【完結】ユーディー(偽)のアトリエ──アーウィンタールの錬金術士(ハーメルン移植版)   作:ブドウ冷やしんす

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色々なお客さんが来ました。



ユーディーと奇妙な来客(✕3)

 

……この世界に来て、かれこれ一年半近くなるかなぁ。

 

 

あたしは机に向かい、レシピ本にチェックを付けながら感慨(かんがい)(ふけ)っていた。

 

 

アトリエの原作アイテムの大部分は調合に成功してるけど、いまだチェックが付かないアイテムもある。

 

エアロライトは隕石、“不死鳥のおっぽ ”はポイニクスの羽根……という具合に、代替素材が希少品(竜の化石も見つけたけど希少品)だったり、月晶石や世界霊魂みたいに『そもそも代替素材が見つからない』から調合できない物。

 

あと、その調合アイテムが素材になる物。

 

 

そりゃ、ね? ポイニクスの羽根くらいは大金を払うか、がんばって探せば手に入るけど……例えば高品質のN/A、メテオールもないのに調合しても(N/Aで濃縮調合するのも含めて)ポイニクスの羽根がもったいないじゃない。

 

おまけに、ゲームと違って「お店に登録」で簡単に調合アイテムを再入手できるわけでもない。

 

組合に依頼できるのは、あくまで職人さん達の技量に応じた『業務委託』でしかない。

 

ゲームみたいに『あたしでもメンドクサイと思う調合アイテム』を出してくれたりしないのだ。

 

 

それでも最近は腕前が上がってきてるのか、任せられる範囲が増えてきてる(もちろん錬金釜etc……辺りの秘伝とも言える部分は除く)

 

そうでなきゃ、あたしが今ノホホンとしてられるわけないし。

 

 

そうそう! 最近の嬉しい話で言えば、双子ちゃんが中和剤の調合に成功しました!

 

いやぁ、師匠として感無量よね。

 

ただまぁ、やっぱり微妙に性格が違うせいか錬金術に夢中なウレイちゃんと比べると、クーデちゃんはアルシェの『マネジメント業務』に興味があるみたい。

 

『おねーさま、かっこいい』って。

 

将来は二人でアトリエ開いたらいいかもね。

 

 

職人さん達にせよ双子ちゃんにせよ、あたしが今や帝国で『錬金術の祖』なんて扱いなのよね。

 

……それは、まぁ、いいんだけど、いつだか突撃してきたフールーダさんには参ったわ。

 

あたしの顔を見るなり絶叫したり魔法の話をまくし立てたり錬金術の事で質問責め、アルシェの顔を見てまた絶叫……最終的には神丹を納品する約束と引き換えに(アルシェに叩き出されるような形で)お引き取りいただいた。

 

あれ以来たまにアルシェはお城に呼ばれるようになり、その際は心底ゲンナリした顔で出かけている。

 

(いわ)く「魔法は好きだけど、ここを離れてまで時間を取られるのは嫌」なのだとか。お疲れ様……

 

 

そんなアルシェからの情報によれば魔法省内に錬金術部門が設立されたらしく、遠心分離機や錬金釜の再現に(かろうじて)成功したらしい。

 

とはいえ再現率はまだまだで、失敗率は高く耐久性は低く、特に言えばアタノールは「再現しようにも、そもそも原理が分からん!」と頭を痛めているのだとか。

 

そらそうよ。あたしから見ても完全にオーパーツだもの。ユーディー的にも『遺跡での発掘品』なわけで。

 

あと今のところレシピ本とかも非公開だしね。

 

 

ただ、そんな魔法省でも着実にノウハウは蓄積してきてるんだな、と思ったのは、この前『全然身に覚えがない』感謝を受けた事。

 

なんでも、あたしが作った『ほうれんそう』から畑の活力を強める新しい秘薬を試作できたんだとか。

 

……それを見て、あたしは叫びそうになった。

 

それ『ロロナの栄養剤』じゃん、と。

 

 

いや、分かってはいたのよ薄々(うすうす)

 

