【完結】ユーディー(偽)のアトリエ──アーウィンタールの錬金術士(ハーメルン移植版) 作:ブドウ冷やしんす
間違って編集完了する前に予約投稿が働いてしまいました
( ;∀;)
一度読んだ人はゴメンナサイ…
後日!
「酒が飲めんゴンドから飲み会の呼びかけとは、いよいよドワーフ国は終わりかの」
「明日あたりアゼルリシア山脈が噴火パレードかも知れん」
なんて爆笑しながらルーン工匠(だった者も含め)が下戸ドワーフさん(ゴンドさんというらしい)の家に集まった。
人間の錬金術士が作った酒の試飲会も
最初こそ「なんじゃワインか」「味や香りは良いが酒精が弱くてのぅ」なんて文句を言いながら飲み始めたけど
「な、なんじゃあコレは!?」
「美味いし、思ったより酒精もあるぞぃ!」
「……(こいつで火酒を作ったら……)ブツブツ……」
どうよドワーフ! あたし用に取っておいた祝福のワインの味は!!(泣)
……注文が多すぎたしブドウの時期が終わっちゃったから、もう来年まで作れないのよ……
こうしてドワーフ達を沼らせ、ゴンドさんが『(もっと飲みたきゃ)儂の話を聞けぇ!!』と熱弁を振るうと、酔っぱらい連中は「ワシはお前さんが何か見つけてくれると信じとったぞ!」「やってやる! やってやるぞぃ!」などと調子いい事を言い、最終的には「ゴンドよ〜ゴンドよ~希望の光〜」とかダミ声で合唱し始め、言い出しっぺのあたしさえ「大丈夫かなコレ」と思う状況になって、飲み会作戦は成功した(強弁)
酒の力は偉大だ(酒の勢いってコワイ)
案の定「輸入できんのか?」と来たけど、レイナースさんが
「……ドワーフ国への外交カードになるでしょうし『彼らがワインの噂を聞き付けていた』事にして報告しておきますわ」
と耳打ちしてくれたので、両国の交渉次第と言っておいた。
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「おかげで上手く行きそうじゃわい。何と礼を言ったら良いか」
宴会の翌日、家を訪ねるとゴンドさんは感謝しきりである。
良い事した後は気分がいいね!
……という事で、今度はこっちの頼みを聞いてもらいましょうかねぇ(悪い顔)
「それなら、ちょっと聞いてほしい事があるんですが」
「ほう! 儂で力になれる事なら良いんじゃが」
「あたし達、実は鉱物系とかの素材集めに来たんですが、見せてもらえるのが帝国でも手に入る物ばかりで……できれば珍しい鉱石とかあればなぁって。あと、ついでにドラゴンの目撃情報とか知ってたら教えてほしいです」
「ふむ、なるほどのぅ。ドラゴンの目撃情報、となると西の都市フェオ・テイワズが
へぇ……ドラゴンが暴れて廃都に……まだいるかなぁ。
「あとは鉱物か……確かに鉱物資源は国営の取引じゃ。国外に出すのは『国内で使わない分』という事になるからな。例えば熱鉱石なんかも出さんじゃろ。そもそも帝国では需要ないじゃろうし」
「熱鉱石?」
「おぅ、ミスリル以上の金属で叩くと熱を発する鉱石じゃ。煙を出すわけに行かない地下生活で熱源として重宝しとる。ウチにもあるから見せてやろう」
そう言ってゴンドさんは奥に一度引っ込むと、手に石を持って戻って来た。
「これじゃ。見た事ないじゃろ」
「へぇ……見た目は何の変哲もない石ですね。鉄とかでは反応しないんです?」
「うむ。何も起こらんし、無理に叩き続けても、ただ砕けてしまうだけじゃ。粉々になってしまえば改めてミスリルで叩くにも難しい無価値な石クズになるだけよ」
「なるほどー」
面白いし、熱源……うーん、もしかして……
「少し頂いてもいいですか?」
「良いとも! お前さん達では売ってもらえんじゃろうし、儂はまた買えば良いだけじゃ。あと磁鉄鉱も持って行くか? 低品質の物が混じっておって選別が必要で、喜ばれんので輸出してないはずじゃ」
あたし達は、もらった熱鉱石と磁鉄鉱を持って宿に帰った。
