【完結】ユーディー(偽)のアトリエ──アーウィンタールの錬金術士(ハーメルン移植版) 作:ブドウ冷やしんす
せかいをーかくめいするちからをー(棒読み)
sideレイナース
「いやぁ参った参った! マジで回復してるじゃねぇかよ」
「試しという事でアイテムを過信するつもりで戦ってみたのですが……フッ、バジウッドに勝てたのは久しぶりですね」
「へっ、なら『デニッシュ』なしで勝ってみせろや。それくらいズルいぜ、そいつ」
ここは城内にある修練場。
噂の錬金術師ユーディット・フォルトーネが作った『デニッシュ』なる回復アイテムの性能を陛下と我ら四騎士が確認するため、バジウッドとニンブルの模擬戦が行われた。
ニンブルは『激風』の名の通り、普段なら風のように立ち回り、攻撃を受けるような無謀な戦い方はしない。
だけど、
デニッシュの性能は『本物』という事ですわね。
それほどの、見た事も聞いた事もないアイテムを作れるならば、あるいは……
でも、もうダメですわね。今は
先程から陛下は獲物を見定めたグリフォンのような目をしていらっしゃる。
下手に接触して何かを御破算にしたら、呪いが解けても『後がなくなって』しまいますわ。
実際、今も陛下はニンブルに、
「……ニンブル、お前の感触としてはどうだ? 四騎士全員に持たせておいたとしたら、ガゼフを封殺できそうか」
「封殺どころか倒しきるのさえ容易でしょうね」
「それほど、か」
「逆に、ガゼフに使われたら悪夢ですね。まず勝ち目がないでしょう」
「……やはりそうか。直接会えなかったのは残念だったが、城に招かれて嫌な顔をする者も居るまい……爺のような
……彼女が魔法省入りするなり、陛下からの話を蹴るなりするまで待つしかありませんわね。
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「店主さん、ポーション15ダース、解毒薬8ダースと4本お待たせしました。デニッシュの生地は180個分、裏に置いておきますね?」
「おぉ、良かった。間に合ったな。ありがとう」
いやぁ、今日も売れる売れる。
金貨3枚が全財産だった頃が嘘みたいね!
あと、アルシェとロバーさんには浄化魔法と付与魔法で本当に助かってるわ。
……なんか、ほとんどフォーサイトは『あたし専属ワーカーチーム』みたいな状況になってるけど。
特にアルシェ、最近すごいのよね。
向上心というか何というか。
こっちからの依頼や手伝いみたいな『仕事』だけじゃなくて、あたしが持ってたユグドラシルの魔導書を解読しようとしてるみたいだし。
……何で金欠錬金術師だったくせに使いもしない魔導書なんて持ってたかって?
店売りの魔導書なんて、店に売っても二束三文だからよ!!
(ゲームあるある)
……いや、まぁ、あたしが間違って購入したのが悪いっちゃあ、そうなんだけど。
操作ミスで手元が狂ったのよ……
あとは
あたしにとって攻撃魔法ってのは『売り物を使いたくない時の範囲攻撃』なんだから、単体攻撃魔法とか直線攻撃魔法とか、そんなの杖で殴った方が早いのよ(脳筋)
……あたしみたいな後発初心者とかキャラ作り直しプレイヤーとか、いたら売れないかなぁ、なんて思って。
貧乏性で悪かったわね。
で、持ってても仕方ないし『友達の役に立つなら手放しても
『翻訳メガネ』みたいなのあれば良かったんだけど、そんな便利なアイテム存在するわけないわよね。
……古代の仮面……いやいや、さすがに翻訳は無理か。
それでも部分的に読み取れた内容から「これほどの魔導書は見た事ない。写本を作れたら大きな資産になる」って……そ、そうなの?
とはいえ、すごいなぁ。アルシェは勉強熱心でエライ!
そんなアルシェのために今度、何か(古代の仮面以外で)アイテムを……
などと考えを巡らせていたら、
「ところでユーディット、君にお客さんだよ?」
「え、誰ですか?」
あたしがホールの席をキョロキョロ。
商品待ち、予約待ちのお客さんが結構いるのよ。
店主さんが指差した方向には……
「あ! 漆黒の剣の皆さんじゃないですか!?」
あたしに気が付いて振り返ると、彼らは笑顔を浮かべて席を立つ。
「……誰?」
ぅわお、アルシェいつの間に……
「ほら、前に話した『エ・ランテルでお世話になった冒険者チーム』の人たちよ」
あたしが言うと、何故かアルシェは前に。
あたしと彼らを少し
と、小走りで来たルクルットさんが
「ひっさしぶりぃ! ユーディーちゃん元気し「ご用件はなんでしょうか」ぇ……なんかピリピリ? こちらのお嬢さんは?」
「ぇ、あ、お久しぶりですルクルットさん。この子は友達のアルシェって言います……ァ、アルシェ?」
……えーっと? どうしちゃったの?
