目が覚めたらキタサンブラックの弟になった件   作:通りすがりの邪教徒

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今回は頑張って4話の一部を使いながら、自分なりのオリジナルで拡張しました。

多少無理な部分があるかもしれませんがご了承ください。

それではどうぞ!


第八十一話:元気と勇気をくれた皐月賞

 

 

 強化合宿が始まってから、12日が経過した。あれからあたしは、徐々にタイムを縮まっていって順調……とは言えなかった。

 

「うわあぁぁ〜!!」

「姉ちゃ〜ん! 大丈夫か〜!?」

「はぁ……はぁ……」

 

 4月12日〜15日の期間、タイムは縮むどころか下がらずに安定して4時間10分前半くらいをキープしていた。

 毎日同じようなことをして疲労が蓄積されて来たのだろうか? あたしはまた大きな壁にぶつかってしまったのかもしれない。

 

 なおくんやブルボンさん。トレーナーさんが全力でサポートをしてくれたが、それでも縮むことは無かった。

 

「16日、4時間12分42秒か……最近全然変わらないな……」

「うぅ〜……どうしてなの……?」

「取り敢えず、今日はもう終わりだ。ゆっくり休んで疲れ取ろ?」

「うん……」

 

 落ち込んでいるあたしの背中を優しく撫でてくれるなおくん。今はスパルタで来てくれるけど、こう言う優しさが好き。

 

 取り敢えず、夕食と温泉を済ませたあたしは、なおくんと一緒にテント内でゆっくり休息を取っていた。

 

「はぁ……」

「姉ちゃん。毎日あのトレーニングをやるのは流石にタフでもしんどいだろ? 1、2日くらい休んだ方がいいんじゃ?」

「でも……天皇賞まであと15日しか無いんだよ? 休んでなんてられないよ。それに……泣きも喚きもしないって決めたし」

 

 ごめんね、なおくん。今のあたしに休んでいる暇はないんだ。君に勝利を届けるために、覚悟を決めてここに来たんだから。

 

「……姉ちゃんがそう言うなら止めはしない。でも、無理はしないでね?」

「分かってるよ。でも……本当に3時間以内に出来るのかなぁ?」

 

 ここが1番の悩みどころだ。ブルボンさんは理論上達成できるなんて言ってたけど、記録表を見返すと正直言って不安だ。

 

「あっ……」

 

 あたしは枕元にあるブローチを見て、ある事を思い出した。

 

「そのブローチってダイヤ姉ちゃんのか?」

「うん。これを私だと思ってって預かったんだ」

「いよいよ明日かぁ……。『皐月賞』現地で見たかったな〜」

 

 そう言いながら背伸びをしてノートに向かうなおくん。

 そう言えば、明日だったね。中山レース場でダイヤちゃんの皐月賞がある日だ。ダイヤちゃん勝てると良いなぁ……。

 

「絶対に勝つって言ってたんでしょ? ダイヤ姉ちゃんなら大丈夫だよ!」

「そう……だよね……」

「よし、レポート完了。早く寝るぞ?」

「そうだね。おやすみ……」

 

 なおくんが寝袋に入り、あたしも明日に備えて眠ることにした。

 

 そして目が覚めて、近くに置いてあったスマホを見た。まだ朝4時半で、外はかすかに明るかった。

 

「すぅ……すぅ……」

 

 なおくんはまだ隣でぐっすり寝ている。彼の頭を撫でながら、あたしはここである決心をした。

 

 あたしは寝巻きからジャージに着替え、テント内に書き置きを残したあたしは、なおくんを起こさないようにそっと背中に背負い、走って山を降りた。

 

 走って走って、ある目的地に向かって、兎に角ひたすらに走った。

 すると、寝ていたなおくんが走っている時の揺れで起きてしまった。

 

「う、う〜ん……んあ?」

「あっ、おはよう。なおくん!」

「ね、姉ちゃん! ここは!? いったい何処に向かって……?」

 

 周囲を見渡して、困惑するなおくん。

 

「元気をもらいに行こうと思って。それになおくん、現地でレース見たいって言ってたでしょ?」

「もしかして、ここから中山レース場まで行く気か!?」

 

 驚くのも無理はない。あたし達が使っている強化合宿の場所から中山レース場までの道のりは片道190キロもある。

 今はその内の10キロくらいを走って、中山レース場まであと180kmと表記された看板が見えた。

 

「なおくんはお姉ちゃんの背中にしっかり捕まってて! お姉ちゃんは大丈夫だから!」

「たくっ、しょうがないな。ここまで来たら最後まで頼んだぞ! 行け、キタサンブラック号!」

「任せて! てやあぁぁぁぁ〜〜!!」

 

 こうしてあたしは、なおくんを背負ったま、中山レース場に向かって全力で走った。

 

 ダイヤちゃん。頑張ってね!

