【完結】ユーディー(偽)のアトリエ──アーウィンタールの錬金術士(ハーメルン移植版)   作:ブドウ冷やしんす

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ドワーフとドラゴンの山 前編

 

「ユーディット、お客さんだよ」

 

 

あたしは店主さんの声に『来たわ! きっとレイナースさんね!』とテキパキ片付け始める。

 

いい知らせでありますように!

 

 

「いらっしゃいませー!……って、誰?」

 

そこにいたのは、赤いマントに変な仮面の、小さな人(?)だった。

 

 

「む、何だ、私が誰か知って出迎えたわけではないのか」

 

 

「……えーっと、アルシェ、この近くで今日パーティとかやってる家ない?」

 

 

「……え?」

 

 

あたしは小さな人(?)に合わせて中腰になり

 

「たぶん、おウチ間違えてると思うの。ごめんね? ここ、お仕事する場所だから」

 

あたしが言うと、その子はピシリと固まった。

 

 

アルシェが言いづらそうに、

 

「ゆ、ユーディー、その人、アダマンタイト級冒険者だと思うの。風貌(ふうぼう)から考えて『蒼の薔薇』のイビルアイさん」

 

 

小さい人(たぶん仮装してる子供)は何故かプルプルと震え出し……

 

「へー、そうなんだ! かっこいいね! 早くお友だちに見せてあげ

 

「……誰が……誰が豆粒ドチビかぁぁぁ!!!

 

そんな事言ってないよ!?」

 

爆発した。

 

 

┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄

 

 

sideイビルアイ

 

 

……と、まぁ、少し(・・)声を荒げる場面もあったが私は落ち着きある年長者だからな。すぐに許してやったさ。

 

見せてもらったマジックアイテムが面白かったからとか、そんな理由ではない。

 

断じて。

 

 

腕を組んでソファーにドカッと深く座り、偉そうに足を組む。

 

実力者の威厳(いげん)というのを見せなくては。

 

「で、だ。ウチのリーダーが買って来たのを見て、お前が随分(ずいぶん)摩訶不思議(まかふしぎ)なアイテムを作るんだなと思い、どんなやつか見に来たのさ」

 

 

「そうだったんですか。すごいねアルシェ! アダマンタイトの人も御用達だよ!」

 

 

「ボソボソ……(ユーディーはしゃぎすぎ、お客さんの前)……すみません、いつも彼女はこんな感じで」

 

 

なるほど、このバカ魔力小娘がマネージャーみたいなものか。

 

錬金術師の方も大した魔力ではあるが……『ぷれいやー』かと思ったのは早計だったか?

 

まぁ、少なくともフールーダは超えていそうだが。

 

 

正直、アイテムの突飛(とっぴ)さと比べると『この程度か?』とさえ思う。

 

むしろマネージャー小娘の方が魔力量自体は多くないか?

 

あくまで体感としてだが。

 

 

いや、魔力だけで判断するのは(まず)いな。

 

『リーダー』のように『今、伸びている途中』なのかも知れない。

 

 

「ふむ……ユーディット・フォルトーネと言ったか。どこの出身だ?」

 

 

「出身ですか? ライフ村って言います」

 

 

……『村』……村かぁ……確かに聞いた事ない村だが、どこかの村の出身『ぷれいやー』というのはイメージしづらいな……

 

いや、『ぷれいやー』の世界にも村があったりするのかも知れん。

 

 

「聞いた事ない村だが、遠いのか? どうやって来た」

 

 

「それが……自分でもよく分からなくて。気が付いたら知らない廃墟の中にいて、当てもなく歩いててエ・ランテルの冒険者チームに(ひろ)ってもらった感じです」

 

 

「……ん? では何故、帝国に」

 

 

「あはは……リイジーさんっていう薬師の人が怖くて逃げて来たというか、何というか……」

 

 

「怖い人物なのか」

 

 