あたしが困惑してると、後から来たニニャさんが杖でルクルットさんの脇腹を小突いた。
「ぉっふ」
続くペテルさん、ダインさんが
「こらルクルット、いつもの事とはいえ
「ご友人に警戒されるのも当然である」
……警戒……あぁ!
「……ユーディーは人が良すぎる。気を付けるべき」
ルクルットさんにジト目を向けたままアルシェが言う。
ぇえ……あたしだって『あけすけ』ってわけじゃないのに……
「ルクルットが毎度すみません。お久しぶりですユーディットさん。いきなり飛び出して行ったから心配したんですよ?」
と、ニニャさん。そういえばそうでしたね……
「あはは……ちゃんとした
「そのようですね。ここにいる方々みんな『ほぼ、待ち客』と聞いて、なるほど
「……『なるほど』?……ぁ……ニニャさん、あのポーションの件は」
「大丈夫ですよ。分かってます。というより、リイジーさんから口を酸っぱく言われてますから」
苦笑いしつつ言ったニニャさんは、けれども表情を改め
「今回お
あぁ……リイジーさんから……ぇえ……
まぁ、本人が来たわけじゃないからマシかなぁ。
「な、なるほど。それならアトリエにどうぞ」
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「それで、お話というのは?」
こんな事もあろうかと念のため買っておいた椅子を出して座ってもらった。
アルシェが「心配だから私も同席する」と言って付いて来たけど、そんなに信用ないのかなぁ…
ペテルさんが応えてくれる。
「はい。リイジーさんから頼まれたのは、一つは『できれば連れ戻してほしい』というもの……ですが、もちろん今の状況を見て無理強いするわけにはいきません」
ペテルさんは『連れ戻』の時点で目付きを厳しくしたアルシェの様子に少し
あたしの友達がゴメンナサイ。
そんな強引な事をする人たちじゃないのは分かってます。
「二つ目は……まぁ、ご想像つくかとは思いますが『あのポーションのレシピを教えてほしい』というものです。当然、その場合は言い値で謝礼を払うとの事でした」
言い値……ぅわあ……
でも、うーん、
「教えてもいいんですけど、素材が手に入らないから実際にレシピ通り作るのは無理なんです。代用品の素材を見つけ出すしか……あたし、とても遠い場所から来てしまったので、あたしの知ってる素材は、この辺りでは存在しないんです」
まぁね? リイジーさんに
けど、そこから
そのくらい入手可能な素材からは『目標地点』が遠いのだ。
それは材料であるゾルエ溶液、その素材の黄金溶液が『本来なら』赤いから。
金コロイド溶液って基本的に赤いのよ。
てか、本来は金貨を消費した時点で『黄金溶液』と呼ぶべきだし、その時点で赤くなるべきなんだけど、ユグドラシルではゲーム的な演出として黄金溶液やゾルエ溶液は赤くないし、金貨を消費するのは魔法を込めた時だし、赤くなるのは完成した時なのよねぇ……
と、まぁ、そんな『ゲーム的な』製法を実現させるには『ゲーム的な』素材が必要で、
「逆に言えば、素材からレシピを割り出さないといけなくなるので、代わりになる素材を見つけても今あるレシピは直接の役に立たないんです」
「あぁ、それは……ユーディットさんは正直な人ですね。それを黙って取り引きする事もできたでしょうに」
「あはは、さすがにそんな……まぁ正直というか、錬金術士として、ですかね」
「と、いうと?」
「錬金術って『受け継がれてきたもの』じゃないですか。あたしが楽しく錬金術士やってるのは
そう、両親が遺してくれた技術があったから、あたしは
……ん? これは『ユーディー』としての意識?
ああああああ仕事が
何も社会に遺してなくてゴメンナサイぃぃぃ!!!
投票に必要な知識って自力で勉強しなきゃいけないから、って、これは言い訳ね……
これからは『ユーディー』に恥じないように投票……あ、絶対王政だから選挙ないわ……う、うーん……じゃあ! せめて立派な錬金術士になろう!!
よし! 整合性とれた!←
いや、キャラへのリスペクトを忘れた事はないのよ?