 

 

 

 ー ダイヤ視点 ー

 

 

 

「う、う〜ん……! おはよう。キタちゃ……キタちゃん?」

 

 大きく背伸びをしてルームメイトのキタちゃんに朝の挨拶をしましたが、返事がありません。隣を見ると、何故かキタちゃんの寝ているベッドが無くなっていました。

 

 いったい何事なの? と混乱しましたが、なおくんからメッセージが来ていて、ブルボンさんが合宿先までベッドごと運んだそうです。どうやったらこの部屋からベッドごと運べるの? 突っ込みどころが多すぎて、ダイヤお姉ちゃん処理しきれないよ〜。

 

 そうか、キタちゃんが居ないってことは、なおくんも居ないんだった。

 

「うぅ……なおく〜ん! ……会いたいよ〜!」

 

 私は枕に顔を埋めて、ベッドの上足をバタバタさせた。こんな有様、名家のお嬢様が到底してはいけないことだと分かってはいる。

 でも会いたい気持ちを抑えられない私は、クローゼットからなおくんの部屋からこっそり持って来た服の匂いを嗅いだ。

 

「なおくんの匂い……癒されるぅ〜」

 

 これだけでも私は今日を頑張れる。よし、気を取り直して朝ごはんを食べに行きましょう。

 そして学園に行く支度をして、完璧です。今の私は、なおくん成分のおかげでコンディションは好調です。

 

 好調の前に「絶」が入らないのは、なおくんの顔が見れないから。はぁ……彼を早くこの手で抱きしめたい。私のおっぱいに彼の顔を埋めたい。早くなおくんのお嫁さんになりたい。

 

「ダイヤ。おはよう! って、朝からため息? 幸せが逃げちゃうわよ〜」

「あ、クラちゃん。おはよう」

「あら? いつもキタサンと直人くんと一緒なのに、今日は違うのね……ってダイヤ!?」

「なおくんに会いたい、なおくんに会いたい、なおくんに会いたい……」

 

  彼の名を聞くだけで禁断症状出る。だって会いたくなっちゃうから。

 

「あ〜……ごめん。そう言えばキタサンと強化合宿に行ったんだっけ? それで1ヶ月バンド練習休むって言ってたな〜……それよりも『皐月賞』近いんだし、気持ち入れ替えましょ?」

 

 同族の不器用なフォローが胸に沁みる。クラちゃん、面倒くさい私でごめんね。

 

「そんなの分かってるよ……。はぁ、なおくんに会いたい。声だけでもいいから聞きたいよ……」

「声ね……あ、そうだ。直人くんから昨日、こんなの渡されたんだ〜!」

 

 クラちゃんがスクールバッグからUSBメモリを取り出した。

 

「こ、これは?」

「直人くんが歌ってみた動画を投稿しようってこの前言ってて、そのデータが入ってるの。それと、伝言も預かってるわ」

 

 クラちゃんからの聞いたなおくんの伝言「ダイヤ姉ちゃん、強化合宿で僕に会えなくて元気無くしそうだから、歌ってみたの曲聴いて元気出してほしい」とのことでした。

 

「な、なおくん……!」

「これを直人くんだと思って、頑張りましょ?」

「そう……だよね。ありがとう、クラちゃん!」

 

 私はこの日から『皐月賞』当日前まで、クラちゃんから預かったなおくんの歌をずっと聴いた。

 朝起きる時、授業を受ける前、トレーニングに臨む時、なおくんの歌が私に勇気と元気をくれた。

 たしかこの曲ってY○AS○BIさんの「夜に駆ける」だっけ? なおくんこのアーティストさん好きだよね。なおくんは昔から他にも、好きな曲を私によく聴かせたりしてくれて、それに私もハマったりしたなぁ。

 

「なおくん。本当に上手になったね」

 

 そしてチーム部屋でもなおくんの綺麗な歌声をイヤホンを通して聴いていると、トレーナーさんがやって来た。

 

「ダイヤモンドさん。今日も頑張りますよ!」

「はい! トレーナーさん!」

 

