【完結】ユーディー(偽)のアトリエ──アーウィンタールの錬金術士(ハーメルン移植版) 作:ブドウ冷やしんす
お忘れではないだろうか。
この物語はギャグ小説である。
最終回だと言ったな?
あれは嘘だ←
夕焼けに照らされる小高い丘の上、ユーディット・フォルトーネは目的地を見下ろした。
黒い全身鎧のモモンは後ろから声をかける。
「あれが、お見せしたポーションのあった『墳墓』です」
アトリエに来たモモンら冒険者チーム『黒き極光』
彼らはエ・ランテルで発生したアンデッド事件で首謀者を倒し、特例的にミスリルまで飛び級した凄腕の二人組だという。
その活躍により、面識のあった冒険者チーム『漆黒の剣』(アンデッド事件により現在はゴールド級に昇進)からも信頼を得た二人は『ユーディットと赤いポーション』についての情報を知り、ある遺跡から自分達が
『一緒に来てもらえば、さらなる発見もあるかも知れない』と、二人はユーディットに『遺跡』への同行を求め、今に
「今日のところはキャンプを設営し、一度休んで明日の早朝、アタックを開始しましょう。
……しっかり我々が
モモンの言葉に、ユーディットは振り返ると笑顔を浮かべて
「お断りします!」
「…………………………は? え?」
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《いつも通りのユーディット視点に戻る》
あたしは鳩が豆鉄砲を食ったようなリアクションした
「かの有名な聖地ナザリック地下大墳墓に土足で踏み込むなんて怖い事できるわけないじゃないですか! 当然でしょう
あたしが言うとモモンガさん(たぶん)は「え、いや私の名前は」と
「き、貴様! 何故「あ、バカ」……ぇ?」
警戒態勢をとったナーベさんに伸ばしかけた手を、ヘルムの額に当て『ダメだぁこりゃ……』と頭を横に振るモモンガさん(たぶん)
その様子に『え、何かしちゃいましたか』と、あたしと彼を交互に見るナーベさん。
その様子を見たモモンガさん(たぶん)は長い長ぁーいため息をもらした。
……彼に白状してもらおうと思ってただけなんだけど、思いがけず『カマかけ』してしまったらしい。
知的な見た目なのにウッカリさんだなんて、何という高レベルなギャップ萌え!
たぶん誰かが化けてるんだろうけど、ドジっ子キャラの女性ギルメンって……うーん、誰だろう。
ため息から復帰したモモンガさん(たぶん)は、ナーベさんに指摘するみたいに人差し指を立てて
「……ナーベ、しばらく、だまっていろ。いいな?」
ショックを受けた様子で両手で口をふさぎコクコクうなずくナーベさん、かわいい。
モモンガさん(たぶん)は、あたしに問いかける。
「……どうして気付かれたのですか?」
「そりゃ、あたしも最初は気づきませんでしたよ? モモンなんて変わった名前だなぁって。でも『モモン』という方に連れられて到着したのが『ナザリック地下大墳墓の地表部』なんて、これで気づかなかったらファンとしてはモグリでしょう!」
「……ふぁ!?……んん、ファン、ですと? 我々の?」
……なんだろう、今、少し声色が……ハッ、さすが『運営による仕込み』を疑われるほどの魔王様! 演技で声の調子まで変えてるのね!
「……ユーディー、えぇっと……?」
あ、後ろでみんなが話の展開に付いていけなくてキョトンとしてた。
ちなみに顔ぶれはフォーサイトとレイナースさん、ブレインさんである。
紹介してあげなきゃ!
