【完結】ユーディー(偽)のアトリエ──アーウィンタールの錬金術士(ハーメルン移植版) 作:ブドウ冷やしんす
ドラゴンゾンビなんていないんだ。いいね?←
長らくお待たせ致しました……仕事がつらいです……
「「ししょー! おかえりなさーい!!」」
「ただいま! 良い子にしてた?」
「「はーい!!」」
ウチの双子の『妖精さん』かわいいのぅ。
ベビーシッターさんは、お願いした時よりゲッソリした様子でフラフラと帰って行った。
二人が元気すぎて疲れちゃったかな。
「『しちゅー』つくってたべたの!」
「みてみて! 『くっきー』つくったの!」
「わぁ! すごい!」
ブランクシチューとかアルファルの糧食を作る練習かな。
うんうん、我が弟子は順調に育っておる!
育ってるといえば、ちなみにソーン軟膏に使うサボテン……なんて呼んでたかなぁ。ピョーテ?……は、宿の裏手に植えたら普通に育ってます。寒さや乾燥には強いみたい。
あと、帰って来てみれば(陛下が裏から手を回してくれたのかなぁ)なんか各組合が『ユーディット錬金術組合』的な動きをしてくれてるから、アトリエを取り巻く状況は最初と比べてメッチャ楽。
なんだっけ、リアルでは
核心部分は公開しないけど、それ以外のノウハウ目当てで薬師の組合も参加してる。
……だからかなぁ。トゲトゲした視線はなくなったけど、ギラギラした視線は向けられてる。どっちみちこわい。
まだ構ってほしそうな双子ちゃんにアルシェは、
「ほら、ユーディーは仕事しなきゃいけないから」
と
その様子に、
「なんかアルシェ、お母さんみたいね!」
と言ったらアルシェ、しばしの間を置き何故かジワジワ顔を赤くして
「べ、別に、姉だし! 姉!」
……あたし何か変な事言ったかなぁ。
「「おねーさま、まっかー!」」
……え? ドワーフの都市に一度戻らなかったのか?
いや、確かに戻ったけど……うーん……色々疲れたから思い出したくない。
まず、デブゴン……あいや、ヘジンマールを連れ帰った事に驚かれ、次にフェオ・テイワズの様子を伝えた事に驚かれ、最後は遭遇したドラゴンを退治した事に驚かれて「親戚連中の仇を討ってくれた!」「わしらの英雄じゃ!」などと騒がれ
(さすがにフラムの事を知られると困る、とレイナースさんには耳打ちされたので、アダマンタイト級のイビルアイさんもいたし、みんなが奮闘してくれた結果だと言う話にしといた)
都市を挙げての大宴会になってしまった。
というか、何だかんだ言いながら、あたし達を口実に宴会したかっただけじゃないのかなぁ……
あたし含めて、みんなフラフラになっちゃったわ。
そんな中、レイナースさんだけは (イビルアイさんはいつの間にか消えてたから除外) 最後までシャキッとしててさすがだった。
やっぱり貴族って、お酒にも強くなきゃダメなのかな。
確かに『酔っぱらってベラベラしゃべっちゃった』じゃ話にならないんだろうし。
……それか、実は『たくさん飲んでるように見せてた』とか?
まぁ、どっちにせよスゴイ。
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さて、そんなこんなで帰って来て3日目 (3徹目……泣)
組合の協力があるとはいえ仕事は溜まってる。
なので、あたしは最初からフル稼働した。
けど、一番に完成させたのはレイナースさんの『秘薬ウロボロス』
何故かと言えば『陛下に話を付けておきますからお願いしますわ』とレイナースさんに言われたから。
どう『話を付け』たのかと言えば……
今、帝都の闘技場では演劇が開催されてる。
内容は『天才錬金術士ユーディットの冒険』である。
ドワーフに聞かせた『表向きの話』を元に、大急ぎで台本をでっち上げたらしい。
……最初は『そんなんでごまかせるのかなぁ』と思ってたけど実際好評で、仕事が滞ってる事への批判はかき消された。
デブゴ……ヘジンマールという『証人』がウケてるらしく、毎日『見世物』状態であった。
うん、霜降りステーキも悪くないけど、よくよく考えたら定期的に素材取り放題だし、ペットにして正解ね!