 レース場に向かって、クラちゃんと併走をする。なおくんの歌のお陰で、最高のタイムを更新出来た。

 トレーナーさんも「これなら皐月賞勝利も間違いありません!」と太鼓判を押してくれた。

 

「いよいよ明日ね。サトノと直人くんのために頑張りなさい!」

「うん! 画面の前でも応援してくれる大切な人のために……私は絶対に負けない!」

 

 

 ー 皐月賞 ー

 

 

 決意を固め、ついにやって来た皐月賞翌日。私にとっての初めてのGⅠレースだ。今朝はキタちゃんとなおくんが結婚をする悪夢を見て気分は下がると思いきやむしろやる気に満ち溢れています。彼と結婚するのはこの私だよ? 当然だよね。

 他の皆からは険しい表情に見えているかもしれないが、内心では凄く緊張して手が震えています。

 

 中山レース場の控え室で、私は勝負服に袖を通す。

 

 なおくんがこの衣装の私を見て、可愛いと言ってくれた時は凄く嬉しくて、ついムラム……興奮しかけちゃいました。好きな人に言われたら当然の反応だと個人的に思っています。欲を言えば、なおくんに控え室に来てもらって「ダイヤ姉ちゃん、頑張ってね!」って面と向かって言って欲しいかったな。

 

「よしっ……! 行こう!」

 

 私は控え室から薄暗い通路を通って、ターフへと向かった。

 今日の天気は前回の3戦目同様晴れで、バ場も良好。外は暖かくて春の香りがしますね。桜も満開でとっても綺麗です。

 

『続いて登場したのは、額に輝くダイヤモンドの原石。1番人気、6枠11番。サトノダイヤモンドです! これまでの3戦で、圧倒的な強い走りを見せてくれました。今回の皐月賞でかなりの注目が集まっています!』

 

 GⅠレースという大きなレースこともあって、他のグレードのレースよりも会場は大勢のファン達の大歓声に包まれていた。

 それにしても1番人気とは嬉しいですね。でもその分、期待という名の重圧が私の背中に乗っかっているのも事実ですが……。

 

 全18人のウマ娘が出揃い、皐月賞のファンファーレがレース場に響き渡る。

 私は落ち着いて、すんなりとゲートインを完了させたが、全てのウマ娘のゲートインには少々時間がかかってしまった。

 

(狭いのが苦手なんだね。まぁ、分からなくもないけど……)

 

『ゲートイン完了です。このレースの結末は、我々を泣かせてしまうのでしょうか? 強気者達の魂の大一番! GⅠ『皐月賞』です! 今、スタートしました!』

 

(先ずは落ち着いて……だいたい中団の位置から、様子見かな? 私の最大の武器を使うのはまだ先だ!)

 

『1回目の正面スタートラインを通過。そして1、2コーナー中間点に各ウマ娘が向かっています! 予想通り、リスペクトアースの逃げということになりました! そしてリオンディーズが単独の2番手です! アドマイヤモラールもいます!』

 

(私の位置はちょうど真ん中だ。仕掛けるのはまだ。中山の直線は短いから、そこで一気に決めてみせる!)

 

『前半1000mの通過タイムは58.4秒。リオンディーズが先頭! そしてサトノダイヤモンドは中断! マカヒキは今押し上げて、後方4人目から5人目! リオンディーズ押し切るのか!? マウントロブソン、そしてサトノダイヤモンドがやって来た! マカヒキもやって来る! 310mの直線! 先頭はリオンディーズ。外からサトノダイヤモンド!』

 

(ここから……! あっ……!?)

 

『外からまとめて、ディーマジェスティーだ! 連れて、マカヒキ上がって来た! ディーマジェスティゴールイン! 2着、マカヒキ。3着、サトノダイヤモンド!』

 

「はぁ……はぁ……ぐっ……!」

 

 ハイペースで先行して苦しくなったのか、分からないけど……見事に負けてしまった。

 絶対に勝ってみせるって言ったのに……なおくんやキタちゃんにカッコ悪いところ見せちゃったかな……。

 

 この後、ウイニングライブの準備をしに控室へと戻ろうとした時に、私は多くの記者さん達に捕まって何故かインタビューを受けることになりました。

 

 

 ー 直人視点 ー

 

 

「ま、負けた……!?」

「ダイヤちゃん……」

 

 姉ちゃんのおんぶで運んでもらい、中山レース場になんとか辿り着いた僕らは、ダイヤ姉ちゃんのレースを途中からではあるが、観戦することが出来た。

 到着した頃にはレースも終盤くらいに差し掛かっていた。

 