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sideイビルアイ
「ユーディー、その石どうするの? 何かに使えそう?」
「うん……まだ分かんないけど……熱鉱石は面白いけど、磁鉄鉱かぁ……やっぱりグラビ石はないのかなぁ……」
宿に戻るとユーディットとアルシェが相談し始めた。
聞き慣れない名称が出たので、気になって
「グラビ石とは?」
「ふわふわ浮く石です」
「……ふ、ふわふわ? 石が?」
「はい。結構重要な素材だけど見つからなくて……無いなら無いで、ふわふわ浮かせる付与魔法とか、誰か使えないかなぁ、なんて」
「……浮く……しかし『付与』か……少し待て」
あれを『付与魔法』として構成を組み直せば……
羊皮紙を取り出し、しばらくアレコレ書き込みながら「これがこうなってるから……ここをああして……」と長考し、ついに
「よし……ユーディット、磁鉄鉱を持っておけ」
「は、はい!」
両手の上に持って差し出してきたので、
「違う。下じゃなくて上から持て」
「え? こう? つかみ上げる感じ?」
「そうだ。気を付けろ? 魔法をかけた瞬間、上に吹っ飛ぶぞ」
「へ?」
「
「ぅわわわわ!?」
両手を上に持って行かれそうになり、ユーディットは慌てて抑え込む。
「す、すごいよイビルアイさん! 即興で作ったの!?」
「ふふん! オリジナル魔法を多数生み出した私なら造作もない事だ!」
元々『付与』以外で似たような効果の魔法を持ってたからな。
もう二つほど磁鉄鉱があったので魔法をかけてやると、ユーディットは石をポシェットに押し込み
「これで空飛ぶほうきとアロマボトルを作れるよ! ありがとうイビルアイさん!」
と言って抱き着いてきた。
はっはっはっ。何をする、照れ臭いではないか。
……ん?
「……ヒエッ」
思わず変な声が出た。
アルシェだ。
向けるだけで人を殺せそうな視線を私に向けていた。
待て違うアルシェ私は何もしてないだろ!!
他意は無い!
メモならやるから!
は、離せユーディット!!
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感謝のあまりイビルアイさんに抱き着いたけど「う、後ろ! 後ろ!!」とバタバタ暴れるので離した。
後ろ? フォーサイトのみんなしかいないのに。
振り返っても、ほら、いつも通りのアルシェと目が合う。
壁に虫かヤモリでもいたのかなぁ。
意外と苦手だったり? ギャップ萌えぇ!
さて、残るは熱鉱石ね……
「自分で熱を発するって事は、もしかしたら……」
言いつつ、あたしはポシェットから機材を取り出す。
人間用の宿で、他にお客さんいないから、多少の音は良いよね?
「……ユーディー、まさか全部持って来たの?」
「全部じゃないよ。ミルクパンとか乳鉢とかは置いて来た。……挑戦意欲あふれる双子ちゃんとベビーシッターさんしかいないのにアタノールだの危険な機材を残してくのも心配だったし」
帰ったら大惨事に……なんてイヤだもんね。
それにしても、都合のつくベビーシッターさんがタイミングよく見つかるなんてラッキーだったわね。
まるで見計らったみたいに。ついてるわー。
(※帝国の職員である。現在、双子を相手に悲鳴を上げている。双子の身に何かあれば物理的に首が飛ぶ)
それはさておき、とんかちで熱鉱石を粉々にして……乳鉢も必要だったかな。できなくはないけど、とんかちで粉にするのは根気が……これを錬金術銀に……これ『地底湖のたまり』の代用品になるのよね。質は多少落ちるけど売られてるから便利便利……今度は遠心分離機に……あとは蒸留器にかけて……あ、念のため窓開けとかなきゃ危ない危ない。
「……で、できたー!! ちっちゃいけどフロジストンだ!!」
フラスコの中にコロコロと、いくつかの小さなフロジストンが形成された。
ちょっと収率は悪いから割高だけど、その分、純粋で高品質なフロジストンね!