『貴婦人のたしなみ』とか調合アイテム使えば泣いて逃げられるって事もないし。
知らぬは本竜ばかりなり。
などと考えながら、あたしは『秘薬』と『溜まってた仕事』の調合疲れで意識を失うのであった……
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sideイビルアイ
「……と、まぁそんな事があってな」
「ヒドイわ!? そんなに楽しそうな冒険に行ってたなんて!!」
……今、私は『生きてるナワ』でグルグル巻きにされながらラキュースに事情聴取をされてる。
くっそ、このナワ本当に良くできてるな……引き千切ろうにも微妙に逃げて力を分散されてしまう。『生きてる』と言うだけあるな。
こんなアイテム与えたら、あのイジャニーヤ姉妹は余計に楽する事を覚えてしまいそうだ。
「せめて『発火布の手袋』くらい買って来てくれたって良いじゃない!」
「……なんで『ソレ』なんだ……もっと便利なアイテムの話を聞いた後じゃないか。だいたい、アレは非売品らしいぞ?」
「そ、そんな!?」
ラキュースのツボが分からん……
それにしても、この事情聴取はいつまで続くんだ……
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「……と、まぁそんな事があって、やっと解放されたわけだ」
sideツアー
「それはそれは、楽しかったようで何よりだ」
つい、少しからかう風に言ってしまう。
たまにしか会えない分、会話が楽しいんだ。
「……他人事だと思って、言ってくれるじゃないか。どれだけ私が気苦労したと」
「あぁゴメンゴメン。ほら、久しぶりだし、こんな所に僕は一人ぼっちだから、つい羨ましくて冗談を」
「良く言う!『鎧』を使えば出歩けるだろ!」
「いやぁ、たまには羽を伸ばしたいよ。文字通りの意味で」
自分で実際に動き回るのは格別だと思うよ。
さて、会話を楽しむのも良いけど、そろそろ真面目な話もしようか。
「……それはそうと、彼女は『どう』だった?」
僕の質問に、彼女は少し考えた後
「……何というか、普通だったな」
「普通? ぷれいやーじゃなかったって事かい?」
「いや、言質が取れたわけではないから『恐らく』と付くが、ぷれいやーだろう。それでも『普通』なんだよ。錬金術師だからか、確かに作り出すアイテムは
そのアイテムで世界を支配してやろうとか、野心はないのか。
そのアイテムは、世界を汚したりはしないのか。
「……君から見て、どんな存在に思ったかな。『異物』とは感じなかったかい?」
すると彼女は「上手く言えないんだが」と前置きして、
「……うーん……『架け橋』かな……」
「……どういう意味だい?」
「自分でも良く分からないが、私と何かを……いや、我々?……繋いでくれてるような気がするんだ。それが何か分からないが……不思議なヤツだよ。話しても伝わらないだろうし、説明のしようもない。一度、会ってみたら良い」
それから「そういえば、そろそろ帰らないとな」と呟いて、
「これ、食ってみるか? デニッシュという。回復アイテムだから私は使わないが、美味いらしい」
と投げて寄こし「それじゃ、またな」と転移した。
……これは、まさか……いや、しかし……
────ユーディット・フォルトーネ、か……
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「……んぁ? ねてた?」
気が付けばベッドの中。
「おはよう、ユーディー」
ソファー近くに立ってるアルシェが振り返る。
あぁ、いつの間にか意識を失ってたのね。
(髪じゃなくて部屋が)爆発してなくて良かった。
……なんか変な夢見てた気がするし。『アタノールの精』を名乗るウェイター姿のオジサンがハァーフゥー言いながらフワフワ浮いて「逃げないで!」って追いかけて来るの。遅いけど。フロジストンの何を考えろってのよ。
ま、たぶん仕事の忙しさに追われたりフロジストンの発見で喜んでたりっていう心理状態が原因でしょうね。
……それはさておき、
「なんでソファーにレイナースさん寝てるの?」
広いとはいえ『一部屋』だから視線を向ければ分かる。
「……ユーディーが寝てる間に来て、秘薬の完成を知るなり」