 そして結果は3着。クラウンさんから、ダイヤ姉ちゃんは万全の仕上がりだって聞いて安心していた。

 何やらレース中にアクシデントのようなものがあったらしい。いったい何が起こったのだろうか? ここで、姉ちゃんの隣でレースを見ていた僕はもの凄い尿意に襲われた。

 

「ね、姉ちゃん。トイレ行ってくるから、何かあったら連絡してくれないか?」

「分かった。気を付けてね!」

 

 あ〜! ヤバい、漏れる漏れる〜! 中山レース場のトイレは……あった! 

 

「ふぅ〜……間に合った。 ん? 何だか人だかりが……あっ、ダイヤ姉ちゃん!?」

 

 トイレを済ませた僕は、観客席に戻って姉ちゃんを探していると、カメラを構えた人たちがダイヤ姉ちゃんの前に複数人いた。あれは見た感じ記者の人たちだな。

 僕は、なるべくダイヤ姉ちゃんにバレないように、人混みに紛れ、近くで話を盗み聞くことにした。

 

 記者の前に立っているダイヤ姉ちゃんは凛とした表情で、真剣な表情で前を向いていた。

 

「審議の結果について、どうお思いでしょうか?」

「審議は納得しています。実力が十分にあれば覆せたはずです。私の力が……勝利への気持ちが足りていませんでした」

「観客席から“サトノのジンクスが”という声もありましたが」

 

 また出たよ、サトノのジンクス。まるで呪いのような言葉だな。聞いているだけで胸が締め付けられる。

 この呪縛からダイヤ姉ちゃんを……そして同じ一族のウマ娘の呪いを出来るなら僕が手伝ってあげたいが。

 2度とその口から、サトノのジンクスがなんて言わせなくしてやるって世間に言ってやりたいと思った。

 

「日本ダービーを見てください。私の名前はサトノダイヤモンド。ダイヤモンドは最上の輝きを放つ至宝。どのような困難にも砕けることはありません」

 

 こ、こんなカッコいいダイヤ姉ちゃん初めて見たかも。僕はこの言葉に彼女の奥底に眠る心の強さを感じた。

 

「こんなの応援したくなっちまうよ。めっちゃ痺れたわ……あれ? なんか涙出て来た……」

 

 あの様子なら、日本ダービーも大丈夫そうだな。次こそ絶対に、勝てよ。

 

「あっ、そうだ。 おーい! 姉ちゃーん!」

 

 すっかり姉ちゃんの存在を忘れていた僕は、探し回って何とか合流することが出来た。こんな時にスマホも持たずに来るとはな。せめて連絡手段の物は所持して欲しかった。

 

「やっと見つけた。なおくん、戻るよ? さ、お姉ちゃんの背中に乗って! 全力ダッシュで行くよ!」

 

 こうして僕は、また姉ちゃんの背中におんぶされながら、長い片道を走ることとなった。

 

 本当なら電車とか使えば良いって思う人もいるが、残念ながら待ち合わせが無く、一文無しの状態で来てしまったのだ。

 なので、生きも帰りも仕方なく走りで行くことになってしまう。

 

「やっぱりウマ娘って速いなぁ〜!」

「今度からお姉ちゃんを乗り物にしてどっか行く?」

「それだけは勘弁な。なんて言うか恥ずかしいし」

「え〜!? なんで〜!」

「ははっ、姉ちゃん。あのさ!」

「ん? 何?」

「勝つぞ、『天皇賞・春』。僕と一緒に、春の盾を掴み取ろう!」

「うん! お姉ちゃんも、ダイヤちゃんに元気貰ったから、戻ったらスパルタ指導、よろしくね!」

「あぁ、分かった!」

 

 

 それにしても、お腹すいたなぁ〜……。帰ったら先ずはご飯だな。

 

 





サトノダイヤモンドの皐月賞を最初から描きました。アニメだと序盤は切られてるから頑張って実際のレースを見ながら書かせていただきました。

アニメでのアクシデントって何があったのでしょう? 史実のレースで詳しい方いたらコメントで教えて欲しいですね。調べてもちっとも出てこなくて。

誤字あったら報告お願いしまーす!

次回はいよいよ、キタちゃんの天皇賞・春をお届けしたいと思います。このレースも実際のを見ながら書かなきゃ! 忙しくなるぞ〜!
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