「みんな! この方こそ、あたしの故郷ユグドラシルにその名をとどろかせた伝説的ギルド『アインズ・ウール・ゴウン』そのまとめ役である大魔王様モモンガさんよ!!」
バッ!と、横から両腕で彼を強調。
すぐさま彼はバサリと真紅のマントをはためかせ、斜めに構えて腕を組みカッコいいポージング。さすがです。
だけどみんなの反応はイマイチ。
「ま、魔王……?」
と、みんな警戒するか頭の上に?を浮かべるか……
「うーん……ユグドラシルとは世界観が違うから、そこから説明しなきゃいけないわね」
「世界観?」とアルシェが首をかしげる。
「何というか、こっちだと神話があって英雄譚があって……つまり正統派なのよね」
「……はぁ……?」
「ユグドラシルだと、神様は色々いるけど、みんなが共通して『神様ぁ!』って
「……ぇえ……」
「で、確かに侵略とかして周りに恐れられてるけど、一方で調子ノッてる連中を返り討ちにしてくれたのが、こちらの魔王様たちなの!」
そこまで説明してあげると、みんな理解はしたものの『どう反応していいか分からない』という感じの表情で、ロバーさんに至っては頭を抱えて「……神とは……英雄、とは……」なんて哲学し始めてしまった。
「ところで」と、解説が終わったタイミングでモモンガさん(もう確定でいいよね?)が
「ユーディットさんは人間種ですよね? 何故、我々のファンに? このように言うのは失礼かも知れませんが、珍しいと思いまして」
「……ぁー……自分で言うのも何ですが、かなり器の小さい話なので……笑いません?」
「ファンになる理由など人それぞれでしょう。それを笑う役者などいませんとも」
魔王ロールに定評があるっていうのは、それだけこだわりがあるって事なのね。
「では恥ずかしながら」と、ファンになった経緯を話す。
「あたし、今でこそ『有名錬金術士!』なんて言われてますけど、あっちにいた頃はホントに『ド底辺』だったんですよ。独りぼっちで、協力してくれる友達とかもいなかったんで」
いやぁ、あの頃はマジで退屈な作業ゲーだったわ。
ユーディーの再現率低かったら辞めてたわね。
「だから一人で素材を集めてはチマチマ調合しては街の店に売りに行って……アハハ、あたしの商品買ってくれる常連客なんかいなかったから。最初は道行く人に声かけしたり道端で露店モドキやって商品並べてみたりしたんですけどね……」
そう、思い出したくもないムカつく出来事があってから店売り一本にしたのよ!
「ある日、良さげな装備で全身固めた騎士系の人を見つけて『買ってくれないかなぁ』と思って声かけたんですけど……ポーション手に取って見るなり後ろに『ポイッ』って捨てたんですよ!『ポイッ』って!! んで『テメーみたいな雑魚のアイテムなんか誰が買うかよ、さっさと消えろ』とか言われて!」
当然だけど割れたわ。
アレ作るのだってタダじゃなかったのに!!
「……けど実際、実力差はハッキリしてるわけで、もし下手に目を付けられたら素材集めに街から出る所を後ろから斬られかねないし……言い返したいのを必死にガマンして泣き寝入りですよ!!」
思い出したらムカッ腹で
あの当時のユグドラシルって民度低かったのよねー……古参プレイヤーは減って、冷やかしみたいなイキりプレイヤーが増えたから。
だけど、それを理由に辞めちゃったら何か負けた感じじゃない?
