【完結】ユーディー(偽)のアトリエ──アーウィンタールの錬金術士(ハーメルン移植版)   作:ブドウ冷やしんす

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それぞれの思惑

 

sideリイジー

 

 

「……で、どうですかね。何か分かりましたか」

 

 

「あんなぁラケシルさんや、いくら同じ錬金術師と言ったからとて、物を見ただけで天才の考えを簡単に解き明かせたら苦労なんぞ無いわい」

 

 

魔術師組合は帝国に対して冒険者組合ほど影響力がない。

 

あの嬢ちゃんのアイテムを取り引きするのは無理だったんで、ラケシルは魔術師組合と冒険者組合の両方に加入しとる魔法詠唱者(マジックキャスター)を使い『琥珀湯』を確保、わしのところへ持って来たわけじゃ。

 

しかし、のぅ……

 

 

「……それほどまで、なのか」

 

 

「あの子は天才じゃよ。間違いなく歴史に名を残すほどの……ま、引き続き調べては見るわい。期待せず待ってておくれ」

 

 

「よろしく頼みます!」

 

 

………………やれやれ、やっと帰ったわい。

 

貴重な時間を使わせおってからに。

 

 

まぁ、あやつのおかげで例の魔力回復ポーションも調べられるわけで、そこは感謝しとるがね?

 

とはいえ魔術師組合には悪いが、しばらくは泣きを見てもらうしかないんじゃよ。

 

わしが『何かを持っている』と気付かれるわけにはいかんのじゃ。

 

すまんのぅ。ひひひひ……

 

 

さぁ、研究の続きじゃ!

 

 

┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄

 

 

「ンフィや、どうだね」

 

 

「……本当にすごいね、神々が遺した(ことわざ)『目から鱗』だったっけ、そのままだよ。やっぱり体や頭を活性化させて『結果的に』魔力を回復させてるみたい」

 

 

「琥珀湯それ自体には魔力を多く含んだ成分は入ってないからねぇ。(にら)んだ通りじゃ。言ってみれば『副作用こそが効能』という薬じゃな」

 

 

魔力を回復させるポーションは今まで多くの薬師が挑戦してきたが、そのほとんどが『魔力を外から補えないか』という発想ばかりじゃった。

 

神官による魔力譲渡というのが頭にあったからじゃろう。

 

しかし、その考え方を薬に持ち込んでも成功しなかった。

 

もし先人達が聞いたら悔しくてひっくり返るわい。

 

 

あぁ、今ほど『この道』の奥深さに感動したのは、わしがまだ10代の小娘の頃くらいじゃろう。

 

そして……ひひひ……その頃の気持ちを味わいながら、わしはついに『伝説』に手を伸ばす。

 

 

とうとう手に入れた『神の血』のレシピ……

 

大枚はたいて伝言の羊皮紙(スクロール・オブ・レポート)を買った甲斐(かい)があったわい。

 

見える、見えるぞ……

 

どのような素材を求め、どんな工程を追加すれば、このレシピに再び意味が戻るのか!

 

 

ユーディット・フォルトーネ、おぬしとの出会いを、わしは神に感謝するよ!!

 

ふひひひひひ!!

 

とはいえ、少々悪どい手を使ったのは事実。

 

恩には報いる主義じゃからのぅ。

 

詫びの代わりに『以前の取り引きで未払いになっていた代金』として送金しておくとしよう。

 

 

┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄

 

 

《アトリエにて》

 

 

はいッお待たせ! 琥珀湯19ケース! ポーション、解毒薬と一緒に組合へ!!」

 

 

「ユーディー、パラスメダル5個、アルスィオーブ3個、ケルンズノット5個が追加予約」

 

 

あああああ!!! アルスィオーブとケルンズノットは2ヶ月後! パラスメダルも2週間待ってもらって!!」

 

 

デニッシュを琥珀湯で流し込む。

 

空腹と疲労と魔力切れをまとめてカバーする。

 

絶対体に悪いけど注文と予約が止まらない!!

 

 

それに、一体誰よ!? ラアウェの写本なんて注文したのは!!

 

あんなMPダメージ与えるだけのアイテムなのにグッタリするレシピを! この大変な時に!!

