目が覚めたらキタサンブラックの弟になった件 作:通りすがりの邪教徒
主人公をウマ娘しかいない寮に一晩閉じ込める魔法。
それではどぞ!
忘年会を終え、机いっぱいに広がっていた豪勢な料理を食べ尽くした僕たちは、椅子に座っていったん休むことになった。
時計を見ると思ったよりも時間が経っていて、そろそろ僕の寮に帰る時間だと思い始める。だが外は強風が吹いてクソ寒い為、この暖房が効いている暖かい部屋から抜けるのは至難の業だと勝手に思っている。
実は僕、寒いのがクソ苦手なんです。前に「道民だからこれくらい余裕だぜ!」みたいなこと抜かした気がしましたが、あの発言はカッコつけの強がりで、寒いのにはフリーレン様の萎れ顔になるくらい弱いです。
「直人くん」
「フジさん?」
「もう夜も遅い……風も強くなっている。寮が近いとはいえ、この冷え込んだ時間に出歩くのも辛いだろうし、良かったら君のお姉さんの部屋で泊まって行ったらどうだい?」
「えっ!? でもウマ娘の寮なのにいいんすか?」
僕が恐る恐るフジさんに問いかけると、姉ちゃんとダイヤ姉ちゃんの目がピカーンと見開き、耳を真っ直ぐにピンっと立たせたのを同時に確認した。
「そうだよなおくん! ここはフジキセキさんの言葉に甘えよう!」
「私もキタちゃんに同意だよ!」
「で……でも……」
「お姉ちゃん、なおくんが風邪ひいちゃわないか心配なの……お願い!」
「わ……分かったよ」
「「やったー! イェーイ!」」
僕が承諾した瞬間、2人はもの凄いハイテンションでハイタッチを交わした。
「凄い満更でもないリアクション。そんなに嬉しいの?」
「当たり前だよシュヴァルちゃん!」
「なおくんと一緒……ふふっ……」
「ダイヤ。貴女とんでもない顔になってるわよ……」
クラウンさんがダイヤ姉ちゃんを見て若干引いているのが窺える。
そうと決まればと食器をちょちょいと片付け、姉ちゃんとダイヤ姉ちゃんに部屋へと連れて行かれました。
「ここがお姉ちゃん達の部屋だよ!」
「ほほう……中々いい間取りだな〜!」
姉ちゃんサイドはテイオーさんのポスターに天井には多くの提灯がぶら下がっており、机の上には菊花賞の盾とその時に撮ったツーショット写真が飾ってある。
ダイヤ姉ちゃんサイドには豪華な額縁の中にマックイーンさんのポスターがあり、机の上に写真立てが置いてあった。僕ら3人が小学生のときの写真かな?
お互いに憧れのウマ娘のポスターが貼っているの良いね。テイオーさんとマックイーンさんの存在がこの2人の今を作ってると言っても良いだろう。
そして、真ん中にはテレビとその下に小さめの冷蔵庫がある。
「お姉ちゃんたち、これからお風呂入ってくるけど」
「僕はもう先に寮でシャワー浴びたから終わるまで待ってるよ。あっ……コレをついでにテイオーさんに渡して来てくれない?」
僕は約束していた葬送のフリーレンの原作漫画が全部入った紙袋を渡した。
「なおくんが直接渡せば? テイオーさんの部屋に連れて行くよ」
「でもウマ娘の寮に僕がいるの変な目で見られない?」
「事情説明すれば分かってくれるって! 一緒に行こ?」
そう言われ1000%の不安を抱えながら2人が大浴場に向かうついでに、テイオーさんの部屋まで連れてってもらった。向かう途中、スペさんとスズカさんとエンカウントしてしまった。
「な、なんで直人くんがここに!?」