けど、そうやって半分は意地で続けてたから結果的に『今』があるわけで、ホントよく耐えたわ、あたし。
「そんなある日、皆さんの『対1500人迎撃戦』を知ったんですよ!……あ、リアタイじゃなくてごめんなさい。皆さんがアップしたやつ観たんです」
「……りあたい……あっぷ……なるほど、映像記録か何かですか」
モモンガさん『映像記録』て……ロールかなぁ。独特な言い回し。
「アッハイ……それで、突入チームに憎ったらしいアンチキショーの姿があったんですよ! それだけじゃなく露店モドキで並べてた商品を
で『これはコイツらの末路を見届けねばなるまい!』と思って……いやぁ、痛快だったのもあるけど編集の仕方も良くて、見てて楽しかったわー。
あ、ちなみに地表部をパッと見で確信できたのはヘビロテしてたからですハイ。
タイトルの次、BGMのイントロ部分と共に1〜2秒間だけ映ってたのが頭に染み付いてました。
その後『挑戦者のお顔紹介』みたいなカットインが入って、時系列っていうか各階層ごとのハイライトって感じに皆さんの活躍と敵の『やられっぷり』が流れてく構成。
雰囲気としてはアニメのOPとかMAD動画みたいな感じ。
「もうね! 最高でした!! ホント見ててスカッとした!! 特に第七階層で皆さんの策にハマったらしいクソ騎士が『ウソだろ!?』とかマヌケな声を最後に消し飛ばされた瞬間は
『ッしゃー! ザマァ!!』
ってガッツポー……んん、ちょっと興奮しすぎましたね、スミマセン……と、ともかく! 皆さんのおかげで救われた気持ちになったというか、それがきっかけでファンになった次第です」
途中、ヒートアップしすぎて少し恥ずかしかったものの、何とか伝えきった。
「……なるほど、そうだったのですね」
「あ、ところで皆さん、こっち来て日が浅いんじゃないですか?」
「おや、分かるのですか?」
エ・ランテルのアンデッド事件は『こっちの世界の感覚』知らないで無双しちゃったんじゃないかな、とか、今回の『コレ』もユグドラシルのノリで『プレイヤーっぽいのいるから、サクッと拉致って情報収集しよう』みたいな事だったんじゃないかな、と、あたしは見た!
「あっちのノリで色々やっちゃうのはマズいと思いますよ? あっという間に敵だらけになってメンドクサイ事に……あたし、これでも一年以上いるんで、こっちの事教えましょう!」
「良いのですか?」
「ファンとしてお役に立てるなら喜んで!」
「……少し、相談して来ても宜しいでしょうか」
あ、そっか。41人……いや、実際に何人こっちに来たのかは知らないけど、他にもいるのよね、きっと。
それにしても『ナザリック・アタック』なんてやらされたら、たまったもんじゃないわよ。一体、誰の発案なん……Wikiを信じるなら『るし★ふぁー』さんとか?
「どうぞどうぞ、お待ちしてます!」
「では失礼して……ナーベ、ここを頼んだぞ」
無言でコクコクうなずくナーベさん……もしかしてまだ『だまっていろ』実行中?
「あ、モモンガさん、ナーベさんって『誰さん』なんですか? ギルメンの誰かが変身してるんですよね?」
「……いえ、彼女は現地協力者なんですよ。あなたと同じで我々のファンでして」
なんと!……同担拒否とかないかなぁ……あたし箱推しなんだけど大丈夫だよね?
「えっと、ナーベさん、誰推しなんです?」
「……(モゴモゴ)?」
「……ナーベ、しゃべって良いぞ」
「……このヒラズハナアザミウマは何を言っているのですかパn「やっぱりだまってなさい」……」
……えーっと……?
「失礼しましたユーディットさん。彼女、コミュニケーションが苦手でして……すぐ戻りますので少々お待ち下さい」
そう言ってモモンガさんはションボリするナーベさんを残しナザリックへと走……魔法で転移とかしないのかな……戦士に化けてる時のペナルティとか?
変身、解いてほしかったなぁ……生モモンガ見たかった……
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「……よく戻った、パンドラ」
「予定外の行動、申し訳ございませんアインズ様……お二人は?」
「各自の持ち場やトラップの最終チェックをしている」
「……アインズ様、私、今からとても
「……突然、何を言い出す」
「私、今回の作戦には反対でございました。何故なら、アインズ様が気分を害されるからです。ですがアインズ様は献策されたデミウルゴス殿のお気持ちを
「……」
「勿論、ナザリックや我らに込められた思いや栄光をアインズ様が大事にして下さっているのは理解しております。
しかし今や前提は崩れました!
