【完結】ユーディー(偽)のアトリエ──アーウィンタールの錬金術士(ハーメルン移植版) 作:ブドウ冷やしんす
語感が良いからとタイトルを「アーウィンタールの錬金術士」にしてしまったのでアルシェちゃんにヒロインやってもらいますか(相変わらず無計画)
なお、おわかりと思いますが「錬金術師」関連の設定は
ユーディーのハラペコ珍道中
「……どこ? ここ」
『外に見える景色も』だけど、いくら調合失敗したからって部屋が『こんなに』めちゃくちゃになった事は今まで一度もなかった。
おまけに
まるで『突然ゲームが現実になったみたい』に。
部屋の様子は『私の部屋』だけど、何かディティールが細かいような気が……
「……とりあえず、外に出てみよう」
私は持ち出せる物をアイテムボックスにしまって、ついでに身だしなみチェック。
……さっきの爆発で心配になっちゃってね。
バキバキに割れた姿見の前に立つ。何とか見える。
原作通りの赤を基調にした帽子と上下。
パフスリーブだけど
いかにもファンタジー!
下はタイトスカートに黒いタイツ。
帽子は羽根がアクセント。
かわいいよねユーディーのファッション。
まぁ正確に言えば振り袖じゃなくて特大ウィザードスリーブだけど。
……服と同色のポシェット (
アレもコレもって採取生活だと、つい……
あとは翼のモチーフが付いた杖を持って、と。
準備完了!
……え? 『オウムのフィンクはどうした』って?
金欠錬金術師にNPCを持つ余裕なんかないのよ!!
……ハァ。
ドアが吹き飛んだ玄関から外に出る。
見渡す限りの草原。
遠くの美しい山々。
スモッグの気配もない、
ゲームの中でしか見た事のない、自然に満ちた景色が広がっていた。
「……きれい……」
色んなゲームをしてきたけど、本物なんて一度も見た事ない。
ただ立ち尽くし、その光景に目を奪われていた。
……そんな感動的な時間だったが、後ろから
「な、何!?」
あたしが出てきた部屋は、あたしの部屋だったはずなのに外観は『コンテナハウス』ではなかった。
そこにあったのは、間違いなく100年以上 (と言っても
……ん、アレなんだろ? ドアのない玄関口の上に何か……肉球っぽいマーク……なんて観察している間もなく、メキメキ音を立てていた家は、
「ぅわわわわ!?」
破片やらが飛んで来たのもあり、
後に残ったのは
「あの家って何だったんだろ……」
初めからそこにあった
何にせよ、もう確かめる事はできない。
「……とにかく行こう! これから、あたしの『錬金術士人生』が始まるのよ!!」
《約5時間後》
「……おなかすいたぁ……」
歩けど歩けど、遠くの街どころか
……
錬金術で使う魔法を優先してたし、戦闘面でも『ボッチの錬金術師が空飛んだから何?』とか思ってスルーしてたんだよね。
……あ! 空から毒を
足を動かしたら頭が働くって本当なんだね、今さらだけど……
リアルでこんなに歩いた事ないよ……
でも、どっちみち『売り物』使いたくなかったしなぁ。
それにしたって今は一番ほしい魔法!(泣)
そんな便利アイテムあるわけないか! あはは!!