本当はロロナも好きだけど、ロロナには家族も友達もいた。
ロールとはいえ『たった一人で異世界ユグドラシルに放り込む』のは良心の
だから『天涯孤独だけど転移した先で友達をたくさん作れるほどバイタリティあるユーディー』を選んだの。
っていうくらいだから『頭の中までユーディーになってきた』のは別にいいんだけど、ふとした時に『私』を思い出すとギャップで心苦しいぃ……
……え? ライザ?……いやぁ……そのぅ……『私』がロールするには、ちょっと陽キャがすぎrゲッフンゲッフン
いいいいいじゃない別にぃ! ユーディーの方がかわいいの!! 以上! 閉廷!!!
「ユーディットさん……なるほど、誇りという事ですか」
「これぞプロ意識であるな」
「錬金術師として、だけでなく人として立派なお考えですね(それに比べて貴族の豚共は……)」
「ユーディーちゃんカッコイイぜ! やっぱ俺と付き合(ドスっ)ぉっふ」
「あはは、いやいや……」
いやマジで中身コレでゴメンナサイ……
アルシェもそんなキラキラした目で見ないで……
「と、ともかく、そういうわけで『レシピそれ自体は役に立たない事』『素材の再入手は不可能、代用品を見つけるしかない事』をお伝え頂いて、それを了承の上でならレシピやサンプルいくつかをお売りする事はできます」
「わかりました。お伝えします」
それはそうと……まぁ依頼料はもらってるんだろうけど……あたしとリイジーさんに振り回されて申し訳ないなぁと思って、
「せっかく
「え、いやいやそんな、こっちも仕事ですし」
「まぁまぁ。エ・ランテルにもお客さんが増えたらいいなっていう打算込みですよ」
「はっはっ、やっぱり正直な人だ!」
ペテルさんには「帰りの御守り代わりにどうぞ」とデニッシュを、ダインさんには『ほうれんそう』ポーションを、ルクルットさんには解毒薬を、ニニャさんには完成したばかりの琥珀湯を贈ったのだった。
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「なぁ、アルシェ、マジで食うのか? それ」
「あの娘の腕を信用しないわけじゃないけどさぁ……」
「お腹を壊したりは……」
「もう!! ちゃんとした調合アイテムだって言ってるじゃないですか!!!」
あれから数日、あたしはフォーサイトにも協力してもらい墓場に
頑張ってくれてるアルシェへのプレゼントを作りたかったのだ。
そして大量の『ひとくちだんご』を作り、アトリエ開業直後くらいに作っておいた『祝福のワイン』と合わせて『ネクタル』を作り……ついに!
MP増加の『神丹』を作り出す事に成功したのよ!!
……調味料については市場で『アゼルリシア山脈(……そのうち行ってみたいなぁ……)で採れたギガントイーグルの巣だ!』というのを見つけたのでレヘルンクリームを調合……人間が食べれるレベルの味になってればいいなぁ……なんて。
ちなみに『みがわり人形』は発展性がないし、『生きてるナワ』は、その先で『空飛ぶほうき』を作るために必要な『グラビ石』の代用品や付与魔法に当てがなかったから後回しにしたの。
誰か、重力を操る魔法とか使えないかなぁ……
それはともかく! あたしメチャクチャがんばったんだからね!?
確かに下水道のスライムから穫ったけど!
確かになんかすごいイヤなオーラ出てるけど!
これを食べたら将来ものすごい
アルシェの将来を思って、あたしは
……アルシェ、それ『(あたしを)信頼はしてるけど(調合結果は)信じてない』って事じゃ……
意を決し神丹を口に放り込むアルシェ。
あたしは倒れ伏したアルシェを抱きしめる。
その光景は、さながら宗教画のようであった。←
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sideペテル
「はぁっ……はぁっ……何とか、乗り切ったな」
「マジでヤバかったな、さっきのは」
「あまりの危機に、今は逆に一皮むけた気分である」
エ・ランテルへの帰り道、カッツェ平野から流れて来たと思われるアンデッドの群れに遭遇してしまった。
あの『デニッシュ』というアイテムは本当にすごい。
自分で信じられないくらいの敵と戦う事ができた。
彼女のアイテムがなかったら、我々は今頃……
それに、
「……魔力を回復なんて、聞いた時は『気休め程度かな』と思ってましたが……こんなに回復するとなれば『革命』ですよ!!」
……彼女のアイテムが、ただ危険に飛び込んでは消えて行くだけだった『冒険者の世界』を変えてくれるかも知れない。
アルシェのゲロイン回避は成されました(強弁)