ユーディット・フォルトーネは我らへの害意を持ち合わせておりません!……もし、あれが演技であるならば彼女は私以上の『役者』であると言わざるを得ません。私の目から見れば有り得ない」
「……」
「『侵入者』としてでなく、彼女を『来客』として迎えましょう。当然、我らが全力を尽くせば彼女を敵に仕立て上げナザリックに追い立てる事は可能でしょう。ですが、それをお望みになられますか? アインズ様はナザリックを土足で踏み荒らされる事を不愉快に思われているご様子。そもそも、我らやナザリックの為にアインズ様がご不快な思いを圧し殺すなど本末転倒ではありませんか!
そうならない為の提案を……アインズ様の御心を御守りせずして何が『守護者』でしょうか! その為なら我ら下僕は『効率』など度外視にするべきなのです!
アインズ様、いえ、
「……パンドラ、お前の気持ちは分かった。確かに
「では!?」
「
「……それではアインズ様、私は戻り」
「いや、出迎えには私が行く。ナーベラルには少し時間を稼いでもらおう」
「しかし」
「害意はないのだろう? お前の目を信じている。お前の『弐式さん』は見破られるか?」
「……いえ。彼女は90レベルほどかと思われます。戦士職やレンジャー職ならまだしも、錬金術師であれば魔法やアイテムを使わない限りバレないでしょう」
「ならば、お前は『影』に徹しろ」
「ハッ、では先行して監視を……彼女一人では不安ですので」
「………………ぅ……そう、だな。沈黙は解禁するべきだろうか」
「………………アインズ様の御心のままに」
「う、む………………
「………………やっぱり私が」
「いや!……良いのだ。出したばかりの指示を撤回するなど、上に立つ者として示しが付かん。それに、上の者が信じて任せてやらなければ、いつまでも下の者が育たぬ。それこそ『効率』などと言う話ではないのだ。……私はナーベラルを信じるぞ。うん。大丈夫だ………………きっと」
「……ン何と 寛 大 な お考え! ならば私は『保険』として備えておりましょう! では失礼、致しまッッッす!!」
「………………ハァ……行ったか。それにしても『ファン』とはな……フフッ、あの動画を観たのか。あぁ、あの頃は本当に……いや、もちろん攻め込まれると知った時はムカついたが、返り討ちにした時は本当に爽快だった。
あの動画も、良い出来だったもんな。みんなで『こうした方がカッコいい』なんて意見を出し合って……たっちさんとウルベルトさんが
どこかにオリジナルが残ってるはずだし、今度みんなに観せてやろう。俺も久しぶりに観たくなった。
……俺達の側になって共感してくれた人なんて、いたんだな。まぁ再生回数が伸びたのは聞いてたけど、コメントなんて大半がアンチだったから読む気にならなかったし、気付かなかった。
あの動画を観て『あの態度』だ。彼女は『シャルティア洗脳事件』の容疑者から外れたと見て間違いないだろう。あの動画にはシャルティアの活躍シーンも多かった。彼女がシャルティアを知らないとは思えないし、知ってて洗脳したならパンドラの目を誤魔化せるとは思えない。
NPCが自分の意思で行動してる可能性には気付いてないようだし。
そもそも調査した限り、彼女の洗脳・魅了系アイテムは『確認されていない』
……もちろん『まだ我々が把握してないアイテム』や『何者かが悪用した』可能性もないとは言えないが『我々が知らないという事は帝国も知らない』のだろうし、作ったり盗まれたりした事があるなら、彼女本人に聞けば普通に答えてくれそうだ。
それに仲良くなれば例の神丹、帝国で極秘の非売品になっているアレをノーリスクで試せるかも知れないし、琥珀湯は何より魅力的だ。
……デミウルゴスの作戦を信用してなかったわけじゃないが、戦闘を回避できるなら、その方が何倍も良い。余りに未知数な部分が多すぎる。
と、なれば、ここは一つ『希少な』ファンを歓迎しようじゃないか。
……ファンサービスイベントなんて、やった事ないけど大丈夫かな。いや、俺だって『モモン』として慣れてきたわけだ、し……だよな……街の人みんな笑顔で手を振ってくれてたし、変なミスしてない、よな?
