目が覚めたらキタサンブラックの弟になった件 作:通りすがりの邪教徒
君が願う事なら、全てが現実になるだろう。選ばれしものならば。
それではどうぞ!
11月中旬、ついにこの時期は有馬記念への出走ウマ娘を決定するためのファン投票が行われることとなった。
年末の有馬記念でどのウマ娘が選ばれ、中山レース場の舞台に立てるかの『今年の有馬記念特集』が月刊トゥインクルの記事に記載されているのを僕は現在、トレセン学園内の売店で購入した奴を教室で読んでいるところだった。
やっぱりゴルシさんの有馬記念行きは確定してるんじゃないかってくらいの内容も書かれていた。
あの人は確かに、黙れば美人、喋れば奇人、走る姿は不沈艦とウマ娘界ではかなりのハジケリストと呼ばらているらしい。
見事に出遅れたあの宝塚記念は、結構な波乱を呼んで、ゴルシさんは違う意味でも大人気だ。老若男女問わず好かれるゴルシさんは、いつでもファンの心を掴んでいて凄いと思う。
そんなゴルシさんは、今月末にはジャパンカップに出走する予定だ。
ジャパンカップと言ったらウチのチームで制した代表的なウマ娘はスペさんだね。
凱旋門賞でエルコンドルパサーを下したあのモンジューに勝ってジャパンカップを制したレースは、正しくスペシャルウィークを「日本総大将」と呼ぶに相応しい素晴らしいレースだったと思っているよ、僕はね。
そして、ゴルシさんの他に注目されていたクラシック級枠のウマ娘が僕の姉であるキタサンブラックだった。そんな姉ちゃんのページにこう記載されていた。
『今、絶賛話題のキタサンブラック。距離と言う名の壁を超えて菊花賞を制したお祭りウマ娘。今年の有マ記念へ出走する事ができるのか!? そして今年の有マ記念を制し、菊花賞の時のようや姉弟仲睦まじく、情熱的・姉弟愛1000%のハグを再び見る事ができr』
僕は途中から読む気が失せたので、ページを閉じて、たづなさんから貰った問題集を机の上に出して勉強を始めた。
これって姉ちゃんだけじゃなくて僕も完全に注目の的として世間様に晒されてるって事だよな……あのクソ記者が、今度会ったら消し炭にしてやろうか!? と、心の中で思いながら、問題集を進めていく僕であった。
「うっす直人。何、朝から勉強して……ってこれってトレーナー学科の問題集じゃん! お前、遂にか……」
「遂にって……まるで分かったような言い方をするな」
「まあ、いつか本格的に目指しそうだとはうすうす思ってたよ」
「因みにいつから?」
「ダービー前のテスト勉強期間から」
あっ、結構前から察してたのね。
「まぁ、なんだ……俺も応援してるぜ」
「ありがとう。音也くん」
「へへっ、あっ! そうだ。お前のこと月刊トゥインクルに載ってるって、さっき話題になって」
「き、聞きたくない! 聞きたくなーい!」
こうしてトゥインクルでネタにされた僕はクラスの皆にしつこく聞かれ、あのクソ記者への恨みが増加していった。
「やっぱりジャーナリストは、オタクの敵だな……」
時が経ち、11月末。ゴルシさんの『ジャパンカップ』がやって来た。
『ジャパンカップ』は国内で開催される国際レースということもあり、東京レース場には日本人だけでなく、海外からやって来た人も何人かが観戦に来ていた。
今年のジャパンカップでゴルシさんが2番人気に支持されていた。1番人気は、先月末に開催された『天皇賞・秋』を制したラブリーアイだ。
ゴルシさんのジャパンカップは最初はまずまずのスタートから始まり、ゴルシさんお得意の追い込み戦術が上手く生かされず、結果は10着に終わったのだが、ゴルシさんは凄く楽しいそうな表情をしていた。
そして東京レース場からの帰り道の事。僕はチームの皆と途中で別れて、姉ちゃんと一緒に練習用のシューズと蹄鉄を買いにウマ娘スポーツショップ来ていた。因みに払いはトレーナーさん持ちである。
「ゴルシさん、残念だったよな」
「でもゴルシさんって凄く人気だから有マ記念でもかなり期待されると思うよ。GⅠレース6勝もしてるウマ娘だし」
「うん、そうだね。そういや有馬記念の投票期間ももう直ぐで終わるね……。当然僕は姉ちゃんに入れたよ」
「なおくん、ありがと!」
そう言い、シューズを見ながら姉ちゃんは頭を撫でてきた。
買うシューズと蹄鉄が決まり、清算を終えた僕らは店内から外へと出ると、肌寒い風が僕の手や頬を襲って来た。
「寒っ……! 最近、寒くなって来たな」
両方の手のひら同士を擦って摩擦で温める。
「そうだね。なおくん、あたしと手繋いで帰ろ? ポッケに手を入れて歩くのは危ないし、それにお姉ちゃんの手はあったかいから」