「これでやっとフラムを作れる!……そうだ、威力テストにドラゴン狩りよ!!」
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さすがに空飛ぶほうきまで作ってたら滞在期間が伸びちゃうから、フラムだけサクッと作って出発。
現在は廃都になった西の街、フェオ・テイワズを目指して、街で購入した『寒さ防止のマント』をみんなで着込んで登山の真最中。
……ユグドラシル製『冷気無効化ポーション』は今や貴重品だし、こっちで作れる『ホットドリンク(笑)』は研究中。
山越えなんて言うと大変そうに聞こえるけど別に頂上を目指すわけじゃないし、元々ドワーフさん達が緊急避難経路として指定していたルートらしく比較的楽だし(ドワーフ基準だから小さいとはいえ)野営できる洞窟も点在、モンスターの縄張りも少ないルート。
整備されていないとはいえ、歩けないほどでもない。
山の上は環境が過酷だから平地みたいにはゴブリンとかの雑魚モンスターが多くないから、そもそも遭遇率は低い。
その代わりペリュトンとかギガント・イーグルみたいにメンドクサイ飛行タイプがいるから……
「その時はトラウアタロットで
「待て待て待て! せっかく私がいるんだから追い払ってやる! あまり下手にアイテムを使うな!」
イビルアイさんが言うには、アゼルリシア山脈の西側、つまり王国側なんだから『妙なモンスターの移動』が起こると困るらしい。
そういうわけで、いざとなったらイビルアイさんに手伝ってもらおうと思いつつ進んで2日目。
中間地点は過ぎ、目的地まであと少し。
結局『避難経路』というだけあって、モンスターの襲撃もなし。
そろそろ
「……ん?……ちょ、ストップ!!」
イミーナさん何かを見つける。
「……人……じゃないわよね、この距離だし。でっか。距離感狂うわ」
……大きい、人?
「恐らく
イビルアイさんが教えてくれた。
「巨人ですか」
「あぁ。接触して面白い事もあるまい。やり過ごすぞ」
とりあえず……あたしは巨人さんに手を振りながら走り出した。
「やっほー!!」
「……ってオイ待てぇぇぇ!? 話を聞いてたか!?」
「巨人って事は会話できるんですよね? もしかしたらドラゴンについて何か知ってるかも知れないじゃないですか。
という事で、こーんにーちはー!!」
「こ、こンのド
イビルアイさんの警告で軽く警戒態勢に入るみんなをよそに戦斧を持った巨人さんに近付く。
向こうも気付いたらしく、
「……む、なんじゃお前は。ドワーフか?」
体の大きさに合った野太い声で、こっちを見下ろしながら言った。
「ドーモ。巨人さん。人間の錬金術士ユーディットです」
おっと、ついアイサツをしてしまった。違う。
でも、どうやら失敗ではなかったらしく
「ほう、人間とは珍しい。名乗られた以上、名乗るとしよう。
「ウロコがほしくてドラゴンを探してるんです。この先のドワーフの都市で暴れて廃都になったと聞きました。何か知りませんか?」
見上げて叫び気味に
するとボグダンさん顔をしかめ、
「あのような不浄の地へ行く事はない。ドラゴンが暴れたのも今は昔。今さら行ったとて意味はなかろう」
「不浄?」
「多くのドワーフが死んだのだろう。アンデッドが
「ぇえ!? ドラゴンの巣じゃなくてアンデッドの街になってるの!?……そんなぁ、ここまで来たのに……あのぅ、ちなみにウロコ持ってたりとか」
「……戦士としての誇りじゃ。手放さぬぞ」
「回復薬と交換とか」
後ろで警戒してるレイナースさんを見る。
明後日の方角に視線をそらした。聞いていないようだ。
アルシェはあきれている。
イビルアイさんは肩をすくめた。
「……回復薬、うーむ………………一枚だけだぞ?」
「ありがとうございます!!」
「んで、これからどうすんだ? 目的のもんは手に入ったわけだが」
「うーん……」
ヘッケランさんが言う通り、アゼルリシア山脈での目的は果たした。
けど、ヘッケランさんは少しソワソワしてる。
いや、あたしも少し分かる。
せっかく『見た事も聞いた事もない遠くの場所』まで来たのだから、死の都だろうと見てみたい。
好奇心は猫を殺すというけど冒険者の
そんな事を、遠ざかるボグダンさんの背を見送りながら思った。
「……行っちゃう? せっかくだし」
あたしの言葉にニヤリと笑うヘッケランさん。
『だと思った』と苦笑いするイミーナさん。
イビルアイさんは『やれやれ』と言いたげ。
早く呪いを解きたいであろうレイナースさんも、こちらの都合に合わせてくれるらしく何も言わない。
肩すくめてはいるけど。
「であればユーディットさん、写本はお持ちではないでしょうか」
と、ロバーさん。
たぶん『悲劇に見舞われた死者たちに眠りを』と良心が
写本と聞いてイビルアイさんがピクっとなったのは何で?