ユーディーのレシピ本にこだわらなければ、たぶん他作品の調合アイテムも作れそうだな、とは。

 

けど、それをすべきかどうか……ユーディーとしての矜持(きょうじ)が……アイデンティティが……

 

 

……まぁ、そんなアレコレは置いとくとしても、あたしの錬金術が帝国の文化に根付いてくのは、やっぱり嬉しい。

 

みんな喜んでくれてるし、錬金術士ライフを満喫できてるし、そして

 

 

「……ウレイ&クーデのアトリエ、かぁ……どんな物語になるんだろう」

 

 

夢が広がるよねぇ……

 

それに……うーん……そう考えると……

 

 

「……あたしも、負けてられないかな」

 

 

イスに背を預け、天井を仰ぎ見る。

 

この世界はゲームじゃないんだから『ユーディー縛り』してる場合じゃない、かもね。

 

……でも、その前に

 

 

「レシピコンプが先よねぇ……代替素材……ぁー……」

 

 

うめきながら苦笑い。

 

どこにあるのよ、世界霊魂と月晶石。

 

ここまで代替素材が見つかったのに、それらだけないはずない。

 

もしかして全然違う物だったり? 解釈を見直した方がいいのかなぁ……

 

 

「ユーディー」

 

ノックの後、いつものようにアルシェが入って来て言った。

 

「お客さんが来てる」

 

 

「はーい!」

 

イスから立ち上がり出迎えてみれば、見覚えのない……いや、見覚えないよね? 一人のドワーフさん。正直ドワーフって見分けつかないのよ……

 

 

「わしの名はツイバヤヤ。ここに凄腕の錬金術師がいると聞いて来た」

 

 

「いらっしゃいませ! あたしが錬金術士のユーディットです! どういったご依頼ですか?」

 

 

「専門ではないかも知れぬが、繊維(せんい)について話を聞きたい」

 

 

「繊維ですか?」

 

 

「わしはな、『口だけ賢者』の(のこ)した水着というアイデアを実現したいのじゃ」

 

 

あたしはアルシェに小声で(たず)ねた。

 

「……口だけ賢者って?」

 

 

「昔の、自分では実現できないアイテムを色々と考案したミノタウロスらしい。そのアイデアを実現したアイテムが時々市場で取り引きされてる。食べ物や飲み物を冷やす箱型マジックアイテムとか」

 

 

冷蔵庫じゃん……あたし同様プレイヤーかな。

 

「というか……アルシェ、こっちに水着って考え方ないの?」

 

 

「……どういう物?」

 

 

あたしが軽く説明すると、

 

「正直『何を言ってるのか理解できない』という感じ。水辺には危険なモンスターが多いのに、わざわざ無防備な姿を(さら)すなんて」

 

 

「そっかー、こっちには海とかで遊ぶ習慣ないのか」

 

 

「……ユーディーのとこには、モンスター出なかったの?」

 

 

「ぁー……(リアルでは海なんて汚染されてたし、となるとユグドラシルでは)……うん、普通に出たね」

 

 

「そんなとこで遊んでたの!?」

 

 

「まぁ撃退するのも遊び(イベント)っていうか……」

 

 

「……し、信じられない……」

 

 

それにしても、数あるアイデアの中で取り()かれたのが『水着』って……

 

これは一言いってやらなきゃいけないわね。

 

あたしはツイバヤヤさんにツカツカ歩み寄り、

 

 

「……協力しましょう!!」

 

手を取った。

 

 

「おぉ!!」

 

「……へ? ユーディー?」

 

 

わかる! わかるわー……水着の女性は美しい!!

 

ポリコレとか何とか言う人はいるけど、カワイイ格好はしたいし、美しさに罪はないのよ!!

 

何よりアトリエシリーズに『水着イベント』は不可欠!!←そんな事はない

 

 

┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄

 

 

ユーディーは竜王国の冒険者チーム『クリスタル・ティア』に大量の『ビーストマンのヒゲ』を発注、水着の話にセラブライトは格安で依頼を受けた。

 

 

後日、届いた『白い当て布に “ どらうでぃろん ” と書かれた紺色の水着』に歓喜、竜王国女王に着てもらうべく(鼻息荒く)献上した。

 

 

┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄

 

 

ついにこの日が来た!!