「あ、いえ。こだわりの強い職人さんって感じで、薬の事になると目の色が変わるんです。あたし遠くから来たので、この辺にない素材とか持ってたから……」

 

 

「なるほど。ちなみに、その素材とやらは見せてはもらえるのか」

 

 

「ぁー……まぁ、見るだけなら……いいかな、アルシェ」

 

 

「秘密厳守で。アダマンタイト級を信用します」

 

 

なるほど? 下手に他言すれば信用に傷が付くぞ、か。

 

ま、そもそも言いふらすつもりなど無いがな。

 

「約束しよう」

 

 

見せてもらったのは、ヴィーヴルとかいう飛竜(ワイバーン)の一種が額に持つ『竜石』なる物だった。

 

 

「……確かに、こんな物を持っていたら目の色も変わるかも知れんな。額に石を持つ飛竜(ワイバーン)か……聞いた事が無いな」

 

 

「似たような竜もいないんですか?」

 

 

あぁ、見せたのは逆に情報収集のつもりだったのか?

 

 

「角のような物ではないのだろう?」

 

 

「感覚器官みたいです。第三の目なんだとか」

 

 

「ますます聞いた事が無い」

 

 

未知のアイテム、本人も知らぬ間に突然の転移……

 

状況としては似ている。

 

今は成長途中かも知れんが……

 

「……黒だな」

 

 

「!?」

 

 

おっと、声に出たか。

 

しかし何故、そんなに驚

 

 

「な、なんで知ってるの!? 今日何色はいてるか(・・・・・)なんてアルシェしか知らないのに!!……まさか、ノゾキ!?」

 

 

…………………………にゃんだとぉぉぉぅ!?!?

 

 

「ま、待て待て待て待て! 何を言いだす!? 誤解だ!! というか! 何故そっちの小娘は知ってて当然みたいな話になってる!?」

 

私が言うと、二人が顔を見合わせた後、マネージャー小娘は決然とした表情で力強く断言した。

 

 

私は、ユーディーの親友だから

 

 

……知ってるかラキュース、帝国では親友の下着の色くらいは普通に知ってるものらしい。

 

私も今、初めて知った。世界は広いな。

 

 

「あら、先客がいらしたのですね」

 

 

我々が騒いでいると、誰かが入って来た。

 

振り返ると、そこには

 

「……『重爆』レイナース!?」

 

 

┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄

 

 

「レイナースさん、いらっしゃいませ!」

 

あたしが挨拶すると、レイナースさんは

 

「お邪魔しますわ。……そちらは蒼の薔薇のイビルアイさんでしょうか」

 

 

「……政治の話に首を突っ込むつもりは無い。用件は終わっていないが、機密だのに絡む話なら席を外すが?」

 

 

「単なる連絡事項と、半分は私用ですわ。聞かれた所で問題ありませんし、お待ち頂いても結構」

 

 

……知ってるけど知り合いじゃなくて、仲が悪くはないけど良くもないって感じ? うーん。

 

 

レイナースさんは、あたしに向き直ると

 

「ユーディットさん、こちら、陛下からの勅許状(ちょっきょじょう)ですわ」

 

 

「勅許状?」

 

 

「帝国内の職人へ仕事の外注を皇帝陛下が(・・・・・)認める、という物です。要約すると『帝国はユーディット・フォルトーネの生産活動が円滑に進む事を望む。()け負う者は可能な限り協力するように』と書かれていますわ。報告義務もありますので、陛下に覚えめでたくありたい職人は喜んで手を貸すでしょう」

 

 

「わ! わ! ありがとうございます!!」

 

これで多少は楽になる!

 

 

「それと、仕入れ目的でドワーフ国への出国許可も下りました。護衛兼目付け役として私が同行(いた)しますわ」

 

 

「やったー! ありがとうございますぅ!!」

 

旅行だー!! ひゃっほーぃ!!

