目が覚めたらキタサンブラックの弟になった件   作:通りすがりの邪教徒

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さぁさぁ、春の初戦のあじまりあじまり!

キタサンブラックは大阪杯勝てるのか!?


第七十七話:大阪杯(正:産経大阪杯)

 

 

 昼休み、トレーナー室にて。

 

 もう直ぐで3月が終わり、4月へと移る。僕がトレーナー学科に正式に移るのは4月からだと言う通達が合格通知の中には書かれていた。

 

 そんな4月の頭からは姉ちゃん今年初のレース『大阪杯』がある。

 阪神レース場にて開催される芝2000mのGⅠレースだ。そして、春シニア三冠の栄光を達成させるためにも必要なレースのひとつとも言える。

 

 うちのチームではテイオーさんの他に、マックイーンさんやスカーレットさんなんかが大阪杯に出て勝っている。

 なんでも、大阪杯は前までGⅡレースだったらしく、色々あってGⅠに昇格したらしい。その色々って何なんだろう。

 

「え〜っと、当日の天気は……ずっと曇りか。近日に雨が降らないだけマシだな」

 

 スマホの天気予報を見た後に、大阪杯で使う阪神レース場のコースの図などが乗っている資料を読んだ。

 中距離の王者を決める阪神芝2000mのBコース。過去10年、大阪杯は一貫してBコースで行われている。平均勝ちタイムが2分0秒4。最も早かった年のタイムが良馬場で1分57秒8か……。

 

「良馬場なら2分を切る可能性が高いな」

 

 因みに、他に出走する残り10人のウマ娘はもう決まっていて、姉ちゃんがどこの枠に入っているかも判明している。

 姉ちゃんは今回、6枠7番。真ん中あたりになると、姉ちゃんの得意な前に出てひたすら走る戦法が輝く時なのでは? と思った。

 

「よお、直人。大阪杯について何か学べたか?」

「はい! すみませんトレーナーさん。資料とか読みたいって頼んじゃって」

「別に構わないぜ? 将来有望なお前のために、俺は何だって協力するからよ」

「ありがとうございます」

 

 なんて面倒見の良いトレーナーさんなのだろうか。僕もこんなトレーナーさんになれるように頑張ろう。

 

 トレーナーさんと話してたら、あっという間に昼休み終了の予鈴が鳴って、僕は急いで教室へと戻る。

 

 そして時間が経ち、放課後。今日は姉ちゃんとウイニングライブで踊るためのダンス練習をしにダンススタジオに来た。

 もちろん、トレーニングをしてレースに勝つことも大事だが、ファンの人たちに感謝を伝えるウイニングライブもウマ娘にとって大事なことのひとつなのだ。

 

「ワン、ツー、スリー、フォー……」

 

 ラジカセに流れる音楽と共に、手拍子をしながらダンスの練習。なんだかラブ〇イブでμ'sやAqoursが練習している風景を目の前で見ている感じがして結構良い。

 

 大阪杯で歌う曲は「Special Record!」と言う曲らしい。聴いてみたけど結構好きになりました。

 

「セイっ! セイっ!」

「キタちゃん。その調子だよ!」

 

 因みに、ダンスはアイド……「ウマドル!」ではなく、ウマドルでお馴染みのファル子さんが見てくれている。

 最初の頃はテイオーさんに指導してもらってたみたいだけど、本人が忙しい時はファル子さんが見てくれているらしい。

 

「ふぅ〜! ちょっと休憩……」

「キタちゃん。すごく良かったよ! 良ければ逃げシスの新メンバーに……」

「なおくんとの時間を大切にしたいので、それは辞めておきます!」

「まさかの即答!?」

 

 ガーン! という擬音が周りから浮かんできそうな感じに落ち込んじゃった。今のメンバーでも十分成り立ってると思うけどな。

 

「ねぇ、直人くんってダンスとかは出来たりするの?」

「いやぁ……どうでしょう……?」

 

 ダンスですか……。昔の曲だとハレ晴レユカイとか最近だと船長が去年出した曲のダンスは出来るね。

 あとはスーパー戦隊の主題歌やエンディングのダンスとかもいくつかは出来るかな。

 

「あたし、なおくんのダンス見てみたいな〜」

「う〜ん……ちょっとだけだよ?」

 

 僕はラジカセから船長の「美少女無罪♡パイレーツ」のサビ部分を流して踊った。

 これは踊ってみたのshort動画を見まくってマスターした。fullは流石に無理だった。 

 