 

ムカついたから一緒に注文されてた古代の仮面、コロの実とかいうので『未来が見える』だけのヤツ作ってやったわ!!

 

 

「ユーディー、祝福のワイン2ケース追加」

 

 

あああああああああああああああ!!!

 

 

こんな事ならロロナを選べば良かった!!

 

助けてホムちゃぁぁぁぁぁん!?

 

 

《その日の日没》

 

 

「………………ぉ、終わっ、た……」

 

 

あたしはソファーに倒れ込む。

 

もう……何もする気力が……ない……

 

 

リアルでのブラック勤務と『いい勝負』じゃないのよ……

 

お城勤めなら楽だったのかなぁ……いや、あんなイケメン地獄(……天国? いややっぱ地獄? もうこれ分かんないわね……)で生活したら死んでたわ。

 

 

「……ユーディー、大丈夫? やっぱり、もう少し受注を絞った方が……」

 

アルシェは心配してくれるけど……

 

「今でさえ祝福のワインなんかは素材の都合で今年の分はストックが尽きて、2年先まで予約が埋まろうとしてるんだもの、これ以上ペースは落せないし、あたしが稼ぎ頭だもん。頑張らないと」

 

 

とはいえ、どうにか加減しないと心身が持たない気が……

 

双子ちゃんも可能な範囲で手伝ってはくれるものの、調合自体は、ねぇ?

 

骨休めに(ついでに素材集めの)旅行したい……

 

 

でも今、素材集めはフォーサイト以外のワーカーや冒険者にも発注してて、あたしが外に出る必要はなくなった(というか陛下の事実上『出国禁止令』と注文増加で外堀を埋められたとも言う)

 

それに、許可を求めるには口実が必要で……何かないかなぁ……

 

 

……そういえば『竜の化石』にせよ『フロジストン』にせよ、鉱石系の素材が足りないっちゃあ足りないのよね。

 

あと、インゴットの品質については……かなぁりメンドクサイ事になってる。

 

 

まず、そもそも『アトリエ金属』が存在しない。

 

その代わり、この世界の金属を普通に使う事はできる。

 

つまりカークだのノイエメタルだのっていうのを種別じゃなくて等級として置き換えて考えればいい。

 

 

ただ……

 

 

銅や銅の合金はカーク、鉄や鋼はノイエメタル、ここまでは分かる。

 

ミスリル〜オリハルコンがキーロプラス、オリハルコン〜アダマンタイトがバイロベイン、アダマンタイト以上でオルガナイトに相当するみたい。

 

 

同じ金属でも品質に開きがありすぎっていう、この世界の技術的な問題もあるんだろうけど、あたしがユグドラシルプレイヤーとしてユーディーになったせいか、アトリエ錬金術の金属区分がユグドラシル金属基準っていうメチャクチャさ……

 

 

で、ここからは推測になるんだけど、シュバルクーヘンが40〜50、シルヴァタイトが60〜70、フィリオダインが80〜90レベル台で加工可能になる金属にそれぞれ相当する……んだと思う。

 

 

(……ウニ濃縮で超々希少金属は無理だったか……まぁウニが七色鉱の代わりになったら大変か……いや、でも本当に無理かな。スターシルバーくらいまでなら……例えば、あたしのレベルが……今はどうでもいいかぁ)

 

 

というのは、ロバーさんに浄化してもらったりアルシェに魔法を付与してもらった、この辺で手に入る最高品質のアダマンタイト鉱石を材料にウニを調合。

 

 

……これだけ手伝ってもらってたら、アルシェもう付与術士(エンチャンター)職業(クラス)取得してたり? まさかね。

 

それはそうとアルシェ「……石なのにウニ?」って戸惑ってたわね。仕方ないけど。

 

 

で、ウニ濃縮して完成した高品質ウニをアタノールにブチ込んだ結果、小さいけどシュバルクーヘン(鍛治師じゃないから分かんないけど、たぶん40レベル金属)のインゴットができたの。

 

 

……アタノールでインゴット作成とか『ユーディーのアトリエ』の範疇(はんちゅう)を超えてる件には驚いたけどね。

 

まぁ、アタノールって『魔法的な小型の反射炉』だから、確かにゲーム(アトリエ)じゃなきゃ当然かも知れないけど。

 

……でも『反射炉』ですらなくない?