 

 

と、横で聞いていたイビルアイさんが

 

「……仕入れ。素材か?」

 

 

「はい! 鉱石系の素材に幅がほしくて」

 

 

「ふむ……私も同行して良いか?」

 

 

「え!?」

 

 

魔法詠唱者(マジックキャスター)として、お前のフィールドワークに興味がある。もちろん護衛もしてやるし、完全に私用だから護衛代金も取らん。どうだ」

 

 

一応、目付け役だというレイナースさんに視線を向けると……

 

「……見聞きした事を他言無用とする場合もありますわ。帝国騎士として行動する時には邪魔をしないで下さいましね?」

 

 

「分かってるさ」

 

 

……うーん、ピリピリ。大丈夫かなぁ。

 

 

「いつ出発なさいます?」

 

レイナースさんに()かれ、

 

「アチコチに声をかけて、下準備して……うーん……5日後!」

 

 

「では、そのように」

 

 

┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄

 

 

馬車で都市を2つほど経由してアゼルリシア山脈へ。

 

 

最後の経由地でレイナースさんに南側のルートと北側のルートどちらにするか訊かれ、北側を選択。

 

何でも『古いルート』と『新しいルート』らしい。

 

多少未確認でも近い方がいい! 未知の鉱石!!

 

 

そんな事を考えてたからか、登山2日目……

 

 

「……このまま進むとペリュトンの群れに当たりますわね」

 

 

「あー、確かにいるわね、飛んでるやつ。あれペリュトンっていうの?」

 

レイナースさんとイミーナさんが相談中。

 

でも、

 

「メンドクサイからトラウアタロット使いまーす」

 

 

「む、何だそのカードは。占いか?」

 

 

百聞は一見にしかず、と、あたしは『普通のタロットカードの束』も取り出し、一番上にトラウアタロットを一枚置いてササッとシャッフル。

 

未来を占うように一枚カードを引くと……

 

「そしたらアラ不思議! 引いたのは白紙カード! この後は何も起きませーん!!」

 

効果が発動してトラウアタロットはキラキラ光った後、風化するようにサラサラ崩れて消えた。

 

 

イビルアイさんが疑問の声を上げる。

 

「何だそりゃ。一体何の

 

「あら、ペリュトンの群れが飛んで行きますわ?」

 

……な、何?」

 

 

見上げるとレイナースさんが言う通り、ペリュトンはどこかに飛んで行った。

 

 

プルプル震えながらイビルアイさんが声を(しぼ)り出す。

 

「……お、おま、お前、おま……」

 

あたしの腕をガシッと(つか)むと、

 

「……頼むから『単に敵を除けるだけのアイテムだ』と言ってくれ……」

 

 

「……はい、敵を除けるだけのアイテムです」

 

 

「んなわけあるかぁぁぁぁ!!」

 

 

「ヒドイ!? 言えって言うから言ったのに!?」

 

 

「明らかに『運命を()じ曲げてる』じゃないか!!」

 

 

……うーん……何が納得いかないのかなぁ。

 

 

「……そうは言うけどイビルアイさん、努力して実力者になったり、お金とかコネとか使ったりするのだって『元々なかった何かを使って運命を捻じ曲げてる』のは同じじゃないですか」

 

 

「んな!?」

 

 

「このカードだってタダでは作れないし、買うなら安くは売ってません。金貨500枚(税込み)で販売中です!!……一度も売れた事ないけど」

 

何で売れないのかなぁ……

 

(※タロットカードが一般的でないのが理由、と本人は気付いていない)

 

 

「金額の話じゃない!」

 

 

「金額の話でしょう。そのお金を得るための努力は必要になるわけですし。

 

……このカード使ったって『何も起きない事にする』か『戦いが起きる事にする』か『何かアイテムを拾う事にする』しかできません。旅の道中しか使えないし。

 

こんなの使わなくても果物ナイフ一本だって『誰かの運命を捻じ曲げる』事はできちゃうのに、高い割に効果が限られてるカードの何が悪いんです?」

 