「おぉ〜! 直人くん上手だね!」

「アザス……って、姉ちゃん。何撮ってんだ?」

「いやぁ〜……可愛かったからつい? 録画しちゃった!」

「おい、今直ぐ消せや」

「ダイヤちゃんにも送っちゃったよ〜」

「ぷじゃけるなぁあああー!」

 

 ぐ、ぐぬぬ……ダイヤ姉ちゃんに送れば、姉ちゃんがさっき撮った動画データを今削除しても、送られたダイヤ姉ちゃんのスマホに残ってしまう。

 姉ちゃんめ……僕の全力ダンスを永久保存版にしやがって。コイツ何気に策士というかズル賢いぞ。

 

 ダンス練習を終えて、姉ちゃんと寮へ帰っていると突然こんな事を聞かれた。

 

「ねぇ、なおくん。今何か欲しいものある?」

「欲しいもの?」

 

 今欲しいものか……。でも何でそん事聞いてきだんだろう。

 

「だって、もう直ぐでなおくんの誕生日だし」

 

 あっ、そうか。そろそろ僕の誕生日が近いからプレゼントに何が欲しいか聞いて来た口か。

 僕の誕生日は3月27日。ウマ娘で言うとオグリさんと同じ日である。

 

「有マ記念で入賞した時の賞金もまだ結構残ってるし、なおくんが欲しがってた最新のパソコンでも良いんだよ?」

「マジでぇ!?」

 

 ちょうど寮でもパソコンを使いたいと思っていたところだったのでちょうど良い。

 

「うんうん! 遠慮しなくて良いんだよ」

「なら、お言葉に甘えて。お願いします!」

「決まりだね! じゃ、当日は楽しみにしててね〜!」

「ありがとう。姉ちゃん!」

 

 僕は誕生日当日を楽しみにしながら自部の部屋へと帰還した。

 

 

 

 3月27日。トレセン学園はついこの前から春休みに入った。

 今日は日曜日でトレーニングはお休みの日。でもまた朝から姉ちゃんの自主トレに付き合っている最中である。

 

 僕としては、レースも近いし無理は禁物だって朝寮から出る時に言ったんだけど……姉ちゃんは「走りたくてうずうずしてるんだ!」って言ってた。

 

 ま、気持ちは分からんでもないが……。僕も姉ちゃんが「こうしたい」って言うならさせたいし、出来る限りのサポートはする。

 

「ちょっと休憩しようか。オバーワークは避けたいからな」

「分かった。なおくん、お水ちょうだい!」

「はいよ」

「ありがとう!」

 

 2人で近くのベンチに座って、一緒に水分補給をした。

 3月でもまだ朝の時間帯は涼しい日が続いてるけど、動いたから冷たい水が染みる。

 

「最近足の調子はどう? 何か違和感とかない?」

「全然大丈夫だよ。なおくんは心配性だな〜」

「レースのために怪我だけはして欲しくないからね。レースの近いトレーニングの時は、しつこいくらい聞き続けるから」

「うぅ〜……でも、ありがとう。お姉ちゃんのために」

 

 そして10分後。また走り込みを再開して、途中に外国人観光客の人だろうか? みた感じ道に迷っていたみたいなので、姉ちゃんが助けに行った。

 

「姉ちゃん。英語喋れるの?」

「任せて! はろ〜。はうあ〜ゆ〜?」

「恐れ入りますが、阪神レース場はどちらでしょうか?」

「いや、バリバリ日本語喋れてるぅー!」

 

 姉ちゃんの喋ってる英語がひらがなで喋っているようにしか聞こえない。

 それから姉ちゃんはメモ用紙を取り出し、絵のようなものを書き始めた。

 

「あ〜はん! ひあ!」

「こちらですね!」

「ちょっと待てーい!」

「どうしたの? なおくん?」

 

 何気に上手く書けてる日本地図に、今いる所とレース場がある場所に黒点つけるだけとか、ざっくりしすぎだよ。

 困っている外国人のために、英語を喋れる姉ちゃんカッコいいとか期待してた僕が馬鹿だった。

 

「いいよ。僕が説明するから」

「ごめんね。なおくん」

 

 なんと日本語はひらがななら読めるとの事だったので、メモ用紙に電車の乗り換えなどを記載して、阪神レース場に行く方法を外国人さんに分かりやすく簡潔に教えた。

 

「誠にありがとうございました」

「「ば〜い!」」

 