「えっと……かくかくしかじかありまして」
「それなら仕方がないわね。それじゃあ他のチームの皆にはメッセで私から伝えておくわ」
「スズカさんありがとうございます!」
スズカさんの優しさに感謝の言葉しか出ない僕は良いチームメイトに巡り会えたなと改めて思った。
スペさん達と別れて、テイオーさんの部屋に到着した。
「テイオーさん! いますかー?」
姉ちゃんがノックをせずに堂々と扉を開けると、テイオーさんが部屋から出て来た。
「どうしたのキタちゃん……って直人くん!?」
「どうも、こんばんは〜」
「なんで直人くんがボクたちの寮にいるのぉ!? も、もしかしてキタちゃんがこっそり連れ込んだんじゃ……」
「テイオーさん。あたしのことなんだと思ってるんですか!?」
「あっはは……スズカさんから何かメッセ送られてませんか?」
「スズカから……? あ〜成る程ね〜!」
テイオーさんはスマホのグループトーク枠を確認して、納得のいく表情を見せた。
「お姉ちゃん達はお風呂に入ってくるね」
「分かった。じゃあテイオーさん、僕は戻りますね」
「あっ、待って!」
そして姉ちゃん達は大浴場へ向かい、僕がテイオーさんに紙袋を渡して部屋に戻ろうとした時だった。
「直人くん。2人がいない間暇でしょ? 良かったら中に入りなよ!」
「えっ……いいんすか?」
「うん! ボクは大歓迎だよ!」
「アザス!」
「ああー! 直人ちゃんだ。久しぶりー!」
「どうも、マヤノさん。お邪魔します」
テイオーさんの部屋に入ると、マヤノさんに久しぶりに会った。テイオーさん同様に驚いていたけど理解が早くて助かった。
ー キタ視点 ー
ダイヤちゃんとお風呂から上がり、寝巻きに着替えてからスマホを見ると、テイオーさんからメッセが来ていた。
なおくんはテイオーさんの部屋で待っているとの事だったので2人でお迎えに行くことにした。
今晩はなおくんとくっついて寝れる……想像しただけでも楽しみになって来た。
「ねぇ、キタちゃん。もしかしてなおくんと寝る気?」
「そうだけど、それが何か?」
「私も……私もなおくんと寝たい!」
と、ダイヤちゃんがそう言って来た。あたし達が寝ているベッドは入れても最大2人までだ。いくら大親友のダイヤちゃんでもなおくんと寝るという至福の時間を譲る事はできない。
「いや! なおくんはあたしと寝るんだから!」
「そう……だったら公平にジャンケンで決めない? 勝ったらなおくんと寝るって事で」
「う〜ん……分かった。恨みっこなしだからね!」
「「じゃ〜んけんポン!」」
お互いにグーを出してそこからあいこが何回も続いた。
「やるね……キタちゃん!」
「ダイヤちゃんもね……」
「「あいこでしょ!」」
そして決着がついた。
ー 直人視点 ー
「いや〜! フリーレンって作品すっごく面白いね!」
「そうでしょう!? アニメ版も作画も曲も演出も最高で面白いので是非!」
「マヤもそのアニメ見てみようかな〜。直人ちゃん、他にもお勧めのアニメ教えて!」
「良いですよ!」
僕はフリーレンの漫画をテイオーさん達と読みながらアニメトークに華を咲かせていた。
マヤノさんにも興味を持ってくれて、僕が好きなアニメをめちゃくちゃお勧めしまくったりしてめっちゃ楽しかった。
アニメの沼はやばいぞ〜! 一度ハマったら抜け出せんからな。こうやってどんどん新規を囲うの楽しぃ〜!