 

「ぐぅ!?……いや、人としての領分というのがあるだろ!」

 

 

「問題なのは『どんな力を使うか』じゃなくて『何に使うか』だと思うんです。生まれる場所とか人生とか、何もかも『運』ばかりなのに、そんな事こだわってたら生きづらくなっちゃいますよ」

 

あたしがキッパリ言い切ると、イビルアイさんは急に静かになり

 

「…………………………ハァ……世間知らずの小娘だと思っていたら、中々どうして言うじゃないか」

 

 

「世間知らずなのと何も考えてないかどうかは別ですぅー」

 

言うと『んべ』っと小さく舌を出した。

 

すると何が面白かったのか、

 

「……フッ、ははっ、そうだな。それはそうだ。……(かつては、私も)……」

 

 

「? 何か言いました?」

 

 

「いや、何でも無い。だがな、知識不足で足を(すく)われる事はあるぞ? 気を付ける事だ」

 

 

「重々承知ですぅー。それに、あたしにはアルシェがいるから心配ご無用です!」

 

 

「ガクッ……そこは他力本願なのか!?」

 

 

「人は支え合って生きるものだと思います!」

 

 

「……クックッ、あぁ言えばこう言う。なるほど、お前なら大丈夫そうだ」

 

 

「はい!」

 

あたしは胸を張った。

 

頼りになる友達も、実力 (運) のうち!

 

 

┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄

 

 

そんなこんなで到着しましたドワーフの街フェオ・ジュラ!

 

頑丈そうな外壁に囲まれた……街というより砦のような……と思ってたら、地上にあるのは本当に砦と、取引に来る人間用の宿泊施設とかだけで、ドワーフの家とかは地下にあるみたい。

 

 

通してくれたドワーフの衛兵さんが言う。

 

「地上は危険が多いからのぅ。実際、お前さん達が来る少し前にペリュトンの群れが飛んで来て大変じゃったわい」

 

あたしは目を逸らして口笛を吹いた。

 

イビルアイさんにジト目を向けられた気がする。

 

 

 そ れ は さ て お き !

 

 

「いやぁ、遠路はるばる良う来なさった!」

 

と、交易担当の役人さん。

 

 

ドワーフってサイズ感バグるよね。

 

明らかにオジサンなのに小さい……アルシェよりも小さい……

 

なんて事は言ったりしないけど。

 

なんか国内景気が悪くなったとかで交易が少なくなってるらしく、歓迎してくれてるし。

 

 

……ただ、

 

「……鉱物資源を買いたいじゃと? 武具ではなく?」

 

ちょっとつまらなそうな顔をされた。

 

 

どうやら武具の方が付加価値も付いて高く売れるから、らしい。

 

鉱物資源は鉱山さえあれば(鉱脈の種類にもよるけど)ドワーフ国に限らず手に入る。

 

 

でも、あたしは帝国で手に入らない素材がほしいの!

 

そんな露骨な顔しなくたっていいじゃん!!

 

 

鉱物資源は全部国営の取引らしいんだけど、見せてもらえたのは帝国でも見かける物ばかり。

 

面白くなぁぁぁい!!

 

 

せめて他に素材か情報(ドラゴンとか)でもないかと、人間向けじゃない、地下にある食堂(……てか酒場?)に行ってみる事に。

 

 

「……さすがに薄暗いし、採掘しきった後だからか天井はそこそこ高いけど道幅は(せま)いね」

 

みんなで連れ立って地下に降りると、ドワーフの街だけあってサイズ感が……建物とかも少しミニチュアっぽい。

 

ちょうど夕飯時なのか、通りはドワーフさんたちで(にぎ)わってる。

 

てか……酒好きで有名だけあって、酔っぱらってテンション上がってる人が多いし、そこら中お酒臭い。

 

まぁ賑やかで面白いけどね。

 

 

「この辺かなぁ……」

 

