【完結】ユーディー(偽)のアトリエ──アーウィンタールの錬金術士(ハーメルン移植版) 作:ブドウ冷やしんす
今、明かされる衝撃の真実!
(この作品世界の捏造設定です)
……お待たせしました(泣)
sideアルシェ
「助けてよアルシェ〜」
「どうしたの? ユーディー」
また変わった付与魔法でも必要になったのだろうか。
自慢ではないけど最近は腕も上がって、信仰系はロバーに譲るとしても、ユーディーの錬金術に必要な付与魔法は、ほぼ全て期待に応えられる。
(呪いを付与できるようになった時はレイナースさんから距離を取られた)
それとも職人や組合との交渉だろうか。
まだ彼女は帝国の職人達の実状や機微には
ところが、そんな予想は斜め上の方向に外れてしまう。
「高品質のツィンケルタールが作れないよぅ!」
「ツィンケルタール?」
「調合アイテムの弦楽器で、ネコのヒゲが必要なの!」
「……ユーディー、『ねこ』って何?」
「やっぱりアルシェも知らないんだぁぁぁ!?」
何でも『小さくてフワフワしてて目が大きくてトブ・グレーター・タイガーに似ている、かわいらしい生き物』らしい。
……あれに似ているのに、かわいい……?
まぁ、小さくてフワフワしているならかわいらしくも見えるかも知れない。
「あんなにかわいらしい生き物がいないなんて!!」
「……そのかわいらしい生き物のヒゲを切るの?」
「 そ う だ よ ? 」
……いや、別に良いのだ。
彼女が必要だと言うなら、どんなにかわいらしい生き物が相手でも私は心をオーガにしよう。
だけど、今回ばかりは
ユーディーのポシェットとは違って私のポケットは『いろんなアイテムが出てくる不思議なポケット』ではない。
見た事も聞いた事もない生き物のヒゲなんて出してあげられないのだから。
ユーディーが言った。
「トブ・グレーター・タイガーのヒゲは前に試したんだけど、品質が低くて……」
もしかして『ねこ』とは伝説的な生き物だったりするのだろうか。
そもそも遭遇率が低い、精霊みたいな……?
トブ・グレーター・タイガーで無理なら、それより高難度の相手のヒゲを用意するしかない。
そんな相手、一体どこを探せば……などと私が頭を悩ませていると
「……すまぬが、ユーディット・フォルトーネのアトリエとはここじゃろうか」
と、ウレイやクーデよりは年上くらいの小さな女の子が訪ねて来た。
一緒にいる男性は……父親にしては似てない気がする。
服装も、帝国風ではない。
……何となくだけど竜王国風、のように感じる。
どういう『お客様』だろうか。
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「いらっしゃいませー!」
声に反応して顔を向ければ、おじs……(いや、そんな呼び方する年齢じゃないわよね、失礼よね)男性と女の子。
なんだろう、ウチのアトリエは『小さなお客様』に縁があるのだろうか……
というか父親が一緒なら、そっちがメイン?
第一声は女の子だったけど。
「どんなご用件でしょうか」
「武器がほしいのじゃ! 強力なやつ!」
……うーん、お父さん(たぶん)に
スリッパ (どこから!?) で後頭部をスパァン!
虐待!? 虐待!?
「ィタアッ!? 何をする宰sむぐぅ!?」
「いやぁハハハ! 申し訳ない! 最近
……なんか、すっごい目を泳がせながら大声で……
あやしいんだけど、理由がピンと来ない。
とりあえず話を合わせるしかないか……
「とはいえ!! ……力を求めているのは事実なのです。我々が住む土地は度々襲撃を受け、今も住民達が食われているのです。冒険者の方々に依頼も出してはいるのですが、我々自身も備える必要があると思うのです」
「なるほどー、そうなんですね」
各家庭で、ならブリッツスタッフかなぁ。
村での管理にするなら、最近ドワーフ国から素材の輸入が増えてるし、プファイル像でもいいかも。
よーし……ここは一つ、あたしが腕前を……と返事しようとしたところでアルシェが
「失礼ですが、お住まいは国内でしょうか」
すると二人は『ギクリ』とした表情……あれれ?
「帝国軍が間に合わず冒険者に依頼する事は無くも無いのでしょうが、住民自身が
竜王国風!? そうなの!?