 人助けも無事に完了したので、朝トレから戻り、朝ごはんを食べた後にギターの手入れをしていた時のことだった。

 

「うん? はーい!」

 

 扉からノックの音が聞こえて来た。音也くんかな? と思って扉を開けるとお菓子やジュースが入った袋を持った姉ちゃんとダイヤ姉ちゃん、その後ろにはクラウンさんもいた。

 

「皆、揃ってどうしたの?」

「今からなおくんの誕生日パーティーしようと思って来たんだ!」

「クラちゃんは私が誘ったの。なおくん、誕生日おめでとう!」

「ありがとう、ダイヤ姉ちゃん。クラウンさんも僕のために来てくれてありがとうございます!」

「良いのよ。大事なバンドメンバーの誕生日だもの!」

 

 取り敢えず、3人を部屋の中に入れた。そういえばクラウンさんを部屋に入れたのは初めてだったな。

 なんとシュヴァルさんも呼ぶつもりだったそうなのだが、姉と妹と出掛ける約束をしてしまい来れないらしい。

 

 シュヴァルさんって三姉妹で真ん中だったんだね。もしかして、姉がヴィルシーナで妹がヴィブロスって名前だったりして。

 

「はい! これ誕生日プレゼントだよ!」

「うわぁ〜! ありがとう!」

 

 僕が最新のパソコンを受け取ってめちゃくちゃハイテンションになっていた所に、ダイヤ姉ちゃんからも凄いのを貰った。

 

「こ、これは……! 生配信の時に使えるマイクやヘッドホンなどの配信キッドだと……!? コレ、本当に貰って良いのか?」

「うん! なおくんが配信活動してみたいって言ってたってクラちゃんから聞いて、調べて買ったんだ。大切に使ってね♪」

 

 こんなに貰っちゃったら、配信活動とか頑張らなきゃいけないじゃん。

 早速、パソコンや機材の設定を終わらせてから改めてパーティーを再開させることにした。

 

「あ、そうだ! ダイヤ。直人くんに“アレ”見せるんでしょ?」

「アレってなんです?」

「ちょっと待っててね」

 

 そう言ってダイヤ姉ちゃんが一旦部屋を出て数分後にまた戻って来た。

 

「お待たせ〜!」

「そ、その服ってまさか!」

「そう! 私の勝負服だよ!」

 

 ついにダイヤ姉ちゃんの勝負服をお目にかかれるとは……凄くふつくしい。

 

 勝負服は黄緑色・萌え袖・長裾の豪華なドレスっぽい感じだ。多くのフリルや刺繍等の装飾品が1番の特徴と言っても良いのだろう。

 首には名前の通り、大粒のダイヤがあしらわれていて、めちゃくちゃ豪華な勝負服となっている。

 

「どお? 似合うかな?」

「うん、すっごく可愛いよ! 皐月賞、頑張れよ。勝負服で走るダイヤ姉ちゃんの姿、楽しみにしてるから!」

「ふふっ、ありがとう。キタちゃんだけじゃなくて、私の走りもしっかり見ててね?」

「ああ! 勿論だとも!」

 

 これからのダイヤ姉ちゃんの活躍も目が離せないな。そしていつか、早くても今年にでも姉ちゃんとのレースが実現して欲しいものだ。

 

「キタちゃん。勝負服でなおくんとツーショット撮っても良い?」

「良いよ。並んで並んで!」

 

 こうして勝負服ダイヤ姉ちゃんとのツーショット写真を姉ちゃんに撮ってもらった。

 何だか、勝負服を受け取った時の姉ちゃんと写真を撮った時を思い出すなぁ。

 

「良い感じじゃない。良かったわね、ダイヤ!」

「うん! サトノのため……なおくんのために……絶対に負けられない!」

「あたしだって、来週の大阪杯。絶対に勝ってみせる!」

「私だって負けないわよ!」

 

 勝利への執念を目の当たりにした僕、それぞれの目標に向かっている彼女たちを、これからも全力で応援しよう。

 

 

 

 ー キタ視点 ー

 

 

 

 なおくんの誕生日から一週間が経過して、3月から4月に移った。

 なおくんが府中に来てから1年経ったんだと思うと、本当に1年って長いようであっという間だね。

 

 大阪杯まで、なおくんに朝の自主トレーニングに付き合ってもらったり、商店街の人たちもあたしを応援してくれている。

 皆の期待に応えられるように……なおくんにとって1番のウマ娘になれるように、今年も精一杯頑張るぞい! 