と、適当な店に入ってみる。

 

ワイワイガヤガヤ……20人くらい(ただしドワーフ)が入れそうな店の中は半分以上が埋まってて、でも

 

「2軒目行くぞぉい!」「おー!!」

 

そろそろ出る人もいるから大丈夫そう。

 

 

席に着いたら早速注文。

 

ドワーフの文字を読める人がいないから、店員さんに

 

「おすすめを人数分で!」

 

 

なんて、あたしが言うとみんなが心配そうに

 

「おいおい、大丈夫かよ」

 

「どんな物か聞いた方が良かったのでは?」

 

「かなり食文化は違うと思いますわ」

 

「自分で注文したんだから、何が出ても自分で食えよ」

 

 

と言う一方でイミーナさんとアルシェは

 

「まぁ食えないもんが出てくるわけじゃなし、大丈夫っしょ」

 

「何が出ても平気な自信がある(神丹に比べたら……)」

 

 

……で、出て来たのがウサギの串焼き、キノコのスープ、ただし……

 

「これ、一緒に入ってるの何ですか?」

 

ハチの幼虫じゃよ

 

ヒエッ

 

「ライディング・リザードのステーキお待ちぃ!」

 

「カタツムリの塩焼きじゃ! コケを振りかけとるから美味いぞぃ」

 

「さぁ酒じゃ酒じゃ! こっちは黒麦酒、こいつは赤キノコ酒じゃ!」

 

 

………………食文化、なめてました。

 

 

ちなみに、ドワーフは地上での活動を嫌がるから日光が必要な種類の農耕作物や家畜の方が貴重品になってしまうらしい。

 

また、その関係で食用油も貴重品。

 

素焼きや塩焼き、塩ゆで、蒸し焼き、燻製(くんせい)や干物なんかが主流の調理法だという。

 

(塩は岩塩を使うらしい)

 

 

人間社会では良く見かけるパンとか麺とかみたいな炭水化物系は、穀物が貴重だから携帯食料にするビスケット、クッキー以外にはなく、その場合も乾燥させたキノコや虫の粉末で増やして作るらしい。

 

逆にキノコ、コケ、カタツムリ、トカゲやヘビ、虫は育てやすいらしく、このような食卓になるんだとか……

 

よく罠で仕留められるっていうウサギの肉が救いだったわ……

 

 

ヘッケランさんロバーさんから『どうすんだよコレ』的な視線が痛い。

 

イミーナさんがニッコリしながら

 

「ユーディー、スープと串焼き交換しない?」

 

やだー!!!

 

 

ところで……何でアルシェとレイナースさんは少し顔赤いの?

 

小声でアルシェに訊いてみると、

 

「……帝国貴族の間ではハチノコは精力剤として有名」

 

……アッハイ。

 

 

その後、アルシェから「社交会で出て来る料理の中ではカタツムリは比較的美味しい珍味」と勇気づけられ、食べてみると本当に美味しかった。

 

……コケが、何かこう、独特な香り。

 

リアルで画像しか見た事ない『お好み焼き』のアオノリとか『ポタージュ』のパセリみたいに、ハーブの扱いなのね。

 

前に食べた事ある『マツタケフレーバー』とかいうペースト食、を高級にした感じ?

 

 

あと、トカゲステーキは『騎乗用のが歳をとって肉にした』と言うだけあって固かったけど、味は鶏肉みたいで食べれなくはない。

 

 

ところで……ねぇアルシェ、『みんな要らないみたいだからもらえば良い、私も手伝う』って、やたらハチノコをプッシュするの何で?

 

そんなに不健康そうに見えるのかな、あたし。

 

 

「………………ハァ」

 

隣りの小テーブルに座ってるドワーフさんが、デカいため息。

 

どうしたのかなぁ。

 

見れば卓上には何かの虫の炒め物と……え、あれ水? ドワーフなのに酔っぱらってる様子もないし……()に服して酒断ち、とか?