アルシェに追及されると、女の子は『オヨヨ』と泣き崩れ
「身分を
一緒にいる男性も「陛下……」と肩を抱きつつ『ヨヨヨ』と泣き……
……うーん、ウソくさい……
だいたい『女王陛下』が変装して来るなんて、ありえないよね? アルシェ……って、え?
見ればアルシェは青い顔。
……まさかぁ。
「どうしたのアルシェ。こんな小さな娘だし、いくらなんでも本物なんて事は……」
「……竜王国の女王陛下は、ドラゴンの血を引いてるらしいから実年齢は分からないけど、幼い少女の姿だと聞いてる」
「え!?」
今もこっちをチラチラ見ながら「うぅ……」「シクシク……」などとやってる二人が?
うそやん……
「と、ともかく、そういう事なら皇帝陛下に外交で言ってください。あたしは国外にアイテムを売れないんです」
「そこを!」「なんとか!?」
いやいやいやいや……恥も外聞もなさすぎでしょ……
「話は全て聞かせて頂きましたわ!」
突然レイナースさんが、何故か窓から『バァン!』と登場。
……呪いが解けて、すっかりキャラが変わってしまいましたね。
顔を隠してた前髪をスッパリ切って色々な髪型を楽しんでるらしく、同じヘアスタイルの日がない。
四騎士の装備じゃなくなって、今は銀色のミスリル鎧を着てる。
あ、今日の髪型はアル○リアっぽいですね。
いいっすねぇ。本人に言っても通じないだろうけど。
「ユーディット様、素材収集に参りましょう!!」
「……えーっと? 話が見えないんですけど」
「竜王国を襲撃しているのはビーストマンという、トブ・グレーター・タイガーのような顔を持つ亜人種ですわ! 良いヒゲが手に入るかも知れません!!」
「! なるほど!! それは行ってみる価値アリですね!!」
「……レイナースさん、いつから窓の外で聞いて「細かい事を気にしても仕方ありませんわアルシェさん!」……ぇえ」
いざ行かん、竜王国!!
ビーストマンのヒゲが、あたしを待っている!!
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大して待つ事なく三日ほどで陛下から出国許可をもらえたのだが、それには条件があった。
レイナースさんは(本人の意思で)同行するものの、今も騎士の爵位を持ってるとはいえ解呪で弱くなったのを理由に四騎士としては退職、フリーの騎士
(爵位は退職金代わりみたいなものらしい。騎士とは……【哲学】)
になった以上、お目付け役には不十分という事から、別の『新しい四騎士』を同行させるらしい。
……『新しい四騎士』?
あたしが疑問を抱きつつ出発準備を整え、フォーサイトのみんなやレイナースさんと一緒に竜王国行き馬車の前で待っていると……
「おう、
四騎士の装備を着たロン毛のおじさん……って、あれ日本刀?
レイナースさんが
「あら、本当に助命してもらえましたのね『強盗』さん?」
「……その話は勘弁してくれ」
ちなみに今日は三つ編みですね。レイナース・ヴァ○キュリア、なんつって。
「て……え、レイナースさん『強盗』って?」
「王国冒険者組合行きの、ユーディット様のアイテムを積んだ馬車を襲撃したのですわ」
「ぇえ!?」
「……ふん、我ながら無様なもんだ。積荷まで使った応戦で返り討ちよ」
なんで強盗した人が四騎士に? という辺りの
「捕まえてみれば有名な『ブレイン・アングラウス』だと分かり、四騎士として仕える事を条件に死罪を
するとヘッケランさんが驚いたように
「ブレイン・アングラウス!?」
「有名なんですか?」
「異国出身で、しかも錬金術師じゃ知るわけもないよな。王国の御前試合でガゼフ・ストロノーフと戦って惜しくも負けた男だ。一方のガゼフは王国戦士長になった。なら実力の高さが分かるってもんだ」
イミーナさんも付け足した。
「いつも買いに来てるグリンガムっているでしょ? アイツその試合に出てブレインに負けたって聞いてるわ。だから帝国でもワーカーの間では有名なの」
あたし達の話が聞こえて、ブレインさんは