「うーん……そりゃあ、そうしたいとこだけど、まさかアンデッド戦になるとは思ってなかったから……一冊作るだけでも大変だし」
「……そうですか……」
本当に『見るだけ』になりそうだけど、仕方ない。
あたし達はフェオ・テイワズを目指し進んだ。
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3度目の野営の後、早朝に出発したあたし達はフェオ・テイワズに到着。
洞窟のような入口から入り、補強された坑道を進むと、奥から溢れて来たのかドワーフサイズの
それらをみんなで粉砕したりエンゲルスピリットでペンデロークにしながら奥へ。
「……光が見える?」
廃都なのに?
坑道から都市空間に出る。
そこには……
人々の生活が無くなって久しいからか腐敗臭こそないものの、死の気配を含む
その一方、ドラゴンが暴れた時に崩落したと思しき壁面の穴から太陽の光が差し込み、漂うチリに当たってキラキラと『光のカーテン』のように死者たちの都を照らしていた。
「……ぅわあ……これは……」
「……きれい、だけど物悲しい」
あたしとアルシェの感想は一致したらしい。
「……感傷に
冷淡なようで、どこか悲しげなイビルアイさんが言う通り、実際のフェオ・テイワズを確認するという目的も済んだ。
冒険の終わりを飾る、というには切ない景色ではあったけど、貴重な経験ではあったし、ドワーフさん達も現状は知りたいだろう。
あたしが「帰ろう」と言おうとした、その時……轟音と共に街の奥で土煙が上がった。
「何!?」
土煙の奥から吹き付けられた冷気が廃墟もろとも
「ふははは! どうだ死に損ない共!! やはり一暴れするのは気分が良いな!!」
「……ん? 何だ、まだ生きてるドワーフもいたのか」
まだかなり距離があるはずなのに、さすがはドラゴンの知覚能力という事ね。あたし達に気付いた。
「お前らも“仲間入り”させてやろう!!」
そう言って飛び上がると、
「散開しろ!」
イビルアイさんの警告と同時に回避した『あたし達がいた場所』に飛び込んで来た。
「チッ、外したか」
「
イビルアイさんの魔法でドラゴンの足元が砂になる。
「何!?」
ドラゴンはバランスを崩した。
「まだ青みがあるとはいえ本物の
「イビルアイさん、フラム使うから足止めを!」
言いつつ導火線に着火。
……ふふふ、
こんな事もあろうかと!
こんな事もあろうかと!!
サラマンダーの革(ただしユグドラシル産。こっちでは貴重で高い)を使った『発火布の手袋』よ!
指パッチン!! 厨ニぃ!!
そしてイビルアイさんは、
「ふん、ならば……
放たれた魔法は砂を越えて踏み出そうとした前脚に当たり石に変える。
「な、何だと!?」
そのチャンスを見逃さず、
「おぉーりゃー!!!」
フラムを全力投球!
……あれ、思ったより飛ぶなぁ。
とか思ってる間に着弾!
………………閃光、爆轟!!