 

中で一回プラズマ化してるよねコレ。

 

オーパーツじゃん。

 

木炭を突っ込んだらダイヤモンドになって出てくるんですけど。

 

元はユグドラシルで無意味なオブジェだったとは思えない……

 

 

ちなみに、その時のインゴットはアルシェから「部外秘!!」と言われてしまった。

 

商品にも使っちゃダメなんだって。

 

 

……所々脱線したけど何を言いたいかったら、入手可能な素材的にも、世間からの目線的にも、インゴットを材料にする調合アイテムで最高品質を目指すのは無理って事よ。トホホ……

 

 

でも『こっちの常識』的な問題でもアルシェには助かってるのよね。

 

色々と教えてもらったわ。

 

 

女性が衣服をプレゼントされるのはプロポーズの意味だから安易に受け取るな、とか

 

(※事実ではあるが、帝国貴族の風習である)

 

その話を聞いて、あたしが「故郷には婚約指輪って風習が……」と言ったらアルシェが「帝国では親友に指輪を贈る」とか

 

(※嘘である)

 

「こっちでは親友同士で一緒のベッドに寝ても普通」とか

 

(※嘘である)

 

危うくアルシェに他人行儀な対応をするところだったわ。

 

ちゃんと大きめのベッドを買いました。

 

(※アルシェの戦略的勝利である)

 

 

……えーっと、何の話だっけ。

 

疲れてるせいで考えがアチコチにフラフラしちゃう。

 

あ、そうそう。お出かけの口実よ。

 

素材の幅も足りないし。

 

 

けど問題は人手ね。双子ちゃんも少しずつ覚えてはくれてるけど、まだ全然留守を任せられる腕でも年齢でもないし……

 

うーん……

 

 

「ユーディー、最終工程だけ各職人に業務委託するのはダメ?」

 

と、アルシェは提案してくれた。

 

 

なるほどー、原作の『お店に登録』ほどじゃないけど多少は楽になりそう。

 

でも、職人さんってプライド強そうだから、聞いてくれるかなぁ……あと変なアレンジとかされたら困るんだけど……

 

 

《翌日》

 

 

「ユーディット、お客様だよ」

 

今日も今日とて(今度は軍への納品で)大忙し……なんて感じで調合に目を回してると、店主さんが誰かを連れて来

 

 

こんにちは」(ドヨドヨドヨドヨ……)

 

 

ギャーッ!? ガソリンおんn……もとい、レイナースさん!?

 

 

こ、こんにちは……どうしました? 今、軍に納品する分を調合してて」

 

 

「それでしたら遅れが出たとしても私が説明いたしますわ。どうか手を止めて聞いて下さいませ」

 

 

そういう事なら、と、応接コーナーに。

 

……や、休めるぅ。

 

 

「それで、お話というのは?」

 

 

「……神官でも解けない呪いを解く方法、というのをご存知ないでしょうか」

 

 

「呪い、ですか」

 

 

聞けば、なんと『かつて領民を助けようとモンスターと戦った結果、顔に呪いを受けて、婚約者に捨てられ家族からも縁を切られた』らしい。

 

そりゃあガソリン女みたいな風にもなるわ。

 

てか普通にかわいそう……『領民を助けて』って何も落ち度ないじゃん。

 

 

「……力にはなってあげたいし、心当たりがないわけじゃないですけど」

 

 

「あるんですの!?」

 

 

「でも問題は材料なんです……この辺りで代替素材が見つかるかどうか……」

 

 

神官でも解けない呪い……けど一般的なレベルとかレイナースさんが倒せたモンスターって事を考えれば『死に際の呪い』って事もないだろうとは思う……とはいえ、高位の呪いっていうならエリキシル剤より『設定上まで含めて』呪いに効くはずの秘薬ウロボロスが一番よね。

 

今までの調合結果を見ると、原作アトリエの調合結果よりも『設定』の方が強く影響してる気がするから。

 

 