「……ガゼフか……俺は、ヤツに勝つためなら何でもしてやろうと思って……フッ、結果タコ殴りにされて取っ捕まったわけよ。アンタのアイテムはスゲーな。護衛は雑魚ばかりだと思っていたのに、まるで1万の兵を一人で相手してる気分だった」
情けなさそうなセリフとは裏腹に、ブレインさんの目はギラギラしてる。
「宮仕えなんて本意じゃなかったが、陛下は二つの約束をしてくれた。一つは俺のためにアンタのアイテムを購入してくれる事。もう一つはガゼフとの一騎打ちだ」
次は勝つ、と顔に出ていた。
一瞬カッコイイと感じて
「で、一応確認だがビーストマンをぶった斬りゃいいんだな?」
「うーん……ビーストマンはどうでもいいんですよねー。ヒゲがほしいだけなんで」
「……は? ヒゲ?」
一路、竜王国へと出発した。
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竜王国の王室が手を回したんだろうけど、人々から『勇者様が来た!』みたいな扱いを受けて苦笑いしながら、あたし達はいくつかの街を経由して最前線の砦まで来た。
その間、ブレインさんは手持ちのアイテムについてアレコレ質問してきたり(デニッシュの数を聞いて驚いた後ニヤリとしていた)精神統一とか素振りとか(その度にヘッケランさんが「スゲー」と目を輝かせて見てた)していた。
砦に来てみれば、まさに戦争中という感じで……不景気ながらも生活が成り立っていたドワーフ国ほど文化的な雰囲気はなかった。
ひたすら戦争に必要な物資や人が動き回る感じ。
タイミングは悪くなかったらしく、近日中にビーストマンの襲来が予想されていた。
ひとまず宿で一回休み、翌日こちらから逆に打って出ようという話に。
遭遇した場合の作戦としては、フォーサイトやレイナースさんに周りを守ってもらいつつ、あたしがフラムの遠投でビーストマンの動きを制限、ブレインさんに正面で斬ってもらう事にした。
動き回るより、待ち構えて次々斬る方が戦闘スタイルとして得意なのだとか。
で、当日……
「ちくしょう! 何なんだアイツら!?」
「投げ付けられる玉に気を付けろ!
「誰か、あの赤いヤツを何とかしろ!!」
「無茶言うな! 守りが固くて近寄れんし、飛びかかろうもんなら空中で矢と魔法が狙い撃(BON!)ぎゃ」
などと
荒野に炸裂音と悲鳴が上がり続けていた。
いやぁ、最近はフォーサイトのみんなも強くなったわ。
あたしはフラムぶん投げたり、時々ポーション振りまくだけで楽チン楽チン。
あ、今日はポニテですねレイナースさん。
そのうち『正面だけは剣士がいるだけで爆弾は来ない』と気付き、ビーストマンは殺到……でも
剣閃が走ると周りにいたビーストマン達のヒゲがハラリ……
思わず叫ぶ。
「あの人マジでヒゲだけ狙ってるぅ!? 本体ノーダメージだけど、どうす……ぇ?」
見ると、ヒゲを斬られたビーストマン達が動きを止めプルプルと……いや、周りで見ていたビーストマンまで硬直してる?
これには斬った本人であるブレインさんも『ん?』という表情。いや、あの後どうするつもりだったんだろう。
そして……
「……ヒ、ヒゲが、オレのヒゲがぁぁぁ!?」
「イヤァァァァ!?」
何故か、ヒゲを斬られたビーストマン達、顔を押さえて内股気味に逃げ出した。
「な、なんて事を……」
「……あの野郎、血も涙もねぇ」
「戦士の誇りを何だと思ってやがる!!」
周りのビーストマンも、
「……何だか良く分からねぇが、好都合だ。そのヒゲ、
構えるブレインさん。
「あんな外道、許しておけるか!」
「一斉にかかれ!
逆に殺気立ち、襲いかかるビーストマン。
時折デニッシュを噛みちぎりモキュモキュしながらブレインさんは鬼気迫る様子で剣を振るい続けた。
昼前に始まった戦いも、西日が射し始める頃にはビーストマンの多くが逃げ去り、後にはヒゲだけが残されていた。
わずかになったビーストマンをかき分け、ひときわ屈強そうな一体のビーストマンが姿を見せる。
「何とおぞましい戦法か。やはり貴様らは、かの偉大なる大王国を
「……大王国って、なぁに?」
つい気になって
「お、おのれぇ!! ねこさま大王国を滅ぼしておきながら忘れたと申すかぁぁ!!!」
ネコぉ!? ネコ知ってるの!?