……はぁ。
最初こそ『きれいな景色!』『空気おいしい!』『自分かわいい!!』ってキャッキャはしゃいでたけど、もう今は『何か食べたい……』としか考えられない。
どうしてこんなに空腹で追いつめられてるかって言えば、ユグドラシルでの万年金欠錬金術師プレイが原因。
何かしてれば、お腹が減るのはホムンクルスだけではないのだ。
だから空腹を無効化するマジックアイテム (もちろんあたしは持ってない!) を装備するか、定期的に食事するしかない。
そして、ボッチのあたしは作ったポーションや毒を売ってお金を稼いでいたわけだが、低レベルで初心者な錬金術師が作るポーションや毒を買ってくれる相手なんか、街のNPCくらいなものである。
……初心者への救済
まぁ、そんなわけで出費を切り詰めたいあたしは、ギリギリまで食事しないで活動していた。
……最終日も相変わらずに、ね。
ハラヘリ状態で異世界入り……空腹でも苦痛を感じないのはゲームだけの話よ。
たぶん昼の少し前くらいに歩き始め、もう今は夕暮れの気配。
あ、遠くの空が暗くなってきてる……
このまま本当に
そんなあたしに近づく影……誰かいた!? と、思ったのだが
「ギャギャ、ニンゲン、イタ! クウ!」
「……なんだ……ゴブリンかぁ」
もう泣きたくなってきた。
一応40レベルである。ゴブリンくらい怖くない。
だから……
「………………ゴブリン…………生き物……食べれるかなぁ」
人間をやめそうな感じになってた。
「
飛んで来た魔法が、ゴブリンの横っ
さらに剣士が走り寄り、
ゴブリンはグチャグチャになった。
「大丈夫ですか!?」
剣士が声をかけてきた。
あたしは
ドルイドらしき人も来て、
「
「すまねぇ、一匹取り逃がしちまって」
とチャラそうなレンジャーが謝る。
あたしは……
「………………あ、あたしのおにく」
さっき
グゥーっと、お腹の虫が盛大に鳴いた。
「おながずいだぁぁぁ!!」
ギャン泣きである。
言葉の意味を理解した
「あんなの食べちゃダメですよ!?」
「腹を壊すのである!!」
ドルイドも一緒になって言う。
「干し肉ならありますよ!?」
「水も飲むかい? 嬢ちゃん」
剣士とレンジャーが差し出した。
「……いいの?」
あたしが確認すると、みんなで『ウンウン』と
……人情が温かいよぅ。
「うぅ、ありがと、おいしい、ぐすっ」
何気に『天然物の肉』である。
初めて食べる『本物の食べ物』がマズいはずがなく、泣きながら食べたのだった。
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「本当に助かりました」
「いいんですよ。困った時は助け合わなきゃ」
チームリーダーで戦士のペテルさんが優しい返事をくれる。
聞けば冒険者チームの『漆黒の剣』というらしい。
銅、鉄、銀、金、白金、ミスリル、オリハルコン、アダマンタイトとある階級の内『銀級に上がったばかり』と
まぁ助けてもらったからっていうのはあるかもだけど。
ただ、あたしの方がレベルは上っぽい。
でも、あたし基本『毒か杖で撲殺』だから強さって正直ピンとこない。
とはいえ『この世界にカンストプレイヤーがいたら神様扱いだろうな』くらいはわかる。
あたしも撲殺力だけなら英雄クラスの威力!……うーん、いや、かっこよくはないな……
というか、そもそも魔法とかモンスターがユグドラシルと同じなのね、って。
違ってたら溶け込むのに苦労したかも。安心安心。
道中、色々な現地情報を教えてもらった。
冒険者っていうのはモンスター退治を含む何でも屋さんらしく、名前の響きに比べると (アダマンタイト級とか高ランクの人は除き) あまり夢のない仕事みたい。
他にも『周りにどんな国がある』とか『物価はどのくらい』とか。
金欠錬金術師だったあたしとしては現地のお金がないのが不安……という事で
「街に着いたら、さっそく換金して干し肉代と通行料お返ししますね」
「そのくらいなら大した金額じゃないから、気にしないでいいのに」
皆さん言ってくれてるけど、さすがに申し訳ないし。
それと、宿代まで建て替えてもらうのは悪いんで、まずは先に換金しようかなと。
あとルクルットさん「そんなら俺と
……『余計なトラブル』が起きないよう自立した生活をしなければ!(
あたしが街道を見つけられなかっただけで、街まで遠くない位置には来てたらしい。
……地平線とか水平線って、実は4キロ半くらいなのね。近い。
今からなら間に合う時間かも、という事で店の紹介もお願いした。
「でも、いいんですか? 案内するのが街一番の薬師の店で。変な意味じゃないですけど、どうせ換金するなら……」
と、ニニャさんは心配してくれる。
素材にせよポーションにせよ、買い取ってもらうなら同業者でしょ。
それなら確かにニニャさんが言うように、ランクの低い店の方が『高値で売り付けられるかも』とは思う。
でも、これからその街『エ・ランテル』で商売するなら、街の同業者が
そういうわけで、皆さんの案内でエ・ランテルに入った後、ニニャさんに『バレアレポーション店』に連れてきてもらった。
「着きましたよ。ここです」
「ありがとうございます!」
さて見せてもらおう、エ・ランテル一番の薬師のクオリティとやらを!