あ、どんな態度で応対したら良いんだ? プレイヤーとして?……いや、パンドラが『モモン』として接した姿勢は
……思えば『遊びだ』と理解してくれてる相手に披露するのは、かなり久しぶりじゃないか? そう考えると……フフッ、なんだか楽しくなってきたな。よし、非公式魔王のカッコよさを見せつけて……
そうだ! 動画で活躍した守護者も揃えて出迎えてやったら、きっと驚くぞ!」
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sideアルシェ
正直、私は何が起きているのか理解できなかった。
確かに最初ユーディーが『魔王』とか『ファン』とか言い出した時点で頭が追い付かなくなってはいたけど、魔王の現地協力者だというナーベと
『ギルメン(文脈から言って魔王軍の幹部という事だろうか……)で誰が推し?』
とか話し始めた辺りで『もしもユーディーを騙すような奴なら、何としてでも私が討つ!』と決意を固めるくらいには思考が追い付いていたし、眷属達を連れた魔王モモンガが本来の姿で再び現れた時は、その圧倒的なオーラに悲壮な覚悟を決めていた……のだけど……
あれよあれよという間にユーディーは魔王モモンガと意気投合、眷属達からも歓迎されて、気が付けば魔王軍の居城に招かれる流れに……
そんなユーディーの姿に、私は神々が
「……こ、これが……『こみゅりょくオバケ』!!」
十三英雄の中にも、そのように呼ばれた人がいて、冒険の行く先々を助けたのだという。
その言葉の意味を、私は今になって初めて理解したのだ。
(ユーディーは、神話クラスの魔王とさえ友達になってしまえるほどの『こみゅりょくオバケ』だったんだ!!)
我が親友ながら
同時に、彼女に変なムシが付かないようにするという事の難度を、改めて突き付けられた気分だった。
……私は、知らず知らずのうちに極めて困難な試練に挑戦していたのかも……
(……だけど、私は負けない!
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ナーベさんが渋いポジション『ザ・ニンジャ!』弐式炎雷さん推しだと聞き出したり、ひとしきり皆さんの武勇伝に花を咲かせた所で、ナーベさんが再び
「こちらへ」
と全員でナザリック地表部へ案内してもらい……あの『聖地』の入り口をこんな間近で見られる日が来るとは……あたしがお上りさん丸出しでキョロキョロして興奮してるとナーベさん『ドヤァ』と言わんばかりに胸を張って得意気。かわいい。
しばらく待機してると、目の前に闇の塊が……こ、これは噂に聞く
きっと中からモモンガさんが……って、え!?
ゾロゾロ出て来るその姿は、ま、まさか『全守護者入場!!!!』!?
最後に出て来……キタ━━━━━━━━!! 生モモンガさんだ!!!
「待たせたな、ユーディット・フォルトーネと、その一行よ」
魔王ロールですかぁぁぁ!?
あ、ヤバい、あまりの興奮に、呼吸が!! 限界化する!!
