ちゃん、なおくんが決めた事なら全力で応援する。お姉ちゃんもなおくんのために頑張るから!」
「直人、お前の覚悟は受け取った。トレーナー学科に合格したら、この俺がビシバシ鍛えてやるからな!」
「はい! その時は、よろしくお願いします!」
こうして僕は新しい未来に向かって進み続ける。トレーナーとしての倍率が高くても、僕は負るもんか! トレーナー学科で勉強しつつ、自分のやりたい事を全力でやるんだ。
「直人くん、ボクたちも応援してるよ!」
「ええ、困った時は私たちも頼ってくださいまし」
「テイオーさん、マックイーンさん」
「直人くん、自分の新しい夢に向かってけっぱれ!」
「挫けそうになったら、無理しないで私も頼ってね」
「スペさん、スズカさん」
「アンタなら絶対出来るわ! 自信を持ちなさい!」
「オレもスカーレットと同感だ。自分に負けんじゃねえぞ!」
「キタ弟、合格した暁には、ゴルシちゃん達が盛大な胴上げをしてあるぜぇ!」
「スカーレットさん、ウオッカさん、ゴルシさん……皆さん、ありがとうございます! 僕、皆さんの言葉で頑張れます。よーし! そうと決まったら、寮で勉強しまくるぞ!」
チームスピカからエールを受け取った僕は、寮に帰って早々、たづなさんから貰った問題集を使って勉強に取り組んだ。
夢を……夢で終わらせないために。
北島直人、トレーナーまでの道のり序章です。
有馬記念って年内最後のレースの印象が強いから本当の年内最後のGⅠレースのホープフルステークス忘れがちだよねw
理事長の言葉って難しいんだよね。そんな頻繁にニ字熟語なんて思いつかんわ!
夢を持つとな、時々すっごい切なくなるが、時々すっごい熱くなる……らしいぜ……。
俺に夢はない、でもな……夢を守ることはできる。変身!
仮面ライダーファイズの続編が来ますね。良作になる事を期待して……頼むぞ井上!
また次回もお会いしましょう!