「こんばんわー! お邪魔しまーす!」
「リイジーさん、いらっしゃいますか」
ドアを開け中に入ると、薬草の匂いなのか青臭い感じ。
リアルでなら顔をしかめそうだけど『ユーディー』になったからか全然平気。
むしろ『初めて
何となくだけど『グラムナートでは嗅いだ事ない』って感じてるんだろうな、あたし。
声をかけると作業中だったのか、奥から
「いらっしゃい。何か入り用かね」
この人がリイジーさんか……ちょっと
「初めまして! 錬金術士のユーディットといいます!」
「……なんだい、同業者かい」
単なる購入客でなかったからか、面白くなさそうな顔になってしまった。
「あ、あはは、すみません……遠くから来たもので、この辺で使えるお金を持ってないから素材か何か買って頂けないかと思って」
「交易通貨を持ってない!? ずいぶん遠くから来たねぇ……本当だとしたら、ふん、面白い。珍しい素材でもあれば買ってやるよ」
良かったぁ。何とか興味は引けたみたい。
あたしは「それじゃあ……」と、カウンターの上にリュンクスストーン (つまり琥珀) と『最低限これくらいは作れますよ』って腕前をアピールするために中間錬成物のゾルエ溶液、あと自作の
バフポーションとか耐性ポーション、デバフ毒なんかもあるけど、基本が大事よね。
ちなみに錬金術
この系統の魔法は
……反面、攻撃魔法も習得できるものの
それでも錬金術師としての『
つまり『錬金術師で習得できる魔法』というのは、ぶっちゃけ『これ』である。
錬金術師というのは作成スキルを取るための
誰かに魔法だけ借りて調合する事もできるけど、ボッチプレイでは選択肢にならない。
いや、そりゃあ、ね?
スタート地点が
けど、やっぱり優先したい魔法ってのがあって……
え?
あっはっは、ご冗談を!……はぁ。
アレに相当する攻撃魔法って言ったら……
特殊な溶液を作るのに必要だったから習得したけどクソ燃費悪いやつ。
結果『殴った方が早い』という事になる。
違うというなら誰か正解を教えてほしい。
もちろん『ボッチで錬金術』が前提で、ね!!!
それはさておき……さぁ、どんな反応を
「こ、これは!?」
……え?
リイジーさんは、
「な、なんという事じゃ……劣化しない『完成されたポーション』、本物の『神の血』じゃ……しかも作成者『ユーディット・フォルトーネ』……ほ、本当に、おぬしが!?」
「え、え、え……あ、はい、私が作りまし、た」
ど、どうしちゃったのリイジーさん。なんかこわい。
ものすごい鬼気迫る表情で「待っとれ!!」と一度奥に引っ込むと、革袋を手に戻り、袋をカウンターの上にドチャア!
中から金貨が
「ここに金貨200枚ある! 頼む!! 作成法を教えてくれぇ!!!」
「ぇ……えぇぇぇ!!?」
なんで!? どうして!?
だって『街一番の薬師』じゃないの!?
それくらい普通に知ってるんじゃ……?
あたしが
「ひぅ……」
あんまりにも怖くなって、あたしは適当な枚数の金貨を掴み、一枚をニニャさんに押し付けると
「それ全部あげるから許してぇぇぇ!!!」
泣きながら店を飛び出し全力で逃げた。
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「……おなかすいたぁ……」
結局、あの後そのままエ・ランテルからも逃げ出し方角も何も関係なく夜通し走り続けた。
エ・ランテルの宿屋に泊まるなんてとんでもない。
絶っっ対、追いかけて来るに決まってる。
……それにしたって、せめて街道に
なんか霧がすごいとこ来ちゃって、何も見えないまま歩くはめに……
たまに出て来る
はぁ……ポーションとゾルエ溶液、リュンクスストーン各1個と引き換えにしたのが干し肉2、3枚(街に入る前に食べたやつ)と金貨数枚かぁ……
おまけに今、手持ちの物で食べられそうなのは無し。
素材……明らかにマズそうだし、中には『モロに毒』なんてのも。
錬金術道具は論外として、ポーション類……いやいやいや。
後は数枚の金貨……かじってもお腹いっぱいにはならないし、お金なんてのは『お買い物券』なんだから文明圏内じゃなきゃ意味ないのよぉ!!
腹立ちまかせに
足元に散らばった骨のカケラを見る。
「……いやいやいやいや、骨しゃぶってもムダだし。そもそもモンスター扱いとはいえ『人骨』じゃん。そんな事したら『ユーディー』じゃないから」
あ゛ぁ! 空腹と睡眠不足で凶暴になってキャラが
まぁ夜が明けて良かった。
『売り物』使うしかなくなるし、リイジーさんのリアクション見て思ったのが『あたしの作る物は “ この世界では ” 普通じゃない』という事。
そう考えると、ユグドラシルと同じ素材は手に入らないかも……
なら、できれば消費は避けたい。
貧乏性? 当たり前じゃないのよ!
こちとら右も左もわかんない異世界で赤字スタートの迷子中なんだから!!
