「ここは……」
夜目、というべきだろうか。こんな暗い森でも私の目はしっかりと木や草が見えている。そんな慣れない視界に少し戸惑いながら隣に立つ
「あの、どうしてここに……」
【少しお待ちください】
私の問いかけに対し、
それがどこか恐ろしくなり、それから目を逸らすようにもう一度、
「え、ちょ、あの!」
まさか臨戦態勢に入っているとは思わず、声を上げてしまうが
【ヤツラがいたので処理しました】
「へ?」
ヤツラ――つまり、私のような人外が森の奥にいたらしい。もちろん、夜目が利くといっても見える範囲には限界があるため、私には見えなかった。どうやって見つけたのだろうか。
【もう少し進んだ先に身を潜められそうな洞窟があります。そこへ移動します】
「は、はい!」
(でも……)
私の前を歩く彼女の背中は夢に見た光景そのもの。違うのはこれが現実である、その一点だけだった。
「あ、あの……もう少し、ゆっくり……」
しかし、このままでは
【失礼しました。歩き慣れてませんよね】
「きゃっ」
そして、そんな文字を浮かばせた後、私のところへ戻ってきた
それから程なくして地面が隆起してできたと思われる洞窟があった。入口は大きいものの、奥に行けば見えなくくなるのでここなら身を隠すのに適しているだろう。
【ヤツラの住処になっている可能性もありましたが大丈夫そうですね】
先に中に入って安全を確かめた
「お邪魔、します……」
彼女の後に続き、洞窟の中に入った私は比較的座りやすそうな場所に腰をかけ、そっと息を吐いた。
一体、ドッペルに襲われてからどれほどの時間が経っただろう。スマホは鞄に入れてあったので手元にはなく、腕時計もしていないため、具体的な時刻はわからない。でも、まだ日付すら変わっておらず、夜はまだ長いということは理解していた。
「……」
少しの間、沈黙が洞窟内を支配する。
【今後の話をしてもいいでしょうか?】
そんな沈黙を破ったのはやはり
「……お願いします」
頷いた私の声は僅かに震えていた。私が思っている以上に榎本先生の凶変した姿がショックだったのかもしれない。学校では温厚で優しく、私にも気を掛けてくれていた先生と住宅街で話した彼が同一人物だと受け止め切れていないのだ。
【わかりました。まずはあなたの今後をお話しします】
私は人外だ。たとえ、この夜をやり過ごしたとしても私を殺そうとする人たちが襲ってくる。きっと、
【あなたは明日の朝にでも凶悪な犯罪者として指名手配されるでしょう】
「……は?」
そう思って彼女の文字を読んだのだが、言葉を飲み込むことができずに間抜けな声を漏らしてしまう。
(私が、指名手配? 何もやってないのに?)
昼間は人の目があるので私を襲うのは難しいかもしれない。だからこそ、誰もいない場所で殺すために指名手配して私の身柄を拘束しようとしているのだろうか。
【先週、二件の変死体が発見されたニュースは知っていますか?】
「それは……」
確か路地で変死体が発見され、死体の状態が悪く身元特定に時間がかかった、というニュースだったと思う。それが連日続いたため、同一犯の犯行だと予想されていたはずだ。それが私とどんな関係があるのだろうか。
【あなたはその二つの事件の容疑者に指定されています】
「……え? 私が、容疑者?」
おかしい。そんなはずはない。だって、先週はほとんど家で過ごした。あやちゃんと遊ぶ約束を蹴って部屋の掃除やバイト探ししたのを覚えている。だから、私がそんな事件に関わっているわけがない。
【では、質問を変えましょう。4月7日の未明、何をしていましたか?】
そんな思考を遮るように
「あ、れ……」
家に、向かってどうした? バスの中で寝落ちした後、私はどうやって家に帰った? あの日、私は何をしていた?
【実は二つの事件の前の日の未明に一人の女性が襲われる事件が起きています。その女性は泥酔した状態で路地で倒れていました】
思い出せず、少しずつ血の気が引いていく私を見ながら
【外傷は二つ。肩口に鋭い何かで突き刺された小さな傷。まるで、鋭利な牙で
彼女の文字が流れていく。それを呆然としたまま、眺め、嫌でも頭に入ってくる。そんなはずないと否定したいのに否定するための
【私は偶然にもその女性を発見し、襲った犯人を捜しました。そして、その犯人こそ】
そこで
【