「ぃよっし! やったわ!!」
区画まるごと吹き飛ぶ威力だったわ。大成功ね。
「お、おま……いや、もう何も言うまい」
イビルアイさん何を言おうとしたんだろう……みんな走り出しそうなポーズで固まってるし。
まぁいいや。
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sideイビルアイ
「さぁ、ドラゴン素材♪ ドラゴン素材♪」
ルンルン気分で爆心地へスキップして行くユーディット。
「あぁこらこら。流石に死んだとは思うが油断は」
……だが私の警告は、いささか遅すぎた。
「かふっ」
爆煙の中から何かがユーディットを
「ユーディー!?」
アルシェが駆け寄る。
「……アレで、まだ生きてただと……」
私から見ても『ドラゴンを殺し切るだけの威力があった』と思っていたが、ユーディットのデタラメなアイテムを見てきて過信を抱いていたのかも知れん。
それでも、煙の中から這い出て来たヤツの姿は間違いなく
顔から腹にかけて、前脚も含めて爆発でボロボロだ。
あれでは目も耳も潰れているだろう。
口から盛大に
恐らく
手負いのドラゴンだ、さぞや怒り狂って襲ってくる……そんな風に思ってたのだが、ヤツから
「……恐ろしい。何だ、その力は。おぞましい、おぞましい……何が何でも殺さねばならん」
恐怖だった。
強すぎる恐怖で『逃走』という選択肢を忘れているのだ。
ここまで来ると、もはや自身の死が近いとかは関係ない。
並みのチームでは止められないだろう。
「ここは私が「どいて」
完全に目が
いくら『バカ魔力』とはいえ、
「一体、何を……」
その後の『現象』を、私は理解するのを放棄した。
……私の耳が変になったのか?
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sideアルシェ
「ユーディー!?」
頭の中が真っ白になりながら走り寄る。
抱き起こすと、
「ケホケホ、いったたた。あービックリした」
良かった……本当に……
ユーディーは自分でポーションを飲んで回復してる。
「そのまま休んでてユーディー……すぐ終わらせてくるから」
ドラゴンが「何が何でも殺さねばならん」と言ったのが聞こえた。
……冗談じゃない。そっくりそのまま言葉を返す。
絶対に殺す。
イビルアイさんが何か言いかけていたけど、
「どいて」
敵は機動力を殺されており、必要な距離は充分。
小さな、指で摘める程度の鉄球を取り出し『欠陥魔法』を込める。
「
封印しないと、すぐに『壊れて』しまうから。
……やっぱり魔力消費が多い。ふらつきそうになるのを
「
ドラゴンに向かって飛んで行く鉄球に加速魔法をかけ、すぐさま封印していた『欠陥魔法』を発動。
「
自身が耐えきれない振動を付与された鉄球は白熱、融解する。
加速され、光の線となってドラゴンの胸部に着弾、フラムで鱗が失われている事もあり、水が蒸発するような音を立てて小さな穴を開けた。
しばらく、その穴を不思議そうに見た後、ドラゴンは崩れ落ちる。
それを見て、気が
「アルシェ!」
ユーディーが駆け寄り、抱き起こしてくれた。
……えへへ、役得。
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「アルシェ!」
倒れた彼女の元に駆け付けて抱き起こす。
「大丈夫?」
たぶん魔力切れだろうとは思うけど、つい確認した。
「やくt……ううん、大丈夫。ただの魔力切れ」
「良かったぁ……すごい攻撃だったよ! この前のアレ、活用法見つけたんだね」
言いつつ琥珀湯を飲ませる。
少し前あたしが『振動するナイフ』なんて冗談半分に話した事があって
(素材を切ってる時にナイフの斬れ味が悪くなっちゃったから……ユグドラシルのアイテムやオブジェだった『アトリエの細工道具』なら別として、普通のナイフじゃ
新しい付与魔法を作ってみたというアルシェにアトリエで見せてもらった……んだけど、あの時はマジで危なかった。