……に、してもヤバい。
このまま本当に野垂れ死ぬかも知れない。
『異世界で幸せな第二の人生!』だと思ったのにぃ!!
あぁ、限界が近いかも……幻聴まで聞こえてきた……遠くの方で何かカチャカチャ……
……違う! 戦闘音だ!!
意識が浮上する。
すぐさま音の聞こえる方向へ走り出す。
霧の向こうに人影二つ。
やった! やっと人に会えた!
加勢したら街までの道を……いやその前に食べ物!!
距離が縮まり霧が薄くなると、人影が誰なのか見えた。
一人は小柄な
もう一人は……彼女の背後で剣を振り上げる
「後ろ! 危ない!!」
あたしの声に振り返りかける、が、間に合わなかった。
剣が振り下ろされ、彼女は崩れ落ちた。
「
ここは現実世界。余波の心配がなく燃費のいい攻撃魔法となると、誘導性のある
5発の魔光弾が
「ねぇ!? しっかり!!」
倒れた彼女に駆け寄り声をかける。
マントのおかげで威力が分散したのかも知れないけど、ザックリと斬られた背中の傷は浅くない。
……初めて見た『深い生傷』に血の気が引きそうになった。
いや怖気づいてる場合じゃないでしょ!!
近くで戦っている仲間の人たちがいたらしく、騒ぎに気づいてくれた。
エルフっぽいレンジャーの女性が、
「アルシェ!? ヘッケラン、アルシェがやられた!!」
「な!? ロバー頼む! イミーナ、抑えるぞ! 援護を!!」
この娘、アルシェっていうのね。
ロバーと呼ばれてた神官の人がメイスで
「助けて頂いたようで、ありがとうございます! 後は私が」
骨が散らばった状況を見て礼を言ってくれた。
けど、
「あの!……失礼ですが、位階は?」
第三位階でエリートの世界、この人が治せる怪我か心配になったのだ。
「……今の余力だと、
悔しそうに顔を歪めて言った。
明らかに『重傷』よ!
一命は取り留めるかも知れないけど……
うつ伏せに倒れている彼女が、あたしを横目で見て呟いた。
「……てん、し、さま?」
いけない、意識
「治癒ポーションを使います!!」
ポシェットから取り出そうとして、一瞬、迷う。
このポーションを知られたら、また……
そんな事言ってる場合じゃないでしょ!?
ここで助けなきゃ『ユーディー』じゃないわよ!!!
取り出したポーションの色にロバーさんはギョッとした様子だったが無視!
飲む余裕はなさそうだから傷に直接ふりかけた。
たちまち傷は消え去り、彼女の呼吸も整い始める。
……よかったぁ。
「すまねぇロバー! 少し逃げた!!」
ヘッケランと呼ばれてた双剣士の警告で意識を向ける。
3体ほど走ってくる。
あたしは立ち上がって
近くに人は無し。なら、
「
3体まとめて
「へっへーん! どんなも、ん……あれ?」
あ、やば、そうだ……空腹と、睡眠不足、は、魔力消費、率、上がっ
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sideアルシェ
「その嬢ちゃんのおかげで助かったな」
意識を失いロバーに背負われている『彼女』に目を向けつつ、ヘッケランが言った。
私達はカッツェ平野のアンデッド狩りに参加していた。
これまでいくつか仕事をしてきたからチームワークは
間合いを気にするあまりイミーナの警戒範囲から外れ、
ロバーが言うには、かなり深い傷だったらしい。
「見た事ない色でしたが、たった一本で完治したんですよ」
「そ、それ、かなり高価なやつなんじゃない?」
「小声で聞き取りにくかったのですが、『助けなきゃ』と」
「マジか……ロバーみたいな善人そうそういねぇと思ってたが……こりゃ頭が上がんねぇな」
「とりあえず宿代くらい出しましょ? まだ意識も戻らないし」
私は、何を返せるだろう。
ただでさえ借金を抱えていて、
『彼女』の顔を見る。
私の、命の恩人。
あの時、見たのだ。
今は空っぽになってしまったようだけど、かつての師、フールーダ・パラダイン様をも超えるかも知れないほど強い輝き。
……だから姿を見間違えて『天使様』なんて思ってしまった。魔力オーラで逆光になり、帽子の羽根飾りで勘違いした。声に出してなければ良いけど。恥ずかしい……
だって本当に『お迎え』だと思ったんだもの。
だから、何かお礼がしたい。
せめて、何かの力にでもなれたら……
そういえば、まだ名前も聞いてない。
名前も、何かできる事があるのかも、何も知らない。
だから知りたい。目を覚ましたら、話してみたい。