「どっどどどっどどういう事ですかぁ!? しゅ、 守護者、なん、 これ、 え、本物ぉぉ!?」
「ハッハッハッ、そうとも。こいつらの活躍を知っているなら、喜ぶかと思ってな」
「ありがとうございましゅぅぅぅ!!」
そうか、守護者も
尊みで胸が苦しい……あたし死ぬかも知れん。
「あ、あの、近くで、見たりとか……?」
「フフッ、あぁ良いとも。お前達も良いな?」
「「「「「ハッ」」」」」
はぅあ、 お声も聞けるぅ……
「おぉ、コキュートスさん近くに来るとヒンヤリする……デカい! カッコいい!」
「……ウ、ム」
「デミウルゴスさんもカッコいい! ウルベルトさんの美意識の塊ですね!」
「……それは、どうも」
「シャルティアちゃん、お美しい……ペロロンチーノさんのこだわりがにじみ出てる!」
「…………そう、で、ありんすかぇ……」
「?……あ! アウラちゃんマーレ君かわいい! あの、モモンガさん、ハグ、んん! そんな贅沢は言わないんで、せめて握手とか!」
「ふむ、アウラ、マーレ、握手してあげなさい」
「ありがとうございます! ありがとうございます!!」
オズオズという感じで握手に応じてくれるアウラちゃん……かわいい……もう手洗えない……
でも……あれ?
みんな、なんで居心地悪そうなんだろう……
一瞬『あたしが気持ち悪くなりすぎたから!?』と思ったけど、
(……どちらかと言えば、覇気がないっていうか、何ていうか……?)
あたしが戸惑いからキョロキョロしてると、アウラちゃんが
「……あの、さぁ……」
「え、な、何?」
「……どうして、あたし達なんかに会ってそんな嬉しそうなの?」
「……ぇ……」
周りに目を向けたら、マーレ君もシャルティアちゃんも下を向き、コキュートスさんやデミウルゴスさんは目をそらした。
(あたし達『なんか』!? 何でそんな自己評価低いの!?)
「ど、どういう事!? 何で」
「だって、あの時の戦い、見たんでしょ? ナザリックを、御方々を守らなきゃいけないのに、あっという間にやられちゃって、お役にも立てなかった情けない姿を、さ……」
その一言で、何があったか……いや、何が『なかったか』を察した。
「……モモンガさん……」
「ん?」
声が震える。
推しだけど、推しのリーダーだけど、これだけはファンとして言わなきゃいけない!!
「せっかく、この子たちとお話しできるようになったのに、あの時の事を
「ぇ」
あたしが声を上げるとシャルティアちゃんが戸惑いつつも「お、お前、モモ……アインズ様に何を!」と……でも聞いてもらわなきゃいけないの!
「編集されてて全容は分からなかったけど、鮮やかな大勝利だったじゃないですか!
あたしの言葉を聞いて、みんな小さな驚きの表情でこっちを見た。
やっぱり伝わってなかったんじゃないですか!!
「あたし、感動したんですよ? この子たちが皆さんと一緒に、時には一人で、あれだけの敵を相手に足止めして、戦力を削って『スゴいな』って。『あんな事できるくらい皆さん作り込んだんだ』って。
観てたから知ってますよ?
本当は加勢したかったペロロンチーノさんが『良くやったシャルティア! 仇は取ってやる!』って、怒涛の爆撃をしたり、茶釜さんが『がんばったね! 後は任せて!』って、タンクなのにゴリゴリ前面に出て敵を押し込んじゃったり……
「ペロロンチーノ様が……」「「ぶくぶく茶釜様……」」
コキュートスさんやデミウルゴスさんが倒れた時、武御雷さんもウルベルトさんも、すごく誇らしげに止めの一撃ぶちかましてたじゃないですか!
「私が……」「オ役ニ立テテイタ……?」
だから、この子たちには胸を張っててほしいんです……あの戦いを思い出して、こんな顔してほしくないんです!
言葉にしなきゃ伝わらない事があるんですよ、モモンガさん!!」
あたしの言葉でモモンガさんは(骸骨の表情は分からないけど……)アゴをガクンと開いて、
「……ぉ、俺は………………もしかして、皆さん……」
「……?」
「………………守護者達よ!!」
モモンガさんの呼びかけに、守護者のみんなは弾かれたように顔を向けた。
「……あの戦いから、余りに時間は過ぎてしまったが、我ら41人からの、お前達への評価を聞いてほしい。各々の創造主から直接の言葉でないのは残念かも知れないが、これは我ら共通の評価である。
お前達、良くぞあそこまで戦った!」
「「「「「!?」」」」」
「『情けない姿』? 冗談ではない! お前達は我らに創られた存在……お前達は知らなかったのだろうが、お前達のような『創られた存在』が、我らと同格の敵を相手に、あれ程までの戦果を挙げる事自体が常識外の偉業だったのだ!
