[っていう、夢を見たんだ]
うず高く積み上がった書類は午後の自分に任せ、右手で湯気立つコーヒーが入ったマグカップを口に傾けた先生は、再度コントローラーを握り、星もかくやとばかりに瞳を輝かせる当番の生徒との2Pプレイを続行した。
「それはすごい夢ですね!」
[カイテンジャーが敵役だったのは残念だったけど、とても面白かったよ]
ブロック状の世界で、せっせと畑を耕す先生と、洞窟に潜り、敵を倒しながら鉱石を獲得していくアリス。二人はゲームを進める手は止めず、しかし意識を先生の夢の話へと注いで、言葉を交わす。
「アリスもEx-sに乗りたいです!ウタハ先輩に頼めば、作ってもらえるでしょうか?」
[…どうかな。予算があれば、いけそうな気もするけど]
「…ダメです。どう考えても、ユウカの壁を攻略できる気がしませんっ」
[話を聞いてもらうだけでも、怒られそうだね]
流石冷酷な算術使いと言うべきか。その恐るべき太ももの壁を超えるかんぺき〜な手段は一向に浮かばない。
正しくはEx-sは装備の名前で、機体の名は【ヤーナス】であるものの、異様にEx-sという単語が黒髪の彼女に似合い訂正の暇を逃した先生は、いつしかコントローラーから指を離し、俯いていたアリスに、優しく声をかける。
[…アリス?]
名を呼ばれ、曇った表情を先生に合わせたアリスは、その小さな口を開いた。
「──先生。ケイはいつか、アリスのパーティーに加入できるでしょうか?」
モンスターに襲われ、操作するキャラの体力が減っていくのもお構いなしに、アリスは懇願する風な瞳を向ける。
眉を下げた先生は桑を振りながら、あくまでこれは私の考えなんだけどと前置き、語り始めた。
[この世界は本で、私達は読者だと思うんだ]
「?」
全く関係のない事を言い出して首を傾げるアリスに、先生はこういう喋り方でごめんねと謝りながら、続ける。
[物語に沿って、私達は様々な
「…では、ケイは」
[でもね]
画面の中の世界の更に奥。遠いどこかへ焦点を合わせていた先生は、アリスに向き直り、発した。
[私達は、読者だから。自由にテキストを解釈できるし、描写されてない部分は、描写されない限り好きに想像できる。少し冒涜的だけど、暗い頁を飛ばしたり、物語を書き換える事もできると思うんだ]
「…!」
丹念に拭いた後のガラスみたいに、アリスは光に満ち溢れた顔を見せる。
彼女の様子に、先生は満足そうな面持ちをして、畑に種を植えた。
[でも、そんな本を書く神様だって、結末は皆揃ったハッピーエンドが好きだろうから]
土の布団に収まった種へ、先生はジョウロで水をあげる。すると、すくすくと育ち、やがて芽を出した種は、前からあった畑にて成長しきった作物と同じくらいに、背を伸ばし、並んだ。
[──きっと、加入できるんじゃないかな]
<青輝石×0 作者の感謝×∞
ここまで読んで頂き、本当にありがとうございました