怒りでまくし立てる族長さんが言うには、その昔『ねこさま大王国』という強大な国が存在していたらしい。
ねこさま大王国……どっかで聞いたような……ま、気のせいか。
そこは愛らしくも美しいネコ達を王族として
しかし、その長い繁栄は六大悪魔に率いられた人間達によって崩壊した(アルシェが言うには法国の六大神かも、らしい)
存命中は世界最強と言われた『最初の臣下達』も天寿を全うしており、対抗できる戦力がなかったという。
最終的に人間達(たぶん法国)は、徹底的な
だから最後まで大王国に従ったビーストマン達も意見が割れ、王族を連れて脱出しようという亡命派と徹底抗戦しようという死守派 (族長さんの先祖) に分かれた。
亡命派は死守派を振り切り、王族と、大王国の周辺にいた全てのネコを連れて大陸中央へ出発。
……だからこの辺にはネコちゃんいないのか。
それにしてもネコちゃんを絶滅だなんて、何て事を!?
法国、許すまじ!!(ヒゲほしい)
それ以来、残った死守派の
「なるほどー。つまり……
……大陸中央部へ行けば、ネコちゃんのヒゲが手に入るのね!」
「き、貴様「髭剃り!!」ぁがふ!?」
「族長がやられた!?」
「逃げろぉ!!」
こうして情報も含めて多くの戦果を得て、ヒゲの収獲は終わった。
それとヒゲが生え揃うまでの間ビーストマンの襲撃は再開されなかったらしく、後々まで竜王国からも感謝された。
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「新発売! ツィンケルタール始めました!!」
ビーストマンのヒゲを使った結果、何とか売り物にできる品質にはなったので、珍しくカウンターまで来て告知!
……なんだけど、
「……ぁー、楽器かぁ……うち
「銀糸鳥なら興味持つんじゃねぇか?」
お客さん達の反応はイマイチだった。
でもまぁ、別にいいっちゃいいのよ。ぶっちゃけ調合コンプリートしたかっただけだし。
それにしても、大陸中央部かぁ……いつか行ってみたいなぁ(素材集め)
「あの! それ楽器ですよね? 見せて下さい!」
お、まだ見ぬ収集ポイントに思いをはせていたらツィンケルタールに興味を示すお客さん。
年の頃はアルシェくらいか少し下か、それでも見るからに
帽子の下から赤毛の髪が
「はい! どうぞ!」
……は!?『どうせ他には売れなさそうだし、お値段サービスしちゃおうかしら』なんて思ってたら、恐ろしい事に気が付いてしまった!!
蕁麻疹出てない!!!
……いやいや、いやいやいやいや、ショタはマズいでしょ。犯罪よ犯罪。
んん、でも今のあたしなら大した年の差では……
「あの、これいくらですか?」
内心
本音で言えば金貨80枚くらいはほしいとこだけど……
「最初の一個という事で大サービス! 金貨30枚よ!!」
持ってけドロボー!
「30……うーん、でも……買います!」
「まいどありぃ!! ちなみに他の商品も見ますか? 色々ありますよ?」
あたしがニヤけてるのは商品が売れたからか、お客さんがカワイイからか……何故だろう、犬耳犬尻尾を幻視してしまう。
……初対面で名前聞いちゃうのはマズいだろうか。
「ユーディー、お客さん?」
お、いつの間にか後ろにアルシェが
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《少年
「……いらっしゃいませ。他にも何かございますか?」(ゴゴゴゴゴゴゴゴ)
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「ヒ、これだけで結構ですぅぅぅ!!」
そう言って、お代を払うと
あぁ、あたしの小さな王子様ぁ……またのお越しを……
「ツィンケルタール売れて良かったね、ユーディー」
「あ、うん、ありがと」
なんで慌てて行っちゃったのかなぁ……用事を思い出したとか?
は! もしやアルシェがカワイイから照れて逃げちゃった!?
むむむ、さすが親友……ライバルぅ……
謎のショタ吟遊詩人くん(笑)は友情出演なので以降の出番はありません。