『役に立たなかった』? 何を言う! お前達が、倒れ伏す最後の瞬間まで戦い続けた事こそ我らの勝利に繋がったのだ!! お前達がいなければ、我らは間違いなく敗北していた!!
だから守護者達よ、誇るが良い! お前達は我ら41人の情熱と努力の結晶、アインズ・ウール・ゴウンの栄光そのものであると!!!」
力強く称えるモモンガさんの言葉に、守護者のみんなは
「「ぅわあぁぁぁん!!」」「わ゛ら゛わ゛……わ゛ら゛わ゛は……!!」「ウオォォォ!!!」「……無駄では……なかったのですね……」
号泣の大合唱。
その尊みあふれる光景に、あたしもボロ泣き……ではあるんだけど、あたしごとき『湿ったぞうきん』が推しの方々が作り出す美しい景色を汚すわけにはいかないので、すみっこの方でグヂュグヂュになってた。
「ぁうぅ……よ゛がっだよ゛ぅ……」
そんなあたしをアルシェが、
「……ぁー、うん、よかったね、よしよし」
と(なんで死んだ魚みたいな目なんだろう……)なでてくれてた。なんだ天使か。
「ユーディットさん」
いつの間にか近くまで来ていたモモンガさん。
その声色は魔王ロールの時と違って、どこまでも優しい。
「あなたのおかげで、私は大切な事に気付いた気がします。ありがとう……」
「い、いえそんな!? あたしなんか単なるちっぽけなファンで」
「『なんか』ではないと思いますよ。ファンだからこその言葉だったんじゃないでしょうか」
そう言ったモモンガさん、雰囲気を改め
「……ユーディット・フォルトーネ!」
「は、はいぃ!」
突然の魔王ロールで呼ばれ、身が引き締まる。
「認めよう、お前の我らに対する思いは本物であると。ならば、その熱意に報いるとしよう。お前を我らが居城、ナザリック地下大墳墓へ招こうではないか」
「……ぇえええ!?『聖地巡礼』ですか!? いいんですか!?」
「……フフッ、自慢したいんですよ。我々が築き上げた『宝物』を。残念な事に、この世界ではあなたほどのファンとは他に交流できそうもないので。だから見てほしいんです」
「ぜ、是非ともお願いいたしますぅぅ!!」
思わず五体投地してしまった。
あたしの連れという事で他のみんなも一緒に『ナザリックツアー』へと招待された。
動画で観た各階層を、モモンガさんや態度が軟化した階層担当の守護者さんに解説されるというファン殺しな待遇(アウラちゃんにちょっとツンデレな対応をされた時は鼻から『推しへの愛』が吹き出して死ぬかと……)までで終わりだと思っていたら、外部には非公開の第9階層『ロイヤルスイート』にさえ案内され……アルシェが言うには『立ったまま気絶してた』らしい。
『スパリゾートナザリック』に入らせてもらった時は、アルシェやレイナースさん、イミーナさんら女性陣がいなければ危うく尊みを抱いて
緊張と興奮で、創作物によく出てくる『ブリキのおもちゃ』のようにぎこちない動きをしてたのを、スパやら天上の美食やら豪華客室やらでドロドロに溶かされ『ナザリック恐るべし……あたしは生きて帰れるのだろうか……』などと思いながら就寝したのだった。
次回、ユーディーを待ち受ける真の敵!!
果たしてユーディーは生きてナザリックを出られるのか!?
最終回「ユーディーよ永遠に」お楽しみに!!