アルシェは1枚の紙を取り出し、
「こんなもの書いてまで飲むと聞かなかった。飲むと見事に呪いが解けて、喜びのあまり泣き崩れて、泣き疲れて寝た。四騎士でなかったら床に転がしてる」
oh……対応に疲れたんだろうね。機嫌悪いアルシェ。
えぇっと、なになに……『代金として金額2000枚の支払いにも応じる』……うわぁ……『足りなければ土地や屋敷を手放す』……うーん、気持ちは分からなくはないけど、必死さにドン引きするわ。
「……ぅ……んん……」
「あ、目が覚めた」
ベッドから起きて覗き込んでいたら気が付いたらしい。
「私……眠っていましたの……」
なんだか憑き物が落ちたように(……本当に何か取り憑いてたわけじゃないよね?)以前のドヨドヨした雰囲気がウソみたいな楚々とした感じで目を覚ました。
「ぁー……とりあえず呪いが解けて良かったです」
「……は! そうですわ! ユーディット様、すぐにお代を」
……なんか『様付け』されてるぅ……
「あはは、落ち着いてください。四騎士の方が誓約書まで書いてくださったんですから、後日でも大丈夫ですよ。陛下に結果を報告したりは?」
「……ありがとうございます。そうですわね。陛下とお話しして、後日すぐ戻りますわ」
……この時は『単にお代をいただくだけ』だと思ってたんだけど、ねぇ……
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──後日──
「お邪魔致します、ユーディット様」
「レイナースさん、いらっしゃい!」
幾分、落ち着きを取り戻した仕事の手を止め、レイナースさんに応対する。
「こちら、頭金として金額500枚をお持ちしました。残りは工面でき次第」
「あのぅ……素材集めとか諸々、手伝っていただいたので1000枚でも充分だと思うんですが」
という話は、すでにアルシェとも相談済みである。
するとレイナースさんは、
「しかし……そうですわ! 私の屋敷にアトリエを移すというのは如何でしょう。家賃を取ったりは致しませんし、敷地内でアイテムの実験もしてくださって構いません。お食事もお出ししましょう」
な、なんだその好条件はぁぁぁ!?
あまりの事にガタガタ震える。
だけどアルシェは、
「却下で」
「なんでぇ!? タダだよ!?」
「ここで営業してるという知名度を捨てる事になる。却下」
アルシェの返答にレイナースさんは、
「では、護衛役を務めさせて頂くというのは」
「え!? だってレイナースさん四騎士じゃないの?」
「呪いを解いたら何故か弱くなってしまって、辞して参りました」
「えぇぇぇぇ!?」
「それでも騎士として一代限りの貴族位は回復して頂けましたので年金も出ますし、収入には困りません。ですのでユーディット様にお仕え致したく」
「仕えるだなんて、あたしは単なる錬金術士で……」
「そんな事ありませんわ。陛下も『国家錬金術師』なる新たな地位の創設をお考えだとか。フラムにも強い関心がお有りで、熱鉱石の輸入を」
こ、国家錬金術師……ハガレン……厄介な事件の数々……うっ頭が。
「ぃ、いやぁ! そんなのガラじゃないですよ! あは! あははは!」
あたしが目を泳がせながら空笑いしてると、アルシェが
「レイナースさん、ちょっと」
と、部屋のスミに連れて行った。なんだろう……
(※以下、ボソボソと貴族特有の回りくどい会話につき意訳文)
『レイナースさん、どういうつもりですか』
『ただ私はユーディット様のお役に立ちたく』
『出しゃばり過ぎでは? 私達二人の(私の)邪魔を?』
『独り占めしようなどとは思っておりませんわ。私の事は家具か何かだと思って頂いて結構です』
『むぅ……くれぐれも(私の)邪魔はしないように』
『むしろアシストしますわ』
……あ、戻って来た。
「……話は
「そ、そうなの?」
アトリエは現状のまま営業、レイナースさんは護衛役で、実験とかで敷地を提供する屋敷は別荘扱いしていい、という事になったらしい。
お屋敷が別荘……
「よろしくお願い致しますわ、ユーディット様」
「は、はい、どうも……」
キラキラした雰囲気やら好待遇やら、逆に反応に困るんだけど……
エタらせる気はないんですラストは決めてあるんです気長に待って下さいお願いします(五体投地)