「なおく〜ん♪」
楽しい話をしている途中、ダイヤ姉ちゃんが部屋の中に入って来た。凄く笑顔で何かいい事でもあったのだろうか。
後ろには姉ちゃんがいて、ダイヤ姉ちゃんとは真逆で凄くしょんぼりとした表情で立っていた。
「お風呂上がったから一緒に戻ろ?」
「分かったよ。それじゃあ僕はこれで」
「漫画ありがとねー!」
「直人ちゃん、またね〜!」
姉ちゃん達の部屋に到着し、歯磨きも済ませに行った僕らはそろそろ寝ることにした。
「なおくん、今日は私と寝よ?」
「あれ? 姉ちゃんが誘ってこないの珍しいな」
「ぐ、ぐぬぬ……」
「キタちゃん。恨みっこなしでしょ?」
「分かってる……分かってるけど……!」
あ〜ね。僕と寝るのをどっちにするのかジャンケンで決めたわけだ。それで姉ちゃんが負けたからあんなに落ち込んでたわけか。
「なおくん、おいで」
「やっぱり、フジさんに相談して布団でも借りてこようかな……あっ!」
そう言い逃げるように部屋から出ようとすると、ダイヤ姉ちゃんにガシっと手首を掴まれてベッドの中に無理やり入れられてしまった。
「なおくん、あったか〜い!」
僕を抱き枕のようにして横になるダイヤ姉ちゃんを横目に姉ちゃんが羨ましそうな眼差しで僕らを見る。
「おやすみ、なおくん」
「うん……姉ちゃんもおやすみ」
姉ちゃんは無言で頷きシュンとしながら目を閉じた。
「う〜ん……眩しいな。姉ちゃん、まだ起きてる?」
「どうしたの? もしかしてお姉ちゃんと寝たい?」
「そうじゃなくて……提灯が明るくて眠れんのだけど」
「あ、ごめんごめん! 今消すから!」
暗くなったのを確認すると、ダイヤ姉ちゃんが小声で「ありがとう」と耳元で囁いて来た。
ダイヤ姉ちゃんが寝る時、提灯が眩しくてアイマスクをしなきゃ眠れなかったらしい。なんかうちの姉がすみません……ダイヤ姉ちゃんの安眠妨害をさせないように言っとくんで。
姉ちゃんが灯を消した後、僕はダイヤ姉ちゃんの温もりに包まれながら眠りについた。
起きた時にやけに耳が生暖かいなと思ったら、ダイヤ姉ちゃんに耳朶をはむはむされており、くすぐったくてつい起きてしまった。
「う〜ん……なおくん。おあよ〜う……もぐもぐ」
「うん、おはよう。あのさ……そろそろ口離してくれないかな?」
「あっ、ごめんね♪」
「う〜ん……もう食べられないよう……」
姉ちゃんを見るとベタな寝言を言いながらぐっすり眠っていた。「食べられないよ」の寝言は、どっちかと言うとスペさんかオグリさんのイメージが強いぞ。
「姉ちゃん起こしたいから……」
「分かったよ」
ダイヤ姉ちゃんのベッドから出て姉ちゃんを起こそうと近づく。
「姉ちゃん、起きて!」
「うん……? なおくん、おはよ〜」
姉ちゃんは目を開けて身体を起こすと、大きく背伸びをした。
「う〜ん……今何時?」
「7時だよ。もう食堂空いてるんじゃない?」
「そうだね。お姉ちゃん達の寮の朝ご飯も美味しいよ!」
「それは楽しみだ」
こうして僕らは朝ごはんを食べに、食堂へと向かう途中のことだった。
「おお〜! 本当に直人くんいるじゃん!」
「ネイチャさん。おはようございます」
「おは〜! イクノから聞いたんだよ。3人ともこれからご飯でしょ? 良かったら一緒に食べない?」
何で知ってんだ? あっ、イクノさんってマックイーンさんと同じ部屋だった。知ってても不思議じゃないか……。
「僕は全然大丈夫ですよ。一緒に行きましょ!」
何を食べようかな……いつも朝はパン食べてるからたまにはご飯系でも食べたいな。
なんだか知らんけど無性に鯖の味噌煮が食べたくなって来た。
「直人くんサバ味噌にしんだ。天道さんの料理はプロ並みだけど、その中でもサバ味噌は特に美味しいんだよ」
「プロ以上って言ってもらいたい」