 

海だ! 水着だ! 海水浴だ!!

 

 

あたしはフォーサイトのみんなを引き連れ(当然レイナースさんも付いて来た)帝国北部の海へ遊びに来た。

 

あたしはウキウキ、みんなは戦々恐々(せんせんきょうきょう)

 

みんなの分まで水着は用意したんだから楽しめばいいのに……

 

 

特にイミーナさんなんかは過去のトラウマがあるらしく水に入るのが嫌なんだとか。

 

まぁ泳ぐのは無理でもビーチフラッグとかはできるだろうし巻き込むとしよう。

 

 

なお水着のデザインは、あたしが赤いクロス・ホルター・ビキニ、アルシェは淡いイエローに青い花柄をあしらったフレア・ビキニ、イミーナさんは濃いグリーンのハイネックである(男性陣はサーフパンツタイプ)

 

 

最初は「本当にコレ着るの……?」と気後れしていたアルシェだけど、あたしが着こなしてみせてからは吹っ切れたのか平気な様子。お互いにカワイイ言い合って……なんで鼻息荒いんだろ。

 

あ、レイナースさん今日は髪型お団子アップですね。白のプランジングが眩しい!

 

……遠くで感涙の叫びを上げてるツイバヤヤ氏はスルーしよう。

 

 

「……アロマボトルは不思議。水中のモンスターにも効果が……?」

 

などと少し釈然(しゃくぜん)としないアルシェに水を跳ね上げ

 

「細かい事は気にしない!!」

 

水かけ合戦を始める。楽しい!

 

 

その後、一通りはしゃぎ終え昼食にバーベキュー(ロバーさん準備ありがとうございます!)を食べてから小休止に日光浴タイム。

 

……ヘッケランさんとイミーナさんがイチャついてるのは放っておこう。

 

 

休んでるみんなを他所(よそ)に、あたしは近場を散策。

普段は海なんて来ないから探究心が……何か素材ないかなぁ。

 

岩場の陰に回り込んで「コレ、カタ巻き貝っぽいなぁ……」なんてやってると……甲冑(かっちゅう)の音?

 

 

「やぁ。こんにちは」

 

あたしが顔を上げると、銀色の全身鎧さんが立っていた。

 

「あ、どうも。どちら様?」

 

 

「僕は……リク・アガネイア。こんな所で何をしてるんだい?」

 

 

「ちょっと今日はみんなと遊びに。あと、ついでに素材探しなんかを……あ、あたし錬金術士のユーディットっていいます」

 

 

するとリクさん怪訝(けげん)そうに、

 

「遊び……? 海は危険なモンスターが多いよ?」

 

 

「アロマボトルってアイテムで()けてるから大丈夫です!」

 

 

「除けて……あぁ、もしかしてこの『匂い』か。……なるほど、やはりそう(・・)なんだね」

 

 

「?」

 

何かを一人で納得したリクさんに首を(かし)げてると、良く分からない事を質問された。

 

「君は、世界というのをどう思ってる?」

 

 

「……へ? せ、世界です、か?」

 

 

「前から薄々思っていたんだけど、君のアイテムを見て余計に分からなくなったんだ。ミルクに果汁を加えてしまえば、もう元のミルクには戻らない。実際、僕の友人達も『魔法詠唱者(マジックキャスター)』だ。どこまでを異物と考えるべきなのか……」

 

 

全っっっ然なに言ってるのか、わかんないよ!!