 

 

あんまり辛気(しんき)くさいので、

 

「あのー、大丈夫ですか?」

 

 

「……ん? ぅお!? に、人間か? 珍しいのぅ……(わし)に何か用か?」

 

 

「いやぁ、ずいぶん深刻そうにため息ついてるし、ドワーフなのにお酒飲んでないみたいだから」

 

 

「酒飲まんのは元からじゃ。飲めんからのぅ」

 

 

「あ、そうなんだ。ドワーフでもお酒に弱い人いるんだ」

 

 

「全員が全員飲むわけじゃないわい。ため息は……まぁ、本業というか副業というか……夢というか……それが上手くいかんでな」

 

 

「本業?」

 

 

「儂はルーン技術の開発者……を名乗っとる」

 

 

「ルーン? ルーン文字ですか?」

 

 

「知っとるんか!?」

 

 

「あれですよね、武器とかに文字を刻むと魔法の力が宿るっていう」

 

 

「そうじゃ! 武器だけではない、そもそもルーンとは……」

 

 

そこからは、お酒も入ってないのにしゃべるしゃべる。

 

ルーン技術の素晴らしさ、難しさ、歴史……

 

この人ルーンオタクなのね。

 

 

……みんなが『変な事に首を突っ込んで……』と(あき)れた表情で見てくる。

 

うん……つい、ね。つい。

 

 

だけど一転トーンダウンして、

 

「……儂には才能がなかった。だからせめて衰退(すいたい)したルーン技術の再興のために研究を、研究費のために日雇い労働者に……だが皆やる気を失っておる。もう本当はルーン技術など終わっとるのは分かっとる。それでも儂は祖父や父の技術を残したい……他にどうする事もできんのじゃ!」

 

水のグラスを(あお)って「……くぅ……」と(うつむ)いた。

 

 

……受け継いだ技術を残したい、か……

 

 

「うーん……みんなにやる気を取り戻させるほどの研究は進んでないのね。単語とか文法も失われちゃったんですか?」

 

 

「……な、何? 単語? 文法?」

 

 

「だって『文字』なんですよね? なら単語とか文法もあるんじゃ……」

 

 

あたしが言うと、何故か彼はワナワナ震え

 

「……そ、それじゃー!!」

 

 

「ぅわわわ」

 

 

「どうしてそこに気が付かなかったんじゃ! 刻む文字数が増えると上手く行かないのは、もしや守るべき単語や文法に反していたからか!? だとしたら、そこさえ押さえれば今より高度な……」

 

突然テンションが上がった、と思ったら、またトーンダウン……

 

「……それを実証するには儂の技量では足りぬ……皆の協力を得られれば、あるいは……だが呑んだくれとるからのぅ皆……」

 

 

あちゃあ……そもそも、やる気ない酔っぱらい連中の協力が必要なのかぁ。

 

……だったら、

 

「酔っぱらいに話を聞かせるにはコレでしょう!」

 

ポシェットから瓶を取り出し

 

 

「ユーディー祝福のワインはダメ! 法律違反!!」

 

アルシェが青い顔で止めてくる。

 

 

けど、あたしは

 

「……レイナースさん、協力してくれるドワーフがいたら、情報集め素材集めが楽にな

 

「手段を選んではいられませんわ。どうせ消え物ですし証拠は残りません」

 

さっすがー! 話が分かるぅ!」

 

 

最初はトラウマを刺激されて苦手だったけど、同情したり一緒に行動するようになってから、ちょっとずつ平気になってきたわ。

 

 

「……ぇえ?……四騎士……ぇえ……」

 

アルシェを始めとして、みんな少し引いてる。

 

いいじゃない、目的は手段を正当化するのよ!!

 

 

「……なんだか良く分からんが、連中を集めて酒盛りをすれば良いんじゃな?」

 

 

「はい、あとはノリです!」

 

 

「……大丈夫かのぅ」

 





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