灰色の作務衣を着た天道さんが厨房から出て来てそう言って来た。
「いただきます。はむっ……こ、この鯖ってまさか……天道さん。これって松輪の丸特ですか?」
「君、よく分かったな。それは今朝仕入れたばかりの上物だ」
「なおくん、お姉ちゃんに一口ちょうだい!」
「はいよ」
「美味しい! こんな美味しいサバ味噌初めて!」
「うんうん、うめえ……」
あまりにも美味しすぎて箸が止まらない。気がつけばカツンと音が鳴り、皿上からいつの間にかサバ味噌が消えていた。
「お代わりもあるが……食べるか?」
「お願いします!」
姉ちゃん達と朝ごはんを食べている途中、他のウマ娘達もやって来た。顔見知りのウマ娘が多かったので、僕がこの寮にいることに対して昨日のスペさんやテイオーさんみたいに驚いた反応をしてるウマ娘も多くいた。
その中には僕に興味津々で話しかけて来た初対面のピンク髪とバクシンオーさんやローレルさんの目と同じ桜模様が入った瞳が特徴的なウマ娘と如何にもお上品そうな栗毛のウマ娘が近くにやって来た。
「スペちゃんが言った通り、本当に男の子がいるー! しかも君、この前のライブで歌ってた直人くんだよね!?」
「ああ……はい、貴方達は?」
「私はハルウララだよ! こっちは……」
「キングヘイローよ。貴方のことはスカイさんやツルマルさんから聞いているわ」
やっぱりキングヘイローいたー! キングヘイローって短距離、マイル、中距離、長距離と全ての距離のレースに出て、最終的には短距離で落ち着いたやつだったよな。
それにしても、あの高知を中心に活躍していたハルウララがこのエリート揃いの中央のトレセンにいることが1番の衝撃だった。113戦中のレースで勝ったレースは一個もなかったけど、怪我なしで多くのレースを走って来たのは逆に凄いと思っている。
「ツルちゃん、いい教え子が出来て嬉しいって言ってたもんね!」
「ええ、そうね。貴方の歌とっても良かったわ」
「春にもライブやる予定があるってツルちゃんから聞いたから、楽しみにしてるね!」
ハルウララさんのうららか〜な曇りひとつない満面の笑みをされながら「楽しみだ!」と言われるとやる気が満ち溢れる。
「精一杯やらせていただきます。改めて北島直人です! ウララさんとキングさんと呼んでも良いですか?」
「もちろん!」
「ええ、構わないわ」
また新しいウマ娘と出逢い、友達になった。ウララさんとキングさんは朝ごはんを取りに行って、姉ちゃんからは「楽しみにしてくれて良かったね!」と言われながら頭を撫でられた。
そして僕らは食べ終わった食器を持って返却口に置いて食堂を出た。
「そう言えばなおくん。もう準備はしてある?」
「うん、もう大丈夫だよ」
「およ? なんの話?」
「実は、3人そろって帰省するんですよ。年末年始は実家で過ごすんです」
「帰省ね〜。アタシも偶には実家に顔を出すかな〜。その前にチームの皆と初詣するから」
「それ良いっすね! 僕も向こうの友達と久しぶりに遊ぼうかな〜」
竜也のやつ元気にしてるかな……。向こうに行った時、ダイヤ姉ちゃんが家に遊びに来て欲しいと誘われたので行くことも決まった。
僕は栗東寮でお世話になったお礼をフジさんにしてから、自分の寮に戻って部屋の自分の前に着いた時、音也くんに昨日いなかったことを心配されたので、栗東寮で泊まってたと言ったら殺意のこもった目で見られたのは言うまでもないのであった。
水嶋ヒロさんのサバ味噌って絶対うまいよな。カブトを見ていた当時、加賀美が美味しそうに食べていたシーンは今でも忘れません
そしてハルウララ、キングヘイロー共に本作品初出走でございます!
こんな変なタイミングでの登場となってしまいましたが、いつか出そうじゃなくて出せるうちに出しました。ご了承くださ〜い!
次回は年末年始に渡ってのお話になります。