 

……こ、コミュ障なのかなぁ。

 

 

質問に応えようにも……うーん……『友人』……もしかして人間関係の悩み相談されてるのかな、あたし。

 

そうだとして、無難な答え……うーん……

 

「あたしは単純に『みんな』がいる場所かなって思ってます。世界」

 

 

「……ふむ」

 

 

「生きてれば色々あるわけで、取り返しのつかない失敗とかもしたりして、それでも前に進まなきゃいけない『みんな』が生きてるのが世界ってものなんじゃないかな、なんて思います」

 

 

「失敗は避けられない、と?」

 

 

「というか、やってみるまでわかんないって感じですかね。私たちは神様じゃないんで」

 

 

なんだろう、この禅問答』……

 

でもリクさん的には間違いじゃない受け答えだったらしく会話のキャッチボールは続く。

 

 

リクさんが問い返す。

 

「でも、それじゃあ何もできなくならないかな。何が正しいのか分からない」

 

 

「うーん……正しいかどうかって、必ずしも重要ですかね」

 

 

「というと?」

 

 

「最後に一番大事なのは、自分が失くしたくないのは何かって事じゃないかなって。そのためなら『えーい、ままよ!』って、一歩踏み出すのも重要かなって」

 

 

するとリクさん、何か思う所があったのか考えるように少し黙った後

 

「……なら、もう失ってしまった時は、どうしたら良いのかな

 

なんて、吐息を(こぼ)すみたいにつぶやいた。

 

 

これ、あたし地雷踏んでないよね!?

 

えーと、えーと……

 

「だったら! 遺されたものを大事にするっていうのはどうですか、ね……」

 

(なか)ばヤケっぱちに、後半は尻すぼみ気味に応えた。

 

 

「……遺された、もの?」

 

 

「思いとか記憶とか、自分が納得いく何かを護るしかないんじゃないでしょうか!」

 

これ以上に何を応えろっていうのよ!?

 

『これで終わりますよーに!』と祈りながら応えた。

 

 

リクさんの反応、は……

 

 

「……あぁ、なんだ……僕が考えていたより、答えは単純だったのかも知れない。なら『言い訳』にするのも、悪くないか」

 

 

正解!? 正解ですか!?

 

内心ハラハラしてたけど『禅問答』おしまいよね!? この流れは!!

 

 

「……ちなみに、君にとっての大事なものって何だい?」

 

 

 追 加 質 問 !!

 

けど、これの答えは簡単よ。

 

あたしの、大切なものは、錬金術と……

 

 

向こうの砂浜から「ユーディー、どこにいるのー!?」と呼ぶアルシェの声が聞こえる。

 

 

……友達です!!

 

 

「……そっか……時間を取って悪かったね。呼んでいるようだし、行ってあげて」

 

 

「はい!」

 

あたしがアルシェの所へ行こうとする背に、思い出したようにリクさんは声をかける。

 

「そうだ、ユーディット」

 

あたしが振り返ると、リクさんは『まるで糸に吊り上げられるように』宙へ……へ? 飛んだ!?

 

 

「さっきは偽名なんて名乗って悪かった。僕の本当の名はツァインドルクス=ヴァイシオン。君が、君の存在や技術のせいで友達を守りきれそうもなくなったら、評議国へ来て僕を頼ると良い。……彼らが知れば危険視するだろうけど、君には生きていてもらう方が良さそうだ。それじゃ」

 

 

それだけ言うと飛んで行くリクさん、いや、ツァインドる……うーん……?

 

「ツアーさん! さよーならー!!」

 

あたしは(わけがわからないまま)手を振って見送った。

 

 

……えーと、つまり、友達になろうって事、だよね?

 

 

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アルシェと『またいつか来たいね』なんて話しながら海から帰った翌日、あたしは仕事の日常に戻った。

 

 

まぁ、状況は落ち着いたし、錬金術は好きだから、いいんだけどね。

 

それに、これから先も楽しい事は色々あるんだろうし。

 

 

フラスコ越しに窓の外、空を見上げてつぶやく。

 

「……うん、順風満帆。未来は希望に(あふ)れてる、なんてね」

 

 

「ユーディー、お客さん」

 

「はーい!」

 

ドアを開けたアルシェに連れられて入って来た二人は……ぅわお! すんごい美人さんと、黒い全身鎧の

 

 

 

初めまして。私、エ・ランテルのミスリル級冒険者、モモンと申します。

 

……どうぞ、よろしく

 

 

 





次回「ナザリックへの挑戦 【前編】友への思い」
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