「あ、ありがとう。あったか〜」
こうして手を繋ぎながら、寮へと向かって歩き出す。
「勉強はどう? 順調?」
「まあ、夏合宿とかトレーナーさんがレース場の地形や走り方なんかを間近で見たり聞いてたりしたから、結構スラスラ出来てるよ」
他にもウマ娘の過去のレースでの歴史とか、レースに必要なあれやこれとトレーナーとして必要な知識の問題とかあり、覚える事が多くてとにかく大変だ。
「あまり無理はしないでね?」
「分かってるよ。姉ちゃんも、いくら身体が頑丈だからってトレーニングしすぎるなよ」
「あっはは、お互い様だね」
こうして話しながら歩いていると、何時の間にか寮に到着していた。
「じゃあ、また明日ね」
「うん、勉強頑張ってね」
姉ちゃんと別れて、寮の部屋に戻り勉強を再開させた。
僕も頑張ろう。姉ちゃんみたいにコツコツ積んでいくのは得意だし、何より自分の中で新しい事を覚えている事が楽しくて仕方がないのだ。
そして月日は変わり、12月上旬に突入した。有馬記念の投票が終了して、出走するウマ娘が発表されるのまで3日位掛かる。
そんな中、TVではクリスマスケーキやトイ○らスで取り扱っている玩具のクリスマスプレゼント宣伝で盛り上がっている。
そんなクリスマスなんぞに盛り上がっている世間を他所に僕は昼休みに図書室で本を読んで勉強をしている。教室よりも静かなので落ち着くからだ。
本を読んでいる途中。僕の肩がポンポンと軽く叩かれたので、その主を見ると、青薔薇でお馴染みのライスシャワーさんが僕の後ろに立っていた。
「こんにちは、直人くん」
「ライスさん、お久っす」
「なに読んでるの?」
「トレーナー学科で必要になってくる勉強の資料ですよ」
「直人くん、トレーナー目指すの? もしかして、お姉さんの為に?」
「ライスさん、鋭いですね。その通りです」
「そうなんだ。隣、座ってもいいかな?」
そう言ってきたので、遠慮なくどうぞと、ライスさんを席に座らせた。
「トレーナー学科に行ってもバンドは続けるの?」
「はい、好きな事はまだ続けていたいので」
「そうなんだ。あのライブ、ライスも見てたけど感動しちゃったな。最後の曲は特に胸にグッと来たんだ」
そう言われると、改めてバンドをやってて良かったって思った。これからも自分の好きを貫こうと言う励みになるし。
「じゃあ、ライスはこれで……勉強も頑張ってね♪」
「はい、またどこかで」
ライスさんは図書室を出て行き、僕は本をきちんと戻してから教室へと向かった。
そして、有馬記念出走ウマ娘発表の日がやって来た。
「いよいよですわね」
「はい、緊張して来ました」
トレーニング終了後、僕とチームスピカのメンバーは現在、トレーナー室でどのウマ娘が選ばれるのかソワソワしていた。
「じゃあ、いくぞ? お前ら」
トレーナーさんはそう言って、新聞をゆっくりと開いていく。
「おお! 姉ちゃん!」
「やったー!」
人気投票の結果。キタサンブラックは何と3位にランクインしていた。無名から期待に変わったとはいえ、こんな上位に食い込まれるなんて……僕の予想を遥かに超えた順位だった。
そして映えある1位はゴールドシップと書かれていた。
「ゴルシさん、1位ですよ! って事は……同じチームのウマ娘が有馬記念でぶつかる。なんて熱い展開なんだろうか!」
「キタサン……。お互い、いいレースにしようぜ!」
「はい、ゴルシさん。当日は対戦よろしくお願いします! あたし、本気で勝ちに行きますから!」
「へへっ、かかってこい! 育ち盛り!」
かくして、有馬記念に出走する選ばれしウマ娘が決まり、クリスマスなんて忘れさせるくらいの盛り上がりを見せた今日。
明日からは、姉ちゃんとゴルシさんは別れてトレーニングをする予定となった。
そして寮へと戻る帰り道、姉ちゃんは有馬記念に出られる喜びを噛み締めていた。
「有馬記念、出られてよかっね」
「うん、ダイヤちゃんとのレースのために、最高のレースにして見せるよ!」
「姉ちゃん、GⅠを合計6回も制したゴルシさんもそうだが、他のウマ娘も強者揃い。相手にとって不足はない……全力で走って来い!」
「うん!」
こうして僕らは、それぞれの新しい夢へと向かって走り出す。
と言う事で、とうとうキタサンブラック対ゴールドシップの有馬記念が決定いたしました! お祭り娘と黄金の不沈艦夢のレースが年末に待っている。
トレーナー学科試験の勉強は順調。問題とか細かな設定は考えるの難しすぎるので大雑把になると思いますがご了承ください。
それではまた次回お会いしましょう。おつぺこ〜