でも、それには『世界霊魂』並みの神秘が必要になる。

 

この世界で可能性があるとしたら……つまり、ある程度ユグドラシルを基準に考えるなら、天使か妖精の羽根? でもドロップ率メチャクチャ低いのよね。

 

オマケに天使とか妖精なんて、どこにいるのよ。

 

 

となると、ポイニクスの羽根か、もしくは……

 

「……ドラゴンのウロコを清めれば、何とか?」

 

 

あたしの(つぶや)きに、レイナースさんが

 

……なるほど、ドラゴンの鱗……それは確かに簡単ではありませんわね

 

その言葉とは裏腹に、目には力が……明確な標的を見つけたって顔ね。

 

 

「レイナースさん、ドラゴンってどこにいるんですか?」

 

 

「噂くらいの情報でしかありませんがアゼルリシア山脈にはいるという話ですわ」

 

 

山脈!!

 

 

鉱石とか鉱石とか鉱石とか……なんて思ったから、あたしはアルシェに小声で()いた。

 

「アゼルリシア山脈って、どんなとこ?」

 

 

「ドワーフの国があるという事くらいしか……」

 

 

ドワーフ!! ビンゴじゃん!!

 

 

「……ちょうど鉱石素材とかも欲しかったし、出国できるならドラゴンのウロコも探すのになぁ……でもアトリエを空けるわけにもいかないし……せめて周りの職人さん達に少し手伝ってもらえたら、何とかなりそうなんだけどなぁ……」

 

わざとらしく呟く。

 

 

「!!……ユーディットさん、明日、改めてお時間を頂けますか?」

 

 

「あ、はい。どのみち仕事地獄でしょうから」

 

 

「では、今日のところは失礼しますわ」

 

 

そう言って、レイナースさんは帰って行った。

 

……うまく行けばいいんだけどなぁ。

 

 

┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄

 

 

sideイビルアイ

 

 

「ねぇ見てイビルアイ! ついに届いたのよ!!」

 

 

ラキュースは組合から帰って来るなり、目をキラッキラさせて何かを私に見せる。

 

 

「……一体なんだ、その趣味の悪い仮面は」

 

 

んっふっふっ、この仮面は『古代の仮面』! 未来が見えるのよ!!……きさま! 見ているわね!!

 

 

変な仮面を付けて変なポーズをするラキュースに『いや見てるのはお前だろ』とツッコミを入れたくなった、が、我慢した。年長者だからな私は。

 

 

「……ハァ。で、そっちの本は何だ」

 

 

変なアイテムを(つか)まされたんじゃないだろうな、と鑑定魔法をかけていく。

 

 

「この本は『ラアウェの写本』! 聖なる力で

 

ヒィ!? お、おま、それ私の前で使うんじゃないぞ!? 効果範囲が広すぎる!! 灰にする気か!!」

 

……あら、そうなの?」

 

 

残念そうにしてる場合か! 何だこの驚異的な力は!?

 

 

「そっちの仮面も見せてみろ!」

 

 

……これもだ。漠然(ばくぜん)とではあるようだが、確かに1時間〜半日後の未来が見えるらしい。

 

 

「ラキュース、これを一体どこで!?」

 

 

「もう! 何も聞いてなかったのね!? この前言ったじゃない……話題の錬金術師のアイテム注文してみるって」

 

 

「……例のヤツが、これを……」

 

多少は話に尾鰭(おひれ)が付いてるんだろうと、話半分に聞いていたが、これほどとは……

 

 

……そういえば、もうすぐ100年になるんだったか。

 

まさか……いや、まさかとは思うが、確かめねばなるまい。

 

 

幸い、街で錬金術を営む大人しいヤツだ。確認程度でツアーが出るまでもあるまい。

 

「……ユーディット・フォルトーネ、か

 

 

行くか、帝国へ。

 





今回のポイント

・アルシェぇ……

・ちなみに『死に際の呪い』です

・ユーディーさん無自覚なまま現在レベル60超え(本人はレベル40のつもり)

・世界霊魂クラスの神秘を使った秘薬が『死に際の呪い』に効かないわけないやろ

・ラキュースぇ……
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