 

「姉ちゃん。桜が満開で綺麗だよ! 春だなぁ〜!」

「うん! すっごく綺麗だね!」

 

 現在あたし達は、大阪杯が開催される阪神レース場にいる。

 綺麗な桜を見ながら、チームの皆とレース場へと向かう。

 

 途中でチームの皆と別れて、あたしは控室に移動して勝負服に着替える。

 この勝負服を着るのも約3ヶ月ぶりだ。今年初のレースということもあり、ちょっとだけ緊張して来た。

 

「すぅ〜……はぁ〜……よしっ!」

 

 深呼吸をし、控室を出てレース場へと急いで向かった。

 

『続いて現れたのは、キタサンブラック。5番人気です!』

『シニア級に移り、今年初のレースです。去年の菊花賞で見せた素晴らしい走りに期待ですね!』

 

 見ててね、なおくん。誕生日の日にプレゼントでパソコンをプレゼントしたけど、もうひとつのプレゼントとして、大阪杯のトロフィーも必ず持って帰るからね!

 

 全ウマ娘がゲートに収まり、あたしはスタートの構えを取る。

 

『各ウマ娘、ゲートイン完了。この2分間、瞬き出来ない第60回、大阪杯。スタートしました!』

 

 ゲートが開き、あたしは好スタートを切った3番を外から交わして一気に先頭に出て、後ろのウマ娘たちを引き連れる形で、良い位置に着けた気がする。

 

(よし! このまま逃げ続ければ行けるかも!)

 

『おおっと、外からアンビシャスが先行グループ! 外からアンビシャスが来た! 第1コーナーを回ってキタサンブラック1バ身半のリードです!』

 

 2番手に9番のアンビシャスさん、ちょっと掛かり気味かな? あたしは引き続き逃げて逃げて逃げ続け、後続のウマ娘を引き連れて前半の1000mを通過した。

 

『前半の1000メートルを1分1秒。これはスローペース! これはスローペースです! キタサンブラックのペースです! 2バ身のリードを取っています! このスローペースの中に続き、アンビシャスが折り合っていく!』

 

(第3コーナーに入った! 直線に入ったら、一気にするぞ!)

 

 後ろにはまだアンビシャスさんが追いかけて来ているのは分かっている。

 絶対に追い抜かせてなるものかと、あたしはスローペースで逃げ続ける。

 

(直線に入った! ここでっ……!)

 

 ターフが抉られるくらい力強く蹴り、直線でスパートを掛けた。

 

『4コーナー直線に入って来た! キタサンブラック、キタサンブラックがスローペースで逃げている! また会場がキタサン祭りに包まれるのか!? キタサンブラックが先頭だ! アンビシャスここから伸びてくるか!? 外からショウナンパンドラ!』

 

「うおぉぉぉぉ!!!」

 

 今年初のレース。絶対に勝つ……勝たなきゃ行けない理由があるから、負けるわけにはいかないんだ! あの子に……カッコいいお姉ちゃんを見せたいから!

 

『先頭はキタサン、キタサンブラックだ! 外から、アンビシャス! 外からショウナンパンドラ! キタサン……』

 

(はぁはぁ……やったかな?)

 

『いや! アンビシャス。ゴールイン!』

 

「へっ!?」

 

 きっと何かの聞き間違えだと思ったあたしは、恐る恐る確定版を見た。1番目にはアンビシャスさんの9番が表示されており、その下にはあたしの番号が表示されていた。

 

「ははっ、これは何かの夢かな?」

 

 更に追い討ちをかけるように、横に出たある文字を見て、あたしはつい大声で叫んでしまった。

 

 

 

「く、く……クビ差あぁぁぁぁあ!?」

 

 

 

 キタサンブラック。大阪杯のタイム1着のウマ娘と同じく1分59.3秒クビ差で2着……。

 

 





と、いう訳で……キタちゃん。盛大な負けフラグを立てて、惜しくも2着になってしまいました!
いいか? 「やったか?」って思ったら「やってない」のは盛大な負けフラグだという事を弟から学ぶんだな。

ガッツリと産経大阪杯に出走したアンビシャスやショウナンパンドラなどの名前を使いました。他の小説でもジャスタウェイとか使ってる人いるし良いよね。

次回はついにアニメでやったあの地獄の1ヶ月間の模様を書いていきます。お楽しみに!
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