『あ、これヤバそう』と思って、とっさに試作してた『うけた衝撃を吸収』のレーンクラフトを被せて正解だったわ。融けた鉄が飛び散るとか大惨事よ。
レーンクラフトも一発で使用不能になる威力。
まぁ衝撃は吸収できても熱は、ねぇ……
大事にはならなかったし、むしろボロ泣きして謝るアルシェを
それはそうと、イビルアイさんが
「……何が何だか分からんし、もうツッコミ入れる気すらないが、終わったならイチャついてないで動け。一度蹴散らされたとはいえ、アンデッド共が今の騒ぎで寄って来てるぞ」
「え、待って! まだ素材回収してない!!」
「あーもー! 抑えといてやるから、さっさとしろ!!」
結局、竜の角は1本、爪と牙が2本ずつ、ウロコ付きの革をマント1枚くらいのサイズをはがして終わってしまった。
廃都から地上へ離脱して嘆く。
「お肉とか骨まだ取ってないのにー……ドラゴンステーキ食べたかった……」
「……マジで食う気だったのか……(ぷれいやーの食文化とは……)」
イビルアイさんには呆れられてるけど、ユグドラシルで噂に聞く食べ物だし気になるのは当然でしょ。
「ステーキ……」
「まだ言うか……ん? 止まれ。何か来る」
イビルアイさんの言葉に、イミーナさんが地面の振動を確かめると
「……これ、ヤバくない? さっきのよりは小さそうだけど、ドラゴンっぽい」
「……ドラゴンは基本、群れを作ったりはせん。昨日の巨人も『最近は見ない』と言ってたのだが……まぁいい。さほど消耗していないからな、いざとなれば私が前に出るぞ」
少しずつ大きくなる振動。
岩陰から現れた、それは……
「ドラ!……ゴン?」
太かった。いや、丸っこいと言うべき?
みんなは警戒してるけど、丸々と太って……
……脂が乗ってそうだなぁ。
「……ステーキ」
「ヒエッ」
ドラゴンのクセに弱っちそうだ。
これなら簡単に食
「お、俺! ヘジンマールっていいます! へ、へへへ……お会いできて光栄です!」
なんだろう、急にゴマすり始めた。
あぁ、ドラゴンだから、こっちの腹積もりを察したとかかなぁ。
でもまぁ、食べるけど。素材手に入るし。
「あの! 何かお役に立てる事ありませんかね! へへ、これでもこの辺には詳しいし……あ、そうだ! 荷物運びとかどうです!?」
道には困ってないし、運んでもらいたいほど荷物ないしなぁ……確かこの辺にフラムもう1個
「おおおおお近づきの印にどうぞぉ!?」
ブチっと自らウロコをはぎ取って献上してきた。
「ち、忠誠を! 何でもしますんで! どどどどうか!? どうか!?」
うーん、こんなにされると気が引けてくるなぁ。
ドラゴンらしく
「ちなみに、ついさっき1体倒したんだけど、知り合い?」
「ヒッ
(父上に『呼んで来い』なんて言われなきゃこんな事に……)
しっ、知らないなぁ!! 生まれてからずっと一匹暮らしなんで!!」
メチャクチャ高速振動してて草。
姿ブレてるw
うーん、どうしようかなぁ。
「食費かかりそうな見た目してるし」
「これでも少食なんですよ!!」
……馬車馬の代わりにはなるか。
デカいからオウムの代わりは無理だけど。
「まぁいっか。じゃあペットにしてあげる」
「ぁ………………ありがとうございますぅ!?」
涙を流しながら感謝された。
警戒するようにヘジンマールを近くで見張ってたイビルアイさんが飛び退く。
「ぅわ、もらしたぞコイツ」
「う、嬉しくて感極まりました!!」
そういう習性があるのかぁ。
「なら、とりあえず背中に乗せてもらおうかな」
「どうぞ!!」
……邪魔になったら霜降りステーキかな。
うあ振動ががががが
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(……アツイ……クルシイ……コロス……コロス……)
半月後、フェオ・ベルカナに巣食うオラサーダルク=ヘイリリアルは、フェオ・テイワズに発生したドラゴン・ゾンビらしき存在を警戒し、勢力拡大を一時休止した。
「山脈」編、